Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

リング特別企画: ジェームズ・モリスのインタビュー 後編

2009-04-28 | メト on Sirius
前編より続く>

今日の『ワルキューレ』の二度目のインターミッションにはゲストにジェームズ・モリスを迎えています。
過去にヴォータンがあれこれ道を迷ったことを考えれば、”一緒に来なさい”、”妻よ、私と一緒に生きよう”、
この言葉は彼の成熟とフリッカに心を捧げていることを示していますよね。
そう思われませんか?
 ええ、思います。この作品自体、ヴォータンが若さから成熟にいたる
その過程を描いたものになっています。
『ワルキューレ』は人間的な感情に焦点が当てられていますし、
『ジークフリート』では、より老いてからの賢さとか、それゆえのちょっぴりレイド・バックした
ユーモアのセンスなどが描かれていますね。
例外はエールダとの場面で、あそこでは彼も必死といった雰囲気ですが。
しかし、いずれにせよ、成長の過程を描いていることにはかわりなく、
『ラインの黄金』でさえ、最後に至るまでには、ヴォータンはものすごく多くのことを経験しますね。
すでに”喪失”ということや、ローゲの、弁護士ばりの(笑)悪いアドバイスのおかげで、
ずるさということの意味も体験します。
というわけで、『ラインの黄金』の終わりまでには、すでに多少、ヴォータンの中に
謙虚さがあらわれはじめています。
謙虚といっては語弊があるのかな、、、何といえばいいのか、、
例えばヴァルハラ城を目にしたとき、彼自身、ものすごい感銘を受けますね。
繰り返しになりますが、特にこのプロダクションは素晴らしくて、ヴァルハラ入城のシーンは美しいですよね。
石、黄金の輝き、そしてそれに繋がる虹の橋、、もうこうして話しているだけで鳥肌が立ってきます。
これまでには、私は、箱でできたヴァルハラ城なんていう困ったプロダクションで歌ったこともありますからね(笑)。
そういうセットを見るとね、ちょっとへこみますよね(笑)。
 ビーチにあるコンドミニアムみたいなね(笑)。
 それにアール・デコの邸宅みたいなのもありましたよ。あれはミュンヘンだったか、、(笑)。
 つい最近の125周年記念ガラ(注:ガラの最後の演目のこと)では、1889年のリングが再現されましたね。
あの時、あなたが頭にかぶっていたものはものすごかったですね。
 もしあれをかぶったまま作品通しで演じなければいけなかったとしたら、
とても私には出来なかったと思います。
実はものすごく正直に言ってしまうと、私はその1889年の上演の時の写真を観たのですが、
それで判断すると、あのガラでリメイクされたかぶりものは、微妙にそれとは違っているんですよ(笑)。
ちょっと大きくなってましてね(笑)。最低でも私の頭の上に数フィートそびえている感じで、
兜から羽根のように横に開いている装飾部分がありますが、あれをつけていると本当に首を動かせなかったんですよ。
ストラップまでつけなければならないことになって、、、というのも、私が少しでも頭をかしげようものなら、
兜全体があっちこっちにぐらぐらするものですから。
10分か15分くらいしか着けていなかったのに、もう首が痛んでしょうがない、といった具合でした。
 でもドレス・リハーサルの時に、あれをつけられた状態でカーテンが上がったときは、
ものすごく素敵な表情をしていらっしゃいましたよ。
本当のところは、”よし、もう一回とっととやって終わらせてしまおう!”という感じだったんですね。
 オーケストラの方を見たら、奏者の人たちが笑って見上げてました(笑)
 今日の一回目のインターミッションではリンダ・ワトソンがゲストで、
ヴォータンとの告別のシーンで、どうやって精神を集中させるか、
またつい胸にこみあげるものがあるせいでそれがいかに難しいか、
といったことについて話してくださったのですが、私にもわかります、
