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第23回ノーベル化学賞 プレーグルの「有機化合物の微量分析法」

2010年04月30日 | 科学全般
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 オシッコが黄色いわけ
 突然だが、ウンコやオシッコが黄色いのはなぜだろう?

 正解は「ビリルビン (bilirubin)」という物質が含まれているからである。ピリルビン は赤血球の色素であるヘモグロビンが分解されてできる。

 「ビリルビン」は基本的には廃棄物で、赤血球が死んだ後、ヘモグロビンはマクロファージによって分解され、そのうちヘムはさらにFe2+、一酸化炭素と緑色のビリベルジン (biliverdin) に分解され、さらにビリベルジンが還元されてビリルビンとなる。

 赤血球の破壊によってできたビリルビンは、アルブミンとくっつき、肝臓に運ばれる、そして肝臓にたどりつくと、ビリルビンはアルブミンと切り離されて、肝細胞内にはいる。

 肝細胞内の小胞体というところで、グルクロン酸抱合というものをうけて、肝細胞から出て、毛細胆管腔へいき、胆管に胆汁として出される。そして胆汁は、総胆管をでて、十二指腸へでる。

 つまり、赤血球破壊→肝細胞→胆管→十二指腸という流れになっていて、この流れのどこがが詰まったり、肝臓の機能が低下したりすると、ビリルビンが血中に行ってしまい、血中のビリルビンが上昇する。これが皮膚や白眼が黄色く見える「黄疸(おうだん)」である。

 黄疸の原因は、肝硬変、肝炎、胆石、胆管がんなどの病気で、肝機能が低下したり、毛細胆管が破壊されたりして、毛細胆管に行くはずのビリルビンが血中へ出てしまう。では、ビリルビンはどんな成分でできているのだろう?

 アルプスの麓・グラーツ市
 オーストリアのグラーツは小さい地方都市だが、南部国境に近くを旧ユーゴスラビアやイタリアに接している。アルプスの谷を抜ける交通の要衝なので、文化的には開けた土地柄であった。

 ユーゴスラビア出身のフリッツ・プレーグル ( F.Pregl,1869~1930 ) は医学を目指してグラーツ大学に学び、卒業後生化学の研究を始めた。

 ここでは蛋白質や胆汁酸の分析の研究を行った。1913年にはグラーツ大学医学部の教授となり、医化学研究所の所長を勤めた。研究テーマに胆石の加水分解物の化学構造を決めるというのがあって、このための試料をどうして確保するかが問題となった。

 胆石は肝臓から送り出された胆汁が胆管で固まり、結石になってしまったもの。その成分は、コレステロールやビリルビンであることが、現在では知られているが、当時はまだ分からなかった。

 有機物の分析「燃焼法」
 当時、有機物の成分を分析する方法としては「燃焼法」があった。燃焼法はベルセリウスやリービッヒが開発した方法で、有機物の炭素、水素を燃焼することでCO2と、H2Oにして、その量を測定することでもとの成分を調べる方法である。

 プレーグルは胆石の成分を調べるのに、胆石を燃焼させていたが、一回の元素分析に数グラムの試料を必要とした。これを充たすには余りにも手に入る試料量が足りず、必要な量の試料を集めるには何年も実験を繰り返すしか方法がなかった。

 研究を放棄するしかないという局面まで来たが、プレーグルはこのようなことは他にも起こるはずと考え、むしろ今ある試料量で分析できる方法はないものかと立ち止まった。幸運なことに同じグラーツの町にエミッヒがすでに微量化学を進め着々と成果を挙げていた。

 プレーグルは度々エミッヒの研究室を訪れ,有機元素分析の微量化のヒントをうけた。以来彼は本職の医学研究を止めてしまい、生涯を微量分析法の研究に打ち込むことになる。

 「有機化合物の微量分析法」誕生
 最初の仕事は数ミリグラムの試料を精密に計量できるはかりを手に入れることだった。エミッヒはすでにハンブルグのクールマンからセミマイクロ級のはかりを手に入れていたが、もう一段精密なものを求めてクールマンに微量はかりを依頼した。製作には随分な苦労があったが、遂に要求に合うクールマン微量はかりを完成させた。

 このはかりは読み取り精度が1μg(現在の標準偏差で2~3μg)、その上荷重が20gに耐え、ガラスの吸収管が載せられるという当時としては画期的な機械だった。おかげで水と二酸化炭素吸収管を燃焼管につなぐという重量法の炭素水素定量装置が実現した。もちろんこの装置が実用になるまでには苦しい試行錯誤があった。

 燃焼管の加熱にはガス炉が使われたが、700~800℃がせいぜいで、試料の完全酸化が困難なものもあり、燃焼時のキャリヤーガスの流量制御も手加減が必要で、熟練するには骨が折れた。炭素水素分析についで窒素、ハロゲン、硫黄、リン、さらに原子団や分子量測定まで一連の微量化が進められた。

 医化学研究所の中に微量分析の研修コースが開かれ、世界中から受講生が講習を受けた。日本からもヨーロッパ滞在中の留学生が何名かこの講習を受け、その技術を持ち帰った。1917年これら微量分析技術をまとめた著書 "Die quantitative organische Mikroanalyse" が出版され 、たちまち全世界に普及した。

 そして、1923年にはプレーグルの微量分析法が有機化学の進歩に大きく貢献したとしてノーベル化学賞が贈られた。受賞理由は「有機化合物の微量分析法の開発」である。(穂積啓一郎・微量分析の生い立ち)

 現在の化合物分析法
 こうして、ベルセリウス、リービッヒ、デュマ、プレーグルらによって開発された「燃焼法」による有機物の微量分析法は、現在でもCHNコーダーに使われている基本原理となっている。

 現在の方法では、サンプルを酸素を混合したヘリウム気流下で、高温に加熱し(酸化炉)、構成元素のうち炭素は CO2、窒素は NOx、硫黄は SOx、水素は H2O に変換する。このガスを別の炉(還元炉)に移し、Cu 存在下加熱すると NOx が還元されて N2 となる。この CO2、N2、H2O を定量することによって、それぞれの元素の比率を算出する。

 現在、有機化合物の分析法は燃焼法の他、ガスクロマトグラフィー、赤外線スペクトル、NMRスペクトル、質量スペクトル、X線構造解析、UV,VIS(吸光光度法)、蛍光光度法(蛍光光度計)、AA(原子吸光法)、ICP発光分析法など、さまざまな方法が用いられている。

 

 参考HP Wikipedia「フリッツ・プレーグル」「イェンス・ベリセウス」「ユストゥス・フォン・リービッヒ」「黄疸」・患者さんのための医療用語集「黄疸とは?」・CHNネットフォーラム 穂積啓一郎「微量分析の生い立ち

役にたつ有機微量元素分析
日本分析化学会有機微量分析研究懇談会,内山 一美,前橋 良夫
みみずく舎

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有機化合物のスペクトルによる同定法―MS,IR,NMRの併用
シルバーシュタイン,David J. Kiemle,Francis X. Webster
東京化学同人

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第23回ノーベル物理学賞 R・ミリカンの「電気素量」「光電効果」

2010年04月29日 | 科学全般
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 米国で2人目のノーベル物理学賞
 ロバート・ミリカン(Robert Andrews Millikan、1868年~1953年)はアメリカ合衆国の物理学者である。1923年「電気素量」の計測と「光電効果」の研究によりノーベル物理学賞を受賞した。受賞理由は「電気素量、光電効果に関する研究」である。アメリカ人としては2人目のノーベル物理学賞の受賞者だった。

 アメリカ合衆国において大衆的な人気を得た物理学者で、当時のアメリカの物理学界での権威となった実験物理学者である。はじめ古典文学を学ぶが、物理学に転向し1895年コロンビア大学で物理学の学位をえた。物理学の入門的な教科書を書き大衆的な人気を得た。また、カリフォルニア工科大学の創立に加わり、同校が合衆国において有数の名門校となる基礎を築いた。

 電気素量とは何か?
 ミリカンの計測した「電気素量」とは何だろう?

 電気素量(elementary electric charge) は、陽子や陽電子1個が持つ電気の大きさ、つまり電子の電荷の量のこと。電気量の最小単位のことをいう。 素電荷(そでんか)、電荷素量ということもある。

 その値は、約1.60217733×10-19 クーロンである。現在ではクォ-クの発見により、従来の1/3の値が電気量の最小単位とされている。1909年、ロバート・ミリカンが電気素量を精度よく測定した。その時の計測値は、1.592×10-19 クーロンだったとされる。彼はどうやって電気素量を測定したのだろう?

 彼の実験は「ミリカンの油滴実験」といわれる。ロバート・ミリカンはハーヴェイ・フレッチャーと1909年に行った電子の電荷(素電荷・電気素量)を測定するための実験を行った。彼らは、二枚の金属電極間で帯電させた油滴が静止するように、重力とクーロン力を釣り合わせて、これを測定した。

 電極間の電場の強さを知ることによって、油滴の電荷を決定することができる。たくさんの油滴に関して実験を繰り返すことによって、測定値がいつもある特定値の整数倍にあたることが見出された。この実験により、電子一個のもつ電荷が1.602 × 10−19Cであることがわかった。

 当時J.J.トムソンによって、電子の質量と素電荷の比率(比電荷)は測定されており、ミリカンのこの実験により素電荷の値が確定したため、電子の質量も確定することが出来た。

 光電効果とは何か?
 ミリカンの行った光電効果の研究とは何だろう?

 光電効果(Photoelectric effect)は、物質が光を吸収した際に物質内部の電子が励起されること、もしくはそれに伴って電子が飛び出したり、光伝導や光起電力が現れることを指す。励起された電子は光電子と呼ばれる。

 光電効果の原因については、アインシュタインが説いた光量子仮説が有名で、光のエネルギーと振動数の関係を

  E = hν で表した。 (Eは光エネルギー、νは振動数、hプランク定数)

 この式は、1秒あたりの振動数の少ない赤外線より、振動数の多い紫外線の方がエネルギーが大きいことを表していて、実験の結果と一致した。アインシュタインはこの業績によって、1921年にノーベル物理学賞を受賞した。

 ミリカンはアインシュタインの理論を信じず、理論の間違いを見つけるべく、光電効果の精密な実験を繰り返していた。ナトリウム板の光電効果を詳しく調べると、光子の振動数が約460テラヘルツ以下だと電子が出てこない。この振動数に相当するぎりぎりのエネルギーをWとする。

 アインシュタインの式が正しければ、飛び出してくる電子の運動エネルギー(T)は、入射する光子のエネルギーからこのWを引いたものだから、式にすると、

  T = hν-W になる。(νはもちろん入射光の振動数、hはプランク定数)

 1916年ミリカンは、ナトリウム板を使っていろいろな振動数の光を当てて実験した。その結果が図である。結果はみごと直線になり、アインシュタインが正しいことが証明された。横軸は光の振動数、縦軸は飛び出してくる電子の(最大)運動エネルギーを表す。振動数の単位は100テラヘルツ(10の14乗ヘルツ)。運動エネルギーの単位は電子ボルト。

  h は直線の傾きだから、 h = 4.1 ×10-15 電子ボルト・秒

が導かれ、プランク定数を求めることができた。この値は、るつぼ内部の光(黒体放射)の観測から求めた値とぴったり一致。

 つまり、まったく違った現象にもかかわらず同じ意味を持つ値が、両方の観測で一致するというのは、その根拠となる理論が正しいことを示している。

 1916年、ミリカンは実験結果を発表した。彼の結果は、アインシュタインの理論を破るものでは決してなく、理論を見事に証明するものであった。ミリカンはそれでもアインシュタインの理論を信じなかったといわれている。

 ノーベル賞を巡る問題
 こうした素晴らしい業績を残したミリカンであるが、アインシュタインの理論を最後まで受け入れないなど、独善的な面があった。それはミリカンの油滴実験についても見受けられた。あの油滴のアイデアは、当時大学院生だったハーヴェイ・フレッチャーによるものだったのだ。

 当時電気素量は、水滴でさかんに計測されていた。しかし、水は蒸発するので、正確なデータが得られない問題があった。そこでフレッチャーは、蒸発しにくい油を使うことを提案したのだ。その結果、実験は成功。フレッチャーは、自分の行なった研究に関してフレッチャーとミリカンの共著とすることをミリカンに要求したが、ミリカンは単独研究として論文を発表した。この研究成果を一つの理由として、ミリカンは1923年にノーベル物理学賞を受賞した。

 フレッチャーは、死ぬまでこの事に関して黙っていたが、フレッチャーの死後にフレッチャーの原稿がPhysics Today誌に公開され、油滴実験がフレッチャーの研究だということが明らかになった。

 ノーベル賞受賞者には、時に貪欲さも必要だと思う、しかし、人格的にも尊敬されることは大切なことだ。このころは、ノーベル賞受賞者の人格までは選考基準になかったのだ。このような問題は今後も起こりうることなので、厳しく批判されるべきであろう。

 

参考HP Wikipedia「光電効果」「ロバート・ミリカン」「ハーヴェイ・フレッチャー」 
戸塚洋二「
科学入門」・Physics「ミリカンの方法

だれにでもわかる素粒子物理
京極 一樹
技術評論社

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「ハート・ロッカー」に見る爆風の恐怖「外傷性脳損傷(TBI)」とは?

