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大地震の前兆か?解消か?房総半島沖で「スロースリップ・ゆっくり地震」観測!

2011年11月03日 | 地学

科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学の疑問を、やさしく解説!毎日3分読むだけで、みるみる科学がわかる!


 房総半島沖で「スロースリップ」 
 防災科学技術研究所と国土地理院は10月31日、房総半島の東方沖で、地震を伴わずプレート(岩板)境界が動く「ゆっくり滑り」が起きていると発表した。

 ゆっくり滑りは、フィリピン海プレートが日本列島の下へ沈み込んでいる場所で起きている。防災科研は傾斜計、国土地理院は全地球測位システム(GPS)を使った地殻変動のデータを解析。いずれも、10月26日から5日間で6センチほど滑ったと見積もった。

 房総半島沖では、平均約6年間隔で同様の現象が観測されている。前回の発生は4年前の2007年8月。今回の発生は過去30年の観測で発生間隔が最も短かった。(asahi.com 2011年11月1日)

 この場所のスロースリップは約30年間観測が続いており、前回までの5回は平均6年間隔で起こっていた。今回は2007年8月以来4年2カ月ぶりで、間隔は過去最小。東日本大震災の影響で早まった可能性もあるという。2007年には、スロースリップに誘発されたとみられる群発地震が房総半島周辺で発生した。

 防災科研が全国に整備した、高感度地震観測網のうち、房総半島6地点のデータを分析。最大の動きは、10月26~30日の5日間に深さ約20キロで約6センチ滑ったと推定した。(毎日新聞 2011年11月1日)

 スロースリップとは何か?
 スロースリップ(slow slip)とは、地震学の用語で、普通の地震によるプレートのすべり(スリップ)よりもはるかに遅い速度で発生する滑り現象のことである。「スローイベント」「ゆっくりすべり」「ゆっくり地震」などとも呼ばれるが、厳密には「スロースリップ」か「ゆっくりすべり」が最も的確に意味を表している。海溝などの沈み込み帯ではよく見られる現象。また、1つのプレートの中に存在する断層の面でも発生する。

 「普通の地震よりもはるかに遅い速度」というのは、地震を起こす地殻変動の速度のことである。地震としては、地震動の継続時間が非常に長く、地震動の周期が比較的長め(約0.5秒~数十秒)であるという特徴を持つ。

 海洋プレートが大陸プレートの下に沈みこむ構造(沈み込み帯)では、海溝ができ、プレート同士の境界面の一部が強い圧力によって密着して固定され(固着)、固着域(アスペリティ)ができるのが一般的である。固着域は、数十年~数百年の間圧力を溜め込んで動かず、地震の時に一気にずれ動く部分である。

 通常、この固着域は帯状に分布するものもあれば、まだらに分布したりするものもあり、大きさも分布も場所によってさまざまである。大まかに見れば、海溝に対してほぼ平行に分布する。ちなみに、この固着域の分布はプレート同士の境界面の温度に関係があるとされているが、温度だけでは説明できず、そのほかにも多数の要因があると考えられている。固着域の周り(すぐ内側と外側)には、スロースリップを起こしながら沈み込む部分(スロースリップ域、遷移領域)が細長く分布し、そのさらに内側には地震を起こさずに安定して沈み込む部分(安定すべり域)が広く分布している。

 力学的には、固着域は動的な不安定破壊を起こす特性、遷移領域は静的に不安定破壊を起こす特性、安定すべり域は安定したすべりを起こす特性を持っている。つまり、固着域は大きな振動を伴った地震、遷移領域は振動をほとんど伴わない地震や「すべり」、安定すべり域は振動を全く伴わない滑らかな「すべり」を起こす。

 基本的には、沈みこむ海洋プレートは移動方向と同じ向きに、乗り上げている大陸プレートはその向きとは逆方向に、スロースリップを起こす。(Wikipedia)

 スロースリップ構造の例
 東海地方: 東海地方では、南海トラフ(海溝の1種)でユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込んでいる。浜名湖付近では、2000年から2004年まで、年間1cm程度の速度でスロースリップが発生していることが、GPSの観測により判明した。当初は、東海地震に関連のある異常、特に東海地震発生の引き金なのではないかとの見方があり、多くの研究がなされた。

