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2011年11月9日朝、小惑星「2005YU55」月より近く(32万km)を無事通過

2011年11月12日 | 宇宙

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 最近、地球に接近する小天体が多くないか?
 最近、マヤ文明の予言などの終末説の1つとして、エレ-ニン彗星衝突の可能性が話題になったが、エレーニン彗星は、地球に最接近したのは、2011年10月16日で、距離は約3,500万kmであった。この距離、月の距離は38万kmなので、90倍も離れた場所を通過した。

 今回、月の距離より近い、わずか32万kmの場所を直径400m、ほぼ球形の小惑星が、2011年11月9日朝、静かに通過した。小惑星の名は 「2005YU55」。これほど大きな小惑星が、地球に近づいたのはおよそ30年ぶりだという。このサイズの小惑星が地球に接近するのは1976年以来で、次回は2028年までないという。

 小惑星「2005YU55」は、探査機はやぶさが訪れた「イトカワ」とほぼ同じ大きさ。AP通信では、仮に地球に衝突した場合、直径6キロほどのクレーターができ、マグニチュード7の地震が起きるとの科学者の推測を伝えていた。

 最近小惑星や彗星などの天体が地球に接近するという記事が多い。これは昔より、観測技術が上がったからだろうか?2011年2月4日には、「2011CQ1(直径1.3m)」が、地球表面からわずか5,480kmの位置を通過したことも話題になった。

 月よりも地球に接近して通過した小惑星を、南米・チリにある東京大学のアタカマ天文台が撮影に成功した。「2005YU55」と呼ばれる小惑星は、日本時間の11月9日午前8時半頃、地球に最も接近し、東京大学は、この時間帯に南米・チリの標高5600メートルにあるアタカマ天文台で撮影した。直径が400メートルほどの小惑星は、月と地球の平均距離の85%に当たるおよそ32万キロ付近を通過し、映像には、おぼろげに光りながら進んでいく様子が映し出された。

 東京大学によると、この画像は、「中間赤外線」と呼ばれる特殊な波長で観測した世界で唯一のデータになるということで、今後、データを分析すれば、小惑星の温度や表面の様子が、詳しく分かる可能性があるという。小惑星は、太陽系や地球が誕生したころの姿をとどめているとされ、東京大学は、「小惑星の接近で得られた貴重なデータを基に、地球や太陽系の成り立ちの解明につなげていきたい」と話している。(NHK news 11月11日)

 小惑星の接近を待ち望む天文学者
 
「2005YU55」は10時間足らずの間に、わし座からペガスス座へと東に向かっていくつかの星座を通り過ぎた。

 カリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所(JPL)太陽系力学グループの上級アナリスト、ジョン・ジョルジーニ氏は、「軌道は、火星の軌道の少し外側に出て、金星の軌道の内側まで急に落ちていく」。そのため、詳しく観測するには「この1年半の間は地球から遠すぎた」と説明した。「それにとても暗く、(太陽の)光を10%足らずしか反射しない」。

 今回の接近通過の好機を生かすため、NASAは11月4日からカリフォルニア州ゴールドストーンにあるディープスペースネットワークで「2005YU55」を追跡している。プエルト・リコにあるアレシボ天文台の巨大電波望遠鏡も、11月8日から「2005YU55」の追跡を始めることになっている。

 「どのように放熱するかを理解するため、熱の調査が行われる。これにより小惑星を形成している物質の特性についてわかるだろう」とジョルジーニ氏は説明している。

「またレーダーによる観測も行う。これで形と回転についてわかる。そして、これらの情報を組み合わせると、この小惑星が何でできているか、どのように構成されているのかがよくわかる」。

 2005 YU55は軌道が定期的に地球に接近するが、危険が迫っているわけではない。少なくともこれから200年間は、今回より接近することはない専門家は話している。

 地球に接近した2005 YU55を訪れる有人ミッションについて、いつの日か実現する可能性はあるが、地球近傍小惑星の2000 EA14など、より簡単に行ける、もっと適切な候補があるとジョルジーニ氏は話す。

