昨日、表参道画廊に併設されている「MUSEE F」で、東京写真月間2008MUSEE F選抜鈴木亮輔展を鑑賞してきた。鈴木氏は一昨年の展示で会期が一緒だったご縁もあり、今回の個展も非常に楽しみだったが、予想を良い意味で裏切る内容で少なからず驚かされた。
2006年の展示では、作品に使われた写真のイメージというか、そこに写し出された画像はあくまでも作品を構成する要素に過ぎず、写真が時間の経過と共に溶解し、作品を構成する要素としても薄まってゆく過程そのものが作品の中心となっていたのだが、今回はより展示全体の構成を意識した内容となっていた。ただ、今回の展示でも写真はあくまで表現技法のひとつであり、写真であることに捉われない自由さを失ってはいない。
あえて言葉にするなら、個々の写真に写し出されたイメージよりも、展示全体を通して鑑賞者が感じ取ることを重視しているようで、展示空間に身を置きつつ「漠然と感じられるなにか」を受け止めるような構成になっているといえようか。自分自身も、できるだけ複数の作品を視野に入れつつ、全身の感覚で受け止めるように鑑賞していた。
鈴木氏の展示は写真という表現のもつ可能性に対して、最もプログレッシブな姿勢で臨むもの言えるのではなかろうか?
その他、表参道画廊では秦如美写真展「日常」も開催されており、こちらは非常にコンサバティブな写真作品を展示している。秦氏の作品は文字通りの意味でストレートに日常をテーマにした、いわば「私写真」の系譜に連なるものだ。かつては新しい写真表現として受け止められていたテーマであり、展示されている作品もストレートフォトグラフィーの最も純粋な形式をとっているが、既にそういったモードや手法は消費しつくされてしまい、現在ではコンサバティブな立ち居地を占めているといえよう。
写真という表現のプログレッシブな側面とコンサバティブな側面の両方を同時に鑑賞できる展示として、どちらも強く鑑賞するようお勧めしたい。
『秦如美 展』
会場: 表参道画廊
スケジュール: 2008年05月19日 ~ 2008年05月31日
住所: 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-17-3 アーク・アトリウム B02
電話: 03-5775-2469 ファックス: 03-5775-2469