 結果、東海地方のプレート同士の境界面は通常とは異なることが判明した。東海地方の南東には、伊豆諸島と平行して銭洲海嶺という細長い海底山脈がある。この銭洲海嶺は古くから何度も活動しており、東海地方の地下には沈み込んだ古い銭洲海嶺が何列も存在している。プレート同士が強い圧力によって滑っている境界面では、銭洲海嶺のような隆起した地形があると、海水などの水が堆積物と一緒に地下に沈み込み、そのままプレート同士の境界面を作ってしまう。

 地下では深く沈み込むに従って圧力が高まるため、堆積物に含まれる水は鉱物内から外に染み出し、鉱物同士の隙間に入り込んで高圧の水となる。これを「高間隙水圧帯」という。水は粘度が低いため、高間隙水圧帯は潤滑油の働きをして、鉱物同士が押し合うプレート境界よりもすべりやすくなる。

 東海地方の地下では、銭洲海嶺の影響で高間隙水圧帯ができ、そのため、スロースリップを起こす部分の幅が通常よりも広くなり、スロースリップの規模が大きくなっていることが分かった。

 房総半島沖: 房総半島東部から東方沖にかけての地域では、地表にある北アメリカプレートの下で、太平洋プレートがさらにフィリピン海プレートの下に沈みこんでいる。太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界面では、1983年、1990年、1996年、2002年、2007年、2011年の計6回、スロースリップが発生した(観測によるものと、事後解析によるものがある)。2011年のスロースリップは観測開始以来最短の間隔で発生したが、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響を受けた可能性が指摘されている。(Wikipedia)

 大地震の前兆か?
 スロースリップはゆっくりとした地震のこと。通常の地震は急激に地殻変動を起こすのに対し、地殻変動がゆっくりで、ほとんんどゆれを感じることがない。今回のようにGPSを使ってわかる程度である。さてこのスロースリップが、実際の大地震の引き金になるかがどうかが気になるところだが、これには2つの見解がある。

 1つは、スロースリップにより震源域にかかる歪みが大きくなるので、大地震のきっかけとなる考え。防災科研のプレス発表資料発表資料には、「発生が固着域(アスペリティに)歪みをさらに蓄積すると予想されるため」と、まるで、スロースリップが巨大地震を誘発するかの様な説明になっている。

 また、日本地震情報研究会の地震情報日誌(2004/4/20)では、東海地震予知を担う、政府の地震防災対策強化地域判定会会長が、” ひずみという地震のエネルギーが解放されるのだからいいのでは、と考える人がいますが、実は全く逆なのです。浜名湖周辺で解放された分、その東の想定震源域にかかるひずみが大きくなってしまう。”

 ”スロースリップが止まってくれれば、まだここまで心配しない。だが、スロースリップが止まらないのです。2000年後半に始まってから、もう4年目に入りました。ーーーそろそろ止まってもいいのでは、と研究者は考えているのですが、止まらない。東海は明らかに異常な状況です。スロースリップで解放されたひずみも相当な量となっているはずなのに、どんどん突き進んでいる。”と書いている。

 大地震の解消か?
 もう1つの見解は、プレートにかかっているエネルギーが分散されるので、大地震を防ぐという考え。ただしこの場合は、近くの固着域(アスペリティ)にたまったエネルギーが、小地震や群発地震で分散される必要がある。

 プレートは、常時、マントルにより動かされている。スロースリップが起きないと言うことは、その分のストレスが、プレート間に蓄積されるということ。それが解放される時、巨大なエネルギーが放出されるしくみだ。

 「固着域の歪みが増える」は正しいですが、それにより、プレート間の歪みの総エネルギーは増えない。東南海の3連動、4連動地震を警戒するのは正しく、警戒すべきは、プレート間に蓄積された「総」歪みエネルギーである。

 スロースリップは、総歪みエネルギーを減らすことに大きく貢献している。スロースリップが、微小な固着域の滑りを誘発し、微小な群発地震が誘発される。群発地震に依り、さらに、総歪みエネルギーが減ると考える。スロースリップが起きることは、とても喜ばしいこと。(toshi_tomieのブログより) 

