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「冷たくて新鮮な空気はすばらしい」
氷点下18度という凍える寒さの中、古川聡さん(47)ら3人の宇宙飛行士を乗せたソユーズのカプセル型帰還船が11月22日、夜が明けきらないカザフスタンの草原に着陸した。
約5か月半ぶりの地球の感触に、古川さんは「ずっとエアコンで22~23度だったので、こういう冷たくて新鮮な空気はすばらしいですね」と笑顔で話した。日本からの報道陣に「今何がしたいですか」と尋ねられ、「お湯がいっぱい入ったお風呂につかりたい」と話した。
着陸地点は、首都アスタナから西へ約400キロ・メートル。見渡す限り何もない荒野だ。前日に吹き荒れた雪もやみ、この日は満天の星空。着陸は通常、パラシュートなどの目印が目視できる昼間に設定されるが、今回はロシアのロケット打ち上げ失敗の影響で、捜索が難しい夜明け前の着陸となった。
宇宙船の寿命は200日。昼間の着陸日を設定することもできたが、再延期すると、寒さがさらに厳しくなるため、危険性が増すと判断したという。
着陸予定地点近くでは、火の玉のように見えるソユーズとISSが並走しながら上空の西南西の方向から出現。その後、ISSは上空へ、ソユーズは下方へ分かれていった。
着陸の知らせが入ると、付近の町に待機していた救助隊や野口聡一飛行士(46)らが一斉に、ヘリコプターなどで着陸地点へと駆けつけた。朝日に照らされた帰還船から運び出された古川さんは、近くに置かれたイスに座り、簡単な診察を受けた。(2011年11月22日 読売新聞)
ISS滞在165日、日本人最長
ソユーズでISSを往復した日本人は、2009年12月~10年6月に滞在した野口聡一さん(46)に次いで2人目。古川さんのISS滞在は165日、ISSへの往復を含めると167日。連続滞在日数では野口さんの163日(ISS滞在は161日)を抜いて日本人最長となった。
古川さんと、米国のマイケル・フォッサム飛行士(53)、ロシアのセルゲイ・ボルコフ飛行士(38)の3人は22日未明、ISSに残る米露の3人に別れを告げた後、ソユーズに乗り込み、同日午前5時(同午前8時)に上空約400キロを周回するISSを離脱。徐々に高度を下げ、帰還カプセルが切り離されて、午前8時(同11時)ごろ黒海の上空約100キロ付近で大気圏に突入した。
高度約10キロでパラシュートが開き、毎秒約8メートルの速度で降下。直前、衝撃をやわらげるため地面に向けて逆噴射した帰還カプセルは、雪煙を上げて着地した。
古川さんは6月8日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地からソユーズ宇宙船で打ち上げられ、6月10日からISS長期滞在を始めた。宇宙飛行士候補に選ばれて12年、47歳での初飛行は、JAXAの飛行士としては最年長。滞在中の7月には、米スペースシャトル「アトランティス」の最終便をISSで出迎えた。
ISSでは日本実験棟「きぼう」の管理のほか、医師のキャリアを生かし、宇宙生活が人体に与える影響を自らの体で実験する一方、難病の新薬候補となるたんぱく質の結晶作成など多くの実験に取り組んだ。地上との交信イベントにも参加し、東日本大震災の被災者らにエールを送った。(毎日新聞 2011年11月22日)
当初は、11月中旬に地球に帰還する予定だったが、8月にロシアがソユーズロケットの打ち上げに失敗。古川さんらの交代要員となる飛行士の到着が遅れた。この結果、古川さんの帰還も延長され、着陸地点との関係から、捜索が難しい夜明け前の着陸を余儀なくされた。(2011年11月22日 読売新聞)
Dr.古川の宇宙実験完了
11月22日、国際宇宙ステーション(ISS)からソユーズ宇宙船で帰還した古川聡飛行士(47)は同日午後、着陸地に近いクスタナイ空港での歓迎式典に参加した後、自宅がある米国に専用機で向かった。日本人としてはもっとも長い167日間の滞在を終えた古川さん。地上の重力に体を慣らすため、ヒューストンで1カ月半にわたるリハビリに入る。
古川さんは、ISSに長期滞在した日本人飛行士の中では唯一の医師。その知識と経験を生かし、宇宙生活が人体に与える影響を自らの体を使って調べる「宇宙医学」の実験に熱心に取り組んだ。
たとえば長期滞在の飛行士は、一般人の年間被ばく許容限度(1ミリシーベルト)近い宇宙放射線を1日で浴びる。古川さんは滞在中の被ばくを小型線量計で記録した。今後分析し、宇宙滞在が一般化する将来の被ばく防護対策に役立てる。
また自ら脳波や心拍数などを測定し、モニター画面越しに地上の医師の診察を受ける実験もした。このシステムが確立されれば、宇宙にいながら健康を自分で管理し、カルテを共有する地上の医師の「遠隔診断」を受けることも可能になる。
