SakuraとRenのイギリスライフ

美味しいものとお散歩が大好きな二人ののんびりな日常 in イギリス

イギリスで買える日本食 ⑤たらこ

2014年07月30日 | 【イギリス生活】
いくらがWaitroseに置いてあることを教えてくださった方が、さらに「こんなのもありますよ」と教えてくださったのがこれ、たらこです。



お値段は£5.70。
正確にはスモークしたたらこですが、若干塩辛いかなと思うものの、ちゃんとたらこです。



たらこパスタにしていただきましたが、かなり量があったので2人で食べると結構贅沢。
なんとなく、たらこを食べるのは日本だけだと思っていたので、イギリスのスーパーで買えるなんて意外な感じがします。

いくらとたらこ。Waitroseは歩いて45分くらいの距離にあって行くのは大変だけど、是非リピートしたいところです。

(投稿者:Ren)

イギリスで買える日本食 ④いくら

2014年07月27日 | 【イギリス生活】
なんと、いくらがWaitroseで買えることを知ってしまいました!



蓋をあけると、、、



いくらが大好物なSakuraとRen。
でも、まさかイギリスで、ジャパンセンター(不当に高い!)に行かなくても手に入れることができるとは・・・!!!

お値段は、50グラム入って£5.49.
もちろん日本と比べると割高ですが、いくらを食べれるなら文句はありません。

早速いくら丼にしていただきました。二人で食べるとそんなにいくらは載せられないけど、それでもめちゃくちゃ美味しかったです。


いくらがWaitroseで売っていることを教えてくださったのは、最近知り合いになることができた日本人&イギリス人のご夫婦。
Waitroseには何度も行っているのに全然気が付きませんでした。
教えてくださってどうもありがとうございました!

また食べたいなあ。。
今度は手巻き寿司にしよう。

(投稿者:Ren)


イギリスに暮らして分かったこと・その4:英語の発音はそこまで重要ではない

2014年07月26日 | 【イギリス生活】
もうすぐ1年経つのに全然英語が上達していない僕が言っても全く説得力がないことですが、こちらで暮らしているとコミュニケーションを取る上で英語の発音はそこまで重要ではないということが分かってきました。

そもそも「英語」と言っても発音やアクセントはその人の出身地によってかなり違います。
もちろん「標準語」みたいなものはあるけど、「京都弁や青森弁は正しい日本語ではない」なんて多くの日本人が思わない(であろう)ように、標準から離れた英語も別に「正しくない」英語というわけではありません。

いろんな英語をこちらの人は「どこどこ訛り」(たとえば、コルチェスター訛り)の英語と表現します。
「どこどこ」に入るのはイギリスの地名だけではありません。
中国だったりタイだったりドイツだったりスペインだったりももちろん入る。
それぞれの訛りがある人とのコミュニケーションに慣れている人が多いので、ちょっとくらい標準から外れる発音・アクセントで話してもこちらの人たちは相手が何を言いたいかを推測しながら注意深く聞いてくれます。

日本人は「正しい発音」で英語を話さないといけないと思いこまされているのではないでしょうか。
現在の教育はもう変わっているかもしれないのですが(そうだと良いけど)、僕が英語を中学で初めて習ったとき、アメリカ英語の発音のみが正しいとされ、イギリスやオーストラリアの英語は「訛りがある」という扱いを受けていました。
でももはや国際語となった英語に優劣はなく、それぞれの地域の英語があっていい。
インドのアクセントがある英語も、マレーシアのアクセントがある英語も、日本のアクセントがある英語も、全部等しく英語と認められていい。
おとなの基礎英語のアプローチの正しさを最近改めて感じています。

発音よりも圧倒的に重要なのは、やはり話す内容です。
話す内容がしっかりしていればイギリスの人たちはきちんと聞いてくれる。
一度ある授業の中で、キプロス出身の人が、僕にはほとんどスペイン語にしか聞こえないような発音・アクセントで、とても早口に発言していたのですが、先生はもちろん学生もみんな彼女の発言に耳を傾け、その発言についての賛否の議論がその後続きました。
そのとき、「自分には英語力が足りないから議論にうまく参加できない」というのはただの言い訳で、本当は議論できるだけの知識や思考が足りないことを誤魔化していただけだと痛感しました。

