同じ投資額でもリンクする産業資本は量、価値共に全く違う。
ちょっと面白い例として、割高銘柄で構成されたポートフォリオを組んでみた。んで、その内情をグラフにしてみた。それがこれ。
投資先としては高PBR高PER銘柄。主としてIT系をメインに7社で構成。
まず見て頂きたいのはグラフの右側。順調に利益が積み増されている。ルックスルー利益の成長率はここ5年間で3倍にもなった。素晴らしいの一言。これに付きます。しかしながら、成長率は遁減。70%の成長率が今では30%程度に。今後も下がりつづけていくでしょう。
さて、次に見て頂きたいのはグラフの左側。1050万と言う投資額に対して紐付く資本の額は115万円。売上も100万程度、利益に至っては30万円。こんな消費税にも満たない利益が年率30%で成長したとしてもたかが知れているわけです。しかもその利益成長はどんどん落ちていく。行きつく利益額はせいぜい50万程度でしょう。
1000万に対して50万は大して悪くありません。PERで言えば20倍程度なので、まぁ株価が落ちても利益率が変わらなければ50%程度の下落で踏みとどまるでしょう。しかし、利益率が落ちたらどうなるでしょうか?売上100万に対して税引後利益で30万と言う事は、売上営業利益は60%と言う事になります。正直、ドル箱です。ドル箱には競争相手が群がり持続的に牙城を切崩す為に資本が投入され、新たなトレンドや技術も矛先を向けます。事実、こう言うドル箱事業は新興ビジネスに多いです。次の新興ビジネスの餌食の対象になるかもしれません。そうしたらアウトですね。って、これは勝手な私の解釈ですが…。因みに利益もやっぱり年を経るごとに落ちます。こんな感じです。高収益で踏みとどまれるのは大体15%で残りの85%は転げ落ちます。その転げ落ち先も幅広く、過半数以上は10%以下の利益率になります(※過去5年間の統計、税引後営業利益ベース)。
利益率が無くなった時に株価下落の防御壁になるのは資本です。その資本は投資額の10分の1しかない。いざという時本当に死んでしまいます。さらに投資額1000万、年間利益50万であれば回収するのに20年かかります。もうその頃にはドル箱もないでしょう。その頃には、この銘柄群も未来の低PBR低PERになっている可能性があります。
逆に割安銘柄でポートフォリオを固めた場合はどうでしょうか。一例として同額の投下資本を低PER低PBR銘柄に投下し作ったものがこれです。
投下資本にリンクする産業資本は2000万超、利益は300万程度、利益率こそ成長は無いものの安定しています。とはいえ、やっぱりROEが高いのでこれもかなりの確率で減益となるでしょうが、それでもボチボチの利益は期待できます。
このように、同じ投資額でも投資先によっては歴然の差が生まれます。どちらに賭けるかは投資家の判断次第です。が、各投資家はそれぞれ目標とするリターンを持っていると思います。その目標リターンと現状のポートフォリオから得られるリターンのギャップを認識し、そのギャップが如何にして埋められるかを考え、その妥当性を考えるのは非常に有意義な事だと思います。
未来に投資の利益を確定させるのであれば、その株を誰かに売らなければなりません。では、買手が妥当に買い取ってくれるには企業がどんな状態である必要があるのか、どんなPBRどんなPERならば、買手が付くのかをもっと考えるべきではないかと思います。決して楽観視してはいけません。高PBRならば並のPBRに補正して考えなければなりません、PERにしても同じです。ROEだって同じです。成長率も低下します。人間と同じです。いつまでも成長期の企業なんていません。全てが変わった時に付く価格はいくらなのか、どうある必要があるのか、それをもっと考える必要が…って道がそれたのでここらへんにします。
あ、でも、割高株の中には本物のスターもいるかもしれません。