渋谷アップリンクファクトリーにて14:30より。
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以下、映画好きで脚本家志望のオスギさんと『ポチの告白』を巡るダラダラ激論メール。
ネタばれもあるけど、あまりに長~いので読まずに見た方がいい。
「オスギ様
ながーい講評ありがとうございました。
じっくり考えて返信せねばと思っていたら随分時間が経ってしまいました。
申し訳ありません。
所々わからないところなどあるので質問しつつ、私の意見を書きます。」
> 桜井さん、まいどです。
> 『ポチの告白』、観ました。
単館上映だけど、劇場の張り出しなどを見ると
トークショーの企画がけっこう盛んで、
桜井さんが予定していた×宮崎学さんとのトークの他にも
色んな人を招いてのトークショーありで・・・・・そこのところは凄いなと。
> で・・・・講評を桜井さんに送るために、いろいろ準備していたところ、
なんだ、ボクの嫌読誌(愛読ではありません)である月刊『シナリオ誌』に
高橋玄さんのオリジナル脚本が掲載されているじゃあーりませんか。
> チラシの裏の落書き雑誌である『シナリオ誌』
「そうなんですか?業界では権威ある雑誌じゃないんですか?個人的好みで言ってる?
べつにどっちでも私はいいんですけど。」
> に玄さん直筆によるお義理?の寄稿文によると
○非常識な長尺
○菅田俊で当て書き
○音楽のセッションのような映画作法
などなど書かれていて、ボクが当たったところは、「菅田さんの当て書き」のみ。
「当たった、というのは予想が当たったという意味?玄さんの映画は当て書きが多いです。」
> 奇遇だけど「当て書き」というのは、我が師である君塚さんの映画『誰も守ってくれない』も
佐藤浩市を当て書きして書いた脚本とのこと。
> 話は逸れましたけど、まずボクが言いたいのは、完璧な映画はこの世に存在しないということ。
そもそも、ボクは完璧を映画に求めたいとも思っていません。
どうして最初にそんなことを言うかというと、真理さんがとかく「玄さん、玄さん」と言っているからです。
桜井さんがそれほど心酔している御仁に対し、いいかげんなことは申し述べることはできないからです。
(桜井さんには、それでなくてもお世話になっていますし・・・・・お酒関係でね)
「私も完璧は求めていません。『この映画は完璧か?』なんてあまり考えません。
そこまで突詰めて評価を下していないということかもしれないです。」
> またまた脱線しましたが(オスギははぐらかしの名人になんですよ)、ボクがどんな映画を絶賛し、
望んでいるかといいますと、「凄い凄い映画」、これですよ。
> 『ポチの告白』は、関西弁で言うなら「べタな映画」でした。
でもべタさを恥ずかしがったり、悩んだりする素ぷりはまるで感じなかった。
そこは凄いというか、創作者として腰の据わったところを感じた。
監督は、あまり批評とか客の入りとかを気にしない人なのかなと。(プロデューサーはそれじゃ泣く)
「スミマセン、『ベタ』の意味がわかりません。ありきたり、とか言わずもがな、ということですか?
そういう意味なら、私は全く『ベタ』だとは思いません。
批評や興行成績は最も気にするところだと思います。玄さんはプロデューサーでもありますから。」
> ボクは、この作品を観ていて、ワクワク感はあまりなかった。
つまり、観る前から結論・結末・クライマックス・オチ・落としどころ・起承転結の「結」が
なんとなく見えてしまう。
「あ、それが『ベタ』って事ですか?
私はワクワクしたし、『殺されるのか?死ぬのか?ぶちきれるのか?』ってドキドキしましたよ。」
> それは物語の構成上、仕方のないことだとは思う。
菅田さん演じる主人公の行き着く先が分かってしまう(アホな観客はともかく)ので。
何より、なぜ警察官 たちが「組織の中でそうなってまうのか」が描かれていなかったのが
ボクにとっては不満。
「そうですか?そこが非常にシツコク丁寧に描かれていたと私は思いますが。」
> 「組織の中ではそうなってしまうんだよ」という前提のもとに作ったというのは理解できますが、
「なぜそうなってしまうのか」というところを、少し端折りすぎたのではないかとな。
> ボクね・・・・・久しぶりに脂汗が浮いたシーンがあったんですよ。
最近では、大好きなケイト・ブランシェットの『エリザベス』以来。
近々公開される『』が楽しみ。閑話休題。
「『』って???」
> 『ポチの告白』でどんなシーンが脂汗浮いたかというと、検事の息子である新任の派出所勤めである警官が
高校時代イジメられていたヤツに拳銃を抜くシーン。
ここは観ている側だけじゃなくて、演じている方もテンション高かったと思う。
このシーンは『闇の子供たち』の似非人道主義シーンの数万倍良かった。
「あのシーンは、何度見てもドキドキしますね。
『闇の子供たち』の似非人道主義シーンて、どのシーンですか?