2010年04月28日 | 環境問題
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 映画で注目の「防護服」 
 映画「ハート・ロッカー」は今年、第82回のアカデミー賞で作品、監督賞など6部門受賞に輝いた素晴らしい映画だ。

 斬新な3D映像を武器に、北米で最高の20億ドル(約1800億円)を稼ぎ、日本国内でも約130億円の興行収入を突破。最大の前哨戦といわれる米ゴールデン・グローブ賞でも作品賞、監督賞を獲得していた「アバター」を抑えて圧倒的な支持を得た。

 この映画で、爆発物処理に当たる主役の米兵が身にまとう分厚い防護服は、日本など世界120カ国の警察や軍隊が使う本物だ。世界の注目を集める最新鋭の装備。「映画で有名になったが、良いことばかりじゃない」。防護服を開発したカナダ企業「アレン・バンガード」(本社・オタワ市)のアリス・マクリス副社長(開発研究担当、工学博士)が苦笑する。

 映画の舞台は2004年当時のイラク。防護服を着た米兵が武装勢力の仕掛けた手製爆弾(IED=即席爆破装置)を次々処理していく。敵の気配、今にも爆発しそうな爆弾。極限の緊張状態の中での作業を通して、戦争の狂気を描き出す。

 同社が、この防護服を開発したのは2004年だった。2003年開戦のイラク戦争では、武装勢力による爆弾攻撃で多数の米兵が死傷。金属片などから保護するだけでなく、爆風の衝撃を和らげ、戦場で長時間着用できることが求められた。

 カギを握るのは材質だ。業界シェア85%を誇る人気商品の素材は「企業秘密」。マクリス氏は「衝撃を吸収する柔らかい素材と、金属片や銃弾から体を守る硬い素材を複合的に使用しているのが特徴」と話す。

 重さは約30キロ。記者も米軍基地で試着したことがある。砂袋を巻きつけたような感じだが、意外に柔らかく小回りがきく。腕に装着された大型のリモコンで、ヘルメット内に外気を入れたり、冷却機能で温度を下げることもできる。価格は非公表。映画には依頼を受けて貸与した。

 重量防弾服とTBI
 米兵を守る装備が開発されると、その弱点をつくような攻撃が始まり、新たな負傷が生じる。戦場では、そんな皮肉な連鎖が続く。

 イラクやアフガニスタンでの戦争では、米軍の頑丈な装甲車に対し、武装勢力が強力な爆弾を開発。その仕掛け爆弾の爆発から生じる超音速の衝撃波(圧力変化の波)で、脳内組織が破壊される「外傷性脳損傷(TBI)」の米兵が多く出た。目に見える傷はないが、頭痛やめまい、集中力の低下などの症状を訴える。

 同社は爆風が人体にもたらす影響を20年以上、研究してきた。「昔なら死亡していた衝撃でも、最新鋭の装備で生き残るため繰り返し爆風を浴び、TBIを発症する兵士が増えた」とマクリス氏は語る。同社の防護服とヘルメットを使うとTBIを防ぐ可能性が高い。

 TBI発症の詳しい仕組みは分かっておらず、同社は「衝撃の加速度や圧力を計測してデータを蓄積する」センサーも開発。米軍はヘルメットに付けるこのセンサーを2007年から戦場の兵士に配備した。「テロとの戦い」で繰り広げられる最新鋭の装備開発。一方でTBIとの戦いが続いている。(毎日新聞 2010年4月24日) 

 重量防弾服が症状を悪化?
 イラクやアフガニスタンで手製爆弾(IED:即席爆発装置)攻撃を受けた米兵2万人以上が爆風による外傷性脳損傷(TBI)と診断されている問題で、米国防総省などが1999年から研究者に爆風と脳損傷の関係について調査・対策の必要性を指摘されながら長年放置していたことが、毎日新聞の調査で分かった。

 重い防護服が症状を悪化させる危険性も指摘されたが、同省は2007年になってようやく対策を本格化させた。一連の対応の遅れが事態を悪化させた疑いが浮上している。国防総省は、爆弾による負傷は飛来物などによる直接的な衝撃で起きると考え、重厚なヘルメットや防弾服を積極的に導入した。しかしイラク戦争では、外傷がないのに爆風だけで脳損傷を起こす米兵が続出。米国防総省は2007年以降、戦地に向かう米兵の脳機能を事前に検査するなど対策に乗り出した。

 ミネソタ大のデビッド・トルードー准教授は退役軍人省軍医だった1998年、湾岸戦争(1991年)帰還兵らを対象に脳波の調査を実施。爆風をあびた帰還兵が車の事故で脳損傷を負った患者らと同様の兆候を示すことに気づいた。同年医学論文で発表、翌1999年から2年間にわたり複数回、同省に拡大調査の予算措置を求めたが、認められなかったという。論文は最近、「爆風と脳損傷の関係を最初に指摘した」として医学雑誌などに再掲されている。

 また、ジョンズ・ホプキンス大のイボラ・セルナック医師も2001年から2005年にかけて、米国防総省に対し繰り返し、爆風と脳損傷の関係調査の必要性を訴える提案書を送った。しかし「優先順位が高くない問題」と拒否された。セルナック医師は1990年代の旧ユーゴ紛争で、多数の兵士が爆風にあおられ記憶障害などを起こす症例を調査。1999年に論文で発表している。

 セルナック医師は重くて硬い防弾服が、爆風が兵士に与える圧力を増幅させることも指摘。国防総省は2008年、防弾服を見直し、「(爆風による)衝撃波を消散させるのに効果的」(予算請求書)なセラミック素材の軽量防弾服の研究を始めた。

 「放置」批判に対し、米陸軍病院脳損傷センターのジャッフェ代表は「2003年から兵士の脳検査を研究するなど、早期に取り組んできた」と説明している。(毎日新聞 2009年2月21日)

 TBIはなぜ起きる?
 重量装備は兵士を守るものと思われたが、逆に爆風を正面から受ける。その結果、装備の下の脳には深刻なダメージを受けるとは驚きだ。ところで、TBIとは何だろう?

 TBIとは、外傷性脳損傷(Traumatic brain injury)のことで、頭部に物理的な衝撃が加わり起こる脳損傷。略称TBI。軽度のものは軽度外傷性脳損傷(MTBI)と区別することもある。

 脳の一部が局所的にダメージを受ける脳挫傷とは異なり、脳の軸索が広範囲に損傷を受けるもの。軽度から中程度の損傷においては、早期回復が期待されるが、高次脳機能障害に至った場合、記憶力、注意力の低下や人格形成やコミュニケーション能力に問題が生じるほか、四股の麻痺が生じることもある。外見上、健常人と何ら変化は無いが、社会適応性が損なわれるため、通常の生活が送れずに苦しむ患者は多い。

 爆風のダメージは想像以上
 人体に起きる気圧のダメージを考えてみよう。例えば、私たちは高い山に登ると気圧の変化で、耳が痛くなることがある。痛みを取り除くためには、つばを飲み込んだり、あくびをしたりする。

 これは水中に潜るときにも起きる。私たちはわずか5m潜るだけで、すぐに耳が痛くなる。そのまま潜ると鼓膜が破れてしまうので「耳抜き」という作業を行う。これは外の水圧で鼓膜が押されて痛くなるのを、内側から息を送り痛みを取り除く作業だ。

 毎日の天気の変化もそうである。低気圧が近づくと気温が変化し、風が吹き、雨が降る。この時の気圧の変化は100hPa(0.1気圧)程度。わずかの気圧の変化でも、私たちの体は悲鳴を上げてしまう。

 爆風による人体への影響を考えてみよう。人体が爆風に暴露した場合、まず最初に負傷するのが耳と眼である。 次に損傷を受けるのは表皮と肺である。表皮は厚手の服などで守られていれば軽症で済むが、呼吸器から出血すると大事に到る場合がある 。

 ふだんの気圧を1気圧とすると、人体にわずか2気圧の爆風を受けるだけで、鼓膜破裂、眼底出血を起こす。4気圧で眼球破裂、内臓破裂、皮膚に裂傷を引き起こし重傷。それ以上は死の世界で、人体が12.0kgf/cm²(kgfとはkg重のこと12気圧に相当)以上の爆風に晒されると、肉が剥がれ、人間としての原形を留めなくなってくる。広島に落ちた原子爆弾では何と、爆風は数十万気圧にもなるという。(Wikipedia)
 
 条文の平和より現実の平和
 「ハート・ロッカー」とは極限状態とか棺桶という意味。米国の若い兵士達はこうした極限状況で、祖国のため命をかけて戦っている。米国は圧倒的な軍事科学技術の優位性を確立しているので、現在は徴兵制は停止中である。しかし、正義を掲げて勇敢に戦う国民性がある。

 米国ほどめだたないが、お隣の韓国では、男性に18歳から約2年の徴兵期間がある。永世中立国のスイスの男性にも260日間の兵役義務がある。世界のほとんどの国が、国を守るために徴兵制があり軍隊がある。英国は現在、徴兵制をとっていない。しかし、有事の際にはすぐに徴兵制を採用する。第二次大戦当時、女性まで徴兵した唯一の国だ。

 それに比べ日本はどうだろう?NHKの「龍馬伝」で坂本龍馬は黒船を見て、世界に対抗するために日本にも黒船が必要だと考えた。現実的な平和を得るためには、戦争はしなくても、軍備が必要だと訴えていたのだ。そして勝海舟の海臨丸を見て、日本にも黒船があることに驚き、すぐに勝の弟子になる。

 こうして黒船の技術力を目の当たりにした志士たちは、鎖国による平和を否定し、明治維新による軍備による現実の平和を選ぶ。日本を欧米の植民地にさせないために、彼らは必死だったことが分かる。明治維新の志士たちが現代日本を見たらどう思うだろうか?

 「いったいいつからこの国は、国を憂い、強くなろうとする気概をなくしてしまったのだ?」ときっと思うことだろう。戦後65年たってもいまだに、憲法を改正できず、自分の国を自分で守ったことのない国民を大量につくり続ける日本。今後、誰がこの国を守るのであろうか?

 

2001年・日本の軍事力―「有事」の際、本当はどこまで守れるのか
桃井 真
祥伝社

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東国原知事「拡大阻止に尽力」過去100年で最多「口蹄疫」とは?