この作品にはあまりにじーんと来たり、鳥肌が立ったりするシーンがたくさんあって。
あなたにとっては15回目のリング・サイクルということですが、今でも同じ気持ちになりますか?
 もちろん。
 もしかするとより一層強かったり?
 ええ、そう言ってもいいかもしれませんね。
自分のパーソナルな人生で体験したことが舞台に反映されますからね。
子供が生まれたときのこと、それは私の人生の中で転機となる出来事だったんですが、
そういうことだとか、あとは、自分の娘をブリュンヒルデに置き換えてみたりとか、、(笑)。
 子供は親を涙もろくしますものね。
 そうそう、テレビのコマーシャルを見てても泣いてしまったりね(笑)
 で、あんなものすごい炎に包まれていればね、それは無理もありません(笑)
 私が具体的にこのヴォータン役を勉強し始める前は、
彼は神の長だから、色々物事の決定権を握っていて、強くてパワフルで、、、なんて思っていたんです。
実際に役を演じるようになってからですね。
彼が実際には格好悪くて間抜けな部分もある人だな、と気付くようになったのは(笑)
というのは、もともと彼には自分独自の考えというものがないんですね。
人生を通して彼を支配しているのは色々な女性たちなんですよ。
ブリュンヒルデも含めてです。だって、彼女の周りに火を燃やすのだって彼女のアイディアですからね。
あと女性ではありませんが、ローゲだってそうですね。
彼のせいでヴォータンは色々厄介なことに巻き込まれてしまいますよね。
 そうですね。ローゲの方がいつもヴォータンの一歩先を行っている感じがしますよね。
 その通りです。
でもそれだからこそ、この作品は人間的なんですね。
指環全体を通して、ワーグナーは神を登場させながらも、決して人間への視点を忘れていない。
 その点は、特にあなたのヴォータン役の役作りに顕著であるように思うんです。
あなたは多くの機会にヴォータン役を歌ってきましたが、あなたが歌うようになる前の時代には、
私はヴォータン役を歌う歌手から、その部分について、
あなたが役を演じているときと同じように感じることが、なかったんですね。
それはあなた自身が役の中に見出したことなんでしょうか?
それともみんなそのように演じてきたと思いますか。
 後者だと思いますね。
幸運なことに、私には、役を勉強している頃に、ハンス・ホッター(注:歴代最高の
ヴォータン歌いといわれている歌手)と一緒に仕事をする機会に恵まれまして、
彼からはものすごく影響を受けました。
その彼のヴォータン役へのアプローチは極めて人間らしいものでした。
で、当時、私が彼や今の私と同じ解釈をせずに演じている部分があったんですが、
すると彼が、”駄目駄目駄目駄目、そこはね、彼は悲しいのではなくって、
心の奥底では幸せなんだよ。”と言うんです。
それで私もよく考えてみましたら、ヴォータンがブリュンヒルデを眠りにつけて、
立ち去っていくあの場面は、
普通、ヴォータンがものすごく悲しい思いでいると思いがちだけれども、実は、ほろ苦く甘い感情というのか、
私は舞台ではあの場面を微笑みながら立ち去るような演技にしているんです。
というのも、ヴォータンは、いつか、世界で一番強い男性が彼女のもとにあらわれて、
目を覚まさせることを知っているわけですから。
この場面の前で、ヴォータンは、ブリュンヒルデの
”神性をはぎとって、一人の妻(WIFE)として、お前を置いていかねばならない”と、
あたかも妻という言葉がまるでフォー・レター・ワード
(注:fuckなどと同様の忌むべき言葉)であるかのように(笑)宣言しますが、
しかし、先にも申しましたように、世界で最も強くて勇敢な男性だけが
彼女にたどり着けるように、まわりを火で取り囲む、というのは彼女のアイディアなわけで、
それはヴォータンの言葉、”私の槍の先をも恐れない、もっとも勇敢な男だけが、
この火を乗り越えることができる”という言葉にも集約されています。
ですから、彼は実のところ、ブリュンヒルデが幸運で、
