SakuraとRenのイギリスライフ

美味しいものとお散歩が大好きな二人ののんびりな日常 in イギリス

Tony Wright, British Politics: A Very Short Introduction, 2nd Edition (Oxford University Press)

2014年04月29日 | 
僕は現在イギリスで政治学を勉強していますが、別にイギリス政治を勉強しているわけではありません。
英語が「ただイギリスにいるだけではできるようにならない」のと同様に、ただイギリスで政治学を勉強しているだけではイギリス政治は分かりません。

でも、せっかくイギリスにいるのにイギリスの政治の仕組みが全く分からないまま日本に帰るのももったいない。
そう思って、Tony Wright, British Politics: A Very Short Introduction, 2nd Edition (Oxford University Press, 2013)を読んでみることにしました。この本はまだ翻訳はなさそうです。(もしあったらごめんなさい。)



著者は1997年から2010年まで労働党の議員さんだっただけでなく、イギリス政治についての本もいくつか出している研究者(UCLの教授)。
その経験と知識を活かして、学問的な話の中に、実際に著者が議員だったときの体験談(議会の暗黙ルールを知らなくて苦労した話とか、そんなに知りたいわけでもなかったことについて質問主意書みたいなものを出してみたときの話とか。)も散りばめられています。
内側から見たイギリス政治とアカデミズムを通して見たイギリス政治がうまく組み合わさって、とても読みやすく、面白かったです。

本書ではイギリス政治の「伝統的」なあり方やそれを可能にした条件はもちろん論じられますが、それよりも近年の動向、特にブレア政権による「憲法革命」やキャメロン政権(保守党と自由民主党の連立政権)の成立によってその「伝統的」なあり方がどのような変容を迫られているかを論じることに力点が置かれているように感じられました。
末尾にはFurther readingとして50冊の本(古典から「著者が単に好きな本」まで)が挙げられていて、本書の次にどの本を読むか考える際に大変役に立ちそうです。

これだけの薄さでイギリス政治の概要をいきいきと教えてくれる本はなかなかなさそうなので、日本語に翻訳されても良いような気がします。
イギリス政治についての知識がほぼゼロだった僕にとっては、とても良い入門書でした。

ほとんど内容を紹介できていませんが、試験勉強もしたいのでこのへんで。

(投稿者:Ren)

別に英語ができるようになりたくてイギリスに来たわけではないけれど

2014年04月28日 | 【イギリス生活】学生生活
寮の玄関でPre-sessionalコースのときに同じクラスだった人に会いました。
「試験勉強どう?」とか「休暇中にどこかに行った?」とか、短い会話をして別れたのですが、彼女の英語がものすごく上達していることに驚愕しました。

Pre-sessionalのときは中国語のイントネーションが残っていて(彼女は中国出身)、語彙もそこまで豊富ではなかった印象があったのですが、現在の彼女はまるで英語を母国語とする人のように流暢に話し、またいろいろな表現を自在に操っている。
イギリスにはあくまでも政治学を勉強しに来たのであって、英語が上手に使えるようになるためではない。
そう思ってきたし、いまももちろんそう思っているのだけど、こちらに来てほとんど英語の能力が変化していない自分と驚くべき変化を遂げた彼女を比較して、少し打ちひしがれた気持ちです。

彼女はTESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages、英語を母国語としない人たちに英語を教える方法)のマスターコースの学生だから、きっと英語のエキスパートになるために日々努力しているのでしょう。
やはり努力の有無は違いをもたらすんですね。

もちろん、僕も何もしていないわけではないから、英語を読んだり、聞いたり、書いたりする力は伸びているはずだと思いたいのですが・・・。
(家にこもって論文だったり本だったりを読んでばっかりの生活だから、話す力はたぶんあまりついてないし、むしろ劣化しているかも。)

(投稿者:Ren)