日本ではずっとグローバル化のために英語力をもっと身につけるべきだと言われてきました。
しかし、英語以前に果たして僕たちは外国の人たちに耳を傾けてもらえるだけの内容のある知性や教養を身につけているでしょうか。
一つの「正しい」発音を「ネイティブ・スピーカーみたいに」再現できるように訓練するよりも、訛りが多少残っていてもいいから自分の意見をちゃんと言えるように知性や度胸を磨くことが大切なんじゃないかとこのところ思っています。

僕がいつまでたってもジャパニーズ・イングリッシュでしか話せないことの自己正当化でしかないかもしれないですけどね。(いや、知性や教養や度胸も残念ながら同じくらい足りていないけど…。)

(投稿者:Ren)


イギリスで買える日本食 ③豆腐

2014年07月23日 | 【イギリス生活】
これは日本のスーパーで買える豆腐よりも美味しいと思います。



これまでのところ、
・LondonのJapan Centre
・Waitrose
・M&S
・ManningtreeのThe Wholefood Store
で見つかっています。(値段は下のほうほど安い。)

SakuraとRenが住んでいるところの近くにはこれらはないので、Town CentreやManningtreeに行ったときにまとめ買いしています。
M&Sではだいたい一個£1.60~£1.70くらい£1.85。日本円に直すのは怖いので直しません。
(※2014年8月3日に修正。Waitrose、M&S、Wholefood Storeすべて同じ値段でした。)

一番安く買えるManningtreeではこのところ置いてないことが多いです。
ただ品切れなのか、今後も補充する気がないのか、今度確認しに行かないと。

(投稿者:Ren)


日本からEMSが届く

2014年07月22日 | 【イギリス生活】
久しぶりに日本にいる母から荷物が届きました。
中身はこんな感じ。


・お赤飯
・しいたけ
・五目きんぴら
・九条ねぎ
・大根
・大根葉
・海苔
・ごぼうのお味噌汁
・すりごま
・コアラのマーチ
・SARASAの赤ペン(Renのお気に入り)

今回の荷物は特に、私たちが欲しいな~食べたいな~と思っていたものばかりでした。
私たちもイギリスに来てもうすぐ1年。最初はイギリスに何があって何が手に入りづらいか
よく分かっていなくて、
母も母で、何を送ったらいいやら、EMSの方法もよく分からないし・・という感じでした。

でも最近は、いつも欲しいものが入っていて、パッキングもローマ字も上手になったし、
母も慣れないことを頑張ってくれたんだなーとしみじみ。感謝感謝です。

さて、早速お赤飯を食べますか・・・

(投稿者/Sakura)

成績発表

2014年07月21日 | 【イギリス生活】学生生活
先日、ようやく試験の結果及び試験とコースワークを合わせた1年の成績が発表されました。
心配していた「リサーチメソッド(上級)」を含めてすべての科目で無事単位が取れたようです。
成績表には、

Result: Formal work completed - proceed with dissertation

と記してあり、あとは修士論文で50点以上が取れれば修士の資格をもらえることになりました!!

試験の結果は受験後の手ごたえとほぼ一致。
やっぱり授業で明示的に言われていないようなことを書けた答案はその分高く評価されたような気がします。
エッセイのようにたくさんの文献を引用することはできないけれど、その他のことについては試験を受けるときもエッセイと同様の戦略で良さそうです。
(考えてみれば、エッセイ等でオリジナルなことを主張するためには先行研究をきちんと理解していないととても不可能なのと同じように、試験でも基礎知識がしっかりないと新しいことは言えないですからね。)

そして、エッセイがそうであるように、「試験でDistinctionを取ることは簡単ではないが、不可能ではない」と言うことはできると思います。
また、周りの学生さんたちと比べて書けた量は少なかったと思うけど、ちゃんと良い点が取れてたのでやっぱり内容がしっかりしてれば分量はそんなに気にしないでよさそうです。


現在、多くの学生が旅行中か実家(母国)に帰っているため、学内はひっそりとしています。
先週は卒業式が行われて久しぶりに毎日お祭り騒ぎでした。



修士論文の審査に合格したかどうかが分かるのは今年の冬なので、修士課程の学生の卒業式は来年です。
僕も彼らみたいに無事にガウンを着て卒業式に出席したいものですが、、、大丈夫かなあ…。

(投稿者:Ren)

