あの日のこと

2018-10-02 15:42:50 | えりかさんとのこと
「ココイチ」というカレー屋さんは、全国区だと思うが…。
あそこの創業者さんは、「ムネミツさん」という人らしい。
名古屋にムネミツさんの名前のついたコンサートホールがある。
この前、ココイチでカレーを食べたら、その「宗光ホール」に行った時のことを思った。

その1ヶ月か2ヵ月前、えりかさんから誘いを受けた。
娘のピアノの先生が、今度お友達と宗光ホールで小さなコンサートをするということで、
チケットを1枚もらったんだけど、一緒に行かない?
チケットをあと1枚買えば、半額ですむでしょ?

真っ先に思ったのは、
「どうして私が、チケット代を半分出して、名古屋までの交通費を払って、そのコンサートに行かなきゃいけないの!?」
ということだった。
余談だが、ずっと後になってMちゃんにその話をした時、
「どうしてみなみがそのコンサートに行かなきゃいけないの?」と言われた。(笑)

でも私は、えりかさんに「一緒にえりかさんが楽しいと思うことをしよう」と言っていたので、
無下に断ることも憚られ、一旦は返事は保留ということにした。
でも内心、なんだかんだ言っても、結局行くんだろうなと思ってはいた。
翌日、別のことでえりかさんとメールをしていたら、
えりかさんが勘違いして、私がコンサートに行くと言ったと理解した返信がきた。
えりかさんはすぐに誤りに気づき、謝ってきたが、
私はもういいやと思って、行くと返事をした。
でも本当はそのコンサートには全く興味がなかった。

その頃の私は、えりかさんとの関係に行き詰まりを感じていた。
えりかさんが私に心を開いてきてくれたということなのだろうけど、
いろいろとぞんざいに扱われてる気がしていた。

当日までにいろいろなことがあった。
もう細かいことは覚えていないが、天候やら仕事の都合やら、
とにかくとてもたくさんのことが、私に行くなと告げているような感じだった。
当日の打ち合わせも不愉快なことが続いた。

コンサートの前日、たまたまえりかさんを含めた4人で教会へある人のお参りに行くことになっていた。
お参りを済ませてランチをした。
その時のえりかさんは、とにかくテンションが高くて、私と二人で会う時とは全然態度が違った。
別の人がいるとこうなんだーって感じで。
それは、えりかさんが他の二人よりも私に心を開いてくれているから、
と思おうとしたが、やっぱり私は不愉快だった。

当日の朝、えりかさんからメールがくる。
ちょっと急用ができて予定の電車に乗れなくなった。
また連絡する。と。
何だろう?子供が熱でも出したんだろうか?
だったらそう言うだろうし、とても名古屋まで出かけられる状態じゃないだろうと思う。
もしも、前の晩から子供に不具合でもあれば、夜のうちにそう言ってくれそうなものだけど。
私の中でえりかさんは、そういう時、相手に気を遣い過ぎるくらい気を遣う人だった。

その日は雨模様で、私はちょうどいい、今のうちに少しでも配り物の仕事をしておこうと思って出かける。
いつ連絡がきてもすぐ帰れるように、家から近いところだけでも。
ずっと携帯を気にしていたけれど、なかなか連絡はこない。
そのうちにもうコンサートに間に合うギリギリの電車に乗るには時間切れという時間になる。
ああ、今日はもう中止だなと思って、私は小雨がパラつく中仕事を続けた。
少し家からは離れてしまった。

そんな時に電話が鳴る。
「私は、〇分の電車に乗れそうなんだけど、みなみさんはどう?」
お母さんに送ってもらって、もう駅に向かっているという。
私は絶句状態だった。
時計を睨んで「行く!!」と一言。
その後は全力で自転車をこいで一旦家に戻り、荷物を持ってそのまままた全力で駅まで自転車をこぐ。
駐輪場に自転車を停めて、全力で駅の階段を駆け上る。
改札口の前にえりかさんの姿。
なんとか電車に間に合った。

確かに調子にのって仕事を続けた私にも非がある。
でも、えりかさんは駅に向かう車に乗り込む前に、成り行きを連絡してくる余裕はなかったのか?

電車では座れたけれど、私は息はあがり、足はガクガク。
しばらくは会話する余裕もなかった。
えりかさんが言うには、前の晩から不登校のお兄ちゃんの方が調子が悪かった。
それで医者に連れて行ったのだと。
何で昨夜のうちに言ってくれない?
私が思っていたえりかさんの像はみんな粉々に崩れたという感じだった。

栄で地下鉄を降り、地上に上がるとどしゃぶりの雨だった。
コンサートの開場の時間は過ぎていたけれど、開演までは余裕だなと思っていた。
えりかさんは、どしゃぶりの雨の中を足早に歩く。
私はまだ足が普通の状態ではない。
信号が点滅し始めた横断歩道を渡ろうと、えりかさんは走りだした。
さすがに私は、「待って!無理!!」

ちっちゃいことだが、会場には鍵のかかる傘置き場がなかった。
私はお気に入りの傘を持っていた。
それを普通の突っ込むだけの傘立てに置く気にはなれなかった。
だから傘を持ったまま受付に向かった。
受付のお姉さんはそれを見て、預かってくれたんだったか、傘袋をくれたんだったか…。
その様子を見て、えりかさんは自分は平気で置いてっちゃうみたいなことを言った。
前に、私がその傘をとっても気に入って大事にしているという話はしたはずなのに。

コンサートはそこそこに楽しかった。
それが唯一の慰めである。

コンサートが終わったらランチすることになっていた。
前に、えりかさんと名古屋に出かけた時、
自分は名古屋のことは何もわからないから、みなみさんにお任せすると言われ、困ったことがあった。
だから、私は栄ならラシックに行けばいいと思っていた。
それなのに、えりかさんは隣のナンタラホテルでランチしようと言い出す。
ホテルのランチが気に入らないわけではないけれど、
「なんだよそれ!?」って思う。

そこでのランチ。
私はもう何も話す気にもなれないでいた。
会話が途切れても、話題を出す気になれなかった。
多分明らかに不機嫌だったろうと思うけれど、えりかさんは気付いていたのか?
それで何気なくえりかさんが提供した話題が問題だった。
いつか書いた事件である。

全く険悪なムードになってしまった帰り道。
私は何度かえりかさんに言葉をかけた。
相槌程度のものしか帰ってこなかった。
3度目くらいで私も諦めた。
諦めたというか、ばかばかしくなった。
もうどうなっても知らないと思った。
こんなことなら、三越で買い物してから帰ると、帰りは別行動にすれば良かった。

降りる駅が近づいたころにえりかさんは言う。
「自転車だよね?雨降ってるから一緒に母の車に乗ってく?」
何だか呆れた。
今後のために、会話を繋いでおくことより、雨が心配ですか?

えりかさんは今でも変わらない。
そういった人間関係の機微がわからない。
7月の事件の後もそうだ。
ほとぼりが冷めたころに、ご機嫌伺いでもしてくればいいのに。
私と一緒で、もうこれっきりになっても構わないと思っているのだろうか。
それならそれでいい。

でも、あんなにえりかさんに腹を立てたのに、私はどうしてもえりかさんが気になる。
何度もこっちから連絡を入れようかと迷う。
でも、そのたびに思う。
あの、超つまらなかった6月のランチを。
ここで私が連絡を入れるのは私の方の甘えだと思う。

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