古川さんは実験の際に気づいた診断方法の改善点をアドバイスした。このシステムを計画する宇宙航空研究開発機構の長谷川義幸理事は11月22日、「古川さんはドクターとエンジニアの両方(の役割)をやってくれた」と評価した。
古川さんは長期滞在中、毎日新聞臨時ISS宇宙支局長として、科学面でコラム「Dr.古川の宇宙支局便り」を連載。宇宙での心身の変化などについて医師の視点から発信した。最終回では「(宇宙へ行く夢がかなった今後は)経験を生かして宇宙医学研究の発展に貢献したい」とつづっている。
「太もも上がらない」
着陸直後に健康チェックを受けた古川さん。地上支援チームの一員として現地で着陸を見守った先輩飛行士の野口聡一さん(46)に「太ももが上がらない」と久しぶりの重力への違和感を訴えると、野口さんは「しばらくそういう状態が続くよ」と応えていた。
古川さんが取り組んだ医学実験の例
・骨粗しょう症の約10倍の速さで骨から溶け出し髪に蓄積するカルシウムの量を、出発前後と滞在中で比較分析する。
・無重力のため床に落ちずに空気中を漂う真菌(かび)が、鼻や喉の粘膜に付くかどうかを、綿棒などで採取して調べる。
・自分の心電図を作り、24時間の変化を分析、1日に16回昼夜が来るISSの環境が生体リズムに影響を与えるかどうかを調べる
・太陽の活動などで生じる「宇宙放射線」の被ばく量を小型線量計で調べ、宇宙滞在者の放射線防護に役立つデータを取得する
・自ら心電図や脳波、目や唇の画像を撮り、ISSと地上で共有。地上から病気の診断などができる仕組みづくりを目指す
・長期間の宇宙滞在で心臓のポンプ機能に支障が生じるかどうかを調べる(毎日新聞 2011年11月23日)
古川宇宙飛行士の主な任務
古川宇宙飛行士は、第28次/第29次長期滞在クルーのフライトエンジニアとしてISSに約5ヶ月半滞在し、「きぼう」日本実験棟での実験運用やISSの運用・維持管理を行った。主な任務は次の通り。
1.日本人宇宙飛行士による本格的な実験運用
古川宇宙飛行士は医師・科学者出身の宇宙飛行士として、専門知識や科学者としての視点を活かしながらISSでの長期実験運用を実施した。
古川宇宙飛行士は、「きぼう」日本実験棟船内実験室でのJAXAの実験運用以外にも、NASA、ESA、その他の国際パートナーの実験運用を担当した。また自身が被験者となって、将来の長期滞在や惑星探査ミッションに向けた有人宇宙技術の開発実験に参加した。
2.日本人2人目のソユーズ宇宙船フライトエンジニア
古川宇宙飛行士はソユーズ宇宙船フライトエンジニアとしてソユーズ宇宙船に搭乗し、ISSに打ち上げられた。今回違う点は、ソユーズTMA宇宙船が改良されており、デジタル化された新型2号機となるソユーズTMA-02M宇宙船に搭乗した。
3.補給物資、不要品の移送・収納作業
古川宇宙飛行士のISS滞在中、ロシアのプログレス補給船が2回、スペースシャトルが1回(STS-135)、ISSに到着した。ISS長期滞在クルーは、スペースシャトル等で運ばれた物資を運び出して所定の場所に収納または設置したり、欧州補給機(ATV-2)とスペースシャトル(STS-135)の分離前にはISSからの不要品を積み込んだりといった作業を実施した。
4.スペースシャトルの退役
古川宇宙飛行士が長期滞在中に飛行したスペースシャトル「アトランティス号」によるSTS-135ミッションは、物資の補給ミッションになるが、最大限物資を運搬するため、そして緊急帰還時に備えて4人という少人数で飛行した。このため、従来のスペースシャトルミッションとはやや異なり、船外活動作業やロボットアーム運用、物資の移送など作業の主体はISSクルーが担当した。この飛行を最後にスペースシャトルは退役した。
ISS長期滞在クルーの交代
2011年6月8日、古川宇宙飛行士は、マイケル・フォッサム、セルゲイ・ヴォルコフ両宇宙飛行士とソユーズ宇宙船(27S)で打ち上げ、6月10日にISSに到着すると、それまでISSに滞在していたアンドレイ・ボリシェンコ、アレクサンダー・サマクチャイエフ、ロナルド・ギャレン宇宙飛行士とともに第28次長期滞在クルーとしてのISS長期滞在を開始した。
2011年9月、第28次長期滞在クルーであるアンドレイ・ボリシェンコ、アレクサンダー・サマクチャイエフ、ロナルド・ギャレン宇宙飛行士が帰還すると、マイケル・フォッサム宇宙飛行士をISSコマンダーとする3名体制での第29次長期滞在が開始された。
2011年11月には、ダニエル・バーバンク、アントン・シュカプレロフ、アナトリー・イヴァニシン宇宙飛行士がソユーズ宇宙船(29S)でISSに到着し、第29次長期滞在クルーに加わった。2011年11月22日無事帰還した。(JAXA)
参考HP JAXA 古川聡宇宙飛行士
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