クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

司馬遼太郎が描いた緒方洪庵

2006年07月14日 | ブンガク部屋
1789年7月14日のフランス革命から約20年後の文化7年(1810)同日、
蘭学者・医者の緒方洪庵(おがたこうあん)が備中(岡山県)で生まれました。
長崎遊学ののち大阪で開業し、適塾(適々斉塾)を開いたのは、
天保9年(1838)、洪庵が29歳のときでした。

適塾の門下から、福沢諭吉、大村益次郎、
橋本左内、大鳥圭介が出たのはよく知られていますね。
嘉永2年(1849)に大阪に種痘館を開き、
文久2年(1862)には幕府奥医師や江戸の西洋医学所頭取に任命されました。
このとき洪庵は大阪から江戸に出てきていたのですが、
翌文久3年6月10日に急死してしまいました。

この緒方洪庵を描いた小説の中で、
一番印象深く残っているのは司馬遼太郎作の『花神』(新潮社刊)です。
この小説の主人公は大村益次郎ですが、
彼の師として登場する緒方洪庵はひときわ異彩を放っています。
適塾の描写に向学心をくすぐられる読者は、おそらく少なくはないでしょう。
上・中・下と3冊出ているこの小説の中で、
やはり緒方洪庵の存在感の濃い「上」が一番好きです。

実を言うと、ぼくは『花神』をリサイクル本で読みました。
市外の図書館で『花神』を見付けたとき、
「上」をペラペラ捲っただけで、すぐに元の場所に戻したのですが、
その帰り道の途中で急に欲しくなったのを覚えています。

多少の迷いを振り切り、急いで図書館へ戻りました。
幸い『花神』はまだリサイクル本コーナーにありました。
自宅に近い距離からのトンボ帰りだったので、
汗は吹き出し、息は切れ、
いま思い返せば近くの書店で買った方が早かったと思います。
もしあのときタイムを計っていたら、
図書館までの最速タイムが出ていたことでしょう。
その労力(?)の甲斐あって、『花神』はとても読み応えのある小説でした。

さて、緒方洪庵と同じ7月14日に生まれた人物に、
次の名前が挙げられます。
ベルイマン(映画監督)里見(作家)、久米宏(ニュースキャスター)、
水谷豊(テレビ俳優)、斎藤慶子(タレント)。
『誕生日事典』によると、この日生まれの人は、
“説得力に富んだストーリーテラー”とのことです。

参照文献
朝尾直弘・宇野俊一・田中琢編『新版日本史辞典』角川書店
ゲイリー・ゴールドシュナイダー ユースト・エルファーズ著/
『誕生日事典』角川書店

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