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第20回ノーベル物理学賞 ギヨームの「インバー合金の発見」

2010年01月31日 | 物理

 合金とは何だろう?
 合金とは何だろう?...そう、種類の違う金属と金属を混ぜ合わせたものである。では、どんな合金があるのだろう? 

 ステンレス鋼(Fe-Ni-Cr)、黄銅(しんちゅう:60Cu-40Zn)、青銅(Cu-Sn)、白銅(Cu-Ni)、赤銅(Cu-Au)、ジュラルミン(Al-Cu)、はんだ(Pb-Sn)...などおなじみの合金はたくさんある。

 では、なぜいろいろな金属を混ぜて合金にするのだろう?

 合金は純金属に他の元素を添加したもので、こうすると、もとの性質が変化したり、いままでなかった性質が現れたりする。例えば、さびやすい鉄がさびにくくなったり、融点、磁性、機械的強度、耐食性などが大きく変化する。組成を調節することで、様々な用途に応じた性質を持つ合金が生産・利用されている。

 さまざまな合金例
 ステンレス(Stainless steel)は、さびにくくするためにクロムやニッケルを含ませた合金鋼である。黄銅(brass)は適度な強度、展延性を持つ扱いやすい合金として、約350年ほど前から広く利用されるようになった。日本では5円玉で使われている。

 青銅(bronze)は、銅Cu を主成分としスズSn を含む合金である。青銅には、適度な展延性と、鋳造に適した融点の低さや流動性があり、鉄が、銅よりも安価かつ大量に供給されて普及する以前には、もっとも広く利用されていた金属であった(青銅器時代)。紀元前3000年頃、初期のメソポタミア文明であるシュメール文明ですでに発明されていた。鉄とともに日本に伝わったのは紀元前4世紀頃である。

 白銅(cupronickel)は、銅を主体としニッケルを10%から30%含む合金である。日本の100円硬貨、50円硬貨などに使用されている。海水に対する耐食性が高く、海水淡水化の設備や船舶関連の部品に多く使用されている。

 黄銅(brass)は、銅 と亜鉛の合金で、特に亜鉛が20%以上のものをいう。真鍮と呼ばれることもある。日本で現在発行されている五円硬貨の素材がこの黄銅である。適度な強度があり、展性に優れる。日本では、多くの金管楽器などにも多用されている。

 電子回路でよく使われる「はんだ」は、鉛と錫(スズ)を主成分とした合金である。合金にしたことで融点が低くなり、使いやすくなった。スズの割合が63%のとき、融点が184℃で最も低い。金属同士を接合したり、電子部品をプリント基板に固定するために使われる。

 熱膨張しないインバー合金
 このような様々な合金の中で、インバー(invar)は常温付近で熱膨張率が小さい合金である。ニッケル36%、鉄64%。Invarという名称はInvariable Steel(変形しない鋼)から名づけられた。日本語では不変鋼とよばれる。温度によって寸法が変化しないので、精密機器、精密測定器、時計や実験装置、LNGタンカーのタンク、ブラウン管のシャドーマスク等に用いられる。

 1897年にスイス人物理学者シャルル・エドゥアール・ギヨームがFe-36Ni合金でインバー特性を発見した。ギョームはこの功績によって1920年にノーベル物理学賞を受賞した。磁気歪みによる体積変化と通常の格子振動による熱膨張が相殺しあって、ある温度範囲での熱膨張が小さくなるのを利用するものである。

 1920年ノーベル物理学賞の受賞理由は「インバー合金の発見とそれによる精密測定の開発」である。
 
 シャルル・エドゥアール・ギヨームとは?
 シャルル・エドゥアール・ギヨーム(1861年~1938年)はフランス系スイス人の物理学者である。室温付近の温度変化に対して、体積膨張の小さい合金インバー(アンバー)、弾性係数変化の少ないエリンバーを発明した。1920年に「インバー合金の発見とそれによる精密測定の開発」によりノーベル物理学賞を受賞した。

 スイス、ジュラ地方のフルリエに生まれた。祖父はフランス革命時にロンドンに亡命し時計製造を始めた家系であるが、シャルルの父親の代にフルリエに移住した。チューリッヒ工科大学で学位を得たあと、パリの国際度量衡局に職を得た。1896年にインバーを開発した。このニッケル合金は室温付近で熱膨張が他の金属に比べてきわめて小さいので、サーモスタットや天文用時計の振り子などの精密機器の部品の材質として用いられた。

 国際度量衡局の局長をつとめ、温度測定について研究し、ジュネーブ大学、ヌシャテル大学、パリ大学から名誉博士号を送られた。(出典:Wikipedia)

参考hHP Wikipedia「合金」「シャルル・エドゥアール・ギヨーム」 「インバー」

見方・考え方 合金状態図
三浦 憲司,小野寺 秀博,福富 洋志
オーム社

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金属における拡散-純金属および合金における拡散の基礎,理論,現象 (World physics selection:monograph)
Th.ホイマン,H.メーラー
シュプリンガー・フェアラーク東京

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3 コメント

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トライボ合金設計 (熱処理プレス)
2012-11-05 17:24:53
 島根県安来市に巨大な工場を構える日立金属が開発した新型工具鋼 SLD-MAGIC(S-MAGIC)は微量な有機物の表面吸着により、金属では不可能といわれていた自己潤滑性能を実現した。この有機物の種類は広範囲で生物系から鉱物油に至る広い範囲で駆動するトライボケミカル反応であると。潤滑機械の設計思想を根本から変える革命というものもある。
 このトライボケミカル反応にもノーベル物理学賞で有名になったグラフェン構造になるようになる機構らしいが応用化の速度にはインパクトがある。
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機械革命のインパクト (ナノテクストラテジスト)
2015-10-25 22:04:02
 そうですか、炭素結晶の競合モデル(CCSCモデル)って自動車のパワートレイン関係者が熱い視線を向けているらしく、JAPAN革命という声も高い。
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特殊鋼流通じじぃの思い (ガリレオガリレイ)
2017-01-15 22:11:32
あらゆる真実は一度発見されれば理解するのは容易だ。肝心なのは真実を発見することだ。
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