先に良いことが待ち受けているのを知っているわけです。
 その意味では彼女は安全といえますね。
 それから、『ジークフリート』の最後で、
ジークフリートがヴォータンの槍先を折ってしまう場面では、
舞台上はヴォータンが敗れ去った神として去って行きますが、
しかし、またここも同様に、心の奥底では、ジークフリートが若さゆえに熱気さかんで、
傲慢なところがあるにしても、彼こそが神を救える人物である、ということを悟るわけです。
ですから、この部分も、私は軽く微笑みを浮かべながら舞台から立ち去るような演じ方を好んでしています。
 なるほど、、。
 繰り返しになりますが、表面に見えることだけが全てではないんですね。
大切なのは、水面下にあることの方です。
 そうすると、偉大なヴォータンうたい、ハンス・ホッターに教えを受けたことになりますね。
 そうです。とても幸運でした。特にあの時期に彼と触れあえたということは。
 それをまた次代のヴォータンに引き継いでいかなければ、とお考えになりますか?
 ええ、そう思っています。これまでも、ヴォイス・レッスンなどをして欲しい、
歌のアドバイスをしてほしい、というリクエストを受けることはしょっちゅうだったんですが、
誰かのキャリアをめちゃめちゃにしてしまうのは嫌なので(笑)、
歌そのものを教えることはお断りしてきたのですが、
ヴォータン役の私の解釈、これを次世代に受け継がせていくこと、それは喜んでしたいと思っています。
 ハンス・ホッターだって、”君のキャリアをめちゃくちゃにしてはいけないから、、”とは
言わなかったですからね(笑)
 ご自身で、自分のこの役の遺産、といいますか、
特にあなたならではの解釈というものがある、と感じますか?またそれはどういう点でしょう?
色々な人が色んな理由で賛辞を送るでしょうが、
あなた自身が、”ここを遺産として引き継いでもらいたい”と感じる点はどこでしょう?
 人間らしさ。人間らしいヴォータン、ということでしょうね。
一面的な役作りではなく、いろいろな側面をもった人物としてのヴォータン、ということでしょうか。
 ジル・グローヴ(注:先の公演でエールダ役を歌った)が言った
”セクシーなヴォータン”という形容に賛成するのも私一人ではないと思いますが、、。
 ヴォータンをそういう風に思って見た事はないですが(笑)、
それは嬉しい褒め言葉ですね。
 この番組の放送中に彼女が語った言葉ですからね。秘密でも何でもないんですよ。
 まあ、ヴォータンはいろんな意味で非凡なキャラクターといえるんでしょうね。
ところで、まだ時間が少しある間に、リング以外の役についても少し話していただけますか?
 もちろん!特にメトの来シーズンは、いろんな役を演じられますね。
 そうなんですよ!
 本当に素晴らしい役がたくさん、、まず、『シモン・ボッカネグラ』のフィエスコ役、、
 そう、その役を演じるのは30年ぶりですよ。なので楽しみですね。
実は今年、ジミー(・レヴァイン)とボストン響との共演で、演奏会形式でこの役を歌いました。
まるで故郷に帰ってきたような感覚でしたね。
というのも、この役は、私がキャリアのごく初期に手がけた役でしたので。
なので、それをもう一度歌うというのはすごく楽しかったです。メトで歌うのを心待ちにしています。
 ということは、あの”バス王国の国歌”を歌うわけですね。
 その通りです。
ジェローム・ハインズ(注:メトを中心に、50年代から60年代に活躍したバス)がいつも
”バス王国の国歌”と呼んでいたあのアリア(注:”哀れなる父の胸は Il lacerato spirito"のこと。)です(笑)。
あのアリアは実は私がメトに採用されるきっかけとなったオーディションで歌ったアリアなんですよ。
 えっ、本当に?
 はい。
 じゃ、ちゃんと曲はご存知なんですね!(笑)
 はい(笑)
 今、30年ぶりに同じ役を歌うと故郷に戻ってきたような感じがする、というお話がありましたが、