エッセイでDistinctionを得るのは簡単ではないが、不可能ではない

2014年04月20日 | 【イギリス生活】学生生活
イースター休暇も今日で終わってしまって、明日から夏学期開始です。
夏学期は3週間ほど授業があるだけで、そのあとは試験。

Renはイースター休暇のほとんどをエッセイの執筆に費やしてしまったため試験勉強が全然できていなくてピンチです。
エッセイのために使った文献たちが試験にたまたま出てくれたら嬉しいのですが、どうなることやら。

さて、大学院に入ってからこれまでRenは9本のエッセイを提出してきました。
もうエッセイを提出することはないはずなので、執筆する中で得られた教訓を共有しておこうと思います。

そもそもRenはwrritingに苦手意識しか持っていませんでした。
TOEFLでもIELTSでも試験の中にwritingが含まれているのですが、日本で受けたときは一度も制限時間以内に書き終えることはできませんでした。
(1月にこちらで受けたIELTSでようやく初めて制限時間内に規定文字以上を書くことができました。)

また、以前書いたような気がしますが、Pre-sessionalコースの中で練習で書いたエッセイの評価は散々でした。
あのときは本当に自信喪失していて誰にも言えなかった点数をいまここで公開してしまいますが、なんと「50点」しかもらえなかったのです。

イギリスの大学の成績評価は下記のようなシステムになっています。

50点~59点 Pass
60点~69点 Merit
70点以上  Distinction

「君の点数は50点だ。でも気落ちしないでいい、Passだから。」
Pre-sessionalの最後にtutorの先生からフィードバックをもらったときにこう言われたのですが、あとで成績評価システムを知ってすごく落ち込んだものです。
あれだけ頑張ったのに単位が取得できる最低の点数しか取れなかったのですから。
「こんなのでは大学院を修了できない」と本気で悩みました。

イギリスの大学の成績評価が厳しいことはいろいろネットで書かれていたので知ってはいました。
でも、まさかここまで厳しいとは…。
めったにもらえないというDistinctionで修了するという目標はそこでほぼ諦めました。
Pre-sessionalですらものすごく頑張って50点しか取れなかったんだから、大学院ではもっと頑張らないと50点すら取れない。

さて、ここからは自慢です。
そう思っていたものの、僕が大学院に入って提出したエッセイの過半数でいただいた評価が、Distinction。
いったいどうしたことでしょう。

正しいかどうかは分かりませんが、僕が心がけていることは以下の3点です。


(1)相手が期待している以上の文献を読む
エッセイのテーマは授業に関連するものなので、授業の中で示された予習文献及び参考文献は当然すべてチェック。
それ以上に、Google Scholarを使って関連する文献を探します。
授業で取り上げられる文献はそのテーマに関する「古典」が多いので、最近の学界でどんなことが主張されているのかをこれによって把握することができます。

僕のエッセイ執筆時の最大の楽しみは、Referenceを書く瞬間。
2ページ以上にわたって参考文献を書き入れられたりすると嬉しくなって仕方ありません。(毎回そうできているわけではありませんが。)

(2)授業で先生が言ったことと違うことを言う
エッセイで授業中で言われたこと(示唆されたこと)をそのまま言っても面白くないし、良い評価も得られなさそう。
授業で取り上げられた論点とは違った視点で論じることをいつも目指しています。
うまく新しいことが言えたなというときはやっぱり良い評価をいただけているように思います。

(3)とにかく時間をかける
ネイティブの人たちを見ていると、3,000words程度のエッセイはわりと簡単に書けてしまっています。
「良いエッセイをどうしたら書けるか」というセッションに一回行ってみたことがありますが、そこで注意事項の一つとして、「エッセイを数時間で書こうと思うな」みたいなことが挙げられていました。
つまりそれは、数時間で書けてしまう人が少なくないということだと思います。
僕も日本語なら8,000字とか10,000字くらい1日か2日あれば十分書けてしまうと思う。

