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三間飛車穴熊vs居飛車穴熊の攻防

2009年09月22日 | 棋譜
ちょっと前ですが、NEC将棋部員Hさんとの対局で、面白い手順があったので紹介します。

Hさんは穴熊王子のニックネームを持ち、居飛車でも振飛車でも穴熊一辺倒。
とにかく穴熊に組むまでは、駒組優先、多少の損も構わないという感じ。
しかし、穴熊に組んだ後は、切れないねちっこい攻めを続けてきます。

さて、三間飛車穴熊vs居飛車穴熊と言えば、山田トンカン氏が7~8年前連採し、朝日アマ名人奪取の原動力になった戦法です。
当時は、居飛車も振飛車も4枚穴熊に組み、猛烈な削り合いと玉頭戦が展開されました。
しかし、当時より私は、こういう展開になってしまう居飛車の応対に疑問がありました。
すなわち、固め合いと立体化(4枚熊への組み換え)は振飛車の待ち受けるところであり、更に、振飛車の序盤には穴があるはずと思っていました。

第1図はHさんとの対局の序盤。ここから中盤に移行します。

第1図以下:▲8八飛△7四歩▲4六銀△7五歩▲同歩△7二飛▲8六歩△7五飛▲8五歩(第2図)

第1図は居飛車、振飛車ともに囲いが完成するまでに4手(端の突き合いを含めると5手)ずつかかります。
振飛車は、▲3九金、▲3八金寄、▲4六銀、▲3六歩の4手。
居飛車は、△3一金、△5一金、△4一金右、△3二金右の4手。
仮に、この4手ずつ計8手をプラスした変化1図では、下記手順が部分的定跡になります。

変化1図以下:▲8八飛△7四歩▲5九角△7五歩▲7八飛△7二飛▲7五歩△同飛▲同飛△同角▲4八角(変化2図)

この手順は、三間飛車穴熊を指す上での基本中の基本で、7筋での飛交換を見事に逆用しています。当時はこれにハマった居飛車党も多かったのです。
しかし、居飛車の改良手順が第1図以下。囲いにかける4手を省略します。
▲5九角~▲4八角が出来ない振飛車は、8筋逆襲を試みます。が、この逆襲は間に合わないのです。

第2図以下:△5一金右(途中図)▲8四歩△8六歩▲同角△7九飛成(第3図)

途中図の△5一金右が好手。

▲8四歩には、△8六歩が好手。
▲8三歩成は△8五飛で無効。後手の狙いは、△7三桂ではないのです。
△5一金右は、△7九飛成以下、▲4二角成の時に金にヒモをつけています。
第2図で、即△8六歩とするより得をしています。

但し本局は、第3図以下▲8七飛△7六竜▲4二角成△8七竜▲4三馬△3三銀引▲5四馬△8九竜▲9八角△同竜▲同香(図略)と進展し、逆転してしまいました(泣)。
△8九竜が欲張り過ぎで、代わりに△8四竜なら必勝でした。

ところで、第1図からの手順は、私が開発したものではありません。
2002年12月2日、王将戦での羽生-佐藤戦の変化で生じた手順。
実戦の進行(第4図より)は、振飛車が変化しましたが、変化した手順でも先手大優勢となりました。

第4図以下:▲2四歩△同歩▲同角△2二飛▲2五歩△7一金▲6八角△2三歩▲3五歩(途中図)△同歩▲3八飛△2四歩▲3五飛△4二角(第5図)

2筋を受けない振飛車に対し、▲2四歩以下△2二飛を強要し、その後角交換をせずに3筋攻めに切り替えます(途中図)。
途中図から、第1図とは微妙に形が違いますが、攻め筋は同じ。
第5図の△4二角は、△2五歩に対し▲2四歩に気付いた振飛車の修正手順。
しかし、△4二角としてしまっては、△2五歩とすることが出来ません(▲2三歩がある)。
居飛車は、この後、手待ちしかない振飛車をしり目に、2枚の金を寄せて穴熊を完成させます。
万全の態勢から総攻撃を開始し、短手数で勝利となりました。

詳細は、当時の将棋世界に佐藤康自戦記が掲載されています。

私はこの手順があるので、三間飛車穴熊vs居飛車穴熊は居飛車穴熊有利だと思っています。