『闇の子供たち』は私の昨年ザ・ベスト邦画です。あれこそ「完璧」とは言えませんが、いい映画だと思います。
あのキャストであの問題を取り上げてヒットさせた、というのが素晴らしい。」
> こうやってとりとめもなく?『ポチの告白』を追っていくと、監督は「誠実」だなと素直に思った。
この作品には、ぬるい所はない。
何を撮りたくて撮ったのかが、おぼろげながらにも分かる。当然全部は分からないけど。
この映画で描いていることは真実なんだから、よくよく目を凝らして現実として認識しながら、ちゃんと観ろや!!
なんて強制されると観客はついて行けないけれど、そういうところはなかった。
シナリオだけ読んでいると説教臭いんだけども、映像はそうではなかった。これは演出を誉めなきゃだめだろう。
だけどだけど・・・・映画を観て、リアルに感じるというのは、実は真にリアルじゃないのかもしれないと思うんですよ。
真にリアルなモノって、もの凄くパーソナルな感情から生まれるものだと思うし、
映画を観て、さながら実体験のようにそれを思ったり感じたりするのは、果たして・・・・・・・・・・・・・
「スミマセン、わかりません。結局リアルではないってことですか?
物語を映画として成立するために必要なリアリティはあると思います。警察犯罪のエピソードは全て事実だし。」
> しかし、玄さん、3時間オーバーなんて長尺すぎませんか?
同じくらいの映画を最近けっこう観てますけど・・・・・
例えば『アラビアのロレンス/完全版』とか『実録連合赤軍/浅間山荘への道』とか・・・・・。
ボクは2時間に刈り込めると思う。ボクならやる。
「私は長いと思いませんでした。
でも海外のスタッフにも映画祭に出すのに『短くしろ!』って言われて、実際作ってみたのか忘れたけど、まあ結局玄さんの望む形で公開できて私は嬉しい。」
> でも各エピソードは生々しかったですね。
生々しい分、娯楽? エンターテイメント?としてのカタルシス、痛快さというんでしょうか、
そういうのはボクみたいなひねくれた人間はともかく、一般大衆にとってはなおさら感じないのではないか。
ボクは一般大衆のハート掴んでこその
だけど逃げますよ、一般大衆は。
> 同じ警察組織の内幕を描くのなら、君塚さんのような『踊る大捜査線』のような描き方が一般大衆には心地よく入っていくんでしょう。
「一般大衆は感じないかもしれないですねえ。
映画祭でも『実際の警察はここまで酷くないのでは』みたいな事を質問する人がいました。
皆さん子供の頃から石原軍団ドラマや『踊る大捜査線』など頑張る警察物語で飼い慣らされていますからねえ。」
> ボクは君塚さんの弟子ながら、玄さんの作品の方が好きですけどね。
つまり、社会的弱者から喝采を浴びるようなテーマなのにもかかわらず、観ている側(映画はいつの時代も社会的弱者のものだから)
にカタルシスを産ませるようなオチになってないということ。
フランクに言いますが、ラストの菅田さんの独白には感情移入できなかった。
ボクにとっては以外すぎるラスト。なくていい。
「いや、私はアレがキモだと思います。あの『ポチの告白』がなくちゃ、『ポチの告白』にならないじゃないですか!
あの映画にカタルシスが必要なんだろうか?本当にないんだろうか?私にはわかりません。
玄さんに聞いてみたいところです。」
> そこまで見せなくても分かる。少なくともボクには。
> 菅田さんのキャラクターについて・・・・・
エピソードだけでキャラを作り上げようとしている感じがしました。
あの家族にリアリティがあれば、もっと凄い作品になったと思います。
「私も夫婦の年が離れ過ぎててリアリティないなあと思いましたが、あれも上司に決められた結婚なんですよ。」
> でもね・・・・菅田さんの演じる警官って、ある意味「とある男の自分探しの物語」でもあるのかなって。
だから警察官ではなくて、単なる男してみた場合、もの凄く感情移入できる。
それはチェ・ゲバラの比じゃないですよ。(ゲバラは映画が酷すぎた)
「私は『チェ 28歳』すごーく良かったです!予期せず2回見てしまいました。
(『39歳』かと思って行ったら『28歳』が始まってビックリ!あはは。)
玄さんは男好きなんですよ。女を求め、女に優しいけど女を信用していない。『ゴッドファーザー』の世界ですな。」
> 『月刊シナリオ誌』の高橋監督の手記を読むと、
取材から抜き取ったエピソードや現実の報道から垣間見える警察組織の腐敗なんかは、しょせん映画を作るためのパーツに過ぎず、
この映画の趣旨を理解した役者やスタッフたちの撮影現場で起きる化学反応?を監督が調合し、作り上げていったのかなぁと。
うーん・・・・・でもそうだとしたら、そうやって一本の映画を作るのって凄い才能だと思うなぁ。
「段取り芝居っぽい」ところがなかったし。
なぜかって、ボクの知りうる限り、映画監督って、みんな緻密な人ばかりですよ。
とぼけたこと言ってる人もたまにいますけど、あれはウソ。裏にもの凄く緻密な計算が働いている。
> 高橋監督はどうなんだろうか?