でも、僕はwritingを特に苦手とするノンネイティブ。
彼らと同じ土俵で勝負しても仕方ありません。
なので、とにかく時間を使ってエッセイを書くことにしました。

一つのエッセイを書くのに文献の読み込みを含めると少なくとも2、3週間はかけています。
おかげで学期期間中は常にエッセイに取り組んでいました。
毎週の予習もあるので、土日も含めてだいたい毎日寝るのは26時以降。提出期限が近いときなんかは徹夜もします。
これだけ勉強していた人はほとんどいなかったんじゃないかと思っています。


この心がけが正しい方向なのかどうかは分かりません。
能力やセンスが良い人ならこんなことしなくても余裕でDistinctionを取っているのかもしれません。
でも、Renのような凡人にはこうやって周りの人の何倍も頑張らないと置いてけぼりになってしまうのです。

試験では制限時間もあるし辞書も使えないのでそんなにうまくいかないでしょう。
でも、エッセイに関しては「Distinctionを得るのは簡単ではないが、不可能ではない」と言えると思います。
これから留学を控えている方の参考になれば幸いです。


(投稿者:Ren)

Raymond Wacks, Philosophy of Law: A Very Short Introduction, 2nd Edition (Oxford University Press)

2014年04月19日 | 
アサインメントや試験勉強の必要に迫られているときに限って関係ない本を読みたくなるもの。
まったく関係ないとまでは言えないけれど、Raymond Wacks, Philosophy of Law: A Very Short Introduction, Second Edition (Oxford University Press, 2014)を読みました。



この本、第1版が2006年に出ていて、これは邦訳もされているようです(中山竜一=橋本祐子=松島裕一(訳)、中山竜一(解説)『法哲学(<1冊でわかる>シリーズ)』(岩波書店、2011年))が、さすがにこの第2版の翻訳はまだない、はず。

僕は第1版を読んでいないので今回の改訂によってどう変わったのか分からないのですが、出版社によると,
・法実証主義(legal positivism)、リアリズム法学(legal realism)、人権(human rights)の近年の理論的発展
・Dworkinの最後の仕事(=Justice for Hedgehogsのことですね)の考察
が付け加わっているということです。

本書の特徴は、著者が自分の主張を提示することを控えて、様々な学説の紹介に徹していることだと思います。
良い点としてはいろんな学説を知ることができること、悪い点としてはいろんな学説が紹介されているばっかりで体系的ではないということになるでしょうか。

「第1章 自然法」ではキケロ―やアリストテレスから最近のフラーやフィニスまで、自然法論の学説の変遷と発展が紹介されたあとで中絶や安楽死といった難しい問題(モラル・ディレンマ)に自然法の立場がどのように応答しうるか(また、困難を抱えるか)が論じられます。
僕にとっては、この章が一番クリアーに整理されていたように思いました。

「第2章 法実証主義」はベンサムやオースティンからH. L. A. ハート、ケルゼン、ラズ、シャピロの学説が紹介されます。
中心的に扱われているのはハート。ただ、法実証主義が複雑だからでしょうか、それぞれの論者がどういう点で違うのか理解するのが、僕には難しかったです。

第3章はドゥオーキンについて。
正義論の文脈だと羨望テストとか仮設的保険市場とか福祉の平等(equality of welfare)、つまりSovereign Virtueがクローズアップされる印象があるのですが、やっぱり法哲学の本なのでLaw's Empireの議論を中心に純一性としての法(law as integrity)やruleとprincipleの区別、法解釈の行われ方などが論じられています。
ドゥオーキンさんの生前最後の著作、Justice for Hedgehogsについては、法と価値という節で取り扱われ、彼の価値をめぐる議論が簡単に触れられています。

第4章は権利と正義について。
権利や正義についての考察抜きに法哲学について論じることは不可能だ、とされた上で、様々な論者の理論が紹介されていきます。
権利については、ホーフェルトによる権利概念の解明の試み、ドゥオーキンの切り札としての権利論、人権の発展史(第1世代から第3世代まで)が論じられ、
正義については、功利主義、法の経済分析(ポズナーの議論)、ロールズの議論が取り上げられています。