 2005 YU55の軌道は「(地球の軌道との)違いが大きく、到達するのに少し余分にエネルギーが必要になる」とジョルジーニ氏は言う。「有人ミッションを計画する際はエネルギーが最小限で済むものが望ましいが、この惑星はほかよりも少しだけ余計にエネルギーがかかる」。(Ker Than for National Geographic News November 8, 2011)

 地球近傍小惑星とは?
 地球近傍小惑星とは、地球に接近する軌道を持つ天体(地球近傍天体、NEO (Near Earth Object))のうち小惑星のみを指す。英語でNEAs (Near Earth Asteroid) と呼ばれることもある。NASAによると地球に接近するために監視が必要とされるものは約8500個とされる。軌道計算では、これらの小天体は今後少なくとも100年間は地球に衝突する恐れはないとしている。

 地球近傍小惑星の起源は3つあると考えられている。1つ目は、揮発成分を失った短周期彗星であり、いくつかの小惑星にはかすかな尾が観測されている。2つ目は、エッジワース・カイパーベルトである。そして、3つ目は木星との重力の相互作用により小惑星帯から弾き飛ばされた、というものである。

 地球に接近する小惑星はその軌道要素からアポロ群、アモール群、アテン群の3つに大別される。 そのため、地球近傍小惑星はアポロ・アモール・アテン型小惑星、AAA天体と呼ばれることもある。

 なお、これらは地球や水星、金星、火星などを通過するときに摂動を受けるので軌道が変わりやすく、長期の追跡調査が必要である。実際に発見後、数十年間に渡って行方不明となっていた小惑星が存在する((719) アルベルト、(29075) 1950 DA、(69230) ヘルメスなど)。

 白亜紀の終わりの地層に発見されたK-T境界(白亜紀 - 第三紀境界層)は、巨大な彗星か隕石の衝突によってもたらされたことがわかって来たが、その元として地球近傍小惑星の存在が浮上してきた。

天体の地球への衝突の脅威は、1994年7月16日のシューメーカー・レヴィ第9彗星の木星への衝突により広く知られるようになった。木星へは、地球以上に多くの天体が衝突していると考えられている。

 直径1kmほどの小惑星の地球への衝突は100万年に数回、5kmほどの小惑星の衝突は1000万年毎、小天体の衝突は毎月2、3回起こっていると考えられている。

 地球近傍小惑星最近の記録
 これまでに数回間違った警報が出ているが、多くの小惑星が地球に衝突する危険性があることが知られている。2002年4月、NASAはアポロ群の小惑星 (29075) 1950 DA(直径1.1km)が2880年3月16日に0.3%の確率で地球に衝突すると発表した。この確率は他の小惑星の危険性の1,000倍に当たる。

 2004年には、それまでの地球接近記録を更新する2個の小惑星が発見された。3月18日にアテン群の小惑星 2004 FH(直径30m)が地球の表面からの距離4万2740kmまで接近し、3月31日には同じくアテン群の 2004 FU162(直径6m)が同6,350kmまで接近した。

 2006年7月3日には、2004 XP14が地球から約42万kmの位置を通過した。

 2008年10月7日には、2008 TC3が発見からわずか20時間で大気圏に突入し、スーダン上空での爆発が人工衛星から確認された。その後、多数の破片が落下現場から隕石として回収された。

 2010年9月8日には、共にアテン群の 2010 RX30(直径12m)、2010 RF12(直径7m)が発見から3日後に地球からそれぞれ24万8000kmおよび7万9000kmの位置を通過した。そのうち 2010 RX30は日本上空を通過している。

 2011年2月4日には、2011 CQ1(直径1.3m)が、地球表面からわずか5,480kmの位置を通過し、衝突しなかった小惑星の接近最短距離を更新した。あまりにも近くを通過したため、地球の重力によって 2011 CQ1の軌道は60度も折れ曲がった。

 2011年6月28日、スクールバスほどの大きさの小惑星が地球をのすぐそばを通過していった。 2011 MDと命名されたこの浮遊天体は、地表から約1万2000キロ上空を通過した。月までの距離の約30分の1の近さだった。この小惑星は、6月22日にマサチューセッツ工科大学(MIT)のリンカーン地球近傍小惑星探査(LINEAR)計画の研究者により発見された。大きさは幅約6~14メートルと見積もられた。計測によると、最高速度は時速約10万1000キロだった。

