7/31 Fri.
◇国(政府)が 自治体独自の〝緊急事態宣言〟を後押し…良策に見える一方で
つい先日まで〝東京問題〟と揶揄(やゆ)されていた「新型コロナウイルス禍」が、ここへきて 東京以外の自治体で多くの陽性感染者が報告されるに至り〝コロナウィルスの黒い傘〟は 今や日本列島全体を覆うこととなってしまいました。
7月31日の感染者数は 多いところ(自治体)で、東京都が463人・大阪府が216人・愛知県が193人・福岡県が170人・沖縄県が71人と、突出する東京都をはじめ まるで日本列島の地勢に沿うように、東西の都市部に 陽性感染者が100~200人に亘り遍在、全国でも 1日に1,500人を数えるなど、まさに看過できない状況となっています。
これを受けて 各自治体においては、国の緊急事態宣言の都道府県版、自治体独自の『緊急事態宣言』を出さざるを得ない状況に至っていることが伝えられています。
(東京都知事)
時節は8月を迎えることとなり、長かった梅雨も明け 本来であれば週末ごとに いわゆる「飲み会」に参加したり、行楽地に足を運んだりと 人の行動は活発化するところでありますが、各自治体の首長は、改めて行動自粛の要請を発信しています。
(広島県知事)
その「宣言」についても 各都道府県によって様々な内容となっています。
ある自治体は 酒類を提供する店の営業時間の短縮を要請、また ある自治体は、近隣の(感染リスクの高い)大都市での飲み会を避けることを要請したりと、地域ごとの感染の特性に応じた要請を行なっていいることが伝えられていました。
これに対して国(政府)は と言えば、諮問機関である「新型コロナウイルス感染症対策分科会」で、新型コロナウィルスの感染状況を「四つの段階」に分けた上で 感染防止策として飲食店への休業要請や緊急事態宣言を都道府県が行なえることを検討するよう政府に求めることで一致したとのこと。
この区分は、国(政府)が 地方自治体が新型コロナウイルス対策に踏み切る際の判断基準として示し、そのこと(判断基準の設定)が 即ち自治体判断基準となり、(コロナ禍に)迅速に対応できるとのものだそうです。
安倍首相は同日 首相官邸で記者団に対し「地方自治体としっかり連携を取り、必要な対応を講じる。」と述べ、分科会の提案を踏まえて対処する意向を強調した。
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国の対応は ここまではイイと思います。コロナウィルスの感染状況を踏まえた(社会活動の)判断基準を設けて 自治体(首長)の判断を後押しする。
しかし、肝心なのは「その後」ではないか、と。もっと言えば、相変わらずの〝政策矛盾〟があるのではないか、と。
陽性感染者が多発する自治体においては、前述のとおり『都道府県版の緊急事態宣言』を発出(はっしゅつ)しなければならない段階になっていると申せます。
そして そこ(宣言)には「営業自粛」が欠かせない要件となり、そのうえで そこには「休業補償」が、やはり欠かせない要件となってきます。
しかしながら 各自治体には、もはや その余力はありません。
あの〝豊かな東京都〟でさえ「コロナ禍第一波」への対応により多額の財政出動を余儀なくされ、令和元年度には 約1兆円あった財政調整基金(自治体の貯金)が、令和2年度には 実に約500億円にまで激減することになってしまいました。
他の自治体も例に及ばず。多くの自治体が「コロナ禍」により 財政的にも逼迫(ひっぱく)していることが伝えられています。
そんな中での『都道府県版の緊急事態宣言』これを発出するということは、再び多くの飲食店などの事業所に対し 営業自粛要請を行なうことになり、そこには 改めての「休業補償」が要されるところであります。
しかし 前述のとおり、自治体の財政は逼迫していることから、そこ(再度の自粛要請)には 国の支援が欠かせないというのは言うまでもない というのは、誰もが思うところです。
ところが、であります。
国においては 専門家会議で「基準」だけは定めたものの、かかる(自治体ごとの)厳しい状況を他所(よそ)に、記者の質問に対しても「経済活動を全面的に縮小させる状況にあるとは考えていません。」と応じており、そこにも 何ともいえない〝温度差〟を禁じ得ないところであります。
その深層心理には「経済をできるだけ回し続け、さらに 休業に伴う補償金の支出を免(まぬか)れよう。」との〝思惑(おもわく)〟が透けて見えます。
それどころか、各地で「旅行先からコロナウィルスを地元に持ち帰った。」とか「旅先でコロナウィルスを移してしまった。」など 大きな弊害を招いている『GoToトラベルキャンペーン』を見直すことをしない など、何というか 一度(ひとたび)出航した船は、海が荒れようが潮目が変わろうが そのまま突き進めというかの操舵ぶりにも 強い懸念が寄せられるところでありましょう。
いわんや 現下のコロナ禍に対する国の対応は、表面的には自治体(国民)の意向に沿(そ)おうとしているものの、そこには(財政支援ナシという)大きな盲点があると言わざるを得ないのです。
コロナ陽性感染者が全国に広がる事態となった今日(こんにち)、各自治体が主体となって 自らのエリアのコロナウィルス禍を収束させるべく取り組みを努めることが求められており、各自治体(首長)においても それぞれに強い自覚をもって事(こと)に臨んでいる姿勢が伝えられています。
それらの状況に鑑み、国においては 総理の言う「地方自治体としっかり連携を取り、必要な対応を講じる。」が〝言っただけのこと〟にならないよう、実質的な対応を強く求める者の一人です。
◇マスク「需給の逼迫(ひっぱく)が解消されたので転売可能に」では なぜ布マスクを配ろうとした?
31日の会見で 加藤厚生労働大臣が「新型コロナウイルスの感染拡大で品薄となっていた マスクや消毒用アルコール製品の転売規制を近く解除する。」と表明したことが報じられ 私の中に「?」マークが点滅しました。
新型コロナウィルスからの感染予防に欠かせない「マスク」は、いわゆる〝コロナ第一波〟の発生に伴い一気に品薄状態が進み、それに伴い 悪徳業者などによる〝高値転売〟が社会問題となりました。
この異常事態に鑑み 政府は「国民生活安定緊急措置法」の政令を改正し、マスクの転売を罰則付きで規制し、現在に至っています(5月には消毒用アルコール製品なども対象に加えた)。
そんな中、この日の閣議後会見で加藤厚労相は、転売規制の解除は「需給の逼迫(ひっぱく)が解消されれば解除すべき性質のものだ。」と説明、そのこと(大臣発言)は「マスクは足りるようになってきた」ことを 所管省の責任者として表明したものと受け止められるところであります。
で、あるとするならば。
つい この間、同じ厚生労働省の「布マスク担当」は 悪評高い「布マスク(アベノマスク)」を、再び配布しようとしていたのは何故(なぜ)か?
しかも(布マスク担当の)誰一人として、布マスクを装着しない中で。
布マスクを 必要とするところ(介護現場など)があると自ら判断して 再び配布しようとした所管省が、その舌の根も乾かぬうちに「マスク需要が逼迫しなくなったから転売規制を解除します。」と表明する。
この一貫性の無い対応には、矛盾以外の何ものも感じることができません。そのトンチンカンな業務ぶりには 半ば呆れるばかりであります。
各自治体が必死になって コロナ禍に立ち向かっている中…何というか、隣りの湯船で 熱湯に浸かって歯をくいしばっている人を尻目に 悠々とぬるま湯に浸かって鼻歌を歌っているかの光景に「ダイジョウブかいな…?」と思わされるばかりであります。