2010年04月27日 | 環境問題

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 東国原知事
 宮崎県の東国原英夫知事は「10年前の規模をはるかに上回っている。封じ込めに全県挙げて取り組みたい」と危機感を募らせた。10年前は3軒で計35頭の牛が処分された。東国原知事は前回の被害概要や県の対応状況について確認したうえで「不幸中の幸いで発生場所が集中している。拡散を阻止しないといけないので、冷静かつ危機感を持って尽力してほしい」と語った。

 宮崎県で家畜伝染病「口蹄疫」に感染した疑いのある牛が相次いで見つかっている問題で、影響は畜産業界以外にも広がっている。鹿児島・鹿屋市の「かのやばら園」では26日、開花宣言を行う予定だったが、口蹄疫のため、取りやめになった。さらに、毎年9万人が訪れるゴールデンウイークの「かのやばら祭り2010春」も中止になった。

 県内随一の畜産地域だけあって、駐車場に消毒液をしみこませた毛布を敷くなど、感染拡大に細心の注意を払っている。来場客は「しょうがないかな。全体に広がる怖さを考えれば」と語った。4月25日、宮崎・川南町で新たに4頭の牛に感染の疑いがあることがわかり、黒毛和牛725頭が処分されることになった。さらに感染拡大を防ぐため、周辺の1.5kmを3日間封鎖する措置がとられた。

 過去100年で最多
 東国原知事は27日に上京し、政府に農家の経営安定策や風評被害の防止策を要望することを表明した。これまで感染疑いは7例・20頭で、処分対象の牛と豚は1,108頭にのぼり、過去100年で最多となった。

 赤松農水相は「これ(口蹄疫)は人間にはまったく影響ありませんし、一切出荷もしていませんから、冷静に受け止めていただきたい。任せてください、ちゃんとやりますから、大丈夫です」と述べた。

 しかし、すでに影響は、周辺の県に波及している。隣の大分・杵築(きつき)市では、26日に予定されていた肉牛などの競りが中止になった。そして、海をまたいだ山口県でも26日、畜産農家に消毒薬が無料で配布された。山口県の畜産農家は「非常に心配はしています。(牛の)観察については、きめ細やかに見ていきたいと思っています」と語った。さらに、その余波は畜産業界にとどまらなかった。

 宮崎・都城市のホテルでは、6月の大安の日に、畜産業関係者が予約していたという結婚式がキャンセルになった。ホテル側は「2カ月切っていますので、そこの穴埋めできるか心配」と話している。そのほか、九州各地で、祭りやイベントなどの中止が決まるなど、影響は今後も拡大するとみられる。 (04/26 18:33 テレビ宮崎)

 口蹄疫とは?
 感染した牛は7例20頭なのに、処分されるのが1,108頭というのは尋常ではない。それにしてもいくら病原体が広がるのを防ぐためとはいえ、ゴールデンウィークのイベントまで中止とは、そんなに大変な病気なのだろうか?

 感染地付近の道路では、通行する車のタイヤに消毒薬を散布するほどの徹底ぶりだ。口蹄疫とは何だろうか?

 口蹄疫(FMD)は、家畜の伝染病のひとつ。偶蹄類(牛、水牛、山羊、羊、鹿、豚、猪など)やカモシカ、ハリネズミ、ゾウなどが感染するウイルス性の急性伝染病。日本では家畜伝染病予防法において家畜伝染病に指定されており、対象動物は牛、水牛、鹿、羊、山羊、豚、猪。OIEリストA疾病。

1898年、ドイツの医学者フリードリヒ・レフラーとポール・フロッシュにより病原体が突き止められ、細菌より小さいことが確かめられた。これが、世界で初めて確認された濾過性病原体、つまり「ウイルス」の一つである。

 感染・経過
 感染が確認された国この病気は、ピコルナウイルス科 (Picornaviridae) アフトウイルス属 (Aphtovirus) の口蹄疫ウイルス (foot-and-mouth disease virus, FMDV) によって発生する。ただ単に「アフトウイルス」と言えば口蹄疫ウイルスを指す。また、ラブドウイルス科 (Rhabdovirideae) ベシクロウイルス属 (Vesiculovirus) の水胞性口炎ウイルス (vesicular stomatitis virus, VSV) による水胞性口炎もこれに酷似した症状を示し、牛丘疹性口炎とともに類症鑑別が必要とされる。

 口蹄疫の伝播力の高さ、罹患した動物の生産性の低下、子牛の時に高死亡率(成牛は1%以下)などが口蹄疫が恐れられている主な理由で、経済的には口蹄疫が発見され次第、畜産物の輸出ができなくなってしまう事も重要である。

 一般的には、感染すると発熱、元気消失、多量のよだれなどがみられ、舌や口中、蹄の付け根などの皮膚の軟らかい部位に水疱が形成され、それが破裂して傷口になる(但し、水疱が形成されないケースも報告されている)。患畜がウイルスの感染そのもので死亡する率は低いが、水疱が破裂した際の傷の痛み(細菌によるその後の二次感染も含む)で摂食や歩行が阻害され、体力を消耗する。それによって乳収量や産肉量が減少するため、畜産業に対して大きな打撃となる。

 また、家畜の伝染病の中では最も伝染力の強い疾病でもあり、水疱から破裂した際に出た口蹄疫ウイルスが風に乗るなどして、気象条件によっては100km以上移動することもある。日本でも2000年春、92年ぶりに宮崎県と北海道でO型の口蹄疫の発生が見られており、2010年にも宮崎県で感染の疑い例が生じている。

 人には感染しない。また患畜の乳や肉を摂取しても胃酸で取り除かれるため影響はない。人の手足口病Hand-Foot-Mouth diseaseとはまったく関係ない。

 対策
 致命的な病気ではないが、前記のとおり偶蹄類が感染する伝染病の中でも最も伝染力が強く、蔓延すれば畜産業界に経済的な大打撃を与えかねない疾病でもあるため、患畜として確認され次第、家畜伝染病予防法に基づいて全て速やかに殺処分される。本疾病に対して治療が選択されることは基本的に無い。

 なお、殺処分については、狂犬病の様な第17条第1項による都道府県知事の権限ではなく、第16条第1項に基づく家畜保健衛生所の家畜防疫員の指示により、患畜と確認され次第直ちに行われる。この指示書についても第17条第1項に基づく『殺処分命令書』ではなく、第16条に基づく『と殺指示書』という形式で発せられる(命令の内容および効力に事実上差は無い)。(Wikipedia) 

 

BSE(狂牛病)の化学―金属イオンと神経疾患
西田 雄三
牧歌舎

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ウイルスによる恐怖の感染症!「HTLV」「HIV」「HPV」とは何か?

2010年04月26日 | 微生物・ウイルス
科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学情報を、くわしく調べやさしく解説!毎日5分!読むだけで、みるみる科学がわかる!
 HTLV
 世の中にはさまざまな病気がある。ウイルスによる感染症も多い。ウイルスの病気にはどんなものがあるだろう?

 そう、インフルエンザ、麻疹、日本脳炎、ノロウイルス感染症など多数ある。浅野史郎氏のかかった「ATL」(成人T細胞白血病リンパ腫)はHTLV1というウイルスが、免疫細胞であるT細胞を癌化させる病気であった。しかし、潜伏期間が長く、感染してから50年も経てから発病する。発病率も5%程度と低い。

 HTLV1ウイルスが体内にあるキャリアーであっても、95%は健康なまま生涯を終える。浅野氏にとっても「青天の霹靂」であったろう。いったん発病するとT細胞の癌化は抑えられない。癌化したT細胞(ATLL細胞)は、特徴的な花びらのような形状をした核を有し、「花細胞」と呼ばれる。

 こうして、免疫担当細胞として重要なT細胞ががん化すると、強い免疫不全を示す。そのため、感染症にかかりやすくなり、真菌、原虫、寄生虫、ウイルスなどによる日和見感染症を高頻度に合併する。

 生き残るための治療方法としては、自分のT細胞をいったん全部殺し、新しい造血幹細胞を他人から移植するしかない。現在浅野氏は移植手術を終え、新しい血液が増えていくのを安静に待っている状態だそうだ。

 このようなウイルスの病気は、病原体が小さいこともあって、まだまだ分からないことが多い。今回のHTLV1は、「ヒトTリンパ好性ウイルス」という。このウイルスはRNAと逆転写酵素を持つ種類のウイルスで、「レトロウイルス」のなかまである。

 HIV
 ではHIVというと何のウイルスだろう?

 そう、「エイズ(AIDS)」のウイルスである。エイズは、日本語では「後天性免疫不全症候群」のことである。この原因となる病原体が「HIV」(ヒト免疫不全ウイルス)で、人の免疫細胞に感染し免疫細胞を破壊して、最終的には後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症させるウイルスである。

 このウイルスも分類上は、「レトロウイルス」のなかまで、エンベロープという特殊な膜を持つ、プラス鎖の一本鎖RNAを持つウイルスである。

 HIVは免疫機能の発動に必要なCD4+T細胞というリンパ球などに感染し、比較的長い潜伏期の後に活性化してCD4+T細胞を破壊してしまう。CD4+T細胞が著しく減少すると体内の免疫力が極度に低下し、免疫が正常であれば排除できるような病原体にも簡単に感染する日和見感染を起すようになり、容態が不安定になる。

 エイズとはこのように感染後の潜伏期を経て陥ってしまう免疫不全状態を指し、単にHIVに感染しただけ(HIVキャリア)ではエイズとは呼ばない。他にも、HIVは脳神経の免疫を担うミクログリア細胞に感染する事が判明しており、HIVに感染したミクログリア細胞が神経系組織に影響を及ぼし、精神障害や認知症など神経症状を呈するエイズ脳症を引き起こす。

 全体の多くは性行為による感染で、注射器の使い回しによる感染、母子感染などが後に続く。一般に感染源となりうるだけのウイルスの濃度をもっている体液は血液・精液・膣分泌液・母乳である。主な感染経路は性的感染、血液感染、母子感染の3つに限られている。

 HPV
 ではHPVというウイルスは何のウイルスだろう?

 HPVはヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus:HPV)のこと。パピローマまたは乳頭腫と呼ばれるいぼを形成することから名付けられた。

 環状構造の二本鎖DNAウイルス。全世界的に古くから存在していた。現在では100種類以上の型が報告されている。正20面体のカプシドで覆われており、遺伝子サイズは種類により異なるがだいたい約8,000塩基ほどで、8から9のオープンリーディングフレーム(ORF:蛋白をコードしていると推定される遺伝子。しかしその遺伝子産物は同定されていない)を含んでいる。子宮頸癌の原因とされるウイルスである。

 このウイルスに有効なワクチンができており、子宮頸がん予防ワクチンとして、日本でも昨年末から接種が始まった。しかし、高額な接種費用が普及の「壁」となっており、公費助成を求める動きが活発化している。

 ワクチンは既に100カ国以上で使用され、欧米など二十数カ国は公費や保険で費用をカバーしている。国は早急に公費助成の道を開き、普及に努めてもらいたいところ。
 
 子宮頸がんは、性交渉を通じたヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が主原因。HPVは、「特別な人が感染するわけでなく、大人の女性の7、8割は感染する」という。 HPV感染後の細胞のがん化は、少なくとも10年掛かるとされる。しかし癌化した場合、子宮摘出という事態も少なくない。予防の大切さがそこにある。

 ワクチンは特定の2種類のHPV感染を防ぎ、子宮頸がん全体の約7割を予防できるとされる。日本産科婦人科学会などの関連団体は「定期的な検診の受診とワクチン接種の『両輪』で、子宮頸がんはほぼ百パーセント防げる」として、予防効果が高いと見込まれる11~14歳の女児への接種を推奨している。(2010年04月22日 愛媛新聞)

 そもそもウイルスとは何か?
 ウイルスの大きさは小さいものでは数十nmから、大きいものでは数百nmのものまで存在し、他の一般的な生物の細胞(数~数十µm)の100~1000分の1程度の大きさである。

 ウイルスは細胞を構成単位としないが、遺伝子をもち他の生物の細胞を利用して増殖できるという、生物の特徴を持っている。現在でも自然科学は生物・生命の定義を行うことができておらず、便宜的に、細胞を構成単位とし、代謝、増殖できるものを生物と呼んでおり、細胞をもたないウイルスは、非細胞性生物または非生物として位置づけられる。

 ウイルスは様々な点で他の生物と大きく異なる。

1.ウイルスは非細胞性で細胞質などは持たない。基本的にはタンパク質と核酸からなる粒子である。
2.他の生物は細胞内部にDNAとRNAの両方の核酸が存在するが、ウイルス粒子内には基本的にどちらか片方だけしかない。
3.他のほとんどの生物の細胞は2nで指数関数的に増殖するのに対し、ウイルスは一段階増殖する。またウイルス粒子が見かけ上消えてしまう暗黒期が存在する。
4.ウイルスは単独では増殖できない。他の細胞に寄生したときのみ増殖できる。
5.ウイルスは自分自身でエネルギーを産生しない。宿主細胞の作るエネルギーを利用する。

 ウイルスの分類
 通常の細胞性の生物は2本鎖DNAに遺伝情報を保存しているが、2本のうちの1本は冗長である。ウイルスの場合にはゲノムは1本鎖であったり2本鎖であったりする。またDNAではなくRNAを用いている場合もある。1本鎖RNAを用いる場合には、さらに+鎖(mRNAと同様に遺伝子が5'→3'方向に読み取られる)を用いる場合と、-鎖(遺伝子が相補鎖を使って3'→5'方向に読み取られる)を用いる場合がある。

 このようなDNA・RNAのタイプによって分ける方法は、ウイルスによる逆転写を発見した功績でノーベル賞を受賞したデビッド・ボルティモア(1938~) によって提案され、現在では国際ウイルス分類委員会の定める分類体系の基本骨格となっている。ボルティモア分類とでは、こうしたゲノムの種類と発現様式によって以下の7群に分類する。

1.2本鎖DNA 2.1本鎖DNA 3.2本鎖RNA 4.1本鎖RNA +鎖 5.1本鎖RNA -鎖 6.1本鎖RNA逆転写 7.2本鎖DNA逆転写

 

参考HP Wikipedia「HTLV」「HIV」「HPV」「ATL」「AIDS」「ウイルス」「子宮頸癌」 

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キャリア200万人、発症率は5% 成人T細胞白血病「ATL」とは?