 2011年11月8日から9日にかけて、「2005YU55」が、地球から32万5000kmのところを通過した。2005 YU55は直径400mもあり、これほどのサイズの小惑星が接近するのは観測史上初めてである。

 このように、地球近傍小惑星はその軌道によっては地球に衝突する可能性も考えられる。小さな小惑星の衝突でも甚大な被害が、予測されることから、これらの小惑星を発見し監視するためのプロジェクトが世界各地で行われている。(Wikipedia)

参考HP wikipedia 地球近傍小惑星 National Geographic news 小惑星再接近、月の内側を通過

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ノーベル賞の田中耕一氏の最新研究は「病原体フィッシィング技術」?

2011年11月12日 | 化学

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 血液1滴から病気を発見?
 2002年ノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏が、新しい研究成果を発表した。研究内容は「抗体の抗原と結合する能力を飛躍的に高める基礎技術を開発」である。抗体・抗原といえばタンパク質。田中耕一氏がノーベル賞で受賞したのは「タンパク質の分析法」。タンパク質分析の専門家である田中耕一氏は、今回、新しくつくった抗体で、病原体を効率よく捉え、これをタンパク質分析することで、病気の早期発見につながる方法を開発した。

 島津製作所(京都市中京区)の田中耕一フェローらは11月8日、人の血液中で病気の進行とともに増える目印物質を高い精度で見つける方法の開発に成功したと発表した。血液1滴で、がんなどの病気を発症前に見つけられる診断システムの実用化につながるという。11月11日付の日本学士院の英文学術誌(電子版)に論文が掲載される。

 田中フェローと佐藤孝明グループリーダー(分子腫瘍学)らは、「Y」の字の形をしている「抗体」が、上半分の「V」の部分を腕のようにして病気の目印物質をつかまえる機能を持つことに着目した。抗体は、病気を防ぐ免疫を担う物質として知られる。

 ハムスターの抗体にポリエチレングリコールを混ぜ合わせると、その前に比べ、目印物質の検出能力が約100倍高かった。ノーベル賞の受賞につながった質量分析装置で調べた結果、抗体のVの部分がポリエチレングリコールで関節のように橋渡しされていた。腕の部分を柔軟に動かせるようになり、目印物質をつかまえる能力が高まったとみられる。文部科学省で会見した田中フェローは、ぐるぐると腕を回してこの構造を説明。「能力が100倍の薬ができれば100分の1の値段で検査ができ、患者さんも助かり医療費もかからない」と述べた。(毎日新聞 2011年11月8日)

 点から線、線から面へ
 抗体は、生物を疾病等から防備する免疫反応の中で重要な働きをしているタンパク質としてよく知られているが、タンパク質研究の分野では多種多様な生体物質が含まれる血液や細胞から、ある種の生体物質だけを高純度で選択する「フィッシング」という技術にも応用されている。

 質量分析装置を用いてタンパク質の構造解析を行う際も、抗体による「フィッシング」を組み合わせることで、感度の向上を図っている。しかし、これまで用いられていた抗体は、生体が作り出したものや、マウス・ヒトのキメラ抗体等が大部分で、抗体のモデル構造を表すためによく用いられる、Y字型のくびれ部分(ヒンジ部)に自由度がほとんど無く、抗原を捕捉できる位置が「点」であり、抗原と結合する能力が限られていた。

 本研究グループは今回、抗体のヒンジ部に人工関節のようなバネ状構造を挿入することで、抗原結合部位に大幅な自由度を与える「可変抗体」を、化学合成により作成する方法を確立した。これにより、抗原であるタンパク質やペプチド等に結合する能力が100倍以上向上できることを世界で初めて確認した。

 この技術により、「フィッシング」機能の大幅向上が期待され、「フィッシング」等の前処理法と最先端質量分析装置との組み合わせで、血液1滴から がんや成人病等を早期発見できる画期的診断システムの構築に貢献することが期待される。

 さらには、最近注目されている「抗体そのものを薬として用いる」抗体医薬の原料として使用することで、抗体医薬の能力向上等に役立つことが期待される。

 抗体(antibody)とは何か?
 そもそも抗体とは何だろう? 「抗体」とは私たちの体を病原体から守る「免疫系」のキープレイヤーとして働いているタンパク質の一種である。抗体は、免疫系細胞のうち、リンパ球、B細胞の産生する糖タンパク分子で、特定のタンパク質などの分子(抗原)を認識して結合する働きをもつ。