Cambridge旅行(3)Tour de France 2014

2014年07月14日 | 【イギリス生活】旅行
今回僕たちがCambridgeに行ったのは、合唱を聴くこととウィトゲンシュタインのお墓を見に行くことだけで、あとはゆっくりショッピング(Colchesterより都会ですから)したりカフェで読書したりして過ごそうと思っていました。
でも、Cambridgeの街中にはいたるところに「Tour de France」の文字やポスター、そして飾りつけが。



どうやら今年のTour de Franceはイギリスからスタートするみたいで、その日程の3日目のスタート地点がここCambridgeだったようです。
それを狙って行ったわけでもないし、そもそも僕たちは特にTour de Franceに興味があるわけでもなかった(そもそも僕はこれが何なのかもほとんど知らなかった)のですが、せっかく世界的に有名なイベントが近くでやってるので観戦してみることにしました。

BBCによればスタートは10時とのことだったので、ちょっと早めに中心部に向かいます。



自転車がどこを走るのかはよく分からないけど、人がたくさん集まっている場所を探すSakuraとRen。
あまり何も考えないでSt.John's College近くに陣取ることにしました。

10時近くになると警察や救急隊、関係者の自転車・車が走っていきます。
そのたびに観客たちは拍手&歓声でお出迎え。
拍手される彼らは手を挙げて応えたり、さらに観客たちを煽ったり、恥ずかしそうに走り抜けていったり。

でも、、、しばらく経っても競技者たちの自転車は姿を現しません。
来るのはスポンサーの車ばかり。





車の中からグッズやお菓子を観客に投げてくれる車が結構あったのですが、①進行方向の右側、②子供がたくさん集まっているところ、が多く、僕たちは残念ながら何もゲットできず。
それでも何度か僕たちのほうに投げてくれたことがあったけれど、隣にいた家族のお父さんが子供以上に必死になってグッズをもらおうとするので、すべて彼に奪われました。

競技者は待っても待っても現れません。
日陰に立って待っていた僕たちが寒さに震えながら(写真に写る向こう側は日向。あっちはあっちで暑そう。)、また待つのにもいい加減に飽きてきた12時少し過ぎ――。

ふいに大きな歓声が聞こえてきました。



来た。







スタートしたばかりだからでしょうか、あんまりレースという感じではなく、パレードみたいでした。

競技者が走り去ったあと、観客たちが拍手をして(なぜだろう?)、みんな解散。




この後、Cambridge University Press Bookshopで(Sakuraにおねだりして)本を一冊購入したところ、「今日はTour de Franceの日だから」ということでエコバッグ(Tour de Franceにちなんでイエロー)を無料でもらえました。
自分用の良いお土産。日本に帰ったらいろんな人に自慢します。

旅行記はこれで終わりで、次回から普段通りに戻ります。

(投稿者:Ren)

Cambridge旅行(2)Wittgensteinのお墓参り

2014年07月12日 | 【イギリス生活】旅行
Cambridge旅行の二つ目の目的は哲学者Ludwig Wittgensteinのお墓参りをすること。
別にお墓の前で手を合わせたりするわけではないのですが、本の中でしか知らない偉大な人物が本当に実在したことを感じることができるお墓参りがRenの趣味だったりします。

ウィトゲンシュタインさんが眠っているのは、King's Collegeなどがある街の中心部から北西に少し外れた(しかし十分徒歩圏内の)墓地、Ascension Parish Burial Groundです。
車が行き交う大通りを歩いて行くと、墓地へ向かう道の入口に墓地の名前を書いた看板があります。



ずんずん進んで行くと、墓地の入口が出てきます。



この墓地にはどうやらケンブリッジ大学関係者がたくさん眠っているらしく、墓地全体の地図に重要そうな人物たちの場所が記されていました。
ウィトゲンシュタインさんもその「重要そうな人物たち」リストに入っているおかげで、彼の墓地を探すのにSakuraの手を借りれば(Renは地図が読めない)苦労は全然しませんでした。

これがウィトゲンシュタインさん。



熱烈なファンが来ていたようで、お墓の上に「I love Ludwig Wittgenstein」と書いたボードが置かれていました。
その他にも花束やコインだけじゃなくて松ぼっくりや何かの道具なども。
きっと分かる人からしたら明白な何かの暗喩かパロディーなんだろうけど、Renにはちょっと分かりませんでした。

この墓地には他にも倫理学者のG.E. Mooreさんや経済学者のAlfred Marshallさんなどがいらっしゃるようです。
(お二人とも名前を知っているだけで特に本を読んだわけではないから、語れることはほとんど何もありません。)