全幕通しで歌い終わって、昔と比べて、”うわ!すごく上手く歌えるようになってるぞ!”と思ったりしますか?
 うーん、ある個所は昔より易しく感じますが、
以前より難しく感じるようになった個所もありますね。
ま、間違いなく、歳による影響はありますよ。
良くなった部分、ああ、20年前に戻りたい、と思う部分、両方です。
 それから『ハムレット』にも登場されますね。
 はい、そうです。
こちら(注:デンマーク王クローディアス役)は、今まで一度も舞台では歌ったことがない役です。
9年前(注:モリスの言葉のまま。ただし、これはデッカ盤のことを指していると思われ、
そうすると、リリースされた年度からして、最低でも16年前の録音になるはずなので、
年数については本人の勘違いだと思います。)にレコードの録音はありますが。
ジョーン・サザーランドとシェリル・ミルンズとの共演でした。
 あの役は、クロディユースですか?クロディユー(注:フランス語読み)ですか?
どのように発音されますか?どう発音していいかわかりません。
 クローディアス(注:英語読み)で私は通してしまってます(笑)
 じゃ、私もそうします(笑)
 ジェームズ・モリスがそう言ってるんだから、ってね(笑)
 フランス語読みではどうなるんでしょうね?よくわかりません。
とにかく、面白くなりそうです。
残念なことには、この演目二つとも、私にとっては最大のチャレンジとなる『ルル』の直前にあたります。
『ルル』、これは大変なチャレンジで、ずっと気になっている演目です。
というのも、ドイツ語による無調性音楽ということで、
私が以前に経験したどの役とも違うタイプの役です。
ということで、『ルル』の前に二つの役を歌うよりは、
一年ゆっくり休みでもとって、じっくり役を勉強したい気分なんですが(笑)。
 来年は歌手の皆さんにとってもそうですが、
観客にとってもドラマを体感すると疲れて大変なシーズンになりそうですね。
『ハムレット』に『ルル』、、
 来シーズンは面白い年になりますね。
今後、シリウスで聴けるジェームズ・モリスが出演する公演は、
5/4の『ラインの黄金』、5/5の『ワルキューレ』、、、
うーんと、『ジークフリート』はないのかしら?木曜日よね?
(ウィリアムに向かって)5/7の『ジークフリート』は放送なし?!
まあ、それは残念だわ!!
 私の最後のパフォーマンスなのに!!(笑)
(追記:この発言のおかげでしょうか?その後、シリウスの放送予定が変更になり、
5/7のモリス最後の登場作品『ジークフリート』がオン・エアされることになりました。
代わりに当初放送が予定されていた5/8の『トロヴァトーレ』は中止です。
『トロヴァトーレ』のBキャストは相変わらず冷たくあしらわれてますね、、。
『ジークフリート』の放送はNY時間で午後6時からとなります。)
 あと一つだけ質問させてください。リスナーの方からの質問が入ってきましたので。
舞台であがることはありますか?という質問ですね。
リングに関してはもう何度も演じられていますが、それでも舞台裏で緊張してあがったりしますか?
 もちろん、あがることはありますよ。状況によりますね。
初めて歌う役だったりすると、あがります。
例えば『マイスタージンガー』でザックスを初めて歌ったときはそうでしたね。
それから、健康状態がすぐれないとき。
そういったいろんなことが、あがる原因となります。
でも、一般的には、私の場合、あがる、というよりは、
競馬でスタート地点にならんだ馬の騎手のような気分ですね。
良く知っている役で何度も歌ったことがあれば、ただ舞台に出て行けばよくて、
それは、感動的でエキサイティングな経験になります。
でも、また多くの場合、舞台袖で自分のスタミナを図りながらペース調整していることも多いですね。
”なんでこんな職業を選んでしまったんだろう、、?”と考えたりしながらね(一同笑)。
 今日はいらっしゃってくださって本当にありがとうございました。
これからの公演、大いに楽しみにしています。