参考HP toshi_tomieのブログ 房総沖のスロースリップ地殻の歪みをを解消するので喜ぶべき現象
Wikipedia スロースリップ・ゆっくり滑り・ゆっくり地震 

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地球村、人口70億人を突破!問題山積!貧富の差、温暖化、環境破壊…

2011年11月03日 | 人類学

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 世界の人口 70億人を突破  
 世界の人口は、10月31日、70億人を突破した。国連は、10月31日に生まれる世界中のすべての赤ちゃんが70億人目になるとして、その誕生を祝うとともに、国際社会に対し、貧困の広がりなど人口増加に伴う問題に対する取り組みを強化するよう呼びかけた。

 国連によると、世界の人口は急激に増えており、1959年には30億人でしたが、僅か半世紀で2倍以上増え、31日、70億人を突破した。そして、今後も増え続け、今世紀中に100億人を超えると予測されている。このうち、最も多いアジアは今世紀半ばには52億人に増えるほか、アフリカは2100年に現在の3倍以上にあたる36億人に達すると予測されている。

 これに対し、日本やヨーロッパといった先進国では出生率の平均がおよそ1.7と、人口を維持するのに必要とされる2.1を下回り、人口が減少するとみられている。この結果、国連では、途上国を中心に貧困の問題が広がるほか、都市に人口が集中する都市化や、水不足が深刻化するおそれがあると指摘している。

 国連は、10月31日に生まれる世界中のすべての赤ちゃんが70億人目にあたるとしており、パン・ギムン事務総長は、70億の人口を抱えるようになった世界を祝うとともに、人口増加に伴う問題について国際社会に一層の取り組みを呼びかけることにしている。

 国連人口基金の東京事務所では世界の人口が70億人を突破する10月31日、日本で生まれた赤ちゃんに「70億人目の赤ちゃんの1人」であるということを証明する認定証を発行することにしている。応募は郵便で受け付けていて、母子健康手帳のコピーなどが必要になる。詳しくは、以下のサイトを参考にしてほしいということだ。http://www.70okunin.com (NHK news 10月31日)

 人口70億人を突破した地球村 
 世界人口が1億人になったのは、BC 2500年ころ、その後長い間があって、AD 1年ころ、2億人に達した。1億人増えるのに2500年かかった。また長い間があって、1000年ころ3億人に達した。1億人増えるのに1000年かかった。そして、1650年には5億人。2億人増えるのに650年かかった。

 1800年には、ついに10億人。5億人増えるのに150年…というように、人口増加のスピードは加速度的に増えていき、1927年に20億人に達するまでは1世紀以上かかった。1959年の30億人には32年間。しかし1987年の50億人から1999年の60億人まではわずか12年、70億人までは12年しかかからなかった。国連によると、2050年ごろの世界人口は90億人を超える見通しだ。

 英経済学者、トマス・マルサスの人口論、すなわち、食糧は算術数的に増え、人口は幾何数的に増えるため、大量の餓死が発生するだろうという予測は外れた。しかし、地球環境を持続可能に保ちながら、これほどの大勢の人口を食べさせなければならない悩みは、依然進行形だ。これまでは人口増加を農業生産の拡大で乗り切ってきた。しかし、農業生産性が落ちる兆しを見せており、切り開くことのできる農地をさらに見つけるのが厳しくなっただけでなく、水不足や地球温暖化による気候変動により、今後、食糧供給不足は深刻になるものと見られる。

 人口が急激に増加するところは、南アジアやサハラより南の黒いアフリカだ。2020年ごろ、南アジアのインドは、一人子政策を展開した中国の人口を抜くことになる。黒いアフリカの人口は、1950年代の欧州の3分の1に過ぎなかったが、2100年になると、5倍になる。彼らが世帯ごとに冷蔵庫を稼動し、自動車を乗り回すことを想定すれば、環境汚染も深刻な問題として浮上するだろう。