 抗体は主に血液中や体液中に存在し、例えば、体内に侵入してきた細菌・ウイルスなどの微生物や、微生物に感染した細胞を抗原として認識して結合する。抗体が抗原へ結合すると、その抗原と抗体の複合体を白血球やマクロファージといった食細胞が認識・貪食して体内から除去するように働いたり、リンパ球などの免疫細胞が結合して免疫反応を引き起こしたりする。

 これらの働きを通じて、脊椎動物の感染防御機構において重要な役割を担っている(無脊椎動物は抗体を産生しない)。一種類のB細胞は一種類の抗体しか作れず、また一種類の抗体は一種類の抗原しか認識できないため、ヒト体内では数百万〜数億種類といった単位のB細胞がそれぞれ異なる抗体を作り出し、あらゆる抗原に対処しようとしている。

 「抗体」という名は抗原に結合するという機能を重視した名称で、物質としては免疫グロブリン(immunoglobulin)と呼ばれる。「Ig(アイジー)」と略される。すべての抗体は免疫グロブリンであり、血漿中のγ(ガンマ)グロブリンにあたる。

 抗体は外見が「Y」の字の形をしている。「Y」字の下半分の縦棒部分にあたる場所をFc領域 (Fragment, crystallizable) と呼ぶ。白血球やマクロファージなどの食細胞はこのFc領域と結合できる受容体(Fc受容体)を持っており、このFc受容体を介して抗原と結合した抗体を認識して抗原を貪食する(オプソニン作用)。「Y」字の上半分の 「V」字の部分をFab領域 (Fragment, antigen binding) と呼ぶ。この2つのFab領域の先端の部分で病原体などの「抗原」と結合する。2本の軽鎖と2本の重鎖からなる。重鎖のFab領域とFc領域はヒンジ部でつながっている。

 抗体の自由度を増すβアミロイド
 今回の研究では、抗体のFab領域(Y字型の「V」の部分)に相当するペプチドとして 化学合成したベータアミロイドを用い、動物細胞で作成したFc領域(Y字型の「I」の部分)との間を、人工関節に相当するバネ状構造を持つ非ペプチドをリンカー(ヒンジ部に相当する)として試験管内で結合させた。合成された「ベータアミロイド/非ペプチドリンカー/動物細胞で作成したFc領域」という合成化合物を質量分析装置(MALDI-TCF-MS)で確認した結果、「Fab領域/ヒンジ部/Fc領域」という抗体の化学構造を備えていることが確認できた。

 その後、ベータアミロイドに特異的に結合するモノクローナル抗体(6E10)との結合能力を表面プラズモン共鳴法で調べると、結合能力が飛躍的(100倍以上)に向上していることが判明しました。ヒンジ部の自由度が増すことによって抗原を幅広い「面」で捉えることができ、捕捉効率が飛躍的に高まった結果と考えられる。

 すなわち、「抗体のヒンジ部を非ペプチドに置き換える」ことにより、抗体のFab領域を伸張性も含むフレキシビリティーの高い「可変抗体」(図2)に変換することに世界で初めて成功した。また、その化学構造は質量分析装置(MALDI-TCF-MS)によって評価できることも明らかとなった。

 本研究成果は、将来的には、新たな「可変抗体」を用いた前処理法と最先端質量分析装置との組み合わせで、血液1滴から がんや成人病等を早期発見できる画期的診断システムの構築に貢献できると考えている。さらに、最近注目されている「抗体そのものを薬として用いる」抗体医薬の原料として使用することで、すでに医薬品や診断キットとして用いられている抗体の「抗原に対する結合能力」を飛躍的に向上させることが期待される。(島津製作所・JST)

参考HP Wikipedia 抗体 JSTプレス 質量分析システムを用いた「血液1滴からの疾患早期診断」

生涯最高の失敗 (朝日選書)
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朝日新聞社
日本はなぜノーベル化学賞につよいのか!?―田中耕一さんに学ぶ勉強法・思考法、日本の化学・科学の過去未来
クリエーター情報なし
広文社

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