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南極にアンテナ1000本「PANSY」計画で、地球規模の気候変化観測!

2011年11月19日 | 気象

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 南極にアンテナ1000本設置
 南極に約1千本のアンテナを立て、地球温暖化などを探る世界初の南極大型大気レーダー「PANSY」計画が、始まっている。北極などの観測器とも連携し、地球規模での大気の大循環や気候変動を探るのが狙いだ。東大と2010年11月に出発した、52次南極観測隊が計画を発表した。

 この計画には、観測隊の派遣元の国立極地研究所や東大、京大など国内9大学と8研究所が参加。甲子園球場のグラウンドほどの直径160メートルの敷地内に、高さ約3メートルの小型アンテナを1045本立て、地上から高度500キロまでの大気の流れを1分ごとに観測する。建設費は約46億円。「国内でも例のない大きさ。けた違いの高精度のデータが得られる」とプロジェクトリーダーの佐藤薫・東大教授。(2010年11月15日16時15分)

 2011年3月、南極初の大型大気レーダー(PANSY)の初観測に成功した。第52次南極観測隊により2010年12月下旬からほぼ1ヶ月半の夏期間にアンテナ約1000基の設置が終了し、試験観測を行ったところ予定通りの大気乱流散乱エコーが受信された。今後、積雪の状況などを見ながら調整を行い、2012年度には世界初の南極中間圏乱流エコー観測を試みる。極中間圏雲やオゾンホールなど人間活動の影響が強く反映される大気現象の物理を解明し、気候システムにおける南極の役割を明確化する。

 PANSYレーダー初観測
 2010年12月下旬から、ほぼ1ヶ月半でアンテナ約1000基を設置し、初観測に成功した。アンテナの設置は、環境保全のため地表面の整地を行わず、直径約10cmの小さな穴を空け、そこに金属パイプを差し込むことで固定する方法をとった。この夏は、史上最低の積算日照時間を記録するなど、天気には恵まれなかったが、観測隊の粘り強い努力により予定通りほぼ全数のアンテナ設置が終了した。

 2月中旬に夏隊が帰国した後は、越冬隊により、3月25日から31日の7日間、下部対流圏を対象とする初期観測を実施したところ、良好なデータが得られた。このレーダーはビームを上に向けることで鉛直方向のドップラー風速、すなわち、鉛直風を測ることができるのが特長である。図をみると鉛直ビーム(ビーム1)の散乱信号も良好に得られており、鉛直風が捉えられていることがわかります。

 このPANSYレーダーのアンテナ全数を使用したフルシステムが稼働すれば、地上1kmから500kmの対流圏・成層圏・中間圏・熱圏 / 電離圏の観測が可能となる。これにより環境が苛酷であるため他の緯度帯に比べて遅れがちであった南極大気の観測的研究に大きな進歩がもたらされることが期待される。

 PANSYが目指すもの
 極域は季節や高度領域によって大気の大循環の終着点とも出発点ともなる、地球大気において極めて重要な位置を占めている。その大循環の主要な駆動源の一つである重力波と呼ばれる、振幅の小さく周期の短い波の作用がPANSYの観測によって初めて定量的に捉えられることになりる。

 その作用を、温暖化予測等に用いられる気候モデルに組み込むことで、大循環がより正確に表現されるようになり、成層圏低温バイアスの解決に大きく寄与する。また、南極には、オーロラ・カタバ風・オゾンホール・極成層圏雲・極中間圏雲(夜光雲)などの中緯度や熱帯にはない大気現象が多く見られる。

 このなかにはオゾンホールや極中間圏雲といった人間活動と深く関連する現象も存在する。PANSYは、このような南極の大気現象のほとんど全てを精密に観測して、極域の地球気候における位置づけを明確にし、気候の将来予測の精度向上に寄与することを目指している。

  PANSYの研究テーマ
 成層圏・中間圏温度の謎: 成層圏低温バイアスとは、現在の気候予測モデルが持つ誤差。モデルの冬から春にかけての成層圏での気温が、実際のものより低くなってしまう。大循環を引き起こす重力波効果が正確にモデルに取り込めていないためだと考えられている。

