laisser faire,laisser passer

人生は壮大なヒマつぶし。
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究極の男遊び

2012-09-26 | spectacles

…各方面に失礼かもしれませんが、とにかくそう思ってしまったのだからしょうがない。あこがれます。藤間流大金持ち名取。てことで二代目勘祖追善舞踊会初日、見てきました。

もう、いろんな意味で面白かったああ。

でも舞踊会を見るたびに思う、舞踊家とおっしょさん、お名取さん、お弟子さんの境目ってなに?という疑問はどんどん膨らむばかり。それも含めて面白いんだけどさ。→師範名取(名執?)と普通の名取があるらしいね、ソレって藤間だけ?どこでも?とか。師範名取は大型免許みたいなものか?
弟子の分際は出してもらうのに大金はらって、有名舞踊家と役者はギャラもらう、って感じなんだろうけど、中間?の平名取?無名舞踊家?おっしょさんたちはこういう会では金払ってるのかもらってるのか差し引きゼロなのか・・・
で、それらと、役者たちが混在して出てくるカオスぶりが本当に興味深い。

寿式三番叟

もうめったに見られなくなった吉右衛門の踊り、それに菊五郎が絡むなんざ、歌舞伎座こけらおとしくらいしか今後もなかろう、と思ってがんばって一等席取ったのだけれど。
いやあ、さよなら公演のときと同じで、しれっときちんと踊ってる梅玉師匠に、踊りの稽古はついでで、女弟子とアフターで呑むのを楽しみに来てる商店街理事長の菊五郎、定年後家にいづらくなって、「あなたも何か趣味を持ちなさい!」と妻に尻を叩かれてしかたなく稽古に来てるもと銀行員の吉右衛門、って図式がとてつもなく面白い。振りが合ってるようで合ってない、そしてたまーに合うところも面白い。吉右衛門が前に立ったときの不安そうな顔がとてつもなく面白い(他人の振り盗めないもんねw)。
と思っていたらそんなものよりずっとずっと面白かったのが、ずらっと並んだひよこ後見。
吉右衛門→種之助、菊五郎→右近、梅玉→梅丸、他にも時蔵→萬太郎、七之助→廣太郎か廣松(後ろ向いてたから、やっぱり区別つかない!)、そして勘十郎→歌昇。
後見に気づいてからはほとんど萬ちゃんとノスケちゃんばかり見ていました。(梅丸くんは私の位置からは背中しか見えなかった)。これがもう笑っちゃうくらい仕事のない後見ズで、特に萬ちゃんなんて舞台に存在したのは十数秒だったんじゃなかろうか。
後半三番叟の踊りになってからはさすがの勘十郎。見たことのない和箱との掛け合い踊りもなかなか見事で、七之助も疲れを見せずにいい踊りだった。まあ正直勘十郎の踊りもいいのだけれど、こんな掛け合い踊りなら数字が一つ少ない人wとの兄弟コンビのほうが魅力的だったなあ(特に見た目)と思ってしまったのも事実。

出雲梅

舞踊会名物w自主休憩。昼食を食べる暇がなかったので、遅い昼食あるいは早い夕食。この時間帯に食事をとる人はほとんどいないのでレストラン貸切状態でしたw

藤娘

10歳以下?と思われるお嬢ちゃんですが、おひきずりの裾を踏むでもなく、堂々の花道の登場。たいしたもんだ。
藤音頭の代わりに潮来を入れる形は、けっこう珍しい?
子供なので大目に見てるとはいえ、これだけ出来たらお母さんもうれしかろう、で、どこの大金持ち?
中務という苗字からして、やんごとない系の末裔様かもしれないね。

鏡獅子

いや、これ、結構感動しました。
いきなり梅之と京三郎の老女と局(これも凄くない?)に連れられて出てきたのが、実は「また子供?」と思ったのです。考えてみたら梅之も京三郎も男なんだから、まあそれよりは小さいのが普通だわな。とはいえ、女性としても小柄なほうじゃないのかな。とにかく、最初の数分は中学生くらいなのかな、と思ってたわけです。だから、凄く巧いと感じたw
前の藤娘と比べて、ってのもあるかもしれないね。
途中から良く見たらちゃんと大人ジャン、と判明してからの感動はやや薄らいだんだけど。
でも弥生の心の揺れなんかはよく表現できてたと思います。扇の扱いとかはそりゃ必死なんだけど。
胡蝶が京由くんと春希くんの稚魚美女で、胡蝶より獅子のほうがちっちゃいのも初めてみたw
まあ後シテの獅子は体力的にもきつかっただろうなあと思うけれど、後ずさりの引っ込みはちゃんと行儀良く毛を足にはさんでたし、毛振りも最初のほうはちゃんと綺麗に振れてた。
ちょこっとぐぐって見たら涼花さん、ブログもやっていらっしゃる。興味のある方は見てみてください。あたしは、まだ見てないw
で、この方はまだ素人のお名取さんってことよね?ジャンルでいうと。ってことは金払って参加よね?
後見が新十郎、國矢、左字郎ってのも超豪華じゃない?
うーむ。藤間恐るべし。

