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アゲハチョウは「脚」で味を見る?「ドラミング」で木を選別するしくみ解明!

2011年11月21日 | 動物

科学大好き!アイラブサイエンス!最近気になる科学の疑問を、やさしく解説!毎日3分読むだけで、みるみる科学がわかる!


 アゲハチョウの味覚遺伝子
 昆虫の味覚はどこにあるだろう?ハチやアリでは触覚にある。チョウやガやハエでは第一肢の先端にに味覚器がある。

 アゲハチョウは、ミカンの葉を前脚で叩く「ドラミング」で小さな傷を作り、その部分の味を感じて葉がミカンであることを確認して産卵する。我が家のミカンの木にはこの夏、次から次へとアゲハが産卵し、幼虫がほとんどの葉を食べ尽くしてしまった。ミカンを守るよい方法はないだろうか?

 今回、JT生命誌研究館(大阪府高槻市)と九州大などの研究チームが、アゲハチョウのメスが前足の「感覚毛」を使って、幼虫が食べられる植物を選別して、産卵する仕組みを解明した。害虫が農作物に産卵しないよう改良する方法を開発する手がかりにつながると期待される。11月15日付の英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」電子版で発表した。

 アゲハチョウのうち、例えばナミアゲハのメスは、ミカン科の植物の葉に産卵する。その際、「感覚毛」で幼虫が食べられる植物を特定するが、これまで未解明だった、こうした仕組みをつかさどる遺伝子を見つけた。

 シネフリンに反応、産卵
 同館の尾崎克久研究員(分子生物学)によると、「感覚毛」の根元にある神経細胞では約1万種類もの遺伝子が働いている。このうち植物に含まれる成分を感じ取るとみられる遺伝子を特定。別の細胞で働かせてみたところ、ミカン科植物に含まれる酸味成分「シネフリン」と触れると、細胞内に変化が生じるのが見つかった。

 今度はシネフリンを塗った人工葉を準備し、そこにナミアゲハを放したところ、約7割のメスが産卵。一方、この遺伝子の機能を失わせたメスは約2割しか産まなかった。こうした実験結果から、メスがこの遺伝子の働きでシネフリンを見分け、その情報が脳に伝わることで産卵を促すと結論づけた。

 ナミアゲハ以外にも同様の手法で産卵したり、食べたりする植物を選別する昆虫は多く、こうした能力を担う遺伝子や反応する植物の成分もそれぞれ異なると見られている。尾崎研究員は「同じ方法で、他の昆虫でもこうした遺伝子を見付けていけば、遺伝子操作で農作物に産卵したり食べたりしないようにできるかもしれない」と話している。(毎日新聞 2011年11月16日)

 味覚の場所「ふ節」を特定
 ナミアゲハの味覚感覚子は、メス前脚の先端のふ節の毛のように並んでいる。味覚受容体は、味覚感覚子の中の味覚神経細胞の表面にある。アゲハチョウのメス成虫の産卵行動は、飛ぶことから始まる。主に視覚情報を頼りに葉にとまり、葉を前脚でたたく。これを「ドラミング」と呼ぶ。前脚ふ節には化学感覚子があって、葉の表面に存在する化合物を感じ取り、その組み合わせによって植物種を識別し、適切と判断すると卵を産む。その後その場を飛び去り、一連の作業を繰り返すのである。ナミアゲハについては、主な食草であるミカン科植物から、化合物10種が「産卵刺激物質」として同定されており、これらを混合すると生葉と同程度に産卵行動を誘発する。

 一方、化合物を識別する受容体の研究は、私たちの研究開始時にはまったく行われていなかった。ショウジョウバエの味覚感覚子では、感覚子内部へ数個の味覚ニューロンが軸索を伸ばしていること、その細胞膜中に7回膜貫通型タンパク質(7TMP: 7 transmembrane protein)である味覚受容体が存在することが知られており、化合物を認識しているとされている。

 チョウの前脚ふ節にある感覚子は、ショウジョウバエの味覚感覚子と同様の構造を持っているので、アゲハチョウのふ節感覚子でも、7TMP味覚受容体が働いていると予想できる。これが食草の認識と産卵行動に重要な役割を持っているだろうと考え、ナミアゲハの味覚受容体遺伝子の探索と機能解析に取り組んだ。

 発見した味覚受容体遺伝子が、チョウの体のどこで働いているか遺伝子を増幅して調べた。電気泳動のシグナルは、メス前脚ふ節にだけ検出された(左1列目のバンド)。比較に用いたリボソーム蛋白質遺伝子は全部の器官にみられるので、味覚受容体遺伝子がメスの前脚ふ節でだけ働いていることが確認できた。

 味覚受容体(7TMP)
 味覚受容体遺伝子は、発現量が極端に少ないため、他の生物でもタンパク質の機能が解明されているものはまだ少ない。しかも昆虫の化学受容体遺伝子は、遺伝子間の塩基・アミノ酸配列の類似性が極端に低いので、他の生物の受容体遺伝子を手がかりにはできない難点がある。