 例えば、高さ50km付近の温度の極大は、火星や金星には存在せず、地球大気にのみ見られる構造だが、地球にはオゾン層が存在し、太陽紫外線を吸収して大気を加熱するために起きる。しかし、冬の極域は一日中太陽光線が届かないのにもかかわらず、この温度の極大が見られます。

 さらに、高さ100km付近では、太陽光線が一日中降り注ぐ夏の方が、冬よりも低温になっている。ここは地球大気で最も気温の低い領域である。 

 大気重力波の中層大気での役割: 重力波とは、浮力を復元力とする大気中の小さな波。相対論における重力波とは別物である。

 山や低気圧、ジェット気流、対流などが発生源。上方に運動量を運び、大循環を引き起こす。この大循環に伴う上昇・下降流が極域の温度構造に大きく影響する。オゾンホールをもたらす極成層圏雲量の予測には重力波の大循環駆動力を定量的に知る必要がある。

 大気中の活発な積雲対流や前線、ジェット気流などは、大気重力波と呼ばれる波動を生みだしている。大気重力波は微弱なため、近年になるまで実態を把握するのが困難でした。しかし、最近ではその重要性の認識は年と共に大きくなっている。大型大気レーダーは唯一、重力波の作用を定量的に評価できる観測装置だ。 

 夜光雲の謎: 極中間圏雲は夏の上部中間圏(高度85km付近)にできる雲。太陽が沈んだ後、夜中にブルーグレーに輝いて見えるので夜光雲とも呼ばれる。

 中間圏界面と呼ばれる高さ90km付近では、夏に非常に低温となり、水蒸気が凝結して夜光雲ができる。夜光雲は19世紀終わりに初めて発見され、それ以前は存在しなかったと考えられている。つまり、夜光雲は人間活動に関連して現れた現象であり、気候変動のカナリアとも言われている。

 レーダー観測を行うと夜光雲に関連すると思われる特殊なエコー(Polar Mesospheric Summer Echo) が受信される。ハイパワーのPANSYレーダーは、PMSEをモニターできるだけでなく、周辺の流れ場も測定できるため、夜光雲の物理に迫ることができる。

 極成層圏雲の物理: オゾン破壊反応にかかわる極成層圏雲は高さ20~30kmに現れる極域固有の雲。日出前や日没後に真珠母貝のように輝いて見える真珠雲もその一つだ。冬から春にかけての極域成層圏下層は低温で、わずかな水蒸気をも凝結させ、極成層圏雲となる。PANSYレーダーによる流れとライダーによる雲の同時観測をすることで、極成層圏雲の実態を調べることができる。

 成層圏物質循環による極域でのオゾンの蓄積量は春に最大となる。ところが南極では、極夜ジェットで囲まれた極渦の内側に発生する極成層圏雲上での光化学反応により、オゾンが破壊され、オゾンホールが出現する。フロン規制により21世紀半ばにはオゾンホールは消滅すると予測されているが、対流圏に見られる地球温暖化の一種の反作用として成層圏の温度はさがり、オゾンの回復は遅れるかもしれないとの見方もある。

 したがって、オゾンホールの将来予測には、極成層圏雲の量を決める成層圏の温度を正しい評価が必要である。そして、そのためには大気大循環に大きな役割を果たすと考えられている大気波動作用の、大型大気レーダーによる定量評価が不可欠である。  

 南極カタバ風とそれにともなう対流圏循環: 南極では、大気の大循環により低緯度域から流れ込む気流が冷やされ、南極大陸の斜面を流れ落ちるカタバ風と呼ばれる現象があります。PANSYレーダーは、カタバ風がもたらす大気循環による上空の水蒸気の流れを、時々刻々に捉える。これまでは難しかった雲の生成や消滅過程、エアロゾルの輸送過程を詳細に調べることもできる。(National Institute of Polar Research, JAPAN)

参考HP 国立極地研究所:Pansy 南極大型大気レーダー初観測

南極ってどんなところ? (朝日選書)
クリエーター情報なし
朝日新聞社
極地からわかる地球のひみつ (ふしぎナゾ最前線!現代科学の限界にいどむ)
クリエーター情報なし
旺文社

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地球中心部「外核」は酸化鉄(FeO)の2層構造?地軸逆転の原因か?