ムーアさんは簡単に発見できましたが、



マーシャルさんは発見できず。地図から言うとこのお墓かなとも思うのですが、



さすがにこの草を掻き分けて確認するほどの熱意・思い入れはなかったので諦めました。


一番重要な目標(ウィトゲンシュタインさんのお墓参り)を達成できてルンルン帰っていると、墓地の関係者っぽい方から、
「アルファベットミュージアムはどうでした?」
と聞かれてしまいました。
そういえば、墓地のすぐそばにそのようなものはあったけど、入るのを忘れていました。

「ウィトゲンシュタインさんのお墓を見に来ただけなので、ごめんなさい、ミュージアムには入ってないです。」
と言ったところ、
「ここに来られる方はみなさんウィトゲンシュタインさんのお墓を見に来るんですよ。」
とのこと。

さすが、世界的なスーパースター。
でもそのわりにお墓はとても控えめで、地図がなかったら発見できなかったと思います。
ウィトゲンシュタインさんに会いに来られる方は、まず地図を探しましょう。


これでおしまいと思いきや、なんと(3)に続きます。


(投稿者:Ren)


Cambridge旅行(1)King's CollegeのChoir

2014年07月11日 | 【イギリス生活】旅行
去年の夏にRenだけがfield tripで行ったCambridge。
本当に素晴らしかったので、ずっとSakuraに見せてあげたいと思っていました。
あれから一年近く経って、ようやく二人で訪れることができました。

今回のCambridge訪問の目的は(1)King's Collegeのチャペルで合唱を聴くことと(2)Wittgensteinのお墓参り。
今日は(1)について。(2)は100%Renの趣味なので、(1)がメインイベントです。

King's Collegeのチャペルで合唱を聴くことは、Renにとっても1年越しの目標でした。
今回はどうしても聴きたかったので、あらかじめKing's Collegeに僕たちの旅行日程で合唱を聴けるかどうか確認しておきました。

ちなみに、King's Collegeの外観はこんな感じ。見事です。



普段なら見学料を払わないと入れないのですが、合唱を聴く目的であれば無料で中に入ることができます。
ただし、合唱は宗教イベントの一環なので、普段ならできる写真撮影は禁止。(そのため、内部の写真は残念ながら撮れず。)

合唱は想像以上に素晴らしかったです。
すべての楽曲が伴奏なしで歌われ、美しいハーモニーを堪能することができました。
合唱団だけでなくて、その儀式全体を主催する司祭(?)も歌がとても上手でしかも大変魅力的な声をお持ちで、そのことにも二人で感動していました。

礼拝が終わったあと、せっかくなので中庭をしばし散策。



こんなところで勉強できる学生さんたちは幸せだなと改めて思いました。

合唱を聴くのはKing's Collegeだけの予定でしたが、これが本当に素晴らしかったので違うカレッジのも聴いてみようと、翌朝、St.John's CollegeのSung Eucharistにも行ってみました。
もちろん、これも宗教的イベントなので見学料なし。(同様に写真撮影も禁止。)

観光客がとても多かったKing's Collegeと違って、St.John's Collegeのものは地元の敬虔なキリスト教徒の方が多かった印象。
跪いてお祈りする場面でしっかり跪いていたり、お祈りの言葉を暗唱していたり、讃美歌もしっかり歌っていたりして、小心者かつここらへんの教養をまるで欠いているRenは口パクでもして周りに合わせようかと本気で迷いました。

さて、こちらの合唱はオルガンの伴奏付きの演奏。
King's Collegeの合唱団の方がRenは好きだったけど、ここの合唱団もとても上手でした。
オルガンもドラマチック。ドラマチック過ぎてちょっと大変だった(笑)

礼拝後に中庭散策をしていたら、お迎えに来ていたお父さん(?)とどこかに行く合唱団の子(アジア系、たぶん中国の人)を発見。



St.John's Collegeの合唱団には、ほとんどがヨーロッパ系に見えたKing's Collegeのそれと違って、アジア系やアフリカ系の人たちが混じっていました。
たまたまなのか、それぞれのカレッジの特徴なのか、どっちなのでしょうか。

(2)に続きます。

(投稿者:Ren)

Barbara Vis, Politics of Risk-taking (Amsterdam University Press, 2010)

