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スパコン「京」が毎秒1京回の計算速度達成
理化学研究所と富士通は11月2日、共同開発したスーパーコンピューター「京(けい)」が毎秒1京回(京は1兆の1万倍)を超える計算速度を達成したと発表した。今月発表される予定のスパコン計算速度の世界ランキング「TOP500」で、6月の前回発表に続く連覇を目指す。
毎秒1京回の計算速度をめざして名づけられた「京」は理研計算科学研究機構(神戸市)にあり、102個の中央演算処理装置(CPU)の入った高さ2メートルほどの箱を864台つないである。2006年に開発を開始。2009年の事業仕分けでは、世界一を目指す計画に、仕分け人の蓮舫氏から「2位じゃだめなんでしょうか」と問い詰められた。完成途上の今年6月、672台を使って毎秒約8200兆回を達成し、世界一になった。
今回は864台すべてを使ったところ、計算速度は毎秒1京510兆回を記録した。長時間安定して使えるのが特長で、今後、ソフトウエアの調整を経て来年6月に完成、11月に運用を始める。先端材料を開発するために10万通りもの原子の組み合わせを計算したり、地震や津波のシミュレーションをしたりするのに使われるという。
理研計算科学研究機構の平尾公彦機構長は「京の部品はすべて日本でつくった。震災で部品の製造などが影響を受けたが、日本の高い技術力で、この性能と効率が出せた」と話す。
理化学研究所と富士通は11月2日、共同で開発しているスーパーコンピューター「京(けい)」(神戸市)が、目標だった毎秒1京(1兆の1万倍)回の計算速度を達成したと発表した。米国で今月発表されるスパコン性能の世界ランキング「TOP500リスト」で、今年6月に続いて世界一に選ばれる可能性がある。
理研によると、京は今年8月に8万8128個にのぼるCPU(中央演算処理装置)の設置を完了。10月7~8日に29時間28分かけて行列計算を行い、1秒あたりの平均で設計性能の93.8%にあたる1京510兆回の計算速度を達成した。
6月時点の計算速度に比べて約1.3倍も速く、理研は「ランキング結果は最後までわからないが、連続世界一を期待できる速度だ」と話している。(msn 2011.11.2)
「そんな暇はない」
6月に世界最速になった、スパコン「京」。これまで事業仕分けで窮地に追い込まれながら、よくぞここまで達成したと思う。日本人の誇りである。ここに至るまでどんな苦労があったのだろうか?
独立行政法人・理化学研究所(埼玉県和光市)が「京速スーパーコンピューター」の開発プロジェクトをスタートさせたのは平成18年4月。当初、民間企業は富士通、NEC、日立製作所が参加していたが、21年5月にNEC、日立が開発費負担の増大を理由に撤退を表明。プロジェクトの存続が危ぶまれたが、理研は神戸に建設中の施設工事を中断して設計を見直し、7月に参加する民間企業を富士通単独として再スタートした。
その富士通の社内も当初は慎重論があった。理研がプロジェクトを始動させたのは17年末。その話を耳にした技術陣は経営陣に「やらせてほしい」と参加を直訴した。しかし「真っ正面からスパコン開発なんてとんでもない」「そんな暇があるのか」といった意見も少なくなかった。当時、インテル系マイクロプロセッサー(MPU)でスパコン並みの高性能機を販売していた事情もあった。
技術陣に「検討せよ」と指示が下されたのは平成18年。翌19年7月に「次世代テクニカルコンピューティング開発本部」が発足した。理研が動き始めてから1年以上がたっていた。
「電力が足りない」
開発チームの陣容は150人に増強され、19年9月には、後に「京」に搭載することになる新型MPU「SPARC64VIII」の開発もスタートした。ただ、MPU開発を陣頭指揮する井上愛一郎・次世代テクニカルコンピューティング開発本部長は「いまの作り方では電力がもたない」と頭を抱えていた。
最新のMPUを使って性能を大幅に上げたら消費電力も飛躍的に上がってしまう。その難題をクリアするため、井上さんは「奥の手を使った」と振り返る。
それは「周波数を下げて電力も下げる」と発想だった。周波数を抑えて電力を下げる一方、周波数に頼らずに演算性能を上げる技術を徹底的に盛り込んだ。そこには「ハードバリア機構」を呼ばれる複数のMPU同士を最適に調整する技術を採用したり、演算状態を一時的に保つレジスターを従来の5倍の256個に増やしたりと、いくつもの工夫を注ぎ込んだ。
さらに、消費電力を、MPUの設計者が目で確認するためのツールを開発し、電力をいかに減らすかをチーム全体で「意地になって競った」(井上さん)。最終的に30%以上の電力削減に成功した。
その結果、新型MPU「SPARC64VIII」は、高い演算性能を持ちながら、消費電力を抑えることに成功した。IBMの主力MPUに比べると、消費電力はわずか29%で、演算性能は2分の1ですみ、単位消費電力当たりの性能は2倍近くになった。この省電力技術がなければ8万個以上のMPUを同時に動かす「京」のシステムは「成り立たなかった」(井上さん)。
1京の演算速度は、毎秒1兆回演算するコンピューターを1万台同時に動かした能力だ。富士通は「地球上の全人口70億人が24時間不眠不休で毎秒1回計算して17日間かかる計算量をたった1秒でやってのける」と説明する。
理研では、地球変動予測や設計プロセスの革新、生命化学・創薬、新物質・エネルギー創成といった幅広い分野で「京」の活用を進め、日本の国際競争力向上への寄与に期待している。(msn 2011.10.30)
スパコン「京」世界最速達成
独立行政法人・理化学研究所(理研)と富士通が共同で開発中のスーパーコンピューター。総事業費は約1120億円で、平成24年秋の本稼働を予定している。完成機は電話ボックスのようなラックに、64ビットマイクロプロセッサー「SPARC64VIII」を8個組み込んだCPU(中央演算処理装置)を計102個収納。
このラックを20万本以上の高速ケーブルで964台接続し、1秒あたり1京(1京は1兆の1万倍)回という世界初の演算速度を目指す。6月にはラックを672台接続して毎秒9162兆回の演算性能を実現、日本勢として16年6月以来7年ぶりの世界最速をマークした。
理研によると、京は5月15日に毎秒8162兆回の計算を達成。2位の「天河1A号」(中国)の毎秒2566兆回を大きく引き離した。現在、計算機の数は記録達成時よりも72台増えた744台。来年6月に計画の864台が完成し、同11月には企業や研究機関への共同利用を始める。
同機構の平尾公彦機構長は「世界一の計算速度を具体的な成果に結びつけるのが重要。防災や環境問題、医療などの分野で活用したい」と話した。(msn 2011.6.21)
参考HP 理化研プレスリリース 京速コンピューター「京」が10ペタフロップス達成
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