こんにちは、Renです。
6月30日に「社会保障・税一体改革成案」が政府・与党社会保障改革検討本部で決定され、7月1日に同成案が閣議報告されました。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/#kakugihoukokuArea
この改革の一番の背景になっているのは、間違いなく日本の財政危機。
毎年のように借金が積み重なっていて、これまでに積み重ねられた借金は1000兆円にもなろうかという額。
こうなったのは日本の国民負担率が公共サービスの水準に比してあまりにも低いことが主な原因で、いますぐにでも税金を上げてもらわないと困る(特に若者世代にとっては)はずなのに、不思議な事にずっと増税が決定されなかった。
テレビニュースを見ていたら、さらに不思議な事に、与党としての責任を担っている民主党内でもこの成案に反対してしまう議員が結構いてしまったようです。(若者世代のことをあまり考えてくれてないんだなって思って、悲しくなりました。)
かなり前に「何で一刻も早く増税しなくちゃいけないってわかっているのに増税してくれないんだろうねー」とSakuraと話していたときに、Sakuraが「お金がないって言うけれど、どのくらいピンチなのかよく分からないまま「足りないから税金上げます」って言われても、取られる側からしたら納得いかない」というようなことを言っていました。
確かに、政府は実際にどのくらい財政がピンチで、それを増税等によってどうしたいのかというメッセージを国民に分かりやすく発信してきていなかったように思えます。
「無駄がある」という不毛な議論(「無駄」はいつまでたってもなくならない。ゆえに、財政再建を先送りするための方便として使いやすい。)への防衛ばかりに終始して、国民に正面から現実を伝えるということはあまりされてこなかった。
増税反対論が根強くあって、それに便乗する論者や政治家がいたとしても仕方がない面がある。
しかし、もしいまの財政状況に対して市場が危機感を持って、国債が暴落してしまったとしたら大変な事になってしまう。
僕たちの生活がそれによっていかに混乱に陥り、日本の国際的地位がいかに低下するかは、近年のギリシャ等を見ればよく分かる。
それは何としても避けなければならない。
というわけで、今日は日本財政の現状を正確に教えてくれる『決断!待ったなしの日本財政危機』(矢野康治、東信堂、2005年)をご紹介したいと思います。
(・・・前置きばっかり長くなりました。。)
本書はまず「第1章 危機的な現状」「第2章 このままで大丈夫か」でフローベース及びストックベース両面から見た日本財政の現状を概観し、この財政の持続可能性を論じます。
次に、「第3章 景気か財政か」において積極財政論(政府支出を増やす&減税をすることによって景気を刺激し、そのことによって借金は返せる!という論)を反駁します。
更に「第4章 財政赤字で何が困る?」「第5章 なぜ危機意識が薄いのか?」で財政赤字がそもそもなぜ悪いのかを論じ、にもかかわらず国民に危機意識が薄い理由を分析します。
そして「第6章 どうするか?」で財政再建策を論じています。
構成は極めてオーソドックス(正統的)。
書かれていることも、分析も、極めてオーソドックス。
でも、こういう普通のことをちゃんと言う人がなかなかいないんです。
著者が本書執筆当時に財務省主計局の公務員であったことのよさが出ているように思います。
僕が本書を読んで特にいいなと思ったのは、下記の2点。
・第2章において歳出増加の本質的な要因が社会保障関係費という構造的な要因に他ならないと結論付けていること。
・第3章において公共事業の乗数効果や税収弾性値を高めに見積もったとしても、はじめの財政出動による収支ギャップを取り戻す事は半分すらできないことを明らかにしたこと。
俗説を一つ一つ反駁していき、穏当な結論を導き出す本書における著者のメッセージは、「結局うまい話はないのだから、着実に財政健全化の道を進むしかない」ということではないかと思います。
僕たちはどうしても、楽な道を選んでしまう。
それは危ないとわかっていても、「でももしかしたら」と期待してしまって、そしてほぼ毎回失敗している。
政府の経済財政政策をチェックする僕たちの重要な役割は、耳障りの良いことを言う人、こうすれば楽だよと言ってくる人に対して、健全な批判精神を持つことだと思います。
どうしても楽なことを言ってくる人が目立ってしまうけれど、こういう本こそもっとたくさんの人に読まれるべきだと思います。
本書の内容に立ち入ることはできなかったのですが、本書は170ページくらいと非常に薄いし、グラフ等も多用されているので、読むのにそこまで時間はかかりません。
著者は現在、今回の社会保障・税一体改革を取りまとめた事務局(内閣官房社会保障改革担当室)で参事官をしています。
2005年刊ということでデータが最新ではないという難点はありますが、日本財政の現状や問題点を正確かつ的確に教えてくれる良書として、また、今回の社会保障・税一体改革の背景の思想を知るための書物としても、かなりオススメです。
(投稿者:Ren)
