移住者優遇、地域ぐるみ 人口減の自治体
山口、就農なら420万円 京都、漁村に住み込み 2015/5/28 15:30 日経夕刊
人口減に頭を悩ます地方自治体が都市部から人材を誘致する制度を創設している。次世代の1次産業の担い手を呼び込むための給付制度や起業家向けの低利融資を整備した。政府は地方創生を掲げ、都市部から地方への人材の分散を進めている。各自治体とも地域を選んでもらうために知恵を絞っており、地域間の人材争奪戦が激しさを増しそうだ。
山口県は農林水産業の新規就業者が定着するための独自の給付金制度を設けた。農業法人に就職する場合、研修費として5年で420万円を給付する。国の制度は給付期間が2年だが、これを延長し、総額を上乗せした。漁業や林業でも新規就業を支援する給付金を新設した。漁業では住宅を確保するための空き家改修費も助成する。
都市生活者へアピールするために「農林水産業の担い手支援日本一」を掲げ、各地から優秀な人材を集める考え。2013年度の1次産業の新規就業者数は169人だったが、17年度は4割増の235人を目指す。京都府は過疎化が進む宮津市に研修機関「海の民学舎」を新設した。41歳以下の10人が入り漁村に住み込むなどして2年間で専門的な技術を学ぶ。年150万円を支給して研修期間中の収入を確保する。
地元では高単価な「丹後とり貝」などの養殖技術が高い。京都の食材への関心も高く、研修機関に入った人の半数は首都圏など府外からだった。府内の伊根町も新規に町内で漁業就労を希望する人に年150万円を支給する制度を新設。地域ぐるみで若者の移住促進につなげたい考えだ。
雇用の確保につながる起業を増やそうと創業者の誘致にも注力する。秋田県は4月から同県に移住して創業する人が年1.65%の低利で融資を受けられる制度を始めた。県産業政策課は「創業は初期投資を抑えることが重要」としており、秋田への移住者の増加を目指している。山口県も同様に、移住して創業すると年1~1.1%で融資を受けられる制度を新設した。
総務省がまとめた14年10月1日時点の人口推計によると、出生児より死亡者が多い「自然減」が過去最大となった。ただ、過疎地でも移住者が増え、転出者を上回る「社会増」の地域もある。島根県は就業体験(インターンシップ)ができる企業を紹介する事業を始めるなど、人材の呼び込みに力を入れる。