知的というより、孤高な感じするけど、みんなでワイワイやりながら作るのが好きなようだし・・・・
『ポチの告白』という作品によって、世の中に一石を投じる、或いは社会を変革してやる!という気概みたいなものがあって
撮ったのか、それとも表現者としてのわがまま(好奇心として/実験的)で撮ったのか・・・・・
今の世の中って、政治・経済・社会・芸能すべてに懐疑的なところがあるから、
警察組織の腐敗程度ではインパクトを与えることはできないかもしれないけど、
「いや、この程度の公開、宣伝規模の映画で、主要新聞雑誌他様々なメディアで取り上げられているということは、インパクトはあったんじゃないですか?
テレビじゃやってないから、殆ど一般大衆に知られてはいないけど!
狙いはあれかこれかどちらか、ではなくて、あれもこれもなんじゃないですかねえ?
皆でワイワイ作りつつ緻密な計算はしているだろうし、映画で闘うんだ、という気概はもちろんあるだろうし、興行的成功も狙っているけど、インディペンデントでやりたいとか、傍で見ていてもいろいろに感じますが。
是非、トークのある時に劇場に行って、玄さんに直接聞いてみて欲しいですが、2回は見たくないか……。
因みに私、全部は3回、途中からを2回見てます。」
> ボクが興味があるのは、そんなことより、監督自身に「本当にそこのところを本気でクローズアップしたい」のか
それとも菅田さん演じる男の行く末には責任持たない、エンターテイメントとして撮ったんだよ、、、、なのか。
男のセンチメンタリズムみたいなものも、社会を痛烈に面罵するようなプロットも、ボクはどちらもなかったように思うから。
「えー?そうですか?私はどちらもビシビシ伝わってきましたが。
いや、仰る通り、面罵はしてないか。ニッポン社会に絶望しながら嗤っている、かな?」
> そもそも「この映画は社会派ですよ」とか「この映画はアンチジャイアンツですよ」みたいな単純な割り切り方で観る映画なのか、
そこはどうなんだろう。
「宣伝は社会派エンタテインメントと謳っていますからねえ、やはりどちらでもあり、どちらでもいいのでは。」
> トークショーでそれなりの文化人、知識人が招かれてるし・・・・
ちなみに裁判官役を「宮崎学さん」にしたのは失敗だったと思う。
「えーーーー?! なんでですか!?これは聞き捨てなりません。(怒ってはいないです)
これも私の『キモ』ですから、説明して下さい。」
> 映画って本気出したらこんなことまでできんねん(関西弁)!・・・てな、覚悟というと凄みみたいなものは伝わらなかった。
ボクにはね。
「ふーん、私は玄さんが言葉通り『映画に命懸け』なの知ってるから、私も玄さんの事知らなくて映画だけ見たらそう思うのかなあ?
まあ人それぞれですね。私は『高橋玄=映画』『人生は映画』『映画は記録』と本人も言うのを本当にそうだなあ、と思っていますし。」
> そりゃ、映画ごときで社会を一瞬に変えたり、個人を救済したりはできないですよ。
「そうですかね?映画の可能性としてはあると思うけど。
『ポチの告白』で救われる人もいると思うけどなあ。幻想かしら。若者が『ポチ(警官)になるのはやめよう!』と決心するとか。あり得なくはない。あはは。」
> でも、その映画を観た人だけに起こりうる「奇跡」みたいなものはあるわけじゃないですか。
夢物語とかファンタジーと言われてもいいけど、個人にとっては革命的な体験とも成りうることだってありますよね。
そのあたりの監督のスタンスが分かりにくかった。
『月刊シナリオ誌』の手記を読む限り、エンターテイメントとして撮ったのかなと。
「玄さんは常に『エンタテインメントです』と言ってます。
もともとの発想は『私は貝になりたい』なんですよ。(月刊シナリオに書いてありました?)」
> ・・・・・とまあ、徒然なるままに勝手なこと言わせてもらいましたけど、
肝心なことを言い忘れました。
『GOTH』を観た時も同様な感想を述べましたけど、『ポチの告白』でもまたまた。
高橋監督って、ボクが最も敬愛するリドリー・スコット監督と似てるなぁって。
映像の質感というか、風合い、色合い、光の加減、陰影・・・・どう表現したらいいかわからないけれど。
気が向いたら、リドリーの作品を観てみてください。
「何本か見ています。『ブレードランナー』『ハンニバル』『プロヴァンスの贈りもの』『ワールド・オブ・ライズ』ですが、似てますか?
気がつきませんでした。今度見るときは注意してみます。
まあ、私の意見はやはりかなり身内贔屓でしたね。不快でしたら申し訳ありません。
オスギさんがご覧になった時、お客さんの入りはどうでした?
どこかで『9割男』と聞きましたが。年齢層は高かったのが、段々若者にも浸透してきたみたいです。
あと1回トークのある時行って、オスギさんの問いを玄さんにぶつけてみようかな、とも思っています。
あー、返信書くの大変だった!オスギさんもすごい時間掛かったのでは?そうでもないですか?
お疲れ様でした。本当にありがとうございました。
このメールの返信は『おまた』で直接でも。
今日はキム・ギドクVSオダギリジョーを見に行こうと思ったら時間が合わず。
ああ、気になる。早く見たいです!
では、また。」