クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

埼玉に“たたりめ堂”が現れた? ―さいたま文学館―

2023年09月09日 | ブンガク部屋
埼玉県桶川市の“さいたま文学館”で、「番外編 たたりめ堂」が開催されている。
「銭天堂」の悪役でおなじみの“よどみ”の店である。
首都圏初の番外編らしい(令和5年9月24日までの開催)。

たたりめ堂では、代金として支払うのは“悪意”。
そこに入り込んだ客は自らの“悪意”を払って駄菓子を買う。

はっきり言って好みである。
なぜなら、悪意はとても人間くさいから。
欲望、妬み、恨み、執着と、駄菓子をとおしてその人の人間性があらわれる。
最初は悪意しかなかったが、途中で芽生えた善意と葛藤があればなお良し。
その心の有り様を描くのが「文学」だと思う。

個人的には、たたりめ堂の“眠れませんべい”にインパクトを覚えた。
こんなのがあったら買ってみたいかもしれない。

はて、支払わなければならぬ悪意とはなんだろう。
自分も人間。
悪意がないとは言えぬ。
紙に書いたらいくつ出てくるだろう。
よどみに気に入られるものはあるだろうか。

さいたま文学館で展示されている“たたりめ堂”へ行き、自分の心を覗いてみるといい。
“知らなかった自分”と出会えるかもしれない。
そこから “文学”が発生し、形にしてさいたま文学館へ投稿すれば、
それは同館が得るもう一つの「報酬」となるだろう。

ところで、アンチ“たたりめ堂”の方は安心されたし。
紅子が経営する“銭天堂”とその商品も展示されている。
ホーンテッドアイスやドクターラムネキットとか……。
たたり堂と違ってほんわかムードである。

不思議な力を秘めた駄菓子をどう使うかは買ったその人次第。
幸運が訪れることもあれば、痛い目にあう可能性もゼロではない。
買った商品と使い方次第でその後が分岐するという意味で、
黒服のセールスマンを彷彿とさせる。

結局のところ、人の欲は自身を成長させもすれば、破滅へも導く。
欲はなかなか捨てられぬもの。
欲を出しすぎるから現実世界でも痛い目にあう。
何事においても、ほどほどがちょうどいい。
と、わかっているのに欲が出る。
知っていても欲望が背中を押してくる。
それが“人間”というものだろう。


たたりめ堂内(さいたま文学館)


眠れませんべい(同上)


銭天堂の厨房(同上)
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