SakuraとRenのイギリスライフ

美味しいものとお散歩が大好きな二人ののんびりな日常 in イギリス

2011年に読んだ本ベスト10(5位~1位)

2012年01月03日 | 
こんにちは。前回に引き続き、2011年に読んだ本ベスト10を書いていこうと思います。
今日は後半、5位~1位です。

5位 松浦正浩『実践!交渉学――いかに合意形成を図るか』(ちくま新書、2010年)
 交渉について語る本は、書店に行けばたくさん置かれています。そういう本をたまに立ち読みすることがあるのですが、多くの自己啓発系のものと同じように学問的基礎について不安なものが多いなと思っていました。これは、そういう本たちとは一線を画していて、学問的議論をしっかり踏まえた上で、交渉について一般読者に分かりやすく説明してくれる良書だと思います。交渉学についてのど素人のRenにとって、ものすごく勉強になりました。

4位 小坂井敏晶『人が人を裁くということ』(岩波新書、2011年)
 裁判という営みを国際比較もしながら原理的に考察している本です。裁判に内在する諸問題を剔抉し、しかし、だからといって裁判を否定もせずに、著者の考察が進んでいきます。著者はすぐに答えを提示せず、読者である我々がこの問題を自ら考えるよう誘ってくれます。ほぼすべての人に裁判に関わる可能性があるいま、人を裁くということは、裁判官や検察官の方々のみならず、すべての人にとって切実な問題ではないかと思います。

3位 井上達夫〔編〕『人権論の再構築(講座 人権論の再定位5)』(法律文化社、2010年)
 本当はこの講座は全部読みたいなと思っているのですが、とりいそぎ2011年は最も読みたかったこの巻のみ(前にも書いたと思いますが、Renは井上達夫さんファンです)。期待を裏切らず、読んでいて知的にわくわくする論考が多かったです。一つだけ選ぶとしたら、特に米村幸太郎さんの章が素晴らしかったなと思います。他の巻も続々読んでみたいです。

2位 倉田徹『中国返還後の香港――「小さな冷戦」と一国二制度の展開』(名古屋大学出版会、2009年)
 Renたちは2011年に2回も海外旅行に行けました。ハネムーン(ウィーン)に行ったのはその年の2回目の海外旅行でした。1回目はゴールデンウィーク期間中に行った香港。外国語が英語しか分からないRen(これではいけないと思って、ちょっと前からイタリア語を勉強しています。)は英語が通じそうなところしか怖くて行けないのです。そんな香港の予習教材としてSakuraにおねだりして買ってもらったのが、サントリー学芸賞受賞作のこの本。香港の政治制度について本当に詳しく解明されていて、この本を読んで行ったおかげで、香港の街中にあるポスターとか政府系の建物とか観光スポットとかを深く楽しめました。学問的水準も高く、しかも読み物としても楽しめる素晴らしい作品でした。

1位 加藤久和『世代間格差』(ちくま新書、2011年)
 年金を始めとする社会保障制度や労働市場などいろんな制度で見られる世代間格差を取り上げ、その原因、評価、そして解決のための私案も示す、とてもよく整理されていて勉強になる本です。世代間格差の問題というと、どうしても感情に訴える言説が多い中で、この本は冷静な議論をしていて大変好感を持ちました。この問題を考えるときにまず最初に読むべき本なのかなと思いました。もっとたくさんの方々に読まれて欲しい本です。ただ、「なぜ将来世代のことを配慮しなければならないのか」というRen的にものすごく重要な問題を提起していると思われるのに、あんまり立ち入った検討がなされていなくて、そこだけは残念に思いました。その問題については、鈴村興太郎〔編〕『世代間衡平性の論理と倫理』(東洋経済新報社、2006年)、吉良貴之「世代間正義論――将来世代配慮責務の根拠と範囲」『国家学会雑誌』119巻5-6号(2006年)が詳しく検討していてオススメです。


2012年も素晴らしい本たちに出会えたらいいなと思います。
Sakuraに本代を削られないように、今年も頑張って働こうっと。

(投稿者:Ren)

2011年に読んだ本ベスト10(10位~6位)