2011年11月19日 | 地学

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 地球中心部「外核」は2層か?
 地球中心部の「外核」という部分では、結晶構造が異なる液状の鉄が2層構造で対流している可能性が高いことを、東京工業大などの研究チームが突き止め、11月11日の米科学誌サイエンスで発表した。

 地球は外側から地殻、マントル、外核、内核にわかれ、外核は深さ約2900~5100キロで、溶けた鉄などでできている。東工大の広瀬敬教授らは、外核の温度や気圧を再現し、液状の鉄がどう変化するか調べた。地下4000キロ付近と同じ条件(240万気圧、絶対温度4000度)になると、鉄の結晶の形が変化することがわかった。

 この結果を基に、外核内の動きをコンピューターで再現すると、従来考えられていた1層ではなく、外核の中央付近を境にして、鉄が2層構造で対流している可能性が高いと判明した。

 この対流で起きる地磁気は、数万~数十万年周期で反転しており、研究は、こうした磁場変動の原因解明に役立つかもしれない。広瀬教授は「2層構造の対流が温度や気圧の差で不安定になり、周期的にその構造が崩れて地磁気の反転が起きるのではないか」と話している。(2011年11月11日  読売新聞)

 酸化鉄(FeO)の構造変化
 地球の中心には半径3500kmの金属鉄を主成分とする核があり、金属核は深さ5150kmを境に液体核(外核)と固体核(内核)に分かれている。外核の液体金属が対流することにより、地球磁場が発生している。外核の成分は溶融した状態の鉄で、30%程度の酸化第一鉄(FeO)が含まれており、地震波観測に基づいて外核の対流は一層だと従来考えられてきたが、温度圧力条件の変化に伴う成分の結晶構造の変化の影響等考慮されておらず、正確には分かっていなかった。そこで、本研究では、FeOの外核中での結晶構造の変化を調べ、その変化により外核がどのように対流しているのかを調べた。

 本研究では、大型放射光施設SPring-8の高圧構造物性ビームライン(BL10XU)において、地球外核の物理条件の範囲(227万気圧、3770K~324万気圧、4180K)で、地球外核の成分であるFeOの結晶構造がどのように変化するのかを調べた。その結果、外核中部に相当する温度圧力条件下(240万気圧、4000K)で塩化ナトリウム型構造から塩化セシウム型構造へと結晶構造が変化することを見出した。FeOが塩化セシウム型構造をとることは従来知られておらず、本研究により初めて発見された。

 この結晶構造の変化は対流の障害になり、外核の対流を変える可能性があるため、今回の結果を数値シミュレーションに取り入れ、外核の対流状況を調べた。その結果、外核の対流は、FeOが塩化セシウム型構造に変化する深度で遮断され、従来考えられていたような一層ではなく、二層対流となることが明らかになった。

 地磁気逆転の原因
 いままで外核の対流は一層だと考えられていたが、本研究により発見した構成成分の相転移を考慮すると、二層対流である可能性を示した。外核の対流運動により地球磁場は生成されている。地球の歴史を通して、地磁気の南北は平均して70万年に1度入れ替わって来た。二層対流が不安定になることにより、地磁気の逆転を引き起こしている可能性がある。

 地磁気逆転とは、地球の地磁気の向きが、かつては現在と南北逆であったとすること。1600年に、ウィリアム・ギルバートが地球は一つの大きな磁石であると主張した。1828年には、ガウスが地磁気の研究を開始した。さらに1906年には、現在の地磁気の向きとは逆向きに磁化された岩石が発見された。