6月30日に「社会保障・税一体改革成案」が政府・与党社会保障改革検討本部で決定され、7月1日に同成案が閣議報告されました。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/syakaihosyou/#kakugihoukokuArea
この改革の一番の背景になっているのは、間違いなく日本の財政危機。
毎年のように借金が積み重なっていて、これまでに積み重ねられた借金は1000兆円にもなろうかという額。
こうなったのは日本の国民負担率が公共サービスの水準に比してあまりにも低いことが主な原因で、いますぐにでも税金を上げてもらわないと困る(特に若者世代にとっては)はずなのに、不思議な事にずっと増税が決定されなかった。
テレビニュースを見ていたら、さらに不思議な事に、与党としての責任を担っている民主党内でもこの成案に反対してしまう議員が結構いてしまったようです。(若者世代のことをあまり考えてくれてないんだなって思って、悲しくなりました。)
かなり前に「何で一刻も早く増税しなくちゃいけないってわかっているのに増税してくれないんだろうねー」とSakuraと話していたときに、Sakuraが「お金がないって言うけれど、どのくらいピンチなのかよく分からないまま「足りないから税金上げます」って言われても、取られる側からしたら納得いかない」というようなことを言っていました。
確かに、政府は実際にどのくらい財政がピンチで、それを増税等によってどうしたいのかというメッセージを国民に分かりやすく発信してきていなかったように思えます。
「無駄がある」という不毛な議論(「無駄」はいつまでたってもなくならない。ゆえに、財政再建を先送りするための方便として使いやすい。)への防衛ばかりに終始して、国民に正面から現実を伝えるということはあまりされてこなかった。
増税反対論が根強くあって、それに便乗する論者や政治家がいたとしても仕方がない面がある。
しかし、もしいまの財政状況に対して市場が危機感を持って、国債が暴落してしまったとしたら大変な事になってしまう。
僕たちの生活がそれによっていかに混乱に陥り、日本の国際的地位がいかに低下するかは、近年のギリシャ等を見ればよく分かる。
それは何としても避けなければならない。
というわけで、今日は日本財政の現状を正確に教えてくれる『決断!待ったなしの日本財政危機』(矢野康治、東信堂、2005年)をご紹介したいと思います。
(・・・前置きばっかり長くなりました。。)
本書はまず「第1章 危機的な現状」「第2章 このままで大丈夫か」でフローベース及びストックベース両面から見た日本財政の現状を概観し、この財政の持続可能性を論じます。
次に、「第3章 景気か財政か」において積極財政論(政府支出を増やす&減税をすることによって景気を刺激し、そのことによって借金は返せる!という論)を反駁します。
更に「第4章 財政赤字で何が困る?」「第5章 なぜ危機意識が薄いのか?」で財政赤字がそもそもなぜ悪いのかを論じ、にもかかわらず国民に危機意識が薄い理由を分析します。
そして「第6章 どうするか?」で財政再建策を論じています。
構成は極めてオーソドックス(正統的)。
書かれていることも、分析も、極めてオーソドックス。
でも、こういう普通のことをちゃんと言う人がなかなかいないんです。
著者が本書執筆当時に財務省主計局の公務員であったことのよさが出ているように思います。
僕が本書を読んで特にいいなと思ったのは、下記の2点。
・第2章において歳出増加の本質的な要因が社会保障関係費という構造的な要因に他ならないと結論付けていること。
・第3章において公共事業の乗数効果や税収弾性値を高めに見積もったとしても、はじめの財政出動による収支ギャップを取り戻す事は半分すらできないことを明らかにしたこと。
俗説を一つ一つ反駁していき、穏当な結論を導き出す本書における著者のメッセージは、「結局うまい話はないのだから、着実に財政健全化の道を進むしかない」ということではないかと思います。
僕たちはどうしても、楽な道を選んでしまう。
それは危ないとわかっていても、「でももしかしたら」と期待してしまって、そしてほぼ毎回失敗している。
政府の経済財政政策をチェックする僕たちの重要な役割は、耳障りの良いことを言う人、こうすれば楽だよと言ってくる人に対して、健全な批判精神を持つことだと思います。
どうしても楽なことを言ってくる人が目立ってしまうけれど、こういう本こそもっとたくさんの人に読まれるべきだと思います。
本書の内容に立ち入ることはできなかったのですが、本書は170ページくらいと非常に薄いし、グラフ等も多用されているので、読むのにそこまで時間はかかりません。
著者は現在、今回の社会保障・税一体改革を取りまとめた事務局(内閣官房社会保障改革担当室)で参事官をしています。
2005年刊ということでデータが最新ではないという難点はありますが、日本財政の現状や問題点を正確かつ的確に教えてくれる良書として、また、今回の社会保障・税一体改革の背景の思想を知るための書物としても、かなりオススメです。
(投稿者:Ren)