 そこで、メス成虫ふ節で発現する遺伝子群を片っ端から調べることにした。メス成虫ふ節のcDNAライブラリーをつくり、約1万個の配列を決定してアミノ酸配列を推定した。その中で7回膜貫通領域を含む配列を持つものをコンピュータ上で探し、候補遺伝子を絞り込んだ。

 そしてついに味覚受容体候補の7TMP遺伝子を1つ見つけることができた。得られた7TMPは、メス成虫のふ節で発現していることはわかったが、7TMPには神経伝達など化学受容以外の働きを持つものもたくさんあるので、本当に食草の認識に関わる味覚受容体かどうかを確認しなければならなかった。

 そこで「カルシウムイメージング法」を用いた。まず味覚細胞ではない培養昆虫細胞でナミアゲハ味覚受容体候補7TMPと発光クラゲから見つかったイクオリン(aequorin)という発光タンパク質を発現させる。その細胞を化合物で刺激したとき7TMPが応答すると発光タンパク質がカルシウムに反応して光るという仕組みである。

 私たちが得た7TMPは、産卵刺激物質の中のシネフリンを与えた時だけ発光した(図4)。一か八かの実験だったが、2年間大量の遺伝子を調べる実験を許されたおかげで、産卵刺激物質シネフリンを認識するナミアゲハの味覚受容体遺伝子を手にすることができた。

 RNA干渉(RNAi)で味覚を阻害
 遺伝子のはたらきを調べるには、その遺伝子のメッセンジャーRNAの発現を阻害する二本鎖RNA(dsRNA)を生体に導入するRNA干渉(RNAi)がよく使われる。鱗翅目昆虫では、dsRNAの注射によって遺伝子の発現量を抑えることはできるが、その効果が持続せず、この方法は難しいとされてきた。

 しかし私たちは、ナミアゲハ7TMPの発現量がピークになる前にdsRNAを導入し、発現レベルが低い状態にすれば、阻害効果がでるのではないかと考えた。そこで成虫だけでなく蛹からもふ節を取り出し、日を追って7TMPの発現量を調べてみると、羽化前日の蛹で発現量がピークとなることがわかった。

 そこで、羽化日を0日として-1, -3, -5, -7, -9日の蛹にdsRNAを注射で導入し、羽化直後の発現量を調べてみた結果、蛹化後の早い時期にdsRNAを注射するほどこの遺伝子の発現を効果的に抑制できる事がわかった。

 しかし、蛹化後早い時期は体が柔らかく、注射によるダメージが大きいので、蛹の死亡率がやや高まる。十分な遺伝子発現抑制効果は得られ、蛹の死亡率は低い時期として、羽化5日前が最良と考え、以後のRNAi実験では、羽化5日前の蛹にdsRNAを注射した。

 シネフリンに未反応、産卵せず
 次に、RNAi法を用いて7TMP遺伝子の発現を阻害したチョウの前脚を用い、電気生理学的解析を行った。感覚子にある神経細胞(ニューロン)が認識する化合物で感覚子を刺激すると、中枢系へ送られる電圧が変化(神経発火)するという事実を利用した。

 シネフリン受容体であるナミアゲハ7TMPの発現をRNAiで抑制すれば、シネフリンによる刺激で観察される神経発火が減少するはずである。実際にRNAi処理を施したアゲハチョウ(RNAiチョウ)の前脚では、シネフリンによる刺激に対してだけ神経細胞の応答が有意に減少した。

 正常なチョウは、葉にとまるとドラミングの直後に腹部を曲げて、プラスチックの葉に卵を産みつけて、飛び去る行動を繰り返す。一方、RNAiを受けたチョウは、飛翔・プラスチックの葉への着地・ドラミングまでは正常なチョウと同様であるが、その後ドラミングを長時間行うが、卵を産まずにいったん飛び去る。しかし、気になるのか、戻ってきてまたしつこくドラミングするが、結局産卵しないで飛び去る様子が観察された。 

参考HP JT生命誌研究館 アゲハチョウの味覚受容体

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右脳と左脳をつなぐ「Asap」を発見!昆虫とヒトの脳機能局在論

2011年11月21日 | ライフサイエンス

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 右脳と左脳をつなぐ物質
 一般的に左脳の働きがよい人は、論理的で判断力に優れているタイプ。右脳の働きがよい人は、直感的で創造力に優れているタイプといわれている。このように左脳の機能、右脳の機能が分かれているという考えを、脳機能局在論というが、逆のタイプの人もいて、科学的に証明されたわけではない。

 今回、右と左の脳をつなぐ神経回路が作られる際に中心的な役割を担う物質を、大阪バイオサイエンス研究所の榎本和生研究部長らがショウジョウバエで見つけた。人でこの回路に異常が出ると、認知機能の低下などの神経疾患を招くとされ、疾患の解明に役立つことが期待される。米科学アカデミー紀要電子版に掲載された。

 人の左脳は論理的思考、右脳は感覚的思考をつかさどる。目で得た視覚情報などを左右の脳をつなぐ神経回路「脳梁(のうりょう)」などを通じてやりとりし、処理する。

 この回路の構造が人と似ているのがショウジョウバエで、榎本部長はAsapというたんぱく質が、回路の細胞群にたくさん現れていることを発見。Asapを作れないようにすると、脳の左右をつなぐ神経細胞の一部が延ばせず、回路をうまく形成できなかった。

