laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
楽しく気楽につぶして生きてます。

数え切れない覚悟を重ねて

2012-11-16 | spectacles

中島みゆきライブ2012縁会@国際フォーラム見てきました。
やっぱりマスコミ的注目点は画像みたいなことになるのね。

前回、2010のライブがあまりにすばらしくて、今回も期待したのだけれど・・・

うーむ。

みゆき、60歳。58と60はここまで差があるのか。
声帯が・・・老いている。
圧倒的な声の張りや伸びはまだまだOKなのだけれど、なんでもないところで、意識的ではないビブラート、といえばよく聞こえるが、震えが・・・
ハーモニカのリードが古びると劣化して薄くなり、新品と同じ息の量では綺麗な音がでなくて蝉の羽が震えたみたいになる・・・あんな感じ。
自分自身がカラオケwで感じているのとまさに同じ症状なので、ああああ、みゆき、お前もか、と本当にせつなくなってしまった。
プロなのだからもちろんトレーニングしているに違いないのだけれど、それでも人はやはりこうなってしまうのか。

57歳の勘三郎の病状をいろいろな人から聞くにつけ、なんだかぐーんと自分でもびっくりするくらい落ち込んでしまったところに、60歳のみゆきのこの状況・・・。元気付けてもらいたかったのに、ますますがっくりきてしまったのは事実。

ただ、後半「時代」「世情」など、それこそガンガンいってたころの歌を、あえてチョイスして、歌っている姿に衰えてはいるのだけれど、それを受け入れつつ淡々と今の自分を肯定している姿についつい感動して涙してしまったのも事実。

うんうん。生きてれば年老いる。老いればいろいろ出来ないことも増えてくる。自分のことでも、他人のことでも、老いに出会うたびに嘆くのではなく、こういう風に淡々と受け入れつつ、ひとつひとつ、覚悟を決めて付き合っていく、そうやって「傾斜した坂道」を下るのではなくて逆に上っていくのですね。
やはり名作「傾斜」は歌われなかったけれど、その精神はライブに満ち満ちていたのだった。
傾斜の歌詞、興味あるかたはこちら
改めて読み返すとやはり若い人の書いた「老人観」だね。好きだけどw

そしてやはりあの人のことも思ってしまった。

老いて、枯れた勘三郎の芸が見たい。
元気一杯でオラオラ状態じゃなくて、身体も動かなくなってもいい、台詞がちょっとくらい入らなくてもいい、そうやって一皮も二皮も剥けた勘三郎が見てみたい。

本人はそんなの嫌かもしれないけど、とにかく生きてなければ老いることも出来ないんだから。
生きつづけて、老いさらばえて、それでも芸を見せて欲しい。

勘ちゃんの父親だから、ということではなくて、一人の稀代の名優の老境をぜひとも、ぜひとも見届けたいのです。