 1926年、京都帝国大学(現在の京都大学)教授の松山基範が、兵庫県の玄武洞の岩石が、逆向きに磁化されていることを発見した。松山はその後、国内外36か所で火成岩の時期の調査を行い、他にも逆向きに磁化された岩石を発見した。松山は1929年、地磁気逆転の可能性を示す論文を発表した。

 当時の常識に反する考え方だったため、当時の評判はよくなかった。 その後、古地磁気学が盛んになり、年代測定の技術も進歩した。その結果、地磁気が逆転を繰り返していることがはっきりしてきた。 1964年には、アメリカの研究グループが地磁気極性の年代表を発表した。このとき、アラン・コックスは2つの「逆磁極期」(反対は「正磁極期」)のうちの1つに、松山の名前を選んだ。  

 現在、2つの逆磁極期があったことが判明している。約500万年前から約400万年前の逆転期は、「ギルバート」と名づけられ、258万年前から78万年前の逆転期は「松山」と名づけられている。

 地球の内部構造
 地球の内部はどうなっているのだろうか?大きく分けると、地殻、マントル、核に分けられる。

 地殻とは地球の固体表面を指し、マントルと同じく珪酸塩成分から成る。地殻は熱伝導でしか地球内部の熱を伝えないため、マントルの対流と比べると効率が悪く、結果的に核やマントルの冷却を遅延させている。

 組成差や構造から大陸地殻と海洋地殻に分類される。表面の55%を占める海洋地殻は玄武岩質で、厚さは平均6km、平均密度は 3.0g/cm3である。固化形成は2億年以内となる。対して大陸地殻は花崗岩質で、厚さ20-70km(平均35km)、平均密度2.8g/cm3以下と厚く軽い。

 地殻表面の構造は、プレート運動による造山運動や火山活動、大気と水による風化や浸食、堆積などによって決まる。

 マントルは珪酸塩鉱物でできており、深さ約2,900kmまで存在し、地球の体積の83%を占めている。マントル全体の化学組成は、必ずしもわかっているわけではない。上部マントルは、かんらん岩または仮想的な岩石であるパイロライトから成るとする考えが主流であるが、下部マントルについては輝石に近い組成であるとする説もあり、定まっていない。

 マントルは核によって暖められ、また自らの内部にも熱源を持つ。そのため固相のマントルはゆっくりと対流(プルームテクトニクス)をしながら熱を地殻に運んでいる。地殻に近い位置ではこのマントル対流は起こらず、地殻と一体化するようなふるまいをしておりプレートテクトニクスという水平運動を起こす。マントルの動きは不明瞭な点が多い。深発地震が700kmより深いところでは起こらない点から、対流運動が二層で独立している説も提唱されているが、一方で岩石圏の沈み込みが核付近まで起こっているとの報告もあり、地震学的トモグラフィー法などにて構造推定が行われている。

 地殻との境には地震波速度が不連続に変化する層があり、モホロビチッチ不連続面(モホ面)という。

 核は地球の中心部であり、コアとも言う。外核と内核に分かれ、液相の外核の半径は3,480km、固相の内核の半径は1,220kmである。外核は鉄とニッケルが主成分であると推定されているが、水素や炭素などの軽元素を10%以上含んでいるとしなければ、地震波速度と密度の説明ができない。

 内核は、地球内部の冷却に伴い、外核の鉄とニッケルが析出・沈降してできたとされており、現在でも成長が続いていると考えられている。ただし、内核の環境である320万気圧では金属鉄はその性質上固相を取るためともされる。地球中心部の圧力は約400万気圧、温度は物質組成とエネルギー輸送過程に依存するため正確にはわからないが、約5,000K - 8,000Kと推定されている。

 対流や地球自転などに起因する外核の金属流体の動きによって電流が生じ、この電流により磁場が生じると考えられている。これが地球磁場である。このように地球の力学的な運動と結びついた磁場発生・維持機構を、ダイナモ機構という。

参考HP Wikipedia 地球 ・Spring8 地球液体核に二層対流、地球磁場変動に影響 

地殻・マントル構成物質
クリエーター情報なし
共立出版
プルームテクトニクスと全地球史解読
クリエーター情報なし
岩波書店

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