さきの報道特番で、人の心の中に遍在する「怒り」について それを適切にコントロールする『アンガーマネージメント』について触れるコーナーがあり、耳目を惹(ひ)かれました。
人のもつ「怒り」の心理。これが悪しき行動となって社会の表(おもて)に出るようになってきており、それは 今や〝社会現象〟ともなっています。
例えば「煽(あお)り運転」…主にクルマを運転している最中に、他者(他車)とのちょっとしたトラブルに端を発し 一方の者(車)が烈火の如く怒って追いかけたり罵声を浴びせたり。
また例えば「キレやすい人」…訪れた店での些細なことに腹を立て 店員さんを怒鳴りつけてみたり、社会生活の中で 自分の言い分が聞き入れられなくなった瞬間に、逆ギレする御仁が。
いったい いつ頃から、こんなにみんなが怒りっぽくなったのかは定かではありませんが、昨年来 この社会現象に追い打ちをかけるようになったのは、やはり「コロナ禍」でありましょう。
〝見えざる敵〟である新型コロナウィルス感染症が自らの身に降りかかることを恐れるあまり他者の行動に神経を尖(とが)らせ、その過剰防衛とも言える感性が「怒り」となって他者に刃(やいば)を向ける。
〝自粛警察〟なる御仁が 他者の行動を見咎(みとが)めて、ときに激しいバッシングを送るなど「怒り」が 非常に極端な行動変異を来(きた)させているようです。
この「怒り」に基づく(人の)行動は、本来 社会の中で培われるべき「思いやり」や「利他」の精神に全く逆行するものであります。
その 瞬間的に湧き上がる「怒り」による他者への非道(ひど)い行動は 自分以外の人の心を傷つけると同時に、場合によっては社会問題の火種にもなることから 怒った本人にとっても何らプラスになる行為ではありません。
そして、その「怒り」を制御するのが『アンガーマネージメント』という行動規範で、その原理は「思考のコントロール」なのだそうです。
番組では「怒り」の原理などについて解説されていましたが、その中で私が注目し これは(私も含めて)実践すべきと改めた思ったのが「怒りを鎮(しず)める〝6秒ルール〟」でありました。
簡単に言うと、もし「怒り」を感じる場面に遭遇しても 直ぐに怒りを表す行動に移らず、6秒間だけ我慢してみよう。
すると 多くの人の場合、(6秒前に)カッとなった感情が 6秒後には抑制されるとのことなのです。
で この6秒、ただの当てずっぽうの時間では無い ちゃんとしたエビデンス(根拠)があるとのことです。
「怒り」は、人等の動物の脳内にある『大脳辺緑系』なる部位が、いわゆる本能的な感情や行動を起こす(指示する)役割を担っているとのこと。
この部位が刺激されると、人は感情(本能)のままに怒りを感じるそうです。
そのうえで人間は、集団生活(社会生活)を送るようになった中で 感情の制御が求められるようになったことから、理性的な判断(思考)を司(つかさど)る『前頭葉』が発達してきたそうです。
で 人間においては、この2つの部位がそれぞれ作用することで「怒り」から「鎮静」へと行動が良変異するとのことで、そのための〝所要時間〟として「6秒(間)」が要されるそうなのです。
人は『大脳辺緑系』の部位で「この野郎!」などと怒りの感情を覚えると、その情報を『前頭葉』に伝達、これに3~5秒かかるそうです。
それを受けた『前頭葉』は、その感情(怒り)を制御し「そんなに怒りなさんな。」と怒りを抑制(コントロール)するための情報を『大脳辺緑系』に返します。これに1~2秒かかるとのこと。
それら情報の往復には 約6秒を要することから「6秒ルール」をもって(6秒間)怒りを我慢すれば、いずれ その感情も鎮(しず)まってくれるとのことなのです。
それらを踏まえて 社会で起きてしまう事案などを見れば「運転中に追い越されてカッとなった。」とか「相手の言い方に腹が立った。」など、いずれも 怒る者は、我慢する間もなく瞬間的・反射的に怒りを行動に移していることが共通しているところです。
特番は その中で「人が怒るのは当たり前の行動(思考)なので、そのこと自体は抑えることはできません。問題は〝その後〟なのです。」と。
「人(の脳)には「理性」という知的部位があるのだから、6秒間だけ堪(こら)えてみましょう。そうすることで、自分を怒らせた相手の行動を冷静に分析でき その後は冷静な対処ができるものです。」と述べておりました。
よく言う〝瞬間湯沸かし器〟にならないよう、(私も含めて)怒りの感情が湧き起こったら とりあえず6秒 待つ。
そうすることで 一人ひとりが冷静な行動を興(おこ)せたならば、きっと 今の世を賑わす不遜な事件・事故は激減するでありましょう。
こんな厳しい世情だからこそ、冷静のうちに「他愛(思いやり・お互いさま)の精神」で過ごしてゆきたいものであります。
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