Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

SFO との書簡交換

2008-04-30 | お知らせ・その他
メトのライブ・イン・HD(ライブ・ビューイング)に続け、と企画された
SFO(サン・フランシスコ・オペラ)のシネマキャストで上映された
『蝶々夫人』がいかに素晴らしい公演であったかということは、
先日、当ブログにも書いたばかりですが(予告編序編本前編本後編)、
ブログに書くだけでは飽き足らず、SFOにまでメールを送りつけてしまいました。


”Madokakip(もちろん本文ではここは本名ですが)というオペラ・ヘッドです。
NYに住んでいるため、メトに身も心も捧げまくっており、いつもなら、
メト以外の他のオペラハウスが、超ド級の素晴らしい公演を行っているなどとは、
認めたくもない!という類の人間ですが、今日はどうしてもメールを差し上げねばならないと思いました。
というのは、日曜に観に行ったシネマキャストの『蝶々夫人』にどうしようもなく心を打たれ、
これはぜひともDVD化することを検討していただきたいと思ったからです。

おそらくは、まだあまり多くの人がSFOのシネマキャストのことを知らないということ、また、
NYはメトの存在のせいで、常に他のオペラハウスにとって入り込みにくい土地であるという現実のために、
映画館にはあまり多くのお客さんが入っていませんでした。
これは、大変残念なことで、来シーズン以降はぜひマンハッタンで上映して頂きたい、と思います。

しかし、お知らせしておきたいのは、その場にいた全員がとにかく公演に魅了され、
私も含め、涙すら浮かべていたことでした。上映終了時には、客席から拍手と喝采が起こりました。

メトのライブ・イン・HDは、私の出身国である日本でも上映されており、
私は友人、家族、親戚と思いつく限りの方に、観に行くようにすすめています。
同じことを、この『蝶々夫人』についても出来れば、と思うのですが、
残念ながら、シネマキャストには日本での上映がなかったと理解しています。

もしこの公演をDVD化して頂ければ、日本の人たちにもこの優れた公演を見てもらうことができます。
私だけでも間違いなく数本購入することでしょう。
パトリシア・ラセットは私が唯一現役のソプラノの中で溺愛している歌手であり、
彼女は同役をNYでも歌って、それはそれは素晴らしい歌唱を披露してくれたので、
このシネマキャストも素晴らしいものになると想像はしていましたが、
彼女の歌唱の中でもこれほどまでに最高の出来のものを、このように映像に残せるというのは、
そうそうあることではなく、それこそがDVD化していただきたい最大の理由です。
リリースされた暁には、私たちオペラヘッドにとって、宝物のような映像になるでしょう。

ただ一つ、私が映像編集について好ましく思えなかったのは、
最後の幕(三人がピンカートンの到着を待つ部分)で、猛烈な数のフラッシュバックが
挿入されていた点です。
私の意見では、ただ3人が灯篭の横で立っている姿を見せた方が良かったのでは?と思います。
なぜなら、その方が、彼らがいかに長い間、焦がれる思いでピンカートンの姿を待ち望んでいたか、
ということが伝わってくるからです。

しかし、とにかく、この素晴らしいSFOの公演を私たちとシェアしてくださったことに感謝したいと思います。
来シーズン以降も、成功をお祈りしております。”

勢いで書いて送りつけ、それだけですっかり満足していたところ、
一昨日、きちんとSFOの方からお返事を頂いたのでここにご紹介したいと思います。

”Madokakip様(ここももちろん本名で)、

マーケティング・ディレクターのマルシア・レイザーに代わり、
ビガー・ピクチャー提供のSFOシネマキャストに関するお手紙にお礼を申し上げます。
オペラハウス内の実際の公演のみならず、スクリーン上でも我々が想像した以上に素晴らしいものとなり、
私たちも大変誇らしい思いです。
わざわざお時間を使って感想をお伝えいただき、ありがとうございます。

SFOにこうして関心を持っていただくことは喜ばしく、また、
シネマキャストの『蝶々夫人』を大いに楽しまれたとのこと、嬉しい限りです。
おっしゃるとおり、あの公演は素晴らしいDVDになると私たちも思うゆえ、
この先、ぜひDVDで発売できたら、と考えています。
発売が可能となれば、必ずお知らせいたします。

このシネマキャストのプロジェクト、今シーズンが初めての試みであったために、
できるだけ何もかもがスムーズにすすんでほしい、と思う一方で、
いくつかの、不手際も予測しておりました。
これから先の上映分については、ビガー・ピクチャーのパートナーたちと、
特にパブリシティおよび広告の面で、改善策を打っていきたいと思います。

頂いたメールは、ビガー・ピクチャー側のスタッフにも転送させていただき、
シネマキャストを見、心待ちにしている方々がいるということをしっかりと伝えていくつもりです。
引き続き、SFOのプロダクションおよびイベントを楽しまれますように。

また、近いうちに、SFOのオペラハウスの方にもお越しください。”


と、このような大変丁寧な内容のメールを、しかも、何日もたたないうちに頂き、
そして、何よりも嬉しいのは、DVDについて、”それは無理ですね”という
完全ネガティブ・モードではない点。

”ある晴れた日に”の蝶々さんと同様、私も一縷の望みを信じて、
DVDのリリースを待ち続けたいと思います。