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日本の賃金を歴史から考える

2013年12月25日 | 読書
日本の賃金を歴史から考える
クリエーター情報なし
旬報社


江戸時代の年季奉公に代表される「奉公人型賃金」や、大工や仕事請負人の「職人型賃金」の歴史から始まって、明治以降になって奉公制度が消滅しようやく直接雇うものに賃金が支払われたこと…。

時が過ぎ工業化時代を迎えて労働力不足から正規雇用中心の世の中に移り、さらに時代が変わり日雇い・契約社員、派遣社員、常用社員と労働市場が市場経済化されていく下り…。

どの時代にあっても労働と賃金の歴史を振り返ってみるとまことに興味深いものがあります。
現代の賃金理論を労働組合はどこに求めているのか、正規非正規・企業規模・男女などなど様々な格差問題やグローバルな観点からの賃金論など課題は山積しています。
筆者の巻末コラムを紹介しておきます。

「…賃金はしばしば思想をともなう。
その思想は生産効率の追求かもしれないし、仕事のやり方を変革させる経営改革かもしれない。
あるいは、同一労働同一賃金かもしれない。
これらの思想はそれ自体無謬であったとしても、現実に実現しようとするとき、しばしばあちらを立てればこちらが立たぬという不均衡な正義しか実現できない。
しかし、その不完全さこそがチャンスである。
私は自分の正しさのみを追求するよりも、完全な正義は実現できないという前提に立って多様な考え方を数多く認識することが重要だと考える。
人格と意見は別だが、残念ながら議論に慣れていないと、人はそれを区別して受け入れるのはむずかしい。
自分が正しいという結論は相手の否定に繋がり、人間関係を壊してしまう。
現実に折り合いをつけながら、よりよい答えをみつけていくそういう地図を一枚でも多く手に入れたい」