My Home Town(旧風力発電と子育て日記)

観光と風力発電と子育ての日記です。

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風力エネルギー利用シンポジウムの感想

2009-11-27 21:32:56 | 風車日記
昨日今日と東京の科学技術館で開催された「第31回風力エネルギー
利用シンポジウム」について感じたことを思いつくままに。
長文ですので風力発電に興味の無い方は無視してください。

講演の中で最も楽しく聴けたのが、日本ではなくノルウェーの
話だったのは残念です。
ノルウェーはエネルギー資源輸出量が世界で石油が6位、天然ガス
が3位でしかも自国の電力のうち98%を水力発電で賄う、資源に
ものすごく恵まれた国です。

そのノルウェーでさえ、風力発電(特に洋上)を国家プロジェクト
として推進しているという話です。「今まで化石燃料を売って温暖化
の原因を作ってきたから責任がある」という建前と「化石燃料は将来
涸渇する」、「新エネルギー産業を育成して商売にしたい」という本
音の理由があるようですが、それにしてもエネルギー自給率たった
4%の我が国で風力発電が停滞しているという事実と比べるとあまり
も差がありすぎて笑っちゃいます。

「NEDOも経産省も補助率とか補助金なんてしょうもない話ばかりしてい
るが、日本にノルウェーのようなビジョンが無いのはなぜだと思うか?」
というナイスな質問をノルウェーの大使館の方にした、おもしろい
人がいましたが、会場にいた人は皆、同じように感じていたでしょう。

もちろん、その場にいたエネ庁の課長補佐もNEDOの担当も本当はきっと
もっと夢のある仕事がしたいはずだと思います。同情します。

ノルウェー大使館の科学技術参事官のプレゼンの資料は楽しめました。
中身が無いのにパワポのスライドだけ凝っていても仕方ありませんが、
それにしても、エネ庁の課長もNEDOもいつも見たことのあるような味気
ない資料ばかりなのも残念です。きっと忙しくて見栄えのする資料を
作る時間も惜しいのでしょう(皮肉ではありませんよ)が情報発信能力
も今の時代、大切なことだと思います。

まあ、ノルウェー政府は2030年までに温室効果ガス排出量をゼロにする
という目標を打ち出しているのですから、日本と差があるのは当然かも
しれません。洋上風力と水素社会がセットのようですが、国を挙げての
計画ですから実現可能だと信じたいと思います。

一方、我が国は洋上風車もいつになったら建つのでしょうか。
この際、陸上風力は風力事業者にまかせて、電気事業者は思い切って洋上
風車を建ててみたらどうでしょう。東電でも電発でも良いので早い時期に
世の中に洋上風車の可能性を知らしめて欲しいと思います。その際には
是非、オールジャパンでの挑戦ということで国産風車を採用ください。

茨城県神栖にモノパイル洋上風車が建設されました。洋上と言うには
陸に近すぎますが、雷や塩害などについては将来の本格的な洋上風車に
必要なデータの蓄積には役立ちそうです。
ただ、工事の内容を聞く限り収支は相当厳しいと思います。
また、陸上でもほとんど実績が無いと言っていい、富士重工の2M機を
採用しているのもちょっと不安です。地形的に見てもダウンウインド型風
車の利点と言われている、吹き上げ風とは関係なさそうですし。場所柄
日立との関係でもあるのでしょうか。
いずれにせよ東光電気工事のチャレンジ精神には敬意を表したいと思い
ます。富士重にもぜひとも頑張って欲しいですね。

シンポジウム2日目はコンサルや大学などによるアカデミックな内容の
発表が3会場に分かれて同時進行するので、大部分は予稿集で確認する
しかないのですが、個人的に気になった発表について簡単に触れてみた
いと思います。

最近、風車反対の人達が、「風車を製造するのに膨大なエネルギー
が必要なので、風力発電はエネルギー収支がマイナスだ」とか「風車を
建てるのに、樹木を伐採するので二酸化炭素の収支がマイナスだ」と
いうようなデマを流しています。これが、単なる無知によるものなのか、
確信犯なのかはわかりません。

今回、日大の長井さんが2M風車のLCAについての研究を発表しま
した。電源別の排出原単位については電中研の本藤さん(現横浜国大)
の研究が有名だと思いますが、これは随分前の300kw風車での研究なの
で最近の大型風車で改めて評価をしたということです。
今回は富士重工と日本製鋼所の風車での検討となっています。結果が
目に見えている(風車環境負荷が小さい)ので手前味噌になるから、特
にデータを作成していないという話を聞いたことがありますが、CSR
の観点から是非、同じ土俵で全風車メーカが自主的にLCAのデータを
情報開示して欲しいと思います。

また、風力エネルギー研究所の鈴木さんが「風力発電所設置に伴う
森林伐採がCO2削減効果に与える影響(初期検討)」について発表しま
したが、結果はこれも直観的に当然の結果だと思いますが、「風力発電
所開発に伴って森林伐採を行う場合、風力発電にによるCO2削減効果の
低下は1%以内である」とまとめられています。
今後、サイトの条件によって詳しい検討が必要だとは思いますが、基本
的な結果は大きく変わらないことと思います。

ちなみに、東伊豆町と河津町に計画されいる風力発電事業については
施主である東京電力が、伐採する樹木に蓄積されていたCO2や、伐採する
木が将来吸収したであろうCO2まで考慮にいれた、二酸化炭素収支につい
てまじめに検討しています。ヨーロッパで風車を製造するところから
検討しており、「さすが」という感じです。

風力エネルギー利用シンポジウムに参加し始めて、5年目ぐらいになる
と思うのですが、正直言って超文系の私には聞いても内容が理解できな
い研究も多いのですが、大学の関係者やMHI以外の風車メーカーの方など
と情報交換できる機会は他にあまり無いので今回も勉強になりました。