2010年04月25日 | 健康
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 HTLV1のキャリアー
 「ATLの急性期の発症と認められます。治療を始める時期です」。東北大医学部付属病院の医師から、告知を受けたのは昨年5月末だった。

 しかし、「告知」が突然だったわけではない。数年前、母が血液の病気にかかり、その際の検査で、ATLの原因ウイルスHTLV1のキャリアー(感染者)だと分かった。その後、「ところで、史郎はどうなの」という話になった。

 私自身も2005年に仙台市の宮城県赤十字血液センターで献血をした後、HTLV1のキャリアーだと知らされていた。「そう言えば、そんなこと言われた覚えがある」。その程度のやりとりで、私がキャリアーである事実をやっと家族が認識したのである。(2010/03/23付 西日本新聞朝刊)

 テレビでおなじみの政治家「浅野史郎」氏はATL治療のため、現在闘病生活中である。

 浅野氏は東京大法学部を卒業後、1970年に旧厚生省(現厚生労働省)に入り、1993年から2005年まで、故郷・宮城県の知事を3期12年務めた。捜査報償費をめぐる問題で県警と対峙するなど情報公開に積極的。“改革派知事”として全国に名をはせた。

 ATLは「成人T細胞白血病リンパ腫」のことだが、おそらくほとんどの人が知らなかったのではないだろうか?

 テレビによく出演していた元宮城県の知事、浅野史郎氏が入院したことで、私も知ることができた病気である。ATLとはいったいどんな病気なのだろうか?

 ATLとは何か?
 ATL(Adult T-cell leukemia/lymphoma)とは、成人T細胞白血病のこと。HTLV-1というウイルスの感染が原因で起きる血液のがん。感染から50年ほどたってから発症する。抗がん剤治療や骨髄移植が行われるが、ウイルスの増殖を抑える効果的な方法がなく根治が難しい。このウイルスは、難病の脊髄(せきずい)症(HAM)も引き起こす。

 感染した母親が4カ月以上母乳で育てた場合の乳児への感染率は15~20%とされる。前宮城県知事の浅野史郎さんが昨年6月に緊急入院したことで関心が集まった。

 ATLは古くから存在していた。1976年に高月清らによって発見、命名された疾患で、腫瘍ウイルス「HTLV1」が原因とわかった。

 日本では、西日本、特に、九州にHTLV1感染者が多く、世界的には、カリブ海沿岸諸国、中央アフリカ、南米などで頻度が多い。HTLV1は母乳により垂直感染を起こすことが知られており、乳幼児の感染者が40-60年の潜伏期を経て成人T細胞白血病を発症する。HTLV-1キャリアは日本全国で100万-200万人いるといわれている。毎年600-700人程度キャリアがATL(病型は問わない)を発症している。キャリアの生涯を通しての発症危険率は2~6%である。

 ATLの治療法
 本疾患は多くの病型が知られているが、急性化すると極めて予後不良である。急性型と診断された患者が放置された場合、生存期間は平均1年未満である。

 急性白血病と同様、寛解導入療法後の造血幹細胞移植を行う。寛解導入療法とは、骨髄中の白血病細胞が5%以下で、かつ末梢血・骨髄が正常化し、白血病に基づく症状や所見が消失した状態に導くための治療法。しかし、病原性白血球を完全に取り除くことは不可能なので、新しい造血幹細胞の移植が必要である。

 ATLの感染ルート
 HTLV1の感染はHTLV1感染リンパ球がリンパ球に直接接触したときに感染が成立するといわれており、このような経路としては輸血、性交、母乳があげられる。性交に関しては精液に含まれるリンパ球を通じて男性から女性への感染が基本である。

 母乳感染がほとんどであり、人工栄養に切り替えると母子間感染率が20%から3%に低下するため、本疾患の撲滅には母乳遮断が有効であると考えられている。

 なお、個体内でのHTLV1増殖の場は主にリンパ節であると考えられている。リンパ節で増殖したATL細胞が血液中に流出し(白血化)、特徴的な細胞が末梢血で見られるようになる。(Wikipedia)

 

参考HP Wikipedia「ATL」・浅野史郎Webサイト「夢ライン」

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「SDO」巨大なプロミネンス観測!それでも燃えつきない太陽

2010年04月24日 | 宇宙
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 地球の20倍!太陽の巨大な紅炎
 米航空宇宙局(NASA)は22日までに、太陽観測衛星「ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)」が撮影した太陽の表面から噴出する巨大なプロミネンス(紅炎)の画像を公開した。

 プロミネンスは磁場の力でガスが表面から持ち上げられる現象。画像は3月30日に撮影されたもので、巨大なプロミネンスの弧を鮮明にとらえている。NASAによると、プロミネンスが描く輪の直径は、地球の直径の20倍以上になるという。

 NASAの太陽物理学専門家のリチャード・フィッシャー氏は「40年以上にわたる研究の中で、このような活発な太陽を見たのは初めてだ。SDOは太陽に対するわれわれの理解を変え、ハッブル宇宙望遠鏡同様に大きな衝撃を科学に与えるだろう」としている。

 SDOは2月11日に打ち上げられた。高度約3万5000キロの上空で、5年間にわたり、太陽の黒点やフレア(太陽表面爆発)などの現象を観測する。(jiji.com 2010/04/23)

 太陽はなぜ燃えつきないのか?
 NASAの太陽観測衛星ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)が、これまで見たことのない鮮明な活動画像を送ってくれた。これだけ激しい活動をしているのに太陽は燃えつきてしまわないのだろうか?

 これまでの研究で、太陽は約46億歳。太陽の寿命は約109億年とされていて、あと50億年は燃えつきずに存在する。しかし、今から10億~20億年後には太陽の温度が少しずつ上がり、地球は熱くなって生物は住めなくなると言われている。

 太陽は過去の超新星の残骸である星間物質から作られた、第2世代の星であると考えられている。この根拠は主に、鉄や金、ウランといった重元素が太陽系に多く存在していることにある。なぜならば、これらの重元素の成因としては、質量の大きな高温の星の内部で元素合成によって作られるという過程が最も可能性が高いシナリオだからである。

 太陽はどうやって燃えているか?
 まだ10億年は地球に影響はなさそうだ。だが、太陽はどのようにして燃えているのだろうか?

 太陽は酸素が必要の無い「核融合」と呼ばれる反応で燃えている。反応式を具体的に書いてみると...     4 H → He   つまり 水素4個がヘリウム1個に変わっている。

 実は太陽というのは水素の塊。その水素が自分の重さでぎゅっと圧縮された結果、中心部では非常に高温になり、このような反応が起こり、そのエネルギーで燃えている。

 46億年前、中心核では熱核融合により水素原子4個がヘリウム原子1個に変換されるために圧力が僅かに下がり、それを補うために中心部は収縮し、温度が上がる。その結果核融合反応の効率が上昇し、明るさを増していった。

 45億年前(太陽誕生から1億年後)に主系列星の段階に入った太陽は、現在までに30%ほど明るさを増してきたとされている。今後も太陽は光度を増し続け、主系列段階の末期には現在の2倍ほど明るくなると予想されている。

 我々の太陽は超新星爆発を起こすのに十分なほど質量が大きくない。20世紀末~21世紀初頭の研究では太陽の主系列段階は約109億年続くとされており、63億年後には中心核で燃料となる水素が消費し尽くされ、中心核ではなくその周囲で水素の核融合が始まるとされる。

 太陽は今後どうなるのか?
 その結果、重力により収縮しようとする力と核融合反応により膨張しようとする力のバランスが崩れ、太陽は膨張を開始して赤色巨星の段階に入る。外層は現在の170倍程度にまで膨張する一方、核融合反応の起きていない中心核は収縮を続ける。この時点で水星と金星は太陽に飲み込まれ、消滅しているだろうと予想されている(高温のため、融解し蒸発する)。

 76億年後には中心核の温度は約3億Kにまで上昇し、ヘリウムの燃焼が始まる。すると太陽は主系列時代のような力のバランスを取り戻し、現在の11~19倍程度にまで一旦小さくなる。中心核では水素とヘリウムが2層構造で核融合反応を始める結果、主系列段階よりも多くの水素とヘリウムが消費されるようになる。そのため、その安定した時期は1億年程度しか続かない。

 やがて中心核がヘリウムの燃えかすである炭素や酸素で満たされると、水素とヘリウムの2層燃焼が外層部へと移動し、太陽は再び膨張を開始する。最終的に太陽は現在の200倍にまで巨大化し、膨張した外層は現在の地球軌道近くにまで達すると考えられる。このため、かつては地球も太陽に飲み込まれるか蒸発してしまうと予測されていたが、20世紀末 - 21世紀初頭の研究では赤色巨星段階の初期に起こる質量放出によって惑星の公転軌道が外側に移動するため、地球が太陽に飲み込まれることはないだろうとされている。

 赤色巨星の段階に続いて太陽は脈動変光星へと進化し、これによって外層の物質が放出されて惑星状星雲を作る。その後、太陽は白色矮星となり、何十億年にもわたってゆっくりと冷えていく。このシナリオは質量の小さな恒星の典型的な一生であり、恒星としての太陽は非常にありふれた星であると言える。(Wikipedia)

 

参考HP National Geographic news「SOD観測開始:輪を描く紅炎

太陽の科学―磁場から宇宙の謎に迫る (NHKブックス)
柴田 一成
日本放送出版協会

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太陽と恒星―「静かなる誕生」から「激動の死」へ (NEWTONムック)

ニュートンプレス

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オニヒトデ、6万匹退治で「自然環境功労者環境大臣表彰」受賞!

2010年04月23日 | 環境保護
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 サンゴの天敵を退治せよ!
 サンゴを食い荒らす天敵のオニヒトデの駆除に取り組んでいる和歌山県串本町の「サンゴを食害する動物駆除実行委員会」(御前洋代表)が、2010年度の「みどりの日 自然環境功労者環境大臣表彰」を受賞することになった。

 4月29日に東京・新宿御苑で表彰式が行われる。

 同町沿岸では、1991年以降、黒潮の影響で冬場の平均水温が1~2度上昇。沖縄近海から運ばれたオニヒトデが越冬し、定着する環境が整った。2004年に始まった大発生では、約8割のサンゴが食害で死滅するなど、被害が深刻な海域も出てきた。

 このため、地元の29のダイビング業者でつくる同実行委が「ラムサール条約に登録された串本の海を守ろう」と、定期的な駆除に乗り出した。作業にはボランティアも加わり、今年3月末までに計400回以上実施。計6万6643匹を駆除した。

 継続的な作業が功を奏し、ピーク時に1人約60匹だった駆除数が、昨年度は6.3匹にまで減少。実行委は潮岬の南端から同町和深まで海岸線に沿って約30キロを潜水調査しているが、生息範囲は広がりを見せているものの、個体数は目視でも大幅に減少しているという。

 御前代表は「受賞は率直にうれしく思う。メンバーの士気も高まるだろう。オニヒトデを根絶することは無理だが、駆除を継続することで被害を最小限に食い止められる」と話している。

 同表彰は1999年、環境保護への功績の顕彰を目的に創設。県内では、これまで広川町立津木中学校、高野町の「ゲンジの森実行委員会」など6団体が表彰されている。(2010年4月23日  読売新聞)

 オニヒトデとは?
 沖縄ではよく知られていた、オニヒトデによるサンゴの食害。このように串本町のような本州の沿岸でも被害が報告されている。それを地元の人達が根気強く駆除して、サンゴを守り続けている努力が「自然環境功労者環境大臣表彰」を受けることになった。

 とても1人の力では考えつかない。駆除の回数400回、駆除数は計6万6643匹は素晴らしい協力と、努力の成果である。さてサンゴを食べる「オニヒトデ」とは何だろう?