「第5章 法と社会」では、これまでの章が法の規範的側面に着目するアプローチの紹介であったのと違って、法がどのような文脈で機能しているかという社会学的なアプローチが取り上げられています。
取り上げられている論者は、デュルケム、ウェーバー、マルクス、ハーバーマス、フーコー。
それぞれの理論の解説がごく簡単にされているのみだったために、相互の関係(そもそも彼らは相互に理論的関係はあるのか?)や現代における意義があまりよく理解できなかったものの、このアプローチの議論を僕はこれまであまり読んでこなかったので、大変新鮮に感じました。

「第6章 批判法学」になると、体系性はもはやほとんどなくなります。
取り上げられているのは、リアリズム法学(アメリカ学派とスカンジナビア学派がある中で、主にアメリカ学派を紹介)、批判法学(Critical Legal Studies)、ポストモダニズム法学(ラカン、デリダ)、フェミニスト法学(リベラル・フェミニズム、ラディカル・フェミニズム、ポストモダン・フェミニズム、差異派フェミニズム)、Critical Race Theory(どう訳せばいいのか分からない。。)。
第5章以上に、ここでくくられた理論の意義や相互の関係がよく分かりませんでした。
そして、おそらく新しく発展してきた研究分野だと思われるのだけど、僕はあんまり魅力を感じませんでした。

第7章はすごく短い結論になっています。

これだけの多岐にわたる内容が小さい本のたったの130ページで紹介できてしまうことは本当にすごいことだと思います。
紹介されている論者の本や論文が読みたくなります。
しかし、やはり個々の解説がとても薄くなってしまっていて「これこれという理論がある」「だれだれはなになにということを主張した」くらいの理解しか得られない項目も少なくありませんでした。(特にポストモダニズム思想に疎い僕は、第6章でほとんど何が言われているか分かりませんでした。)
また、本書のところどころで、誰かからの引用や著者執筆の「コラム」が挿入されているのですが、それが本文とどう関係するのかどこにも解説されていませんでした。(そもそもコラムをなぜ入れたのか、趣旨が分からない。)

ということで、ちょっとこの本は評価するのが難しいです。
法哲学という分野を分かっている人が読むと、いろんな学説を短時間で整理しなおせて有益なのではないかなと思います。
でも、本当の初心者が最初に読むべき本なのかどうかはよく分かりません。
邦訳だとここらへんの難点は中山さんの解説でカバーされているのかもしれません。
第1章、3章、5章がすごく面白くて勉強になっただけに、残念でした。


(投稿者:Ren)

MYUNG GA ロンドンの焼肉屋さん

2014年04月15日 | 【イギリス生活】
イギリスのスーパーでは日本でよくある「薄切り肉」は手に入りません。
最近無性に焼肉が食べたくなり、「焼肉食べたいね・・・」が口癖のようになっていた私たち。
Colchesterには勿論ないので、ネットで検索、ロンドンにある焼肉屋さんに行ってきました。




私たちが頼んだのはSet Lunchの「Beef ribs set(Kalbi)」£12.00
カルビの他に(食べかけのが写ってますが)キムチ、野菜のナムル、揚げ餃子、スープ、ご飯、あと食後にフルーツが出てきました。

韓国焼肉なので、肉は長く繋がったままで焼いて、焼けたらハサミでパチパチ切って食べるスタイル。
Sakuraのお腹ではちょうど良かったのですが、Renは量が足りず「もっとお肉食べたい・・」と言ってました。笑

お肉追加しても良かったかもね?でも近所にこんなレストランがあったら通っちゃいそうだなー

(投稿者/Sakura)

Manningtreeへの帰省

2014年04月14日 | 【イギリス生活】
SakuraとRenのイギリスにおけるふるさとであるManningtreeに土日を使って行ってきました。
ずっと帰りたいと思っていたのですが、学期期間中は常にエッセイやアサインメントに追われていたためになかなか実現しなかったManningtreeへの帰省。
休暇中のいまも意外とすることが多くてもうしばらく行けないのかなあと半ば諦めかけていたところ、ありがたいことに金曜の夜にManningtreeの友人からディナーにご招待いただけました。

Manningtree駅で電車を降りると、懐かしい匂いが僕たちを迎えてくれました。
そう、この空気。この空気が吸いたかった!