2014年07月09日 | 
このところ本の紹介ばかりになっていてこのブログの趣旨に沿わないような気もしないでもないのですが、今日も本の紹介をしたいと思います。
今日取り上げるのは、Barbara Vis, Politics of Risk-taking: Welfare State Reform in Advanced Democracies (Amsterdam University Press, 2010)です。



本書は、福祉国家改革の政治を「Politics of Risk-taking」ととらえ、それがいつ、どのような条件で行われるかを解明しようとする研究です。
福祉国家改革、特に福祉給付の削減を含むような政策は選挙民に人気が悪く、そういう政策を行った政権は選挙で選挙民に処罰されるリスクがあります。
でも、そうであるにもかかわらず、そのような不人気な政策はいくつもの国で行われている。
しかも、同じ国であっても、不人気な政策を行う政権もあればそれを行わない政権もある。

それを説明するための理論として著者が着目するのがProspect Theoryです。
Prospect Theoryは、KahnemanさんとTverskyさんによって1970年代の終わり頃に実験により構築された心理学理論で、その中心的な主張は「人間は何かを失う局面においてはリスク回避的に行動し、何かを得る局面においてはリスク受容的に行動する」というもの。
福祉国家の改革をリスクの受容(Risk-taking)ととらえ、著者はそれは政府及び選挙民が何かを失っている(事態が悪化している)と認識しているときのみにおいて行われると主張します。

具体的な本書の仮説は以下です。
福祉国家を改革する不人気な政策は、社会経済的状況が悪化している状況下においてのみなされる。ただし、上記条件は(1)政権の安定度が悪化している、または(2)右派政権である、のいずれかと組み合わさることが必要である。

ポイントは、社会経済的状況が「悪い」ではなく「悪化している」というところ。
たとえば、失業率が二桁もあったりするような経済状況はとても悪いんだけど、状況が改善しつつある中での二桁たったりすると、人は「事態が悪化している」とは認識しない。
また、いずれかが組み合わさる必要がある(1)はその政権が選挙民に不人気な政策を行うというリスクを取ろうと思うかどうかに関係し、(2)は右派政権はもともと福祉改革を行いたいというイデオロギーを持っているということに関係しています。

この仮説を著者はfuzzy-set analysisなる(僕が)初めて聞く手法を用いて確かめていきます。
Prospect Theoryに基づく理論と並んで、Fuzzy-set analysisによる実証をしているところがおそらく本書の新しいところ。
僕はこの手法を本書で初めて聞いたので詳しくはよく分からないのだけど、生のデータをそのまま使うのではなくて、データを研究者が評価してそれに0.00~1.00のdiscreteな値(たとえば、ある数字X以下だったら値0.00、ある数字Xからある数字Y(X<Y)までは値0.17、…)を付与した上で、その値を使って統計分析するような手法のようです。
これによって、定量的分析と定性的分析の両方の利点を活かすことができる、と著者は主張しています。
(値を付与する作業が恣意的になっちゃうんじゃないかという批判はあり得るところだと思いますが、もちろん著者はその値を付与した根拠を様々提示しています。)

著者がここで分析の対象としているのはイギリス、オランダ、ドイツ、デンマークの4か国(25内閣)のみで、他の国でこの理論が成り立つかどうかは分かりません。
ただ、野田政権においての消費税増税法案の成立(2012年。これは「不人気な政策」だったと思う。)をこれに当てはめてみると、確かに経済的状況は悪化していたような気がするし、政権も不安定だった。
でも、よく考えてみたら、その前の菅政権も経済的状況は悪化していたし政権も不安定だったのに、「不人気な政策」は実現できていないような気がする。(菅政権から消費増税に動き出したと評価することはできるかもしれない。でも、やっぱり野田政権がなぜできて、菅政権はなぜできなかったのかという問いは解消しないと思う。)
他の国で仮説が成立するかどうかは今後の課題と著者はしていますが、今後の研究が待たれるところです。


理論、実証分析ともに僕にとってはとても斬新で、読んでいてとてもわくわくする本でした。
カードゲームをしている人たちを描いた表紙のデザインも秀逸だと思います。(本棚に本を飾るのが好きなRen的には背表紙もきれいだったのが嬉しい。)
本書は著者がアムステルダム大学に提出した博士論文が元になっているとのこと。
僕もこういうイノベーティブな研究ができればいいのに、と思いながら、、、まずは修士論文に頑張って取り組もう。

(投稿者:Ren)