 欧州が1945年から1975年まで、東アジアが1980年から2010年まで、「繁栄の30年」を謳歌したのは、出生率低下を受け、扶養児童が減り、経済活動人口が相対的に多くなったからだ。その経済活動人口が引退する年になり、恩恵は負担に変わっている。日本はすでに、世界最高齢社会だ。欧州や米国もまもなく、このレベルに達する。2050年ごろ、韓国の高齢化は、日本よりさらに深刻になる見通しだ。不足した老人年金や医療保険基金を拡充したり、予防するための政策変化は避けられない。(東亜日報 2011年9月2日)

 世界の貧富の差拡大   
 世界では貧富の拡大、温暖化など問題が山積だ。石油の枯渇が近づき、表土と森が失われている。水と食料が、病院と学校が不足している。人の生活が、太陽と地球からの恵みを、超えそうだ。

戦争なんかしている場合ではない!独り占めでなく、分かち合って、共に生きなくては。今、生きてる。それだけで奇跡的なことなんだ。ヒトも動物も植物も、全宇宙で唯一の、137億年の中の一瞬の生命なんだ。

  5人に1人、子どもも含め、12億人がひどく貧しい状態で、1日1ドル未満で生活し、5億人が飢餓か、栄養不足に苦しんでいる。貧しい国の多いサハラ砂漠以南のアフリカ諸国は雨が少なく、土も栄養分が少ない。肥料も高い輸入品なので使えず、主食の穀物は少ししか作れない。

 食料を輸入しているが、輸出できるものがない。軽工業は安い中国製に対抗できず、貧しさから抜け出すのがかなり難しい。教育と医療の応援が必要だ。 

 アフリカの一部には石油や鉱物資源に恵まれた国があるけれど、その奪い合いで戦争がおき、折角の資金が兵器購入などに使われている。 武器を売るのは国連理事国の米ロ英仏中の5ケ国とドイツ、イスラエル。家や国を追われた大勢の難民がキャンプで苦しい生活を続けている。日本は武器を売らない、戦争をしかけない、しない?、唯一の経済大国。
   
  マータイさんの運動のように、アフリカにたくさんの木を植え、鳥や虫も増えて、その糞や死骸が土の栄養になり、雨も降るようになり、穀物や野菜がたくさん採れるようになれば、少しずつ、良い方向に進んでいくはずなんだ。
   
  ユニセフの世界子供白書2005によると、6億4千万人の子供がちゃんとした住居に住んでいない。5億人の子供がトイレなどの衛生設備のない家で暮らしている。4億人の子供が安全な水を利用することができない。3億人の子供がTVラジオ、新聞などの情報を得ていない。 

 2億7千万人の子供が健康診断など保健衛生サービスを受けていない。1億4千万人の子供が学校に行っていない。9千万人の子供がまともな食事を与えられていない。 (世界の人口より)

 「世界人口クイズ10」、70億人の世界
1.70億人を代表するとしたら、一番多い国籍と民族は何だろうか?

 正解は中国の漢民族である。統計によると、世界で最も人口の多い国は中国。民族は漢民族で、年齢層は28歳。性別を比較すると、女性1人に対し男性が1.01人いる。

2.70億人全員が起立して隙間なく並ぶと、次のうちどの程度の面積に収まるか?サンパウロ(ブラジル)か東京(日本)か、フロリダ州(アメリカ)か、ロサンゼルス市(アメリカ、カリフォルニア州)か? 

 正解は、ロサンゼルス。70億人全員が起立して隙間なく並んだ場合、ロサンゼルス市(約1300平方キロ)に収まる。

3.先進諸国と呼ばれる国に住む人達の平均寿命は何歳?

 正解は80歳。現在、先進諸国の平均寿命は80歳前後で、100年前に比べると30歳も伸びている。53歳にとどまっているサハラ以南のアフリカ諸国とは対照的だ。

4.これまで地球上に存在した人類の総数は? また、そのうち何%が現在生きている?

 正解は、1080億人。これまで地球上に存在した人類は1080億人と推定されている。このうち現在生きている人は70億人。計算するとその割合は6.4%である。

5.現在最も人口の多い国は中国。2050年に最多と予想される国はどこか?

 正解は、インド。アメリカのワシントンD.C.にある民間の非営利調査団体によると、インドの人口は2050年までにおよそ17億人に達し、中国を抜いて世界第1位になると予想されている。

6.都市部と農村部、どちらで生活する人の方が多いか?