追記
ブログちらっと読みました。宗家の内弟子さんらしいですね。師範名執さんでカルチャースクールで教えてらっしゃるから無名舞踊家とおっしょさんの間くらいのランク?やっぱりお金だけじゃなくて努力は必要なんだw

京人形

そしてまたまた、藤間の底力、といおうかなんといおうか。
それほど巧くもないおばちゃん(推定50代?)の京人形に、甚五郎役で権十郎さんが絡んでくれるんだよ!
手をとって連れ舞いしたり、太夫はなんと美しい!とかめろめろになってくれるんだよ!
ちなみに奥さん役は京妙さん。
正直どうしてこの踊りを選んだんだろう?思い出作り?にしても京人形に自分が扮していいかどうかの判断はつかなかったのか?という疑問がぐるぐる脳裏を渦巻いていたことは確か。
技術的にはどうこういうレベルではない気がした。もちろん男女の入れ替わりの、メリハリなど、期待もしてないわけで。
この方、それこそ名取さんなのかおっしょさんなのか、よくわからないのだけれど、おっしょさんだとすれば、自分にあう役をチョイスするセンスがないおっしょさんには習いたくないなあ、などと思ってしまったのも事実。
物凄く失礼なこと書いてますね、あたし。関係者が万一見ちゃったら平謝りです。
大工道具の立ち回りを楽しみにしていたら後半はカットだったわ。
そりゃそうだわね、人形の出番ないもんねぇ。そんなところに金は出せまい。

豊後道成寺

…こんなに長かったっけ?いや、先ほどの京人形さんに比べれば、踊りもしっかりしてたし、ややw若いし、特に酷くはなかったのですがね。
踊りも普通、見た目も普通、曲も振りも豊後だから地味・・・ともう退屈の要素てんこもりでした。
…さて、寝るか、と思っていたら(ある意味安心して寝られるレベルではあった)、いきなり目つきのするどいスナイパーが踊り子さんの背後に。
わっ、スナイパー京蔵の殺人引き抜きが見られるんだ!
と思ったら一気に目がさえたw
しかし、この方、素人(失礼、名取さんまたはおっしょさんですよね)相手だとますますスナイパー度が上がりますね。
物凄い殺気で糸をしゃかしゃか抜いていき、いざ、引き抜きの瞬間はまさに乾坤一擲。抜くか抜かれるか、のるかそるかの大勝負という息詰まる緊張感が。
素人(またまた失礼)が相手だと引き抜きも難しいのだろうね、というのは次の曲ではっきりわかったのだが。
この引き抜きは綺麗でした。
そして仕事を終えた京蔵は何事もなくはけていき・・・1引き抜きいくらもらってんだろう?なんて野暮なことを考えたのは会場中であたしだけ?だっただろうか。

女伊達

これです、これ。タイトルにもなったlavieの妄想爆発させたのは。
勘寿々さんというのは、たぶんおっしょさんよりちょっとえらい、舞踊家のくくりに入るんだろうな。藤間の中でもランクはそこそこ上なんだろうな・・・おとしのせい?だと思うけれど、足元もややおぼつかないし、いわゆる技量という点ではどうなんだろう?と思ったりもするけれど。
男伊達に亀三郎亀寿兄弟を引き連れて、引抜にはまたしても、のスナイパー京蔵、今回はばあちゃん相手で力が緩んだか、ちょっと失敗しちゃってました。たぶんばあちゃんが悪い。
そして、そして、若いもののなかに京純くん発見!

ここまで書いてませんでしたが、地方さん連中も傳左衛門はじめ超一流がずっとつきっきり。
藤娘ちゃんや弥生ちゃんは1000万近く散財してるのは確かなんだけど、たとえば勘寿々師匠は、金払ってるのか?もらってるのか?差し引きゼロなのか?などとまたまた俗悪なことを考えてしまい・・・いやあ面白かった。
藤娘ちゃんを見るにつけ、金さえ積めば数年の稽古でも舞台に出ることは可能なような気もする(たぶんコネとか家とか必要)。

で、勝手にlavieは芝翫さんをしのんで女伊達をやるぞ!と決めましたwwww
男伊達はもちろん勘ちゃんと元ダンちゃん。
若いものはさとぴー(若くないのだがかまわない!)、京純くん、京由くん、橋吾くん、咲十郎さん、猿琉くん。
後見は・・・スナイパーにしようかモナリザ守若さんにしようか、イケメン錦弥さん?芝翫さんをしのんで芝喜松さん?
えーい全員でやってくれ。がはははは。