2012年01月02日 | 
あけましておめでとうございます。
そんなに頻繁には更新されないブログですが、今年もマイペースで書いていきますので、どうかよろしくお願いします。

さて、新しい年が始まったばかりですが、今日は昨年読んだ本の中から特に印象に残った本ベスト10を書いていこうと思います。
こうやって書いておくことで、あとで2011年の頃自分はどんなことをして、どんなことを考えていたのかなと振り返りやすくなるんじゃないかなと思うのです。

ということで、早速始めたいと思います。

10位 国分拓『ヤノマミ』(NHK出版、2010年)
 この本はSakuraに薦められて読みました。NHKでヤノマミ族についてのスペシャル番組をやっていたのを観てSakuraがものすごい衝撃を受けたらしいのですが、その番組が元になった本です。「原始的」な生活を営むヤノマミ族の暮らしがかなり深いところまで観察されて紹介されていて、とても興味深かったです。

9位 加藤淳子『税制改革と官僚制』(東京大学出版会、1997年)
 政治学の基本文献ですね。名前だけはあらゆるところで聞いていたのですが、ようやく、やっと去年読むことができました。税制改革という極めて専門性の高い政策分野がどのように作られ、実行されていくかを丹念に分析します。官僚たちが、税制に詳しく、また、選挙にも強くて安心して国家全体のことを考えていられる自民党の幹部の議員たちと協力して族議員の特殊利益の主張を抑えていくという自民党単独政権下の政策過程が中心ですが、これがいまの民主党政権ではどう変わったのか興味をそそられますね。いまの民主党政権は族議員的な人ばっかりだなーって、税・社会保障一体改革関連のニュースとかを観てると思ってしまいますけどね。

8位 Paul Pierson, Dismantling the Welfare State?:Reagan, Thatcher and the Politics of Retrenchment(Cambridge University Press、1995年)
 これも政治学の基本文献ですね。福祉削減の政治が福祉拡大の政治とは違うこと、従って、そう簡単には福祉削減はできないことを理論的、実証的に示したもの。この作品の素晴らしいところは、福祉削減をするときに、政府がどんな政策と組み合わせるかを示したところじゃないかと思います。こういう視点は今後高度成長期のような右肩上がりの成長が見込めなくなってきた日本においてますます重要になってくると思います。

7位 中村圭志『信じない人のためのイエスと福音書ガイド』(みすず書房、2010年)
 こんな本が欲しかった!というような本です。西欧の文化や思想の背骨になっているキリスト教について、それを宗教学の立場から冷静に紹介をしてくれます。「ここは変だよね」というようなことを、そのままここは変ですねって書いてあるので、楽しみながらキリスト教の勉強ができました。キリスト教についての最良の入門書じゃないかなと思います。なお、最近の似たような本として、橋爪大三郎・大澤真幸『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書、2011年)がありますが、こちらの本は肝心なところの対話が全然かみあっていなくて、読んでいてストレスがたまりました。中村さんの本のほうがRenはオススメです。

6位 Allan Janik and Stephen Toulmin, Wittgenstein's Vienna(Ivan R Dee、1996年)
 ウィトゲンシュタインが生きた世紀末ウィーンの文化を活き活きと描いた作品です。ウィトゲンシュタインの問題の背景は分かると思うのですが、別にウィトゲンシュタインの哲学について解説した本ではありません。ウィーンの本屋さんで発見・購入してウィーンから帰ってから読んだのですが、ウィーンについて予習しようと思って日本で読んだ本たちの、文化について書かれたところはこの本が種本になっていることが分かります。英語がそんなに苦手じゃない方は、世紀末ウィーンの文化についてはこの本を読んでおけばいいんじゃないかなと思います。平凡社ライブラリーで邦訳もあるのですが、本屋さんで注文してもらおうとしたところ、品切れになっていました。。Renは英語がそこまで得意ではないので、邦訳も読んでみたいです。


それぞれの本についてのコメントは一言にとどめるつもりだったのに、いろいろ書いていたらすっかり遅くなってしまったので、5位~1位は次回にしようと思います。

(つづく)


(投稿者:Ren)