SakuraとRenのイギリスライフ

美味しいものとお散歩が大好きな二人ののんびりな日常 in イギリス

Leslie A. Pal and R. Kent Weaver, eds., The Government Taketh Away, Geogetown University Press, 2003

2012年09月17日 | 
こんにちは、Renです。
今日はまた、最近読んだ本をご紹介します。
今日ご紹介するのは、Leslie A. Pal and R. Kent Weaver, Editors, The Government Taketh Away: The Politics of Pain in the United States and Canadaです。


この本は、サブタイトルにあるとおり、選挙民に「痛み」を及ぼす様々な領域における政治(及びその政治プロセス)について、アメリカ合衆国とカナダを比較しながら論じていくものです。
構成は、まず第1章において理論を打ち立て、第2章~第9章でケーススタディを行うことにより理論を検証し、第10章の結論で締めくくるという、とてもわかりやすいもの。

ケーススタディで取り上げられる政策領域は、(1)年金のカット、(2)医療費のカット、(3)電話業界における規制緩和、(4)タバコ規制の強化、(5)軍事基地の閉鎖、(6)核廃棄物の置き場所の選定、(7)銃規制、(8)妊娠中絶、の8つ。
(1)(2)は受益者に、(3)(4)は特定企業・業界に、(5)(6)は特定の地域に、(7)(8)は特定の価値を奉ずる人に、それぞれ「痛み」をもたらす、あるいは強いる政策です。
これらそれぞれの政策をアメリカ及びカナダがどのように行ったか、それぞれの政策領域の研究者が「制度」(主に、大統領制のアメリカ vs ウエストミンスター型議会政治のカナダ)がどのようにそのプロセスやアウトカムに影響を与えていたかという共通の視覚から論じます。

330ページくらいある本書の結論としては、
"[I]nstitutional arrangements have a major impact on where (...) loss imposition occurs, a strong impact on the strategies that potential loss imposers and loss avoiders use, and significant but uneven impacts on the capacity to impose losses and thus on policy outcomes."(p.327)
ということで、制度は重要だという、それほど驚きではないまとめとなっています。
そのすぐあとに、政治の権力が集中するウエストミンスター型のほうがアメリカのような権力分散型の大統領制よりも「痛み」をもたらす政治は実現しやすい傾向があると、編者たちはまとめていますが、一方で、だからといってウエストミンスター型のほうが良い政治制度だと言っているわけではありません。
編者が示唆するように、その制度に「リスク」や「機会」が内在することを認識し、過去の政治や政策の経緯だったり、社会構造のありようだったり、国・地方関係、裁判所の役割・姿勢との相互作用等を見据えながら、政治を行っていくことが重要になってきそうです。

これからの日本の政治のあり方を考える上でも大変参考になる本でした。
特に、Renはアメリカやカナダの政治を真面目にきちんと勉強したことはなかったので、ケーススタディの章をとても興味深く読みました。(Ren自身の興味の対象としては理論のほうが強いんですけどね。)


(投稿者:Ren)

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