The collection of MARIBAR 

マリバール 文集・ギャラリー

12月13日 映画『硫黄島からの手紙』

2007-01-05 06:40:32 | 抱茎亭日乗メモ
 硫黄島の戦いを日本側から見た『硫黄島からの手紙』。
映画館の椅子に身体をぐーっと押し付けられているかのように、しばらく立ち上がることが出来ない程、重い映画だった。

『父親たちの星条旗』については物足りなさを感じていたのだが、『硫黄島からの手紙』を見ると、対を成すものとして欠かせないし、異なる表現、共通するメッセージに、それぞれ深い意味があるのが判った。
なので『父親たちの星条旗』の評価も上がった。
でも『硫黄島からの手紙』の方が好きだ。より辛かったし、空しさを感じたから。

「国のために死んだ者を敬え」「国のために戦う者を敬え」と言われるのは本当に嫌だ。
「国のために」と思っている人はどうぞ、でもそれを押し付けないで欲しい。

クリント・イーストウッドは「硫黄島で戦った兵士に敬意を表する」と言っているが、美化もしていないし、わかりやすい善悪も描いていない。
「国のために」殺したり殺されたり生かされたり死なせられたり(日本語正しい?)する事実と悼みを描いている。

「国のために死ぬ=尊い」「国のため=家族のため」なんて嘘、バカバカしい! と心の中で叫びながら見た。
でもそう思って死んだ人、今も死んでいく人がどのくらいの数いるのだろう。
そう思って死ぬならまだましかもしれない。
騙されている、捨てられていると気付きながら、無理矢理そう思い込むしかない人たち。
私は絶対に御免だ。巻き込まれたくない。

この映画を作った人たちが映画の題材になった人々に敬意を表するのは当然かもしれない。
私は硫黄島で何があったのか、人が何を考えたのか知りたいし、そこで亡くなった人たちを悼む気持ちはあるけれど、特別に敬意を表するべきなのかは、わからない。
私はこのような映画にして見せてくれた人たちにこそ、敬意を感じる。
コメント
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