 正解は都市部。世界人口は大部分が農村生活者で占められていたが、2008年時点では都市部の人口が50%を超えるようになった。現在、都市生活者のほとんどは人口50万人未満の都市で暮らしている。2050年までに、総人口の70%が都市部に住むようになると予想されている。

7.就業者数が最も多い職業分野は? 

 正解はサービス業。最も就業者数の多い分野はサービス業で、全体の40%。次いで農業が38%、工業は22%と最も少ない。

8.2011年の世界の出生数は1分あたり何人?

 正解は、266人。2011年の世界の出生数は1分あたり約266人。1日に38万2351人、1年では1億3955万8000人が誕生している。(Nancy Gupton for National Geographic News November 1, 2011)

9.日本の人口は世界第何位? 

 正解は世界第10位。世界1位は、中国の13億5410万人、2位はインドで12億1450万人、3位はアメリカの3億1760万人。以下、4位インドネシア、2億3250万人、5位ブラジル、1億9540万人、6位パキスタン、1億8480万人、7位バングラデシュ、1億6440万人、8位ナイジェリア、1億5830万人、9位ロシア、1億4040万人、10位日本、1億2700万人。(国連人口基金2010年)

参考HP Wikipedia 世界人口 世界の人口
National Geografic news 世界人口クイズ、70億人の世界

世界がもし100人の村だったら 完結編
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地球村の思想―グローバリゼーションから真の世界化へ (グローバルネットワーク21人類再生シリーズ)
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新「1キログラム」物語 「キログラム原器」廃止へ!新基準は「Si」原子数?

2011年11月03日 | 物理

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 キログラムの定義、120年ぶり見直しへ
 質量の単位「キログラム」の国際的な定義が、120年ぶりに見直される。フランスで開催中の国際度量衡総会が10月21日、定義の見直し方針を採択したもので、今後、最先端研究をもとに4~8年かけて新しい定義を決める。

現在、1キロ・グラムは仏の国際機関・国際度量衡局に保管されている白金とイリジウムの合金でできた円柱形の分銅「キログラム原器」が基準。日本も同じ材質の原器がつくば市の産業技術総合研究所にある。

 しかし、これまで繰り返し行われた洗浄やほこりの付着で、質量が微妙に変化したとされる。そのため定義の見直しの必要性が指摘されていた。今後は、質量の単位を原子の数、エネルギー量など普遍的な形で定義し、それをもとに分銅を作製する。新定義によって微小な分銅の作製も可能となり、ナノテクノロジーなどの産業にも生かされる。(2011年10月22日  読売新聞)

 国際キログラム原器は、白金イリジウム合金製の分銅。1889年、メートル条約に基づいてつくられ、パリの国際度量衡局に厳重に保管されている。

 本来、質量は一定のはずだが、1988年に洗浄された際は1億分の6程度軽くなった。また、2007年9月、国際キログラム原器が50µg軽くなっている事が判明した。“50µg”とは指紋が付いた分に相当するという。同時に作られた複製品には異常がなく、また厳重保管されているのに、なぜこのような状態になったかは未だに不明だという。

 この量は、極々わずかなので私たちの生活に問題はない。しかし、高精度の測定が必要な先端科学の世界では、より正確で安定的な定義が求められていた。

 「1kg」はどうやってきめられたか?
 「1m」は光の速さで、真空中を約3億分の1秒に進む距離として定義されている。では1kgはどうやって決められたのだろうか?

 1790年フランス、国王ルイ16世の号令の元、新しい時代の度量衡としてメートル法を策定すべく、主に科学者達で構成された委員会が結成された。当時その委員会において、質量単位のモデルとして1メートルの10分の1で構成された立方体の升に入った水の質量、すなわち1リットルの大気圧下で氷の溶けつつある温度(0度)における水について、grave(グラーブ、記号G)と名称が与えられた質量単位を標準とする事が提案された。その語源はgravity(重力)から由来したものである。