 オニヒトデ ( Acanthaster planci)とは、オニヒトデ科の動物である。輻長約15cmで、多数の腕を持ち、全身が棘に覆われた、大型のヒトデである。サンゴを食べ、時に珊瑚礁の破壊者と目される。体表面には大量の有毒の棘が生えており、これがヒトの皮膚に刺さるとオニヒトデ粗毒によって激しい痛みを感じ、アナフィラキシーショックによって重症に陥ることがあり、最悪の場合、死に至ることもある。

 造礁サンゴの敵、オニヒトデ は腕の先端から先端までの直径が最大で約60cmまで成長する、通常は30‐40cmである。1個体のメスヒトデから1000万個もの卵(約 0.2mm)が放出される。受精卵はヒトデとして典型的な発生過程をたどり、約半日後に孵化し、幼生(ビビンナリア)は植物プランクトンを摂取して成長、2~6週間の浮遊幼生期間の後に石灰藻などの付着基盤に固着。直径約0.5mmで5腕の稚ヒトデに変態する。

 定着した幼体は石灰藻やデトライタス(魚などの死体が分解してできた有機物)を食べるが、ある程度の大きさまで成長すると石灰藻食、デトライタス食に加えて珊瑚を捕食するようになる。腕の数を増やしながら生長し、熱帯海域の温度では約半年間で直径8mmまで生長して腕の数もこのヒトデとして 標準の14‐18本となる。この頃から腕と体盤の上の棘が伸び始め、造礁サンゴを食べるようになる。

 満1年で径数センチ、満2年で約 20cmとなって性成熟し始め、3年目以降数年間は毎年繁殖を繰り返し、6~7年で生理的な寿命を迎えると見られている。石灰藻、珊瑚とも摂食するときは口から胃を裏返して広げて餌生物に押し付け、消化吸収を行う。なお、通常はミドリイシ類やコモンサンゴ類等の成長が早いサンゴを好む。(Wikipedia)

 串本町とはどんな町?
 さて、今回の舞台「串本町」は明石家さんまさんの出身地。紀伊山地を背に潮岬が雄大な太平洋に突き出した本州最南端の町。(面積135.78km2)本州最南端の地、潮岬は北緯33度26分、東経135度46分。これは、東京の八丈島とほぼ同緯度に位置する。茫々たる太平洋に面し、東西に長く延びた海岸線はこの地方の特色であるリアス式海岸で、奇岩・怪石の雄大な自然美に恵まれ、吉野熊野国立公園及び枯木灘県立自然公園の指定を受けている。

 黒潮の恵みを受けて、年間平均気温17℃前後と気候はいたって温暖。冬季でも平均気温6~8℃でほとんど雪を見ることはない温暖な気候だ。1970年代末には潮岬海域にも貴重なサンゴ群落があることが認識されていた。環境の攪乱に対して敏感なサンゴ群集は陸域の環境攪乱に強く影響されるので、貴重なサンゴ群集のためにはこの海域に対する何らかの保全的施策が期待されていたところ、環境省自然保護局は2004年に串本海中公園地区管理方針検討調査という資質調査を実施。

 調査の結果、本州の中部という比較的高緯度に位置しながら大規模で高密度な、かつ、多様性の高いサンゴ群集が生息しており、串本海中公園で見られるテーブルサンゴ(クシハダミドリイシ)の群生は、群生地としては世界で最北に位置するといえる。また、串本町大島では、日本ではとても珍しいオオナガレハナサンゴの国内最大群生地も見つかった。

 ラムサール条約とは?
 渡りをする水鳥は、餌場やひなを育てる繁殖地として世界中の湿地を利用しているが、近年このような湿地は世界中で減少しつつある。1971年、イランのカスピ海湖畔の町ラムサールにおいて「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」が制定された。これが「ラムサール条約」。

 日本は1980年にラムサール条約に加入し、わが国初のラムサール条約湿地として釧路湿原が登録された。現在では、水鳥の生息地だけでなくサンゴ礁やマングローブ、地下水系など、さまざまなタイプの水辺の保全・再生を呼びかけている。2010年4月現在、この条約に加盟する国は159カ国。最近では第10回締約国会議 (COP10)が2008年大韓民国 昌原で、次回は第11回締約国会議 (COP11)が2012年ルーマニアで予定されている。日本では第5回締約国会議 (COP5)が1993年、釧路で開催されている。

 串本の海が選ばれたわけ
 串本沿岸海域(串本海中公園周辺)は、2005年11月8日にラムサール条約に登録された。しかし、ラムサール条約(Ramsarm Convention)は、湿地の保存に関する国際条約。水鳥を食物連鎖の頂点とする湿地の生態系を守る目的でつくられた。なぜ、串本の海が登録されたのだろうか?

 串本は北緯33度30分という位置にあり、位置的にみると本来ならサンゴよりも海藻がよく生える温帯の海に属す。しかしながら、串本はすぐ沖合を流れる黒潮によって、赤道付近から暖かく澄んだ海水が大量に運ばれてくるため、とりわけ暖かい環境が作られいる。そのため、沿岸では熱帯性の生物が豊富に見られる。

 その代表がサンゴで、串本の浅い海岸には熱帯の海に勝るとも劣らないくらいのサンゴが生息し、世界で最も北にあるサンゴの海をつくり出している。このような串本の海の特異性が評価され、ラムサール条約に登録された。

 

参考HP Wikipedia「ラムサール条約」・ラムサール条約事務局串本海中公園串本町公式サイト  

南紀串本 海の生き物ウォッチングガイド―本州最南端
山本 典暎,古見 きゅう,土屋 光太郎
ピーシーズ

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環境省・環のくらし応援団 さかなクン、♪鳥くん、琉球サンゴくんの地球の環!!
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群馬で新種「ヒゲクジラ化石」発見!1100万年前「ケトテリウム」

2010年04月22日 | 古生物
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 2002年発見のクジラ化石
 群馬県立自然史博物館(富岡市)は4月16日、同県高崎市吉井町の鏑川から2002年に発見された化石が、新属新種のクジラと判明したと発表した。クジラは「ジョウモウケタス・シミズアイ」と名付けられ、論文は米専門誌に掲載された。

 化石は頭部や椎骨などでいずれも約1100万年前(後期中新世)の地層から見つかった。当時は水深180~1800メートルの海だったとみられる。

 頭蓋(ずがい)の長さは約75センチで、体長は4メートル前後と推定される。現存するクジラと比べて頭部の骨の形が異なるなどの特徴があるという。

 同博物館が既存の化石や標本などと比較した結果、化石はヒゲクジラ類の絶滅したケトテリウム科の新属と確認。群馬県の古い呼び名である上毛と発見者の同県桐生市のみどり市役所職員清水勝(41)さんにちなんで命名された。

 清水さんは中学生のころから化石採集に興味を持ち、この化石は出勤前の早朝に出かけた際に発見。1時間余りで運び出したという。

 国内ではこれまで、1984年に広島県で「ヒバケタス・ヒロセアイ」、1994年に三重県で「イサナケタス・ラティセファルス」と名付けられた新属新種のクジラの化石が見つかっている。

 今回発見された化石は、身体の特徴が最もよく表れる頭蓋の保存状態が良く、同博物館の木村敏之学芸員は「クジラの進化の道筋を解明するのに役立つ」と話している。(jiji.com 2010/04/16)

 群馬県立自然史博物館で公開
 「一生に一度あるかないかの経験で、非常に興奮している」。発見者の清水勝さんは、県立自然史博物館の関係者とともに会見に臨み、喜びを語った。

 清水さんは、みどり市職員として勤務する傍ら、個人で化石発掘に取り組んでいる。今回の化石は、2002年5月ごろ、出勤前の早朝に高崎市吉井町の鏑(かぶら)川で発掘していて、クジラの頭部とみられる巨大な石のかたまりを偶然見つけた。

 清水さんは「これまでに見たことのない大きさ。重かったが、必死になって車に運んだ」と当時の様子を説明。「新種のクジラを自分の手で掘り起こしたとは、今でも信じられない」と心境を述べた。

 学芸員と共同で鑑定に当たった同博物館の長谷川善和名誉館長は「群馬が誇る発見ができた。県民の皆さんには親しみを込めて『ジョウモウクジラ』と呼んでほしい」と話した。

 化石は4月17日から5月9日まで同博物館で一般公開される。(asahi.com 2010年4月17日)

 ヒゲクジラとは何か?
 今回発見されたクジラの化石、国内では3例目の「ヒゲクジラ」の新属・新種と判明した。ところでヒゲクジラとは何だろうか?

 現生のクジラ類は、ヒゲクジラとハクジラに大きく分かれる。ヒゲクジラ類は歯をもたないが、上顎から生えた「ひげ板」または「鯨鬚」(くじらひげ)と呼ばれる器官を使ってオキアミやコペポーダ等のプランクトンや小魚等の小さなエサを大量に濾しとり、食料とする。

 ハクジラ類はその名の通り、顎に歯を持つクジラである。しかし、最初期のヒゲクジラは歯を持っており、歯の存在によってこの分類群が定義されている訳ではない。通常の哺乳類の歯は異歯性を示すが、ハクジラ類の歯は化石種を含めて大半が二次的に同形歯となっている。また歯の本数が真獣類の基本数である44本より多いものや大半が失われているものなど変異が多い。

 鯨髭以外のハクジラ類との差異としては、外観上ではハクジラ以上に頭部が大型化し首が短縮している。噴気孔は二つ。喉に多数の襞を持つ。現生種では最大の動物であるシロナガスクジラが含まれる様に、ヒゲクジラは全体的に大型化する傾向がある、などである。また皮下の形態では、メロンを持たず、また音を発するための器官である発声唇を持たないため、高周波エコロケーション能力を欠く。ただし低周波音を発し、そのエコーを聴いて遠方の地形を探るという事を行っているとされる。(Wikipedia)

 ケトテリウムとは何か? 
 今回発見のヒゲクジラは、絶滅した「ケトテリウム科」に属するというが、頭部の骨の形が同科の他のグループと異なる原始的な特徴が認められたため、新属・新種と分かったという。ところで「ケトテリウム」とはどんなクジラだったのだろう?

 ケトテリウム (Cetotherium) は新生代中新世前期 - 鮮新世後期にかけて生息したヒゲクジラの絶滅した属。鯨偶蹄目 - ヒゲクジラ亜目 - ケトテリウム科に属する。このケトテリウム科はナガスクジラ科の祖先を含むとされる。北アメリカ、ヨーロッパ、アジアの海に生息した。

 体長約4mと小型のクジラである。現生のコククジラあるいはナガスクジラの小型版といった姿であったと推定される。吻部の骨は平坦であり、下面に鯨ひげに養分を運ぶ血管の孔が並ぶ。このヒゲはかなり短く荒かったとされ、おそらくはオキアミやプランクトンあるいは小型の魚などを濾しとり、食料としていたと推定されている。頭骨は対象形で噴気孔は二つであったとされる。

 また、上顎を形成する骨が後方へくさび上に伸長するのが独特な形態である。このクジラの属するケトテリウム科は雑多な系統の寄せ集めであったが、現在この特徴を共有するクジラのみをケトテリウム科とし、単系統の分類群となる様再構成が行われつつある。(Wikipedia) 

 

参考HP 群馬県立自然史博物館 

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おつかれさま!山崎さん、度重なる延期後「ISS」から無事帰還!