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12 コメント

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お疲れ様でした。 (Boni)
2009-05-04 17:11:26
今回も大変興味深い記事を読ませていただきました。
単純にインタビューを書き起こすことだけでも一仕事と言うのに、それを翻訳するとなると、余程の情熱がなければ出来ることではありません。

モリスが出演したリングの映像が収録されてから、もう20年程になるのですね。普通だったらそろそろ演出を変えてもいい時期なのかもしれませんが、しかしモリスでなくとも、あの美しい演出が無くなってしまうのは惜しいことです。今の技術でもう1回映像化してほしいものです。

>箱でできたヴァルハラ城なんていう困ったプロダクション

彼自身も言っているように、ヴァーグナーの作品ほど、野心的な演出家のおもちゃにされたオペラもないでしょうね。本来ヴァーグナー愛好家(崇拝者?)の祭典であるべきバイロイトに於いてすら、作品に対する敬意があるのか疑わしいような演出が、しかも時には作曲者の子孫によって行われているのですから。

ネストロイとビンダーによって、ほぼ同時代に作られたオペラ・パロディーで「80分のタンホイザー」という、ちょっと楽しい作品があるのですが(なんとDVDも出ています)、こちらの方が余程、作品に対する敬意と愛情が感じられる位です。

それにしても、モリスは老いてなお盛んといったところですね。キャリアも終盤に近づいた今になって、新しい役柄、しかも「ルル」に挑戦するとは。
返信する
ありがとうございました! (シャンティ)
2009-05-05 09:40:54
インタビュー全文翻訳、ありがとうございました。マペットのうさちゃん、わんちゃんがモリスにマイクを向けているイメージが浮かんだりしてまうくらい、楽しい会話の訳文に引き込まれました。
他のブログではインタビューの一部を訳して載せている人もいて、訳している人の勝手な主観が入って、インタビューの流れがなくなり、趣旨が失われてしまうので、不満に思っていたので、madokakipさんの今回の訳文には感謝しています。
小道具に関する軽い話から、ヴォータンの役作りまで、長年演じてきたモリスならではの話が楽しめました。
返信する
お疲れ様です! (brunnhilde)
2009-05-05 14:52:30
Madokakipさま、
有難うございます!この前の「ワルキューレ」に感動しまくった私としては、モリスのこのプロダクションにかける思いが伝わってきて、本当に感慨深く読ませてもらいました。私も、ラジオをチェックしなきゃなんないですね。
ちなみに、やっぱりもう一度モリスの「ワルキューレ」がどうしても観たくて、明日火曜日、よほどの緊急事態が仕事に発生しない限り、観に行く予定にしています。最悪、第2幕からでも。でも、ドミンゴのジークモンドも捨てがたいですよね。。ご報告しますね。
返信する
『ワルキューレ』のせい (Madokakip)
2009-05-06 12:31:42
brunnhildeさんと同じく、第1サイクルの『ワルキューレ』の
モリスの歌唱に大感激したため、
このインタビューもラジオで聴くだけではあきたらず、
自分が活字で読みたいのと、また一人でも多くの方にこの内容を聞いていただきたい!という、
まるで新聞の押し売り勧誘のような強引なのりで記事にしてしまいましたが、
皆様の温かいお言葉に、押し売りしてよかったー!という気持ちで一杯です。
では頂いた順に!

 Boniさん、

>余程の情熱
もしくは、狂気の沙汰ともいえますね(笑)。
モリスはユーモアがあって、すごくインタビューされ上手なのもありますが、
このインタビューは、聞く側もいい質問をしてくれていますよね。
また3人のコンビネーションが良く、
書き起こしながら、笑ってしまう個所がそこここにありました。

>今の技術でもう1回映像化してほしいものです

本当に!!あの20年前の映像は、画像が粗いですよね。
しかも、今のモリスは声には全盛期の勢いはさすがにないので、
ラジオで音だけ聴いている人なんかは、”??”って感じでしょうが、
ビジュアル込みで観ると、本当に圧倒されます。
本当に、これをどうして映像に残してくれなかったか!!と、
怒りに近いものを感じますね。

このプロダクションはセットが優れているのももちろんなんですが、
ライティング、これがものすごく決め手になっているように思うんですね。
客席に座っていると、光の量で森とか山、そして地底といった、場面の空気の違いを感じさせられます。
本当にこれがもう観れなくなってしまうなんて、惜しいことです。

>「80分のタンホイザー」
へー、面白そうですね。知りませんでした。
これは夏の家で聴くオペラの対象DVDにしたいと思います!