きゃああああああああああ。2000万までなら払う(嘘)。
勘寿々さんはここまでになるのに数十年の歳月と数千万円(たぶんそれ以上)を費やして、努力もしてらっしゃったことは重々承知での妄言ですんでどうかご勘弁を。

しかしこの役者の贅沢な無駄遣いぶりは、藤間宗家ならでは、ですなあ。
頼まれると断れないのだろうね。藤間ににらまれるとやっぱり大変なんだろうなあ、とまた邪悪な妄想がwww

 

此の君

邪悪&ミーハーな気持ちをたしなめるかのような、静寂な空間。一気にクールダウンいたしました。
限りなく趣味の良いお着物をまとわれた玉三郎様が、限りなく静かに舞われる。
誰かが博多人形が踊っていたようだと書いていたけれど、個人的にはリヤドロに見えたw
まあとにかく美しく、今までのどの女性より、美しく、そしてでかかった。
舞踊家と役者の踊りの差が「一般人が金を出したくなるか」ということだとすれば、まさに役者。千両役者。


雨乞其角

勘三郎が大尽で出演予定だったのが、出られなくなって代役が勘祖。あたしは此の人の踊りを生で見たことがあっただろうか?いや凄いわ。洒脱でかっこいい。紫さんの娘だっていうことを、踊りを見ていたら思い出した。
勘十郎の其角に、橋之助七之助扇雀孝太郎が絡む。素踊りでも一目で女だとわかる孝太郎の踊りにちょっと感心。扇雀はしばらく立つまで男か女かわからなかったもんw
で、後半、弟子が出てきてからはもう梅丸に釘付け。
なんて美しい!なんてりりしい!
歌舞伎界は、そして梅玉さんはこの子を宝として扱うべき。いつまで部屋子にしておくんだよ!
萬ちゃんもノスケくんもいたのに、美青年というだけなら隼人もいたのに。男寅くんもりりしく成長していたのに!
そして廣太郎と廣松が素顔で並んでいて、見分けるチャンスだったのに!
もう梅丸のあたりを払う気品の前にはほかの御曹司の影が薄くて薄くて・・・
ふと玉三郎が出てきたときってこんな感じだったのかなあ、と思ったり。
唯一不安なのが、立役になるには背が足りないかなあ。16歳くらい?もうそうは伸びないよね・・・
女形でも十二分に綺麗だけど、やはり貴公子役が見たいのよ。
声変わりが終わる数年後まで、「生きていようと思った」by太宰。

 

いやあやっぱり舞踊会は藤間に限るわwwwカオスだもん。いい意味での。

 

 

 


愛嬌、孤独、そしてエネルギー

2012-09-26 | kabuki en dehors de Tokio

勘九郎襲名@松竹座三度目にして最後の出撃が終わりました。
とりあえずかんたんに勘ちゃんのことだけまとめて。そのうち加筆するかも、たぶんしないw

今回襲名作品は瞼の母→書き物あまり好きじゃないし、玉三郎の出来があまりにあまりだった(初日近辺)
雨乞狐→作品の質がそれほどでもないし、なにしろいわくつき過ぎて、鑑賞というよりはどきどき見守る感じだった

ってことで、それこそ演舞場の土蜘蛛や鏡獅子と比べちゃいけないんだけど、勘ちゃんにはもっとほかにやってほしい大きい演目がいっぱいあるんだよなああああなどと、特に前半、ため息交じりで見ていた感じだったのですが。

終わってみれば、どれもこれも、本当にすばらしい成果を見せてくれて、満足でした。

特に瞼の母の忠太郎の、幕切れに見せるなんとも孤独で虚無的なたたずまい、これは天日坊の大詰めの壮絶な立ちまわりと、静と動ではありながら、同じ匂いを感じさせ、今後の勘九郎という役者の持ち味のひとつになっていくと確信した。
愛嬌とニヒリズムを併せ持つ役者は、少なくとも歌舞伎には今のところ見当たらないと思う。
雨乞狐は、見事にリベンジを果たしつつ、道風や座頭では、初演再演のときとは比べ物にならないほどの表現力を見せつけ、楽近くには狐のエネルギーを発散させて、翌月の源九郎狐への期待を膨らませてくれた。とはいえ、花形配役なのでいまいち盛り上がってないのだがw

ま、本人もVサインしてますし、よかったです。

しかし、襲名演目が未発表なのが巡業を除けば博多座のみ、となった現在、「アレも、コレも見たい!」という妄想で頭がはちきれそうなんだけど・・・