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山崎さんの宇宙種子発見!
宇宙飛行士の山崎直子さんがスペースシャトル・ディスカバリーで宇宙から持ち帰ったはずの千葉県松戸市のカボチャの種350粒のうち、120粒は、実はスペースシャトルに搭載されず、アメリカ・ヒューストンの米航空宇宙局(NASA)のジョンソン宇宙センター内に残っていたことがわかった。
山崎さんは古里の松戸市の依頼で、市が53年ぶりに復活させたカボチャ「松戸白」の種230粒と、市が教育支援をしているカンボジアのカボチャを松戸白と交配させた「国際交流かぼちゃ」の種120粒を宇宙へ持っていったはずだった。市によると、この国際交流かぼちゃの分がシャトルに搭載されていなかったという。
市によると、国際交流かぼちゃの種は、松戸白とともに、昨年10月、ジョンソン宇宙センターに送られた。今年4月20日に山崎さんとともに帰還した種は6月8日、松戸市に届けられた。15日に市内の財団法人日本園芸生産研究所に持っていき、ケースを開いたところ、松戸白だけで、国際交流かぼちゃはなく、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を通してNASAに問い合わせていた。
同市は宇宙から戻った種を増やした上、全国の5千の小中学校へ配り、宇宙への夢を育んでもらう計画を立てていた。JAXAは市に対し、「すべての種が飛行したという誤った情報を伝え、おわびする」と謝罪した。市の担当者は、「残念としかいいようがない」と話している。(asahi.com 2010年6月17日)
最近、紛失した宇宙種子のことが話題になったが、宇宙に種子を持っていくことがこれまでにもあったのだろうか?調べてみると、最近では2009年7月に帰還した若田さんが持ち帰った「宇宙かぼちゃ」の種子がある。
若田さんの「宇宙カボチャ」に芽
宇宙飛行士の若田光一さんらと8カ月半、宇宙で過ごした「宇宙カボチャ」の種が、茨城県立農業大学校園芸部(同県坂東市岩井)で発芽した。栽培を担当している学生らは、「芽が出るとは思っていたが、ちゃんと出たのでやっぱりうれしい」と一安心。実りの秋まで観察記録を付けながら、宇宙カボチャの成長を見守るという。
同校の宇宙カボチャ栽培は、学校記念行事を手がける国際総合企画(東京都)などによる「パンプキンミッション」の一環。
同校を含む全国の16大学・研究所が、宇宙を旅した種を育てて「2世」の種を採取する。採れた種はすべて同企画に集められ、全国の小学校や幼稚園に寄贈される。
2008年11月、約350粒(約20グラム)の種が、スペースシャトル「エンデバー」で国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」に運ばれた。8カ月半後の昨年7月に若田さんとともに地球に帰還。そのうち15粒を同校で栽培することになった。
宇宙カボチャは、観賞用のペポカボチャという品種で、別名「おもちゃカボチャ」。成長してもリンゴを一回り大きくしたほどの大きさだ。
皮の色も深緑やオレンジなど多種類あり、形もひょうたん型や表面がごつごつしたタイプなど様々。どんな実ができるか、種がいくつ採れるかなどは、実るまで分からないという。
同校の宇宙カボチャの成長記録は、同企画の「パンプキンミッション」のホームページ(http://www.ksk-kokusai.co.jp/pumpkin/)で閲覧できる。同企画は、創立の節目の年にあたる学校などに種の寄贈を予定している。問い合わせは同企画(03・3251・3221)へ。(asahi.com 2010年4月7日)
宇宙種子の意味
宇宙に植物の種子を持っていくのに何の意味があるのだろうか?