駅から街の中心部までは歩いて20分ほど。



トンネルを抜けてしばらく歩くと、だんだん街が見えてきます。



駅から街までのこの一本道を歩いた日々(1か月半くらいだけだけど)を思い出して懐かしくなりました。

友人宅でのディナーは地元の市場で売っている新鮮な魚介類を使った美味しいフランス料理。
今回も僕たちのほっぺたをいくつも落とされました。
出していただいた料理たちがいかに絶品であるかを伝える表現力が僕にないのが残念でなりません。("C'est bon"とか"C'est delicieux"とかの連発しか言えず。。)
この方がレストランを開いたら、絶対に繁盛すると思うんだけどなあ(少なくとも僕たちは通いつめるでしょう。)。

この日はご厚意でお泊りもさせていただき、翌朝には朝食までいただいてしまいました。
なにからなにまで至れり尽くせりのステイでした、素晴らしい時間をどうもありがとうございました!
イギリスで訪れるべき場所とか行かない方が良い都市とかを教えてもらえたので、今後の参考にします。
この方にはいつも本当に親切にしていただいていて、日本に来られるときには恩返しさせていただきたいと思うのですが、僕たちよりも確実に彼のほうが日本に詳しくて、良いところもたくさんご存知なのが問題です。。

日曜のManningtreeはすごくいい天気で、最高の散歩日和。
このまま帰ってしまうのはあまりにももったいないので、しばらく二人でぶらぶらしました。

The Corner(大げさにそう呼ばれていますが、訳すと「曲がり角」)を抜けてRiver Stourへ。


以前は白いテントだったところに何やら新しい建物が立っていました。


新しいと言えば、前に来たときにはなかったと思われるManningtreeの看板も発見。


左上の文章はシェイクスピアからの引用(Manningtreeの名前が登場。)です。
ヨットが中心なところが、Manningtreeらしいですね。

白鳥がたくさんいるところは変わっていません。


Manningtreeの街と友人の暖かいおもてなしにすっかりリフレッシュ。
最初に住んだのがこの街で本当に良かったねと二人で言い合いながら、Manningtreeを後にしました。


(投稿者:Ren)

Japan Center in London 今日の戦利品

2014年04月12日 | 【イギリス生活】
月に1回くらい、ロンドンに日本食を買出しに行ってます。
今日の戦利品はこれ



Colchesterにも美味しいものはあるけれど、美味しい調味料と納豆は我慢できないので、ジャパセンで買ってます。

ちなみにお値段は、

 ・醤油 £4.94
 ・玄米酢 £5.04
 ・みりん £4.94
 ・味噌 £2.99
 ・納豆 £1.69

です。今1ポンドは170円くらいだから・・と計算すると悲しくなるのでしません。少しくらい高くたって買いますとも!
日本食がイギリスにあるってだけでスバラシイ。食べることが大好きな私たちとしては、大変ありがたみを感じています。

ちなみにジャパセンにはお弁当コーナーがあるのですが、20時過ぎに行ったら75%Offで買えました!(私たちが行ったのは金曜日。21時に閉店です。)

(投稿者/Sakura)

Alberto Alesina and Howard Rosenthal, Partisan Politics, Divided Government, and the Economy