2010年04月21日 | 宇宙
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 山崎さん、シャトルへ移動 野口さんに別れの散髪
 日本人2人目の女性飛行士、山崎直子さん(39)は米東部時間17日朝(日本時間同日夜)、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の野口聡一さん(45)らに別れを告げ、スペースシャトル・ディスカバリーに乗り込んだ。

 山崎さんと野口さんはこの日、2人でキャッチボールや体操を披露し、さらに山崎さんが野口さんを散髪。髪の毛を吸い取るホースのついたバリカンで手際よく刈った。

 山崎さんらシャトル乗組員はその後、ISSに引き続き滞在する飛行士一人一人と笑顔で言葉を交わし、抱き合って別れを惜しんだ。そして、ハッチ(扉)をくぐってディスカバリーに乗り移った。

 ディスカバリーは米東部時間17日午前8時52分(日本時間同日午後9時52分)に、ISSから離脱した。米東部時間19日朝(日本時間同日夜)に、米フロリダ州のケネディ宇宙センターに着陸する予定だ。 (asahi.com 2010年4月17日)


 スペースシャトル帰還、1回目の判断は「見送り」    
 山崎直子さん(39)ら7人が乗り組む米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトル・ディスカバリーは米東部時間19日午前9時前(日本時間同日午後10時前)、ケネディ宇宙センターに帰還予定だったが、悪天候のため着陸を見送った。

 さらに約90分かけて地球を1周し、この日2回目の着陸の機会をうかがうが、天候が回復しないと帰還は20日に延期される。その場合、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地に着陸する可能性がある。(asahi.com ‎2010年4月19日)‎

 山崎宇宙飛行士:地球帰還、20日に延期…気象条件悪く
 米航空宇宙局(NASA)は米東部時間19日午前、山崎直子宇宙飛行士(39)ら日米の7人が乗り組むスペースシャトル「ディスカバリー」の地球帰還を、当初予定より1日遅らせて20日朝(日本時間20日夜)に変更したと発表した。

 NASAは当初、同19日午前8時48分(同午後9時48分)の帰還を予定していた。しかし、着陸地であるケネディ宇宙センター上空の気象条件が悪く、1時間半後に再設定したが、天候が回復しなかった。

 順調に行けば、ディスカバリーは日本時間20日午後8時半ごろ、着陸する予定だ。(毎日新聞 2010年4月19日)

 山崎直子宇宙飛行士:無事帰還 「美しい地球の自然、また感じた」
 山崎直子宇宙飛行士(39)ら日米の7人を乗せたスペースシャトル「ディスカバリー」(アレン・ポインデクスター船長)は、米東部時間20日午前9時8分(日本時間同日午後10時8分)、米フロリダ州ケネディ宇宙センターに着陸した。山崎さんは、日本人女性2人目の飛行士として約15日間の任務を終えて帰還した。

 ディスカバリーは同17日、国際宇宙ステーション(ISS)から離れ、同20日午前8時2分、大気圏突入を開始。北米大陸を北西から南東に横切りながら高度を落とし、同センター滑走路に着陸した。約1時間45分後、滑走路に降り立った山崎さんは英語で感謝の気持ちを述べた後、日本語で「応援してくださってありがとうございました。美しい地球で、こうしてまた自然を感じることができてとてもうれしく思います」と元気な声で語りかけた。

 山崎さんは、今回の飛行で食料や実験機材など約7.6トンの物資をISSに運ぶ「物資移送責任者」を務め、貨物コンテナをロボットアームで移動させるなどした。またISSでは、長期滞在中の野口聡一飛行士(45)と史上初めて、宇宙での日本人対面を実現させた。

 シャトルは今年退役するため、1992年の毛利衛さん(62)が初めて搭乗して以来、7人目で最後のシャトル搭乗日本人となった。(毎日新聞 2010年4月21日)

 

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ナノ配向結晶体(NOC)で鉄より強いプラスチック(強度7倍)誕生!

2010年04月20日 | 化学
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 プラスチックとは?
 私たちの身近にある、プラスチックにはどんな種類があるだろう?

 ポリエチレン (PE)、ポリプロピレン (PP)、ポリ塩化ビニル (PVC)、ポリスチレン (PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ酢酸ビニル (PVAc)、テフロン® (ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂 (PMMA)など...。

 プラスチックの語源は何だろう?プラスチック(Plpastic)という言葉は、ギリシャ語に語源をもつ英語「plasticity(可塑性)」からきている。

 やわらかく、可塑性が高く、薬品にも強い、おまけに軽くて便利。もし、これに鉄のような強さが加われば、“鬼に金棒”の素材ということになる。固くて強い、プラスチックはこれまで夢の存在だった。

 その夢の技術を、広島大学の彦坂正道特任教授(高分子物理学)らのグループが発明した。町工場で簡単にできるうえ、車に使えばバンパーや内装、車体の外板やガラスなど、材料の40%以上に活用できるという。省エネや省資源、低コスト化にも貢献できるという。いったいどんな技術なのだろうか? 

 鉄より強いプラスチック?
 「鋼のように強く、軽くて安いプラスチックを開発した」と、広島大の彦坂正道特任教授(高分子物理学)と岡田聖香博士研究員らが、4月19日発表した。

 材料は、食品容器など身の回りで広く使われているポリプロピレン。研究チームは、溶けた材料を冷やして固める際、上下から瞬時に板でつぶして延ばすと、材料の中に微小な結晶がたくさんでき、それが一方向に並んで強く結びつく構造が生じることを発見した。

 この結果、引っ張る力に対する強度が普通のポリプロピレンの約7倍、鉄鋼やステンレスの約半分に高まった。厚さを2倍にすれば鋼板並みの強度を確保でき、重さは4分の1で済む。また、繰り返し曲げても割れにくく、ガラス並みに透明にもできる。彦坂教授は「この方法ならつぶす工程が加わるだけで、町工場でも簡単に製品に使える」と説明する。(毎日新聞 2010年4月19日)

 プラスチックはなぜ柔らかい?
 これまでのプラスチックは、強度や耐熱性などの材料特性が金属などより著しく劣るために高度な性能要求に応えることができなかった。その原因は、結晶にならない部分の比率(非晶率)の高さにある。同じ炭素でできた結晶「ダイヤモンド」は逆に非晶率が低く、世界一固い物質になっている。

 プラスチックの結晶性高分子は長いひも状分子だが、融液(液体)中で毛玉のように互いに絡み合う部分が多いために、これらが薄い板状結晶にしかなれず、非晶と結晶が層構造を成し「球晶」というゴルフボールのような結晶体になる。つまり、球晶内には結晶にならず、固化しただけの非晶が半分以上残ってしまうのだ。

 そこで世界中の科学者たちは「結晶化度」の増大の方策を探求してきた。

 プラスチックを固くする?
 彦坂特任教授と岡田博士研究員らは、大型放射光施設Spring-8(理化学研究所 所有)を利用して、高分子結晶化初期のナノレベルのメカニズム解明に乗り出した。「結晶性高分子の結晶化初期メカニズム解明は不可能」というのが世界の高分子専門家の常識とされている中、10年近い歳月を費やして「結晶の赤ん坊」であるナノ核生成の直接観察に成功し、2007年に結晶化初期のメカニズムを明らかにした。

 この「高分子結晶化メカニズムの解明」をスタートラインとして、本研究グループは、結晶化を制御することによって、従来はなかった新しい構造と活性の発現を目指す研究を続けた。

 本研究グループが、高結晶化度と超高性能実現の方策として狙いを定めたのは、「ナノ配向結晶体(NOC:Nano Oriennted Crystals)」。ひも状の高分子鎖が、融液段階で、毛玉状に絡まっているために非晶が発生するのだから、これを一定方向にきれいに並べた上で結晶化すれば、結晶化度の高いナノ配向結晶体が実現すると考えた。

 そのためには、高分子融液を引っ張って伸ばしながら結晶化させる必要がある。しかし水を引っ張ることができないのと同様に、融液つまり液体を引っ張ることは簡単にはできない。問題は、いかにして融液を伸長するかということだった。

 ナノ配向結晶体(NOC)プラスチックの誕生
 そこで発案したのは、融点以下に冷やした高分子の融液(これを過冷却融液と言う)を潰す(Compress)ことによって伸長するというアイデア。左右に細長い溝の中に融液を入れて瞬間的に圧力を加えて潰すと、融液内には左右に広がる激流が生じ、急流にさらされた布のようにひも状分子が引き伸ばされ、高配向したナノ結晶が実現する可能性があると考えた。

 本研究グループは、このアイデアを実現して、Spring-8において観察し、この仮説の正しさをナノレベルの解析で検証することに成功した。

 研究の結果、融点以下に冷やした高分子の融液を潰す圧力と速度を変えながら伸長と配向の様子を観察したところ、1秒間に数百倍も伸長するような、大きな伸長歪み速度によって、同じ結晶化温度でも結晶化が一気に100万倍も速くなる「臨界伸長歪み速度」が確認された。

 このとき、過冷却融液中の高分子鎖が平行に並んだ完璧に近い配向融液になり、無数の核がミリ秒オーダーで生成し、融液全体の92%が結晶化することが確認された。「NOC」の実現が確認された瞬間である。

 NOCは、引っ張り破壊強度、つまり引っ張る力に耐える強度が同重量の鉄鋼の2~5倍という値を示し、しかも耐熱性は通常のポリプロピレンより50℃以上高い176℃。また光の波長より小さいナノ結晶であるがゆえに高い透明性を示した。さらに何も混ぜ物を加えないので、高い収率でリサイクルができる可能性がある。しかも高分子融液を潰すという単純な工程が加わるだけなので、従来の成形法を少し改良した成形法で成形ができるために、製造コストは従来のプラスチックと大差ない。

 このひも状分子は、炭素が共有結合で連なっているものなので、ダイヤモンドと同じ強度を持っている。つまり無数のナノ結晶が整然と並び、これをダイヤモンドと同等の強度を持つひも状分子がしっかりと連結している構造だったために超高性能が生まれたと考えられる。本研究グループは、この構造を「鎧モデル」と名づけた。

 繊維強化プラスチックとは?
 これまでのプラスチックにも、鉄のように強いものがあった。例えば繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics, FRP)。繊維強化プラスチックの代表的なものにガラス繊維強化プラスチック (GFRP) と炭素繊維強化プラスチック (CFRP) がある。ガラス繊維は引っ張り強度がプラスチックよりはるかに強いので、成型部品の強度向上によく使用される。

 安価なプラスチック製ヘルメットは殆どがGFRPである。薄い色のヘルメットを透かして見ればガラス繊維が見える。炭素繊維の強度はガラス繊維より更に強いが高価なので、CFRPは軽くて強い(高価な)素材として航空機等に使用されている。

 繊維強化プラスチックは、金属材料(合金)よりも丈夫で軽量なことが多く、重量と燃費が関係する乗り物での利用が多い。とくに軽量化が非常に重視される航空機や宇宙機では多用される。

 例えばボーイング787では、重量の50%近くが複合材料に占められるほどになっている。一方で、これまで幅広く使用されてきたアルミニウム合金(ジュラルミンなど)は複合材料に置き換えられ、使用量は減少傾向にある。ほかに自動車などでの利用もある。

 エンジニアリングプラスチック
 従来よりプラスチックは可塑性に優れ加工し易いという利点があるが、これが同時に柔らかくて、もろく、硬度や対磨耗性は金属に比べ総じて低い。また強い紫外線を含む太陽光や風雨に曝される過酷な環境下では劣化(風化)しやすく、油脂を含む所定の溶剤に曝された場合にも劣化してしまう問題点があった。

 エンジニアリングプラスチック(エンプラ)という言葉が初めて登場したのは、1960年にアメリカのデュポン社が「金属に代わるプラスチック」と銘打ってポリアセタールホモポリマー(POM)を商品化した時である。

 そして、従来繊維用途が主体だったポリアミド(PA)がエンプラ用途にも使用され始めた。その後、ポリアセタールコポリマー、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、そして1941年にはポリエチレンテレフタレート(PET)、1970年にポリブチレンテレフタレート(PBT)が開発された。

 スーパーエンジニアリングプラスチック
 エンプラよりも更に高い熱変形温度150℃以上にも、長期 間使用できる特性を持つ熱可塑性樹脂。エンプラは「100度(単位:摂氏)以上に耐えるもの」で、スーパー・エンプラが「150度以上で長期間耐えるもの」となっている。

 スーパーエンプラとして、次のようなものがある。

 非晶ポリアリレート(PAR)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、
ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)など。

 

参考HP Wikipedia「プラスチック」・広島大学プレスリリース「鉄鋼のように強い汎用プラスチック 

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長谷川 正木
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新型幹細胞「Muse」発見!「幹細胞」「iPS細胞」「ES細胞」とは?