一方、それで思い出したのですが、新国立劇場はちびっこ向けに、
リングを短縮した”ジークフリートの冒険~指環をとりもどせ!”という作品を上演するようですね。

http://www.atre.jp/kids/

ただ、こちらは、関与している方の熱い思いや子供にもオペラを!という志は素晴らしいと思うのですが、
一方で、あらすじがかなり変わっていたりして、
本来の指環の肝心なコアの部分が残ってなさそうなのが気になりました。
子供向けにはこうしてアドベンチャーとして見せるしかないのかもしれませんが、
作品のコアの部分を削ってまで子供に見せなきゃいけない意味ってあるのかな?と思います。
素敵な体験は作品の意味がわかる年齢までとっておいてもいいですよね。

 シャンティさん、

ありがとうございます。
楽しんでいただけたとのこと、私も最高に嬉しいです!
そうですね。翻訳にはいつも、訳する人のフィルターが入ってしまうので、それだけでも十分危険ですが、
一部を取り出すとなると、さらに意味が、
歪曲されてしまう可能性がありますよね。
今回のインタビューは最初から最後まですごく面白くて、
訳している私自身がすごく楽しませていただきました。
また、来シーズンも面白いインタビューがあれば、
機会を見つけてこちらで紹介できればいいな、と思います。

 brunnhildeさん、

>この前の「ワルキューレ」に感動しまくった私

もう、それは、私ですよ、私!!!
このインタビューをこちらで紹介したのも、あの『ワルキューレ』があったからこそです。
本文中に追記しましたが、昨日(『ラインの黄金』)の放送中に、
予定されていなかった『ジークフリート』もシリウスで放送される旨の発表がありました!

今日(『ワルキューレ』)はメトでご覧になっているとのこと、
今、私もシリウスで聴いていまして、
ちょうど、ヴォータンの告別のシーンです。
でも、やっぱり生には叶いませんね。
メトにいらっしゃるbrunnhildeさんが猛烈に羨ましいです!!
ご報告、お待ちしておりますね!!!!
返信する
素敵なインタビューありがとうございました (みやび)
2009-05-07 20:18:37
「新聞の押し売り勧誘」だなんて、こんな押し売りなら大歓迎です!

シェンク演出の「ワルキューレ」は2回日本に来ているそうですから、日本のオペラファンにとっても思い出深い演出ですね。私は前回のMET来日公演の東京公演3回に皆勤しました(苦笑)
ドミンゴが日本でオペラの全幕公演に出るのは最後になるのでは…ということに気持ちが向いていましたが、モリスが日本までヴォータンを歌いに来るのもあれが最後になりそうですね。

インタビューを拝読しながら、来日公演のことを色々と思いだしました。

「この演出では紗幕が使われている部分が多いので」⇒紗幕はNHKホールのものを使ったのだと思うのですが、あるいは微妙な照明のためにわざわざ持ってきたのでしょうか?とにかく、使われていた紗幕にはかぎ裂きを繕った痕がありました!

「その紗幕とこのアイ・パッチのせいで、
ほとんどプロンプターは見えないんです(笑)」⇒東京公演の1日目には、めったやたらとスモークが焚かれてしまい、舞台一面煙だらけでモリスの姿が見えなくなってしまいました…。

「ま、間違いなく、歳による影響はありますよ。良くなった部分、ああ、20年前に戻りたい、と思う部分、両方です。」⇒東京初日は、愛知からの移動に加えて、到着後はレセプションがあったりしてスケジュールがきつかったのでしょう。モリス、ドミンゴはやや疲れ気味で、歌唱も抑え気味な感じがしました。2人とも2回目には回復したのかかなり好調で、最終日は最初からとばしている感じでした。一方、フンディングを歌ったパペ(何と贅沢な)は毎回変わらず絶好調でNHKホールの悲惨な音響をものともせずに歌っていました。

ところで、ドミンゴは最後の「ワルキューレ」の1幕途中で降りてしまったそうですね?今シーズンはわりと順調に来ていたように思っていましたが…。次の仕事先であるパリへ向かったという話なので、大したことがなければ良いのですが。
返信する
皆勤賞はファンの鑑 (Madokakip)
2009-05-08 10:45:06
 みやびさん、

>こんな押し売りなら大歓迎です

ありがとうございます
訳して楽しかったのみならず、こんな風に言っていただいて、
記事にして本当によかったです。

>「ワルキューレ」は2回日本に来ているそうですから

そうでしたか、一回だけかと思っていました。
でも何せ歴史の長いプロダクションですから、二回でもおかしくはないですね。

>前回のMET来日公演の東京公演3回に皆勤

すごい!
しかも、『愛の妙薬』みたいな演目を3回ではなく、
『ワルキューレ』3回ですもの!