2014年04月11日 | 
「どんな分野でも業績があるAlesina」。
ある先生がAlesinaさんについてこんなことを言っていました。
そのときに読んだ論文(共著)は、共産主義の国において個人の資本主義や再分配政策に対する選好(preference)がいかにその政体に影響を受けるか、東西ドイツの個人に焦点をあてて論じたもの。
Alesinaさんと言えば、中央銀行の独立性の話とか財政再建の話とかで名前をよく聞く人だと認識していた(原論文はまだ読めていない。。)のですが、確かに先生の言う通り守備範囲の広い人だなと思ったものです。

でも、Alesinaさんの活躍の舞台はそれだけではありませんでした。
今日取り上げる、Aleberto Alesina and Howard Rosenthal, Partisan Politics, Divided Government, and the Economy (Cambridge University Press, 2005)は、アメリカの政治システムと経済の関係について深く分析した作品です。



本書における主要な主張は以下の5点です(pp.1-3)。
(1)Downs(1957)の予測に反してアメリカの政党システムは二極化している。
(2)この二極化した政党の存在によってマクロ経済サイクルが発生している。
(3)政策は行政(大統領)と立法(議会)の相互作用の中から立案・執行される。
(4)有権者は上記の相互作用を利用して中道の政策を実現しようとする。行政と立法で違う政党が実権を握る分割政府は偶然の産物ではない。
(5)この結果として中間選挙で大統領の所属している政党と違う党が勝利しやすくなる。

これらそれぞれについて、著者らは数式を使った仮説の提示とそれの統計的検証を行っていきます。
主張は相互に結びついていて、これらを示すことにより著者らはアメリカの政治システムと経済の関係を包括的に理解しようとしていますが、ここでは(2)に注目した紹介をしたいと思います。

著者らが本書において提示するモデルは、Rational Partisan Business Cycleです。
僕は大まかに言って下記のようなモデルであると理解しました。(間違っていたらご指摘いただけると幸いです。…試験で減点されないためにも。。)

大統領選挙において勝利した政党はその前半において民主党は拡張政策、共和党は緊縮政策を行う。
すなわち、民主党政権の場合は成長率が平均より高く、共和党政権の場合は平均より低くなる。

ところで有権者には「何があっても民主党」の人もいるが、「どっちかというと民主党だけどそんなに極端な政策は嫌だ」という人もいる。(共和党についても同じことが言える。)
後者の中道の経済政策を好む人たちは、中間選挙(議会選挙)において大統領とは違う政党を勝利させることで経済政策のバランスを取ろうとする。
すると、議会と大統領の権力均衡(妥協が必要になる)によって、政権の後半には極端に党派的な経済政策は行われなくなる。
これによってアメリカのマクロ経済サイクルが発生している、著者らはそう主張します。

本当に個々の有権者がそういう行動をとっているかどうか、個々人に「中間選挙のときに支持政党に投票したか、反対党に投票したか」や「なぜそのような投票をしたか」などを聞いてみる必要がありそうだなと直観する(個人的には、中道の経済政策を志向する人がいるだろうことは理解できるけど、果たしてその人がバランスを取るためだけに支持していない政党に投票するかどうかについてはちょっと疑問。)のですが、テクニカルな数式によるモデルを積み重ねてアメリカの政治と経済の関係を合理的に解明しようとする(そしてそれを統計データによって確認する)スケールの大きさと強靭な論理に驚嘆しました。

なお、最終章において、本書の知見はアメリカのみならず他の先進諸国にも応用可能であることを著者らは主張します。
既にドイツの中央政府とラント議会選挙の関係が、本書で示された「中道を求める有権者」で説明できるとする研究もあるみたいです。
著者らは政党政治や収斂していない政党、分割政府、中道を求める有権者(大統領と議会だけじゃなく、中央議会と地方議会、中央議会とEU議会についてもこれが観察できるとのこと。)はアメリカだけでなく他の先進国でも見られるものだとしていますが、日本については当てはまらないような気がする。
それは著者らの理論に無理があるからなのか、日本の政党政治にどこか問題があるからなのか、ちゃんと考えてみる必要がありそうです。

(投稿者:Ren)

