倉野立人のブログです。

日々の思いを、訥々と。

令和6年能登半島地震の被害状況に思わされる

2024-01-08 | 日記

よりによって、元旦の夕刻に発生した「令和6年能登半島地震」は、発生から1週間が経過し その被害状況が拡大傾向のうちに報告されています。

消防庁の発表(7日時点)で 死者126名・負傷者513人・住家被害1,507棟と、現時点でも多くの被害が報告されており、この数字はさらに拡大するのではないかと懸念されています(その後 14時に 死者128名に変更)。

 

 

 

 

(繰り返しますが)よりによって元日の夕刻に起きた大規模地震。

われわれ日本人にとって、1年で一番くつろぐと言われるその日に能登半島を襲った地震は、まさに〝丸腰状態〟の住民の安寧を即座に奪う「蛮行」を働くことになりました。

おそらくは、能登半島のまちやムラに実家があり 普段は首都圏など他の地区に暮らす人たちの中には、正月を契機に里帰りしたケースも少なからずあることでしょう。

また 風光明媚な能登半島には、年末年始のロングバケーションを活用して観光に訪れた人も数多(あまた)おられることでしょう。

そんな そこに暮らす人のみならず、当地に〝帰った人〟や〝訪れた人〟をも巻き込んでの元旦の地震…大自然の気まぐれともいえる事(こと)の起こし様(よう)には、無常感・非情感を禁じ得ないところでありました。

 

この不測の自然災害の報に触れ 私たち長野県人は、2014年に発生した「御嶽山水蒸気爆発」を想起せざるを得ません。

 

 

 

 

あの噴火(水蒸気爆発)も、秋の行楽日のお昼どきに発生しました。

よりによって、秋の好日 多くのハイカーが山頂に集(つど)っている時季・時間帯に発生した水蒸気爆発は、普段は人気の無い山の頂(いただき)で甚大な人的被害をもたらすことになってしまいました。

大自然は、かくも非情なものでありましょうか。

 

 

あのときの能登半島の集落や観光地など地域には、普段より多くの人たちが在されたことと思います。

私が懸念するのは、現在公表されている被害状況は 自治体の住民基本台帳上に基づきまとめられているものと思われますが、前掲のとおり 被災日時は年末年始の好日です。台帳に載っていない人(観光客や帰省客等)が当地を訪れていた可能性もあるのではないか…そういう点では今後、新たな被災者が発見される可能性を考えさせられるところです。

 

 

今回の能登半島地震は、日本の地勢や社会状況(環境)を象徴するような災害であったことを示しています。

被害が最も多かった石川県では 多くの死傷者が発生してしまいましたが、そのうち輪島市では死者の9割以上が「圧死」であったという 実に残念な結果が伝えられています。

 

 

 

その原因には、いくつかの可能性が指摘されています。

一つは、今回の地震の「振動周期」とのこと。

地震の揺れには いくつかの地震波があるそうですが、今回の令和6年能登半島地震では「キラーパルス」といわれる 周期1~2秒の地震波が発生したようです。

この地震波は 特に1~3階程度の低層物(一般住宅)を崩壊させる威力があるそうで、まさに今回 この地震波(キラーパルス)が当地を襲ったのでありました。

 

 

 

そこへもってきて(過日も触れましたが)歴史ある能登の街には旧家が多く、屋根も土葺きの重い屋根で それが家屋崩落を助長することになってしまいました。

 

 

 

 

また、能登半島に限らず 地震の影響を受けた地域で 特に海辺のエリアにおいては「液状化現象」が多発することになっています。

これは、北陸や新潟県の沿岸部に 液状化しやすい地下水位が高い砂地の地盤が広がっていたことなどが要因とみられています。

海沿いに広がる住宅地などの広範囲に亘り どこからともなく砂混じりの泥水が湧き上がり、地面を覆ったり 宅地の陥没・隆起を発生させ、建屋にも大きな そして非常にやっかいな被害を及ぼしています。 

 

 

 

 

この現象は(前掲のとおり)砂地を地盤とする土地に発生します。

「砂地」は普段は結束しているものの 土中の水分に非常に弱く、一度(ひとたび)水分が混入し そこが地震で揺すぶられると、成分(砂)はバラバラになって陥没や隆起を引き起こすというものです。