2010年04月19日 | 微生物・ウイルス
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 新型幹細胞「Muse」発見!
 人の体には、細胞がいくつあるのだろう?人の体は約60兆の細胞でできている。

 細胞にはさまざまな種類がある。一般の細胞は体細胞。なかまを増やすための生殖細胞。体を外敵から守る免疫細胞など...。現在、注目されている細胞というと、iPS細胞、ES細胞、幹細胞などの万能細胞がよく話題に上る。

 東北大学の出沢真理教授らの研究チームが、新しい万能細胞を発見した。この細胞は大人の皮膚や骨髄の中に、iPS細胞(新型万能細胞)のように色々な種類の細胞に変化できる能力を持つ細胞が微量に含まれていることを突き止めた。

 ES細胞やiPS細胞に続く多能性幹細胞の可能性があるとして、「Muse(ミューズ)細胞」と命名した。既知の2種類に比べ増殖率は劣るが、がん化の恐れは低く、医療への応用が期待されるという。20日の米科学アカデミー紀要に発表する。

 出澤教授らは、誤って細胞を溶かす酵素を加えても生き残ったヒトの皮膚細胞の中に、iPS細胞とよく似た細胞を発見した。この細胞を拒絶反応の出にくいマウスに移植すると、皮膚や筋肉、肝臓など様々な細胞に変化した。細胞表面には、iPS細胞と同じ目印物質(糖鎖)が付着。これを目印にすると、骨髄の細胞(単核球)約5000個に1個の割合で含まれていることがわかった。ただ培養しても約2週間で増殖は止まってしまう。(2010年4月20日  読売新聞)

 幹細胞とは?
 iPS細胞とかES細胞とか幹細胞とかさまざまな用語が出てきてわかりにくい。それぞれどんな細胞なのだろうか?

 iPS細胞もES細胞も、いろいろな種類の細胞に分化することができる能力を持っている。このように他の細胞に分化できる細胞を全部ひっくるめて万能細胞とか、幹細胞と呼ぶ。

 幹細胞は造る細胞によって、神経幹細胞とか造血幹細胞などと呼ばれる。すなわち神経幹細胞は神経細胞を造り、造血幹細胞は血液を造る。また、iPS細胞は人工多能性幹細胞のことであり、ES細胞は胚性幹細胞のことである。

 最近は脂肪細胞の中に幹細胞が発見されており(間葉系幹細胞という)、その人自身の脂肪細胞を利用した、副作用の少ない美容整形の素材としてさかんに用いられている。

 このような幹細胞の特徴として、複数系統の細胞に分化できる能力(多分化能)を持ちながら、細胞分裂を経ても多分化能を維持できる能力(自己複製能)も併せ持っている。発生における細胞系譜の幹(stem)になることから名付けられた。幹細胞から生じた二つの娘細胞のうち、一方は別の種類の細胞に分化するが他方は再び同じ分化能を維持する。

 遺伝子レベルで見ると、幹細胞では分化を誘導する遺伝子の発現を抑制する機構が働いており、これは外部からのシグナルやクロマチンの構造変換などによって行われる。普通の体細胞はテロメラーゼを欠いているため細胞分裂の度にテロメアが短くなるが幹細胞ではテロメラーゼが発現しているため、テロメアの長さが維持される。

 iPS細胞とは?
 iPS細胞とは、人工多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cells)のことで、体細胞へ数種類の遺伝子を導入することにより、ES細胞(胚性幹細胞)のように非常に多くの細胞に分化できる分化万能性 (pluripotency)と、分裂増殖を経てもそれを維持できる自己複製能を持たせた細胞のこと。京都大学の山中伸弥教授らのグループによって、マウスの線維芽細胞から2006年に世界で初めて作られた。

 さらに翌年、山中らは、マウスiPS細胞の樹立に用いた4遺伝子のヒト相同遺伝子であるOCT3/4・SOX2・KLF4・C-MYCを、ヒト由来線維芽細胞(36歳女性の顔面の皮膚由来の線維芽細胞、69歳男性由来の滑膜細胞、および新生児包皮由来の線維芽細胞)に導入して、ヒトiPS細胞の樹立に成功した。

 また、世界で初めてヒトES細胞を樹立したことで知られるジェームズ・トムソン (James Thomson) らのグループも、山中らがマウスiPS細胞を初めて樹立した時と同じ戦略を用い、14個の候補遺伝子の中からOCT3/4・SOX2・NANOG・LIN28の4遺伝子を選び出してヒトiPS細胞の樹立に別個に成功した。

 両グループの研究成果は、2007年11月20日、山中らの報告がセル誌に、トムソンらの報告がサイエンス誌にそれぞれ同日発表された。そのわずか後の12月には、ハーバード幹細胞研究所のジョージ・デイリー (George Daley) らのグループも、OCT3/4・SOX2・KLF4・C-MYCの4遺伝子にhTERT・SV40 large Tを加えた6遺伝子を用いてヒトiPS細胞の樹立に別個に成功しており、競争の激しさが窺える。(出典:Wikipedia)

 ES細胞とは?
 ES細胞は、胚性幹細胞(Embryonic stem cells)のことで、動物の受精卵からつくられる。発生初期段階である胚盤胞期の胚の一部に属する内部細胞塊より作られる幹細胞細。英語の頭文字を取り、ES細胞(イーエスさいぼう)と呼ばれる。

 生体外にて、理論上すべての組織に分化する分化多能性を保ちつつ、ほぼ無限に増殖させる事ができるため、再生医療への応用に注目されている。またマウスなどの動物由来のES細胞は、体外培養後、胚に戻し、発生させることで、生殖細胞を含む個体中の様々な組織に分化することができる。

 また、その高い増殖能から遺伝子に様々な操作を加えることが可能である。このことを利用して、相同組換えにより個体レベルで特定遺伝子を意図的に破壊したり(ノックアウトマウス)、マーカー遺伝子を自在に導入したりすることができるので、基礎医学研究では既に広く利用されている。

 

参考HP Wikipedia「幹細胞」「iPS細胞」「ES細胞」 

幹細胞WARS―幹細胞の獲得と制御をめぐる国際競争
シンシア フォックス,西川 伸一
一灯舎

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絵とき再生医学入門―幹細胞の基礎知識から再生医療の実際までイッキにわかる!
朝比奈 欣治,立野 知世,吉里 勝利
羊土社

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アイスランド噴火!約30カ国「9.11米国テロ」を超える空港閉鎖!

2010年04月18日 | 地学
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 火山噴火で欧州便多数欠航 
 アイスランドの火山が噴火して、ヨーロッパへ行く便やヨーロッパから出発する便に影響が出ている。日本の成田国際空港では4月17日、欧州便の欠航が拡大し、国内外の航空会社の旅客便計39便が運航を取りやめた。当初閉鎖されたイギリスに加え、ドイツやフランス、イタリアなど23カ国の空港も閉鎖され、新たにローマやモスクワ、チューリヒ便などが欠航した。

 航空券の再予約や払い戻しを求める乗客がチェックインカウンターに詰めかけ、航空会社の職員らは対応に追われた。ロビーには行き場を失った外国人旅行客が通路に座り込んだり、寝転んだりして途方に暮れる姿も。空港で一夜を明かす滞留客も発生しており、成田空港会社(NAA)や全日空などは、乗客の希望に応じて毛布や水などを提供している。

 飛行機の飛べないわけ
 どうして火山が噴火すると飛行機が飛べなくなるのだろう?

 現在、アイスランドの火山の噴火で巨大な火山灰の雲が広がっている。各国の航空当局がこうした極めて異例の措置を取ったのは、火山灰雲に含まれる岩やガラス・砂の微粒子がジェットエンジンを止めてしまう可能性があるからだ。

 「火山灰の中を飛行することが非常に危険であることは長年の定説だ」と、イギリス民間航空局の広報担当者リチャード・テイラー氏は話す。同氏は、1982年にブリティッシュ・エアウェイズのボーイング747型ジェット機がインドネシア上空で火山灰の中に突っ込み、エンジンが4基とも停止した事故を例に挙げ、「幸いなことにエンジンは再び動き出したが、非常に危険な行為であることは明らかだ」と説明する。

「燃焼機関は空気を吸い込むことで動き、動力を生みだす。火山塵(かざんじん)が航空機のエンジンの精密部品に入り込むと、さまざまな不具合を引き起こす可能性がある。砂嵐の中を走行する自動車と同じように、エンジン内部の部品を詰まらせることになる」。

 さらに、対気速度を測定するセンサーとして用いられるピトー管と呼ばれる装置を火山灰の浮遊粒子状物質が詰まらせてしまう。「火山灰でピトー管が詰まると計測値が正確に送られなくなり、飛行機が失速してもパイロットが飛行速度を把握できない事態になりかねない」。

 イギリス気象庁は火山灰情報センターを通じて火山灰雲の拡散状況を観測している。現在のところ、火山灰雲は18日頃までイギリス上空を漂い続けると予想されているが、火山灰は上空の高いところに留まると見られるため、地上に降り始める前にイギリス国外に出ていく可能性が高いと指摘されている。

 イギリス民間航空局のテイラー氏は、「火山は現在も噴火を続けているはずで、事態は長引く可能性がある」と話している。(National Geographic News April 16, 2010)

 アイスランド共和国とは?
 アイスランドというと、ずいぶん北の島国というイメージであるが、どんな国なんだろう?

 アイスランド共和国(通称アイスランド)は、北ヨーロッパ、北大西洋にある、美しいオーロラと火山と氷河の島国である。。首都はレイキャヴィーク。ヨーロッパといっても、イギリスよりもグリーンランドに近い。北海道と四国を合わせた程度の面積である。

 アイスランド本島は北緯63度から66度に位置し、国土の一部は北極圏にかかっている。しかし、冬の寒さはそれほど厳しくはなく、同緯度にあたるフィンランドやスウェーデンの北部の2月の最低気温の平均が氷点下20度近くであるのに対し、アイスランドは氷点下3度ほどである。

 これはアイスランドが火山島(世界最高緯度)であること(温泉も多い)、アイスランドを囲むようにして暖流(北大西洋海流)が流れていることなどに由来する。そのため、オーロラを観測することのできる地域の中では最も暖かい地域となっている。

 エイヤフィヤットラヨークトル火山
 あんなに北の国でも、比較的暖かいというのは不思議な話である。ところで今回のような噴火の話はあまり聞いたことはなかった。どんな火山が噴火したのだろう?