イギリスに暮らして分かったこと・その3:Londonには何でもある

2014年04月10日 | 【イギリス生活】
これから書くことは全部、田舎に住んでいる者の僻みです。
僻みであることは十分理解していながら言わないではいられないこと、それは「Londonには何でもある」ということです。

たとえば日本の食材。
確かに、Tescoに行けばお米や醤油や海苔が手に入るし、Waitroseに行ったりすれば美味しい豆腐も買える。
Renはそこまで日本食loverではないのでそんなに不満はありませんが、それでもLondonのジャパンセンターに初めて入ったときの衝撃は忘れられません。
西友で売っているような商品(食品だけじゃなくて!)が何でもかんでも置いてあったんです。
異様な値段の高さに目を瞑れば、こちらではどんなに頑張ってもお目にかかれない、「薄い肉」も買うことが出来てしまう。
Londonに住んでいたら不便を感じることはないだろうなと思いました。

食のレベルも、Londonは非常に高いです。
「イギリス料理は不味いと言われていたが、ここ数十年でだいぶ改善した」みたいなことを時々聞きますが、それが言えるのは大都市だけです。
僕たちもこれまでManningtreeやColchesterで外食したことはもちろんあって、美味しいと思うところもないわけではないけど、それはイギリスの味に慣れてしまったからにほかなりません。(期待水準が最初から低い。)
Londonの外食は、レパートリーの豊富さだけでなく、やっぱり質もとても高いと思います。
Colchesterには存在しないちゃんとした日本料理のお店がLondonには何軒もあって、まだ少ししか行っていないけどとても美味しかったです。

Renが全く興味がないファッションについても、Londonはとても充実しています。
ColchesterにはH&MやTOPSHOP等のいわゆる「ファストファッション」は結構あるけれど、ちょっといい感じ(スーパーハイブランドじゃなくて。もちろんスーパーハイブランドもないけど。)の服はありません。
そろそろ「若い子」でなくなってきた僕たちは少しお洒落な服も欲しいところ。(もちろん、ファストファッションも利用します。)
そうすると、はるばるLondonまで行かないといけません。

Londonには何でもあります。
ここにないものを探す方が苦労します。
同じ大都市というくくりだとEdinburghもいろんなものがたくさんあったけど、Londonとは質・量ともに比較になりません。
Londonで暮らすとお金は大変だろうなと思うけど、それ以外の面では苦労しないんじゃないか?と田舎者には見えてしまう。

羨ましさはありつつも、でも、僕は田舎に住めて本当に良かったなと思っています。
Londonは観光スポットもたくさんあるし、何でも揃っているし、確かに魅力的な都市ではあるけど、東京との違いを僕はあまり感じない。
何も根拠を示さずに言ってしまいますが、Londonはイギリスとは全く別のもので、イギリスらしさはLondonの外にあると思う。

それまで名前すら聞いたことがなかったManningtreeやColchesterに住むことになったのは偶然の積み重なりの結果でした。
でも、こうして日本では意識していなかったことに戸惑うことができたり、日本と全然違う景色の中で暮らすことができたりすることは、Londonに住んでしまっていたら経験できなかった幸運だなと、最近改めて感じています。

(投稿者:Ren)

巣穴発見!

2014年04月09日 | 【イギリス生活】
最近、Sakuraと二人で学内を散歩するのにはまっています。
普段は通らない道を通ってみるといろいろ発見があって楽しいです。

遠くのほうでウサギを見つけたので彼らのいるほうへずんずん近づいて行ったところ、自然にできたようには見えない穴がぼこぼこぼこ。





この中に何匹かのウサギが逃げ込んでいきました。
どうやらウサギの巣穴のようです。
中でつながっていたりするのでしょうか。

しばらくしたら油断したウサギが出てこないかなと思って近くで待ち伏せしてみましたが、我々が気配をうまく消せなかったのか、ウサギは結局現れませんでした。


(投稿者:Ren)