一旦 それ(液状化)が起きると、復旧は非常に困難で 特に住宅の場合は、一見すると何も(被害が)無くても、実際には〝傾き〟など非常にストレスの残る被害が起きてしまうことが知られています。

 

 

 

 

そして 今回の地震においては、ここ能登半島にも「津波」が押し寄せることになってしまいました。

そのうえで特徴的なのが、当地は〝遠浅〟で、そこに震源の近さも手伝って さきの「東日本大震災」より時間的に早く、そして浜辺を まるでスロープを駈け上げるように〝サーッ〟という感じで(津波が)襲ってきたようなのです。

平時の観光ガイドでは 遠浅がウリになっていますが、この地形が 津波をまるで滑走路のような形で本土に流入させることになってしまいました。

 

 

 

 

さらに(これもさきのブログで触れていますが)、能登半島のそこここで 地域間を結ぶ動脈ともいえる幹線道路が土砂崩落など寸断され、ライフラインが途絶することになってしまっています。

 

 

 

 

これらの被災に起因して 半島では20を超える地区が孤立状態に陥っており、地区によっては徒歩で移動を試みる人たちもおられるなど、現地で支援が受けらえずに自力で(支援を)求めるを余儀なくされていることも伝えられていました。

 

 

 

 

 

何という年の初めになってしまったのでありましょう。

〝不測の自然災害〟は〝想定外の被害〟を及ぼしたところであります、が…。

これが、果たして 本当に〝不測〟だったのか〝想定外〟だったのか…疑問の声が挙げられています。

まず住宅の倒壊被害について、そこには 建屋の耐震化が重要な対策であることはいうまでもありませんが、概して能登半島の(自治体の)住宅の耐震化率は全国を大きく下回っているとのこと。

下図は石川県珠洲市の率ですが、輪島市においても50%に満たない現状にあるそうです。

 

 

 

また 液状化の被害についても、能登半島エリアにおいては「液状化危険度分布図」なるハザードマップがあり、いわば(液状化は)織り込み済みの災害に数えらえているそうなのです。

 

 

 

さらに言えば、当地は 昨年5月5日にM6,5の地震が発生しており、さらに過去にも何回もの地震が発生するなど いわば地震多発エリアであることが知られています。

 

 

 

 

なのに 何故、このような大きな被害が起きてしまったのか。

私のブレーンのMくんは「地震は人の命は奪わない。人命を奪うのは その上に住む人類の責任だ」と話してくれました。

曰く「地震は地面を揺らすだけだが、その(地面の)上に暮らす人の住む家が崩れたせいで人命が奪われる。液状化にしても、砂地で緩(ゆる)い地質の上に敢えて暮らしているから(液状化の)被害を受けるんじゃないか」とのこと。

そのうえで彼は「今回の地震についても、防げる被害はあったと思う。ところが 当地の人たちは、いわば地震に慣れてしまっていて 抜本的な対策を講じないままに今に至ってしまった。これは〝オオカミ少年〟の童話と同じだと思う」そして「政治(行政)自体が、住民と同じレベルで地震に慣れてしまってはダメだ。住民の弛緩(しかん)した意識を改めさせ、何かが起きる前に 事前の策を講じることが行政責任(リーダーシップ)であるハズだけど、残念ながら ここではそれが発揮されなかったみたいだね」と。

 

奇しくもそれは、当県の知事の対応に表(あらわ)れていました。

石川県のH知事は、地震発生から5日も経過した頃に ようやく『非常事態宣言』を発出し、それが「スピード感のかけらも無い」と県民から不評をかっているとのことなのです。

マ これは、別に呑気に構えていたワケじゃなく そこに行き着くまでの暇(いとま)が無かったことと推察されるところですが、事ほど左様に〝後手〟の感が否めない状況は これほどの地震多発エリアのリーダーとしては、心許(こころもと)ないと思わざるを得ないところです。

 

 

 

 

 

いずれにしても、時間だけは無常に過ぎています。

後の報道では、孤立した集落では 電気・水・食糧などが枯渇しかねない状況になっているとのこと、一刻も早い幹線道路の復旧または物資の投入が求められます。

また 避難所の衛生状態も悪化し、ザコ寝の中に コロナウィルス感染症やインフルエンザが発生し始めていることが報じられています。

トイレ環境も限界に近づいているようでです。

 

 

どうかどうか、人智を尽くして被災者支援を進めていただきたい。

今こそ、政治(行政)の力量が問われていると申せます。