 Asapの遺伝子は、人の遺伝性精神遅滞疾患「オピッツ症候群」の原因遺伝子と同じ機能を持つ。榎本部長は「これらの遺伝子の機能解明が進めば、精神遅滞疾患の解明にも役立つ」とみている。(2011年11月16日  読売新聞)

 研究チームによると、このタンパク質と同じ働きを持つタンパク質は人間でも特定されており、てんかん発作などとの関連が指摘されているという。同研究所の榎本和生研究部長は「今回の発見が、てんかん発作などの症状の発症解明に役立てば」としている。(産経news 2011.11.15)

 昆虫の神経系
 ショウジョウバエは生物の実験にはよく登場するモデル生物だ。それにしても、昆虫とヒトの脳に共通点があるとは思わなかった人も多いのでは?昆虫の脳はどんな仕組みになっているのだろう?

 昆虫のからだは頭部、胸部、腹部の3つに分かれる。これに伴い、頭部、胸部、腹部に、それぞれ頭部神経節と食道下神経節、胸部神経節、腹部神経節に支配される分散構造がある。

 このような分散的な神経節構造は昆虫の神経系の大きな特徴である。各神経節は左右一対の縦連合といわれる神経束により結合され、はしご状の構造を示す。各神経節は、局所的な感覚情報処理や運動制御、記憶・学習の場として働き、脳がこれらの統合中枢として機能する。

 脳は主に,視覚・嗅覚などの頭部からの感覚情報の処理を行うとともに、胸部以下の神経節からの信号を受け、これらを処理し、新たな情報を行動指令として胸部以下の神経節に伝達する。

 情報の一部は脳内に記憶され行動指令を修飾する。脳以外の神経節は、体性感覚の処理に加え、胸部神経節では飛翔、歩行などの基本的な運動パターンをつくる。したがって,頭部と腹部を切り離し、胸部だけの状態でも、羽ばたきや歩行を起こすことができる。

 ただし、直進の歩行や飛行のパターンに限られる。歩行や飛行の開始、終了、方向転換などの行動指令は脳から胸部神経節に伝達される。また、胸部神経節にも学習能力がある。断頭したゴキブリを吊り下げ、脚がある高さまで下がると電気ショックが与えられるようにすると、30から40分でこのゴキブリは脚を次第に下げなくなる。このように昆虫では学習が胸部神経節など脳以外でも起こるのである。

 脳機能局在論
 次に、不思議なのは昆虫にもあるという左脳と右脳だ。これらはどのようなはたらきを持っているのだろうか?

 大脳および中枢神経系では、左右で異なる機能が局在していることがある。まず、腕を組んでみよう。どちらの腕が上になるか?人には利き腕と同様「利き脳」がある。腕を組んでみたとき、どちらの腕が上に来るかで、その人の利き脳、つまり左右のうちよく使っている脳が分かるという。

 右腕が上に来る人は左脳の働きがよく、論理的で判断力に優れているタイプ。一方、左腕が上の人は右脳の働きがよく、直感的で創造力に優れているタイプといわれている。

 言語野は大脳皮質の左半球にあることが多いが、右利きの人で数%、左利きの人で30~50%程度が右半球に言語野をもつことが知られている。総合的には90%以上の人では言語野は左半球にある。

 左半球に言語中枢がある場合においては、その損傷は言語ほか多くの精神機能の損傷を引き起こすことが多い。精神の主要な機能は左半球にあることが多いとされ、その場合においては左半球を優位半球、逆を劣位半球と呼ぶことがある。また右半球に言語中枢がある場合においては、これを優位半球と呼ぶことになり、どちらかが一般的に優れている、劣っているということではない。

 現在でも脳外科手術において手順を決める際によく用いられ、言語野のある半球を優位半球とすることが多い。 後天的に利き手の矯正を行った場合でも、優位半球や言語野の位置は特に変わらないことが知られている(厳密に言えば、一旦優位半球が確定した後に利き手の矯正を行った場合)。

 これら高次機能の局在が生じる原因等についてはよくわかっていない。 先天的半球欠如や、幼少時におけるてんかん治療などのための脳の部分的切除を行った場合、片方の半球に局在していることの多い機能がもう一方の半球で処理されるようになることがあることが知られている。

 脳梁を切断した分離脳患者の研究において、左右半球の関係や意識の所在などが論じられている。左脳は、思考や論理を司る人間的な脳、それに対して右脳は、五感を司る動物的な脳と言われる。左脳は文字や言葉などを認識し、右脳は視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの五感を認識するという。しかし、右脳・左脳論は科学的に証明されたわけではない。(Wikipedia)

参考HP Wikipedia  脳機能局在論

右脳と左脳―脳センサーでさぐる意識下の世界 (小学館ライブラリー)
角田 忠信
小学館
片づけ下手な右脳人間のための整理本―どうしてすぐに机の上がぐちゃぐちゃになるんだろう?
リー シルバー
主婦の友社

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