 当初案の定義では、「大気圧下で氷の溶けつつある温度(すなわち0度)における水について」となっていたが、その後、水の体積は温度依存することが分かり、結果として定義は、1790年に「最大密度(=液温摂氏4度)における蒸留水1立方デシメートル(1リットル)の質量」と定義された。しかし、水の密度は気圧と温度に影響され、気圧にはその因子に質量が含まれている。すなわち、このキログラムの定義は正確ではなかった。 

 1884年メートル条約で、国際キログラム原器をつくって、定義されることになった。国際キログラム原器はプラチナ(白金)90%、イリジウム10%からなる合金でできており、直径・高さともに39mmの円柱である。フランス・パリ郊外セーヴルの国際度量衡局に、二重の気密容器で真空中に保護された状態で保管されている(世界のすべての質量計測の基準であるので、万一にも錆などにより質量が変化しては困る)。国際キログラム原器の質量は "Le Grand Kilo" と呼ばれる。

 国際キログラム原器を元に40個の複製が作られて各国に配布・保管されており、約10年ごとに特殊な天秤を用いて国際キログラム原器と比較されることになっている。日本には1889年に複製のうちの1つ (No.6) が配布され(日本到着は翌1890年)、日本国内ではこれをキログラムの基準に使用している。この日本国キログラム原器は現在、茨城県つくば市の独立行政法人産業技術総合研究所に、国際キログラム原器と同様の容器内に保管されている。日本国キログラム原器は国際キログラム原器に比べて0.170mg重いことが分かっている。

 このように、メートルなど他のSI基本単位は、普遍的な物理量に基づく定義に改められているのに対し、キログラムだけが人工物に依存する単位として残ってしまった。人工物による定義では、経年変化により値が変化し、また、焼損や紛失のおそれもある。1970年代から、普遍的な物理量によるキログラムの定義が検討されてきた。

 普遍的な物理量による定義へ
 では、どのような定義が採用されるのだろうか?現在の定義に変わる新しい定義の候補として、アボガドロ定数やプランク定数などを用いた各種の提案がある。

 最も有力なのが、一定個数のケイ素 (Si) 原子の質量をキログラムとするという原子質量標準である。アボガドロ定数の値をより正確に求めることができれば、そこからケイ素1キログラムに含まれるケイ素原子の数を決定することができる。ケイ素が採用されたのは、ケイ素が不純物を含まない単結晶を作りやすいからである。現在、国際度量衡委員会 (CIPM) が中心となって、各国の研究機関でケイ素を用いてアボガドロ定数の不確かさを少しでも小さくするための研究が行われている。

 現在のアボガドロ定数の値 NA = 6.022 141 29(27)×1023 mol-1(CODATA2010年推奨値。括弧内は標準不確かさ)には、8桁目に不確かさがある。現行の定義による精度は8桁なので、あと1桁精度を上げることができれば、キログラムの定義を原子質量標準に置き換えることに意味が出てくる。

 他には以下のような提案がある。

・静止エネルギーと質量の関係式 E=mc² を用いて、ある振動数 ν の光子のエネルギー (E = hν) と等しい静止エネルギーを持つ物体の質量を1キログラムと定義する。
・かつてプランク定数とキログラムを関連づけることでアンペアを定義するのに用いられたワット天秤を用いて定義する。
・伝導コイルで発生する磁場で超伝導体を浮揚することによってキログラムと電気量とを関連づけ、コイルに流れる電流により定義する。
・ジョセフソン定数 (KJ≡4.835 978 70(11)×1014 Hz/V) とフォン・クリッツィング定数 (RK≡2.581 280 744 34(84)×104Ω) を用いて定義する。すなわち、真空中に1メートルの間隔で平行に置かれた無限に小さい円形の断面を有する無限に長い2本の直線状導体のそれぞれに、1秒あたり6.241 509 629 152 65×1018の電荷による直流の電流が流れるとき、導体に2×10-7m/s²の加速度が生じたときの、その導体の1メートルあたりの質量を1キログラムと定義する。
・金の原子を蓄積し、それを中性化するのに必要な電流によって定義する。 (Wikipedia)

参考HP Wikipedia キログラム ・ アイラブサイエンス 1キログラム物語 

質量の起源 (ブルーバックス)
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物質のすべては光―現代物理学が明かす、力と質量の起源
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早川書房

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