>紗幕にはかぎ裂きを繕った痕

それはメトが持っていったのかもしれないですね。
というのも、現在の緞帳にも繕い痕があるんですよ。
壊れたら直して使う、というそのスピリットにはメト臭を感じます(笑)

>モリスが日本までヴォータンを歌いに来るのもあれが最後

だと思いますね。

>フンディングを歌ったパペ

今回のメト・リングでも、第二サイクルと第三サイクルのフンディングとファーゾルトにパペが登場しています。
すると、モリス、ドミンゴ、パペは日本公演と同じコンビのキャスティングなんですね。

>ドミンゴは最後の「ワルキューレ」の1幕途中で降りてしまったそうですね

ヘッズ間の噂では、高血圧が原因と言われています。
幕の途中だったので、もちろんアナウンスをする暇もなく、
カバーのギャリー・レーマンが舞台に立ったようです。
舞台を見ていた人もシリウスを聴いていた人も、
突然姿と声が変わったので、”なんじゃこりゃ??”状態だったようです。
ドミンゴ、大事でないといいですね。
この役は年齢に関わらず歌うのが大変な役ですし、
もう今後歌うことは段々なくなっていくかも知れないですね。
返信する
観てきましたよ。 (brunnhilde)
2009-05-08 16:55:18
モリス、やっぱり良かったですよー。
2幕目のブリュンヒルデの語りかけるところから、すでに神の苦悩が全開で・・。madokakipさんもラジオ聞かれてたんですよね。この前よりも、より声を絞って歌う箇所が増えてたような感じがしませんでした?もちろん3幕目のブリュンヒルデとの別れのシーンは、このプロダクションでモリスのヴォータンを聞くのが最後かと思うと、本当に泣けてきました、やはり。
私はそういう思いが結構強かったのですが、周りの様子を見てると、この前madokakipさんも見られたサイクル1のワルキューレの時の方が、泣いている人は多かったみたいです。舞台での微妙な立ち振る舞いも関係してくると思うのですが、あの最後の別れのシーンはモリスとテオリンの方が、しんみりと二人の惜別の思いが表れていたかもしれません。
でも、実は一番、私がウッ~と来てしまったのは、最後のカーテンコールの時でした。ひとしきり皆が拍手を受けた後、ラヴァインとモリスが抱き合ったんです。モリスの労をねぎらうかのように。もう客席からは拍手喝采でした。これはmadokakipさんもあの場に居たら、きっと号泣してますよ。
ドミンゴは残念でしたね。本当に。確かに辛そうな感じでした。ちょうど第1幕第3場最初の独唱を歌った後で、す~っと下手にはけて行ったので、???と思っていたら、突然、別人が登場で、歌い出してすぐにギャリーだと分かりました。この前も入れて、なぜか過去に彼を3回も聴いているので。ドミンゴのジークムンドは、ジークリンデを人目見た瞬間から、猛烈な恋に落ちる感じが本当によく表現されてて、最後まで観たかったです・・。まぁ身体が第一ですからしょうがないですね。
で、どうしてもこのシェンクのプロダクションの最後が観たくて、「黄昏」もまた観に行く事にしてます。もう土曜日は、ワルハラとともに燃え尽きます!
返信する
メト、大炎上 (Madokakip)
2009-05-10 00:08:14
 brunnhildeさん、

第一幕の交代の件を書いていらっしゃるので、
開演に間に合われたのですね!よかったです。

はい、私も途中からですがラジオで聴いてました!
ただ、当たり前のことですが、
一旦マイクにのってしまうと、音が音の大きさをあらわす信号のようなものになってしまって、
あの劇場で感じる空気の振動のようなものが感じられないんですよね。
だから加齢があっても、その点が最も衰えが少なく、
また声を絞って微妙に空気を使いながら歌うことが非常に上手いモリスのような歌手はちょっと不利な感じがします。
今のモリスはラジオだと、劇場で感じる良さの
70%くらいしか反映されていないですね。残念です。
なのて、きっと今は劇場では、こんな感じで鳴り響いているんだろうなあ、と思いながら聴いていました。