もちろん宇宙には地球にはない特殊な環境があるからだ。昼・夜のはっきりしない生活、気温の差、無重力など、宇宙ステーションは地球とは明らかに違う。その中でも一番種子に影響を与えそうなのが、宇宙線と呼ばれる、放射線の量である。
宇宙線(Cosmic ray)は、宇宙空間を飛び交う高エネルギーの放射線のことである。地球にも常時飛来している。1912年以降、ビクター・フランツ・ヘスは、気球を用いた放射線の計測実験を繰り返し、地球外から飛来する放射線を発見した。彼は、この業績により、1936年にノーベル物理学賞を受賞した。
植物の種子に放射線を当てることは、植物の品種改良のためにふつうに行われていることである。品種改良は人為的に、突然変異を起こさせることで、生物の遺伝情報(DNAあるいは染色体)に変化をひき起こす。これまで、突然変異により病気に強い作物、収穫量の多い作物などがつくられてきた。
突然変異を起こす作用を、変異原(mutagen)というが、この方法のひとつに、放射線などがある。地球上では大気の存在のために宇宙線の量は少ないが、高度約 400 kmで飛行する宇宙ステーションでの被曝線量は、地表の約 1000 倍といわれる。(理科年表HP)
NASAによる宇宙種子ミッションの例
1971年1月31日、アポロ14号が月へ3回目の着陸を目指して打ち上げられた。その司令・機械船のパイロットを務めたスチュアート・ローザ(Stuart Roosa) (前職が米国森林サービス/森林降下消防士(former U.S. Forest Service(USFS) smoke jumper)の個人用持込品の中には小さい容器に梱包された数百の木の種子が含まれていた。
それはNASA/USFSの共同プロジェクトの一つとして実現したものである。地球に帰還後、「月の木(moon trees)」として世に広く知られるようになり、その苗は1976年の米国独立記念200年祭の折などしばしば合衆国各地で記念に植樹され、またその一部は世界各地にも植えられた。近年もその子孫が宇宙と地球を繋ぐ木として、米国を中心に記念植樹されている。
1983年、NASAが学校や実業界に向け、小規模宇宙実験への主体的な参加呼びかけを行っていた。当時すでに115年の歴史を誇った米国種子会社“パーク・シード社”のジョージ・パーク副社長はそれを知り、植物種子を実際にスペースシャトルに搭載し、宇宙フライトが種子にどのような影響を及ぼすか調べてみる提案を出すことを思いついた。
この第1歩となった小さなプロジェクトから発展を続け、NASAとパーク・シード社は以来共同して、植物種子が外宇宙の環境に応じてどのような応答をするのかについて学び、その上さらに大事なこととして、宇宙環境に曝した植物種子を試料とするサイエンス実験を自ら行える機会を世界中の生徒、学生さん等に提供してきたことがあげられる。
JAXA、日本人宇宙飛行士による宇宙種子
1994年年7月9日、スペースシャトル“コロンビア号”で向井千秋宇宙飛行士と共に打ち上げられた、ツツジの種子は、地球帰還後、向井さんから館林市へ無事、返還された。その後、市では向井さんの偉業をたたえ「つつじのまち・館林」のイメージアップをはかるため1998年に「宇宙ツツジ」などの商標登録を出願し、1999年、正式に承認されている。
2000年、スペースシャトル“エンデバー号”に毛利衛宇宙飛行士と共に搭載された桜の種子は、毛利さんの故郷・北海道余市町で育てられ、36本の苗木が同館を含む全国の科学館に贈られた。2006年春にはその桜の花が咲いたという便りが寄せられている。
2008年6月、スペースシャトル“ディスカバリー号”に搭乗した東京都世田谷区出身の宇宙飛行士、星出彰彦氏はケヤキの種子(約千三百粒)を宇宙へ伴い、また無事、地球に持ち帰った。これは都が駒沢オリンピック公園で採取し、星出氏に託したものである。種子は都農林水産振興財団の農林総合研究センター(立川市)で苗木に育てた後、都内の公園や小学校などに植えられる予定とした。
2008年、有人宇宙システム株式会社(JAMSS)はJAXAの支援により「花伝説・宙へ!」プロジェクトを実施した。これはさくら、ゆり、すみれなど日本の花の種子を宇宙フライトさせ、文化的イベントを創出し、「宇宙の文化利用」という新しい分野に挑戦することを目指すと、JAMASS担当者はその抱負を述べている。
それらの種子は2009年7月に若田光一宇宙飛行士と共にスペースシャトル“エンデバー号”で地上に回収された。日本に返還後、種子をそもそも採集した各地に戻され、専門家の協力を得てそれぞれの地元のこどもたちによって育てられている。
参考HP 国際総合企画株式会社「パンプキンミッション」 JAXA「宇宙種子ミッッション過去例」・JAXA「宇宙種子アサガオ」
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