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音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

メト新旧DVDリリース ~ルチア、カヴ・パグ、オテロ~

2009-10-01 | お知らせ・その他
2007-8年シーズンのHDはEMIのタイ・アップで6本もの作品がDVD化されましたが、
2008-9年シーズンの作品は、とんとDVD化の話がないので、あの6本が売れなかったせいね、
と思っていました。

幾分かはMet Playerと利益がバッティングしてしまうDVD商品化というコンセプト自体、
避けたいという意向がメト側にあるのかもしれませんが、
テレビでの放映があって、それが家庭で簡単に録画できる時代ですから、
やはり、採算が合わないために複数の演目のDVD化にはどこのレコード会社もタイアップしてくれない、
というのが実際的な理由でしょう。
『魔笛』のアブリッジ版もメトの自家リリースでしたね、そういえば。

しかし。
そんな中で、たった一人だけ、どうやら採算が合ってしまう歌手がいるようです。
こちらの記事のコメント欄で頂いた情報によりますと(junさん、ありがとうございます)、
なんと、あろうことか、あの、ネトレプコの『ランメルモールのルチア』(2009年2月7日公演)
DVD化されてしまうそうです!!
あれほどまでにMadokakipをひやひやさせたあの公演がです!!!

主演した歌手が大手のレコード会社に在籍していると、DVD化率は多少あがるかも。
となると、あと、期待できそうなのはガランチャが登場した『チェネレントラ』でしょうか?
ただ、ビジュアル的に、ブラウンリーが足を引っ張っている点が
レコード会社の重役たちの間で問題になってしまうかもしれません。
フレミングの人気も根強いですから、『タイス』も可能性はゼロではないかもしれないです。

『ファウストの劫罰』をぜひDVD化してほしかったのですが、
ジョルダーニの歌唱の出来が厳しい。
でも、ネトレプコのルチアがOKなら、これしき!

『蝶々夫人』は、ラセットを好きな私が言うのも何ですが、DVD化の必要なし。
せっかくのラセットの歌唱と演技がミンゲラの演出に殺されてますから。

それにしても、実に不思議なのは、2006-7年のHD演目であった『三部作』
DVD化の話もなければ(世界の八つ目の不思議!)、Met Playerにも作品がアップされていない、というわけで、
カルト映像化しつつあります。
私もテレビから録画した、音も絵もとても最高とは呼び難い自家製ディスクを何度も見ていますが、
HD再上映で観たときには、画像と音の良さに感激しましたので、本当はこういう公演こそDVD化してほしいのですが。

ところで、ラセットと『三部作』つながりで、ついでにふれておくと、
今シーズン、サンフランシスコ・オペラの『三部作』に三役通しで出演中のラセットの歌唱が
素晴らしいと話題になっています。
特に、『修道女アンジェリカ』でのエワ・ポドレスとの一騎打ちと、それに続くシーンは圧巻だそうです。
フリットリのアンジェリカに続けて、また、今年、メトで優れた『三部作』の公演を鑑賞できる予感
(11月からの公演にラセットが三役通しで登場します。)
こちらの『三部作』は『蝶々夫人』と違って演出も素晴らしいので、期待が高まります。

さて、というわけで、現代は、DVDを作るにあたってすら、
公演の内容なんかより、歌手のルックスの方が重視されてしまう時代ですが、
それを埋め合わせるかのように、メトがこっそりとこんなものを夏休みの間に発売しています。

いずれも、レヴァインが選ぶベスト30にも入っていた映像です。

① ドミンゴがダブル主役を演じる『カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師』。



1978年4月5日の公演で、指揮台に立ったレヴァインの若さにびっくり仰天です。
『カヴ』は実はオケの演奏が非常に難しい作品と言われていて、
それを裏付けるかのような演奏個所もありますが、気にしない、気にしない。
ドミンゴがひとたび歌い出すと、現在、我々が『カヴ・パグ』のダブル主役としてアラーニャの歌につき合わされたりしている
のが冗談のように思えてきます。
サントゥッツァはタティアナ・トロヤノス。
『パグ』の方では”歌う女優”テレサ・ストラータスがネッダ役で、
またシェリル・ミルンズがトニオ役で出演しています。
ジャケット写真がモノクロですが、実際の映像はカラーです。
元々はテレビでの中継放送のために作られた映像なので、カーテン・コールなどでは、
ナレーターの声が入ったりして、まるでスポーツ観戦をするような気分も味わえます。

② ジョン・ヴィッカーズとレナータ・スコットの『オテロ』。1978年9月25日の公演より。
イヤーゴ役はコーネル・マクニールで、
ロドヴィーコ役で当時31歳だったはずのジェームズ・モリスが登場しているのが感慨深いです。
こちらも指揮はレヴァインです。



プロダクションはいずれもフランコ・ゼフィレッリ。
あまりに何もかもが自然で、セットや演技が気にかかるということがなく、
観終わった後に、ふと、ああ、歌に集中して鑑賞できたな、と思わされ、
古き良き時代のメトを懐かしむのに最良のアイテムです。
もしかして、これってゲルブ氏からの、長年のオペラ・ファンへの冥途の土産??!!
さあ、これでも持って、とっととボンディの演出でも受け入れられる新しい世代のファンに場所を譲りな!と、、
ふんっ!そうは行かないわよ!

この二つの冥途の土産系DVDは、メトのサイト内にあるオンラインショップでも購入可能です。
アマゾンでも取り扱いがあるようで、なぜだか、一部のサイトでは、
リージョン1という表記になっていますが、
これは間違いで、オール・リージョンのNTSCとパッケージに記載されています。
また、私自身、日本向けのプレイヤーでもきちんと再生できることを確認しました。
字幕はオプショナルで英語のみ。