laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
楽しく気楽につぶして生きてます。

彼らはtired、彼はretired

2012-11-02 | kabuki a Tokio

顔見世大歌舞伎夜の部見てきました。こんな顔見世、ちょっといやだなあ。。。いろんな意味で。 

熊谷陣屋

本来取っていた夜の部の日、遅刻またはいけない恐れが出てきたため、念のために取った予備日だったのだけれど。
なんと、二日目にして熊谷の仁左衛門休演、代役松緑の初役(たぶん)初日という、ある意味ラッキーな廻り合わせ。いや、ラッキーというのは若手の初役を見られるラッキーでありまして、仁左衛門さんにはぜひとも後半には復帰していただきたい。

で、松緑、花道の熊谷戻りの顔は実にりっぱ。少しやせたせいか、熊谷の隈が似合って、一瞬團十郎かと思ってしまった。(もちろん褒めてる)。
姿、ニンははまってると思うのだが・・・まずはいっぱいいっぱいの緊張感が台詞にも所作にも現れてしまっていて。台詞まわしも團十郎かと思ってしまう場面があちこちに(こっちは褒めてないw)。ひょっとして成田屋に習った?
型が上方ではなかったようなので、仁左衛門に習ってないんだと思うんだけど。
たぶんいきなり代役言われて翌日、なので仕方がないとは思うのだけれど、どうせ誰も100パーセントできると思ってないこういう環境だからこそ、もう少し破れかぶれというか思い切ってやってみればよかったのに、と。なんとなく大失敗を恐れて手探りのおっかなびっくりと見えてしまったのが残念。
藤の方の秀太郎はとても情感があっていいのだけれど、声が弱弱しくて、弟同様あまり元気じゃない?と心配になってしまった。元気じゃないのは左團次も。こちらは疲れてるのを上手に手抜きでかわしてる感じ?
そんな中の見ものは相模の魁春。芝翫亡き、そして山城屋老いた今となっては当代一の相模だと思う。
気概を持った武家の女房をやらせれば右に出る人はいない。政岡なども見てみたいが、人気がないのよねぇこの人・・・どうしてここまで、とおもうほど拍手がない。
そして兄の梅玉、昼の部では仁左衛門の代役をまたまたやっていて、本当に大忙し。この人が倒れたら誰が代役やるんだろう、と思うほどの代役エース状態。義経はもう、天下無双でしょ。この義経で初役熊谷やれるのは松緑にとって大幸運なのだから、緊張がとれたらきっとよくなると思うので、期待します。
見届けに再び行くほどの愛はないのだがw

汐汲

山城屋さん、巡業初日の踊りの振りのはいってなさに愕然としたり、その後先月の義経で絶句したり立ち上がれなかったりの噂(私が見た日はそんなことなかったけど)で実はいろいろ心配していたのだけれど。

いやあお元気でした。もうむちむちのっぺり!遠くから見たら完全に40代!
動きも、ここ数ヶ月のなかではいちばんシャープじゃないかしら。少なくとも80代でみた京屋よりも晩年の成駒屋よりもまだまだ動ける感じ。なにより極まり極まりでみせる「おれを見ろ光線」が半端じゃない。
引き抜き後の真っ赤な衣装がまた似合うこと!世界一赤の似合う80代じゃなかろうか。
翫雀が父に付き合うここ一役っていうのは今月あまりにもったいない。上方型の熊谷、この人が代役でもよかったんじゃなかろうか。少なくとも日替わり代役とか、ありえなかったのかなあ。この人も人気ないからな・・・・

訂正
すみません。翫雀さん、昼の部で放駒やってました!どっかwでみた放駒とてもよかったので、楽しみです。でも熊谷もちょっと見てみたかった。かわいらしくて悲劇性が足りないか?w

 

なんちゃら四千両んちゃら 四千両小判梅葉

黙阿弥もので見たことない作品で、外題は四千両しか覚えてない。

ってのもあまりに酷いので一応調べました。後で自分でもなんのことかわからなくなるもんねぇw
えーと。

上の通りです。調べてもあまり意味のなさそうな外題だったw

で、作品。

うーん。

顔見世の夜の部の追い出しにこれってどうなの?というのが正直な感想。

芝居というよりドキュメントwに近い感じ、いわゆる犯罪実録物?
場面はほとんど暗く、江戸の夜と牢内が主なので、ずーっとくすんだ背景、くすんだ衣装、綺麗どころはひとりも出てこないし、テンポもゆるくて、どうにも気が晴れない。つーか寝ろ!といわんばかりの展開。
初めて見る作品なので寝はしなかったのだけれど、とにかく長くて長くて、盛り上がりはないし、
何も顔見世でコレやらなくても、音羽屋さん・・・劇団得意の立ち回りも一切ないし。
菊ちゃんも松緑もびっくりするほどちょい役で、いやあ松緑なんて、今月これと文七の鳶頭だけですか?
熊谷代役なかったらどんだけ贅沢な配役なの?
せっかくらーぶ!になりかかった菊之助がまたいちばん似合わない白塗り町人の役ばかりだし。文七はまあともかく、新入り牢人なんて、菊ちゃんがやらなくてもいいのに。
いまやナンバー3に出世した萬太郎がここでも熊谷でもせりふが一個ずつくらいしかないのは、まあしょうがないけど、菊ちゃん松緑はもう少し活躍させてやろうよ・・・

リアルな大牢の描写など、興味深い部分もいくつかあって、まったくつまらないというわけではないので、酷評もしにくいのですが、特に「顔見世」と銘打ったせっかくの場面でここまで地味な狂言をかけなくてもいいでしょ、と思ってしまいました。

あと、物凄くちっちゃなことなんですが台詞のなかで隣家の人を「耳の不自由な婆さん」と言っていて・・・これって絶対本来は「つんぼの婆さん」ですよね?歌舞伎のこんなところまで「言い換え地獄」が及んでるのかとちょっとぞっとしました。つんぼと耳が不自由は絶対違うでしょ。どうしても言い換えなきゃどっかの団体が怖いってんなら「耳のきこえねぇ」とか工夫したらどうなの?それはそれでなにその説明台詞って話なんだがw

本来チケットを持っている日、この狂言にはたぶん間に合うのですが、もうチケット捨ててもいいかな、と思っちゃった。

 休演の仁左衛門含めて今月顔見世の座組のかなりの面子が、御園座からの平行移動なんだけど、御園座組の重鎮がお疲れ風情で、勘九郎ファンとしては申し訳ない限りなのだった。仁左衛門は12月も2月も付き合ってくれる予定なので、本当に今月みたいファンには申し訳ないけれど、ゆっくり休んでじっくり治していただきたい。10-12の三ヶ月連続は70近い病弱の爺さんにはきついよ、やっぱり・・・
そして松緑くんは、チャンスを生かして、じっくり熊谷をものにしていただきたい。成田屋に習っちゃだめよん。(噂では播磨屋に習ったらしいが・・・。なぜせりふが成田屋風味w?)

↑追記。秀太郎さんのブログを読むと直接誰かに習ったというより、祖父豊松緑のビデオ先生だったみたいですね。豊松緑は成田屋に教えたわけだから、成田屋っぽい台詞回しというのは、当たってたわけですね。あたしは豊松緑はナマで見たことないからなあ・・・
仁左衛門、早ければ8日復帰か。梅玉さんはそのほうが喜ぶだろうけれど、松緑くんにはもう少し経験させてやりたいような気もしたり。昼だけ早め復帰、とかいうわけには行かないんでしょうかね。