 噴火の熱したのは、エイヤフィヤットラヨークトル火山。4月14日、火山を覆っていた厚さ200メートルの氷塊が、みるみるうちに融けている。アイスランド大学地球科学研究所の地球物理学者パウッル・エイナルソン氏によると、融けた氷で洪水が起きる恐れがあるため、2回目の噴火の兆候が確認されると同時に近隣の住民約800人を避難させたという。

 当初、氷河が融けたことにより地元の河川の水位が最大3メートル上昇したとの報告もなされた。幹線道路の1本が封鎖され、水は現在も海へ激しく流れ込んでいるが、死者はない模様。

 この地域は、70万年ほど前より氷帽が火山(標高1,666 m)を覆っており、氷河期以来滅多にこの火山が噴火することはなかった。今回噴火する前は、1821年から1823年にかけての噴火がある。このときの噴火では同時に氷河湖決壊洪水も発生している。それよりも過去の噴火は1612年と920年に記録されている。 この火山の火口は直径は3 kmから4 kmあり、その周りを100 km²の氷河が覆っている。

 今回の噴火
 今回の噴火の兆候は2009年の12月クリスマスの頃から。火山性微動が観察された。2010年の2月には、近の地殻が3 cm南方に移動したことを指し示し、そのうちの1 cm分は4日以内で移動したことがわかった。この異常な地震活動とそれに伴う地殻変動は、エイヤフィヤットラヨークトル火山のマグマ溜まりにマグマが溜まりつつあり、その圧力により起きたもので、大規模な地殻変動が起こりつつあるという地球物理学者たちは予想した。

 地震活動はますます活発になり、同年3月3日から3月5日にかけては、火山を震源とする地震が3,000回も観測された。現地時間2010年3月20日午後10時30分から午後11時30分(UTC)にかけて、氷河の数 km東にあるフィムヴェルズハゥルス(Fimmvörðuháls)峠の北側の斜面で遂に噴火が起こり始めた。

 この時も、レイキャヴィーク空港及びケプラヴィーク国際空港を離着陸する航空機は欠航が相次いだ。翌3月21日の夜には国内線・国際線ともに復旧しており、地震学者は噴火は収束に向かうと予想したが、事態は簡単におさまらなかった。

 2010年4月14日から再び大規模な再噴火が起こった。主に炎と溶岩を噴出した3月の噴火とは異なり、火山灰は上空約1万6000mに達して南下し、イギリス北部に到達後、欧州北部と中部のほぼ全域に到達、18日にはスペイン北部に到達し、エンジン停止を避けるため18日には約30カ国で空港閉鎖となった。「9.11アメリカ同時多発テロ事件」を超える規模の歴史上例を見ない空路閉鎖である。(Wikipedia) 

 

地震と火山の島国―極北アイスランドで考えたこと (岩波ジュニア新書 (369))
島村 英紀
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アイスランド 地球の鼓動が聞こえる…ヒーリングアイランドへ (地球の歩き方GEM STONE)
地球の歩き方編集室
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「寒波」vs「地球温暖化」41年ぶり春の雪 太陽磁場の影響か?

2010年04月17日 | 気象
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 記録的に遅い雪
 今年の春はおかしい。3月末には御殿場で雪が降った。4月16日、湘南では冷たい雨が降った。箱根など雪になった地域もあった。冬のような寒さで「真冬か?」と思った人も多かった。真冬ではない、春分の日は3月21日に終わって、夏至、6月21日に向かっている時期である。

 この日強い寒気の影響で、東京都心をはじめ関東甲信地方の各地で降雪が観測された。気象庁によると、東京や横浜、甲府、宇都宮、前橋、埼玉県の熊谷は1969年にも4月17日に雪が降っており、41年ぶりに過去最も遅い降雪記録に並んだ。

 千葉は1988年の4月8日に降ったのがシーズンの最も遅い降雪日で、記録を更新した。関東甲信地方の雪は朝の段階で峠を越したが、気象庁は積雪や路面凍結による交通事故や、農作物の管理に注意を呼びかけている。

 17日午前5時現在の主な地点の積雪量は、群馬県の草津で16センチ、長野県の軽井沢で18センチ、埼玉県の秩父で3センチ。東京は練馬区などで数センチ、横浜でも積雪が確認された。(2010.4.17 共同)

 異常天候警戒情報
 4月に入り全国的に寒暖の差が大きくなっているが、東北から九州にかけては23日ごろから約1週間、かなりの低温になる恐れがあるとして、気象庁は16日、「異常天候早期警戒情報」を出して注意を呼び掛けた。

 東京の11日の最高気温は23.2度で、5月中~下旬並みの暖かさとなった。一方、翌12日は3月下旬並みの14.3度までしか上がらないなど、日ごとの気温差が大きい。14日には、北日本の上空1500メートルで氷点下9度と、この時期としては強い寒気が流れ込んだ。

 16日は関東などで真冬並みの最高気温となった所が目立ち、前橋で6.5度、東京都心7.4度、千葉6.6度、静岡9.4度などだった。17日には最低気温が、さいたま0.5度、東京都心1.4度、千葉1.1度と平年を8.1~9.4度下回るまで冷え込んだ。

 気象庁気候情報課によると、寒暖の差が激しい原因は、寒気と暖気双方の勢力が平年より強いことだ。北極付近の気圧が高く、日本など中緯度付近の気圧が低い状態が続いているため、北極付近の寒気が中緯度帯に流れ込みやすくなっている。

 一方で、太平洋赤道域東部の海面水温が高くなるエルニーニョ現象の影響などで暖気も強い。こうした状況は通常、「菜種梅雨」のころにみられるが、例年より長期間せめぎ合いを続けているのが今年の特徴だという。‎
 
 寒波の影響
 この寒波で、全国でどのような影響が出ているのだろうか?

 全国的に日照不足や低温が続いている影響で、スーパーではレタスやキャベツなどの葉ものを中心に、野菜の価格が値上がりしている。また衣料品売り場では例年、今の時期の主力商品となる春夏物の売り上げが低迷するなど影響が出ている。

 お茶の産地では、新しい芽が生え、一番茶の収穫が始まる時期。お茶畑では寒い空気が滞って、霜が発生しないように風車が設置されているが、3月末の寒波によって収穫の時期が早い早生の品種で、新芽が凍って枯れる被害が出ている。

 寒波は太陽磁場が原因?
 英国でも30年ぶりの大寒波に見合われたが、17世紀後半以来という厳冬が今後英国を襲う可能性があると科学者が警告している。

 学術誌「Environmental Research Letters」に発表された科学者チームの研究によると、太陽の磁場が弱まると太陽活動が低下、それによって欧州北部の天候が影響を受けるという。

 太陽活動が同様の低下を見せたのは1650年から1700年の間で、当時英国は記録上最も寒い冬を体験したとされる。

 1684年にはテムズ河が2ヵ月間も凍結、氷が分厚いため、凍った河上で記念のフロスト・フェアが行われるほどだったという。

 研究を行ったうちのひとりで、レディング大学で地球電磁気学を教えるマイク・ロックウッド教授は「今冬は『マウンダー極小期(太陽黒点数が著しく減少した期間の名称)』の始まりに過ぎない。地球温暖化のため、気温は1684年当時ほど低くはならないだろうが、厳冬は頻繁になるだろう」と話している。(JAPAN JOURNALS 2010.4.15)

 

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「ビッグバン」と「ハッブル宇宙望遠鏡」から宇宙の始まりに挑む

2010年04月16日 | 宇宙
科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学情報を、くわしく調べやさしく解説!毎日5分!読むだけで、みるみる科学がわかる!
 宇宙の始まり
 2010年4月11日放送のNHK「ハッブル宇宙望遠鏡 宇宙の始まりに挑む」を見た。修理が終わり、史上最高の能力を持つ望遠鏡で、どこまで宇宙の謎に迫れるかを紹介した番組である。

 宇宙はどのように始まったのか?20世紀、人類は、宇宙が137億年前のビッグバンという大爆発で始まったことを知った。しかしその後、どのようにして現在のような星や銀河のあふれる世界となったのかは、まったくの謎であった...。

 今年1月NASAは『最も遠い宇宙の果ての撮影に成功した』と発表した。この撮影を行ったのが、高度600kmの大気圏外に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡。そこには“131億光年”離れた天体が写っている。この天体の光は、131億年前に発せられ、宇宙空間を旅した末に地球に届いたもの、つまり131億年前の過去の姿だ。即ち、誕生まもない太古の宇宙の姿そのものであり、ここに宇宙の始まりの謎を解く重大な手がかりが隠されていた。

 今回、謎と驚異に満ちた宇宙へといざなう“プレゼンター”は劇団ひとり。コメディアンであり、俳優であり、そして作家でもある彼自身じつは大の宇宙好きでもある。その魅力あふれる一人芝居とウイットに富んだ語り口は、時にユーモラスに時にシリアスに未知の世界へ見るものをみちびく。最先端科学が解き明かした宇宙の創世の頃の深遠な物語を、ハッブル宇宙望遠鏡の美しい宇宙映像の数々とともに描いた。(NHKスペシャルHP)

 「ハッブル宇宙望遠鏡」とは?
 ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope、HST)とは地上約600km上空の軌道上を周回する宇宙望遠鏡である。長さ13.1メートル、重さ11トンの筒型で、内側に反射望遠鏡を収めている。主鏡の直径2.4メートルのいわば宇宙の天文台である。大気や天候による影響を受けないため、地上からでは困難な高い精度での天体観測が可能。

  1990年4月24日スペースシャトル「ディスカバリー(STS-31)」で打ち上げられた。しかし、打ち上げ直後の調整で天体の光を集める鏡の端が設計より、わずか0.002mm平たく歪んでいることが発覚。この誤差により分解能は予定の5%になってしまった(ただし5%でも地上の望遠鏡より遥かに高い分解能を有していた)。

 この歪みは、主鏡を製造したパーキンエルマー社(現レイセオン・ダンバリー社)の工場において鏡面の歪みを検出するヌル補正装置が正しく取り付けられていないことが原因だった。この問題を修正するために、焦点に入ってくる15%の光を最大限に利用するソフトが開発された。これで性能は58%まで回復。これ以上の修復は直接宇宙へ行き、ハッブルを修理するしかなかった。

 最終的に修理が完了したのは、2009年5月であった。ハッブルは「今までで最高の性能」(NASA)になり、少なくとも2014年まで寿命が延びることになった。4ヶ月間のテスト期間を経て活動を再開することになった。

 2009年7月24日には、本格稼動前であるが、木星への天体衝突跡が発見された衝突の跡を新しく取り付けられたWFC3で撮影、画像を初公開した。その後数々の観測成果をあげている。2010年1月には近赤外線で撮影した宇宙の史上最古の銀河を発表した。その年齢は約131億歳であった。

 ビッグバンから宇宙の始まりに挑む
 2001年東京大学の吉田直紀準教授は、137億年前のビッグバンから宇宙の始まりの謎を解く研究を行っていた。彼の武器はコンピュータの計算機である。

 ビッグバンの後、暗黒の闇が何億年か続いたとき、宇宙に存在したのは水素とヘリウムと暗黒物質の3種類。これらの物質から、最初にできたのは何だろうか?彼は物質を表す、あらゆる方程式を使ってコンピュータに計算させた。コンピュータがその計算を終えたのが7年後の2008年の7月のことであった。

 計算の結果、宇宙に最初にできた天体は、銀河でもブラックホールでもなく、ただ1つの恒星であった。この天体は太陽の100万倍、青白から白い光を放つ巨大な恒星で「ファーストスター」と名づけられた。1つの天体ができると、宇宙のあちこちで、次々とファーストスターが誕生したという。

 この結果は2008年8月1日のサイエンスに掲載された。

 ハッブルから宇宙の始まりに挑む
 カルフォルニア大のガース・イリングワース教授はハッブル宇宙望遠鏡で宇宙の始まりの謎に挑んでいる。2010年1月、新しくなったハッブル宇宙望遠鏡で、ろ座の一角にあるウルトラディープフィールドと呼ばれる場所を12日間撮影し続けた。何もない暗闇の空間に1万を超える天体が浮かび上がった。

 宇宙は膨張しているので、遠くの天体ほど猛スピードで遠ざかっている。そのため遠い天体ほど赤く見える性質がある。この性質を利用して、131億光年の天体が分かる“フィルター”をつくって20個以上の天体を発見した。

 これらの天体は生まれたばかりの銀河で、もとの色に戻すと、どれも「ファーストスター」と同じ、青白い光を放っていた。大きさは銀河系の1/20、ファーストスターの誕生後何世代か後の星々の集まりであった。

 宇宙の始まりにあったとされる「ファーストスター」。最新科学技術は、その誕生直後まで観測できるところまで迫った。2013年に打ち上げられる、次のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡では、ファーストスターそのものを発見できるのではないかと期待されている。 


参考HP Wikipedia「ハッブル宇宙望遠鏡」・NHK「
ハッブル宇宙望遠鏡 宇宙の始まりに挑む」 

ハッブル宇宙望遠鏡―150億光年のかなたへ
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