あのサイクル1は、公演内容だけで言うと、本当に特別な公演だったですね。
おっしゃるとおり、テオリンとのケミストリーもあったのですが、
もう私はあれを観たときに、これ以上何も要らない!と思ったくらいです。

しかし、

>ラヴァインとモリスが抱き合ったんです。モリスの労をねぎらうかのように。

はい、私も劇場にいたら、もう絶対もらい泣きしてると思います(笑)。

レーマンは本当、いつも大変ですね。
ほとんど実際には出番がないカバーと違って、
いつもどれかの日には舞台に立っている感じがしますものね。
ドミンゴはこれが最後の『ワルキューレ』になる可能性が高いように思うのですが、どうでしょうか?

>どうしてもこのシェンクのプロダクションの最後が観たくて、「黄昏」もまた観に行く事にしてます


(笑)実は私も第3サイクルはさすがに仕事の関係もあるし(平日はこのワルキューレを含め、6時開演が二回ありますものね。)もう無理だ、と思っていたのですが、
ラストの『黄昏』のチケットがシングルで手に入ったので、
私もbrunnhildeさんと同じく、今日(土曜)はワルハラと燃え尽き組です。
しかも、マチネの『チェネレントラ』とダブルで、、。
今日はメトの楽日ですもの、もう、思いっきり満喫します。
夜はご一緒にメトを大炎上させましょう!!!!
返信する
壊れたら直して使う (みやび)
2009-05-18 01:01:13
好きです、そのスピリット(笑)

METの「ワルキューレ」は1993年(?)の来日公演で来ていたそうです。キャストはギネス・ジョーンズとジェームズ・モリス…これはブリュンヒルデとヴォータンですよね?本当に、遠征先でも、METのヴォータン=モリスだったのですね。ちなみに、他の2つはパヴァロッティ&バトルの「愛の妙薬」とドミンゴ&ミッロの「仮面舞踏会」でした。今となっては残念なことに、私がオペラへ行くようになるのはもう少し後のことでした。

brunnhildeさんはジークムント入れ替わりの現場をご覧になったのですね!最近、前後3分程度の音声をネット上で見つけたのですが、お客様はさぞ驚かれたでしょう。

そういえば、"(前略)Mr. Domingo advised the staff before the performance that he was not feeling well, (後略)"となっていて、英語力のない私は「advised」ってこういう使い方をするのね、なんて変なところで感心してしました。

ドミンゴは今期はLAの「ワルキューレ」プレミエがあったので、4/4~5/5で計7回「ワルキューレ」を歌っていて、ちょっと多かったのでは…と思います。LAでは来年5~6月に西海岸初(?)のサイクル上演がある予定で、今のところはここで歌うつもりのようです。今回の「ワルキューレ」では最後の2回はChristopher Ventrisが歌っているので、ドミンゴが出られなくなった場合の保険か?と思わなくもないです。いずれにせよ、無事歌えればこのあたりが歌いおさめかな…と思います。

返信する
そう言われてみれば、、 (Madokakip)
2009-05-18 13:35:14
 みやびさん、

>遠征先でも、METのヴォータン=モリス

パヴァロッティとバトルの『妙薬』も、ドミンゴとミッロの『仮面』も、
実際にメトで歌っていたコンビと記憶しています。
で、よく考えてみますと、その93年に限らず、
どの公演年でも、メトは、実際にその演目でNYに登場したキャストを連れて行っていることが多いように思います。

ドミンゴに関してはやはりLAの方は自分がジェネラル・ディレクターとして関わっているオペラハウスということで、
手を抜けないんでしょうね。
でも確かに7回は多いです。

LAは来年リング・サイクルですか、、。
そうですね、それが実現したら、おそらく、歌い納めになるでしょうね。

ところで、ここでこんなことを書くのもなんですが、
あの125周年記念ガラの映像がYou Tubeにあがっています。
メトがクレームをつけたり、でいたちごっこのように、
消えてはあがり、消えてはあがり、しているので、
ここでリンクは張りませんが、125 Gala MET などで検索すると出てくると思います。
ドミンゴとハンプソンのパルシファル、涙ものです。
ぜひ機会があれば、ご一聴を!
(あと、ドミンゴでは、『西部の娘』のアリアもあがっていました。)
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