クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

7月に降る江戸の雪 (慶長20年)

2006年07月09日 | 奇談・昔語りの部屋
『今日は何の日』(PHP研究所刊)によると、
慶長20年(1615)7月9日(陰暦6月1日)に、
江戸で雪が降ったということです。
いわば夏の雪という天変地異ですね。
同書によると、この7月の雪に驚いた人々は、
本郷に富士神社を建立し、富士山の神を祀ったということです。

季節はずれの雪と、富士信仰という意味で、
埼玉県行田市にも同じような話が伝わっています。
以前この部屋で紹介しましたので、そのときの記事を引用したいと思います。
(カテゴリ「奇談・昔語り」内の記事「六月の雪 -前玉神社と浅間神社(行田市)-」)

 埼玉浅間塚古墳(円墳)には、二つの神社が鎮座しています。
 墳長は「前玉(さきたま)神社」で、
 中腹にあるのが「浅間神社」です。
 『延喜式』の神名帳には「武蔵国埼玉郡・前玉神社二社」と記され、
 その読み方に「サキタマ」「サイタマ」の2通りがあることがわかります。
 すなわち、これが現在の「埼玉県」の語源と言われています。

 墳頂の社「前玉神社」の祭神は、前玉彦命・前玉姫命です。
 いつ祀られたのかは不明ですが、参拝するとき、
 埼玉古墳群の方向に祈願するよう社が建立されていることから、
 古墳群の守護神として祀られたとも考えられています。

 中腹の社「浅間神社」の祭神は木花開耶花命です。
 この神社はもともと忍城中に鎮座していましたが、
 近世初頭に現在の場所に移し、円墳が富士山に見立てられると、
 浅間信仰親交が盛んになったといいます。
 『新編武蔵風土記稿』によれば、ここには不思議な言い伝えが残っています。
 すなわち、成田氏が忍(埼玉県行田市)を治めていた時代のことです。
 「富士の行者」が現在の浅間神社にやってくると、こう言いました。
 「私の命が果てたとき、当所にだけ雪を降らせるであろう」
 行者は息をひきとりました。
 すると、行者の亡くなった6月1日に、本当に雪が降ったそうです。
 これを知った忍城主成田下総守氏長は、
 家人の新井新左衛門に命じて塚を築くと、
 浅間社を現在の場所に移したと言います。
 この伝承から埼玉浅間塚古墳は長い間、
 「塚」なのか「古墳」なのかはっきりしなかったのですが、
 平成9年と平成10年の調査で古墳と確認されました。

 『埼玉県の地名』によると、
 現在行われている祭祀は次の通りです。
 例大祭4月15日 山開き6月30日、7月1日
 初山祭7月14日、15日 秋祭10月15日 星祭12月冬至
 なお、古墳の中腹には、
 『万葉集』の古歌が刻まれた一対の石灯籠があります。
 また、境内の「石鳥居」と「槙の樹」は、
 平成13年3月に行田市の文化財に指定されています。

さて、7月9日に生まれた人物には次の名前が挙げられます。
トム・ハンクス(俳優)、浅野ゆう子(タレント)、朝比奈隆(指揮者)、
清水幾太郎(社会学者)、稲垣潤一(歌手)、
草剪剛(タレント)、細野晴臣(ミュージシャン)。
逆に、この日に没した人物に森鴎外(作家)、上田敏(詩人)がいます。
『誕生日事典』によると、この日に生まれた人物は、
“自然界の神秘を解きあかす人”とのことです

参照文献
大井荘次著『行田歴史散歩』大井立夫設計工房
雑学研究会編『今日は何の日』PHP研究所
ゲイリー・ゴールドシュナイダー ユースト・エルファーズ著/
『誕生日事典』角川書店

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1 コメント

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Unknown (はに丸)
2017-07-28 01:57:57
サキタマヒメは大国主命の5代目位の孫にあたります。それでさきたま古墳群は出雲系とされていました。だが、稲荷山古墳の鉄剣銘文からオオヒコノミコトが先祖であることが判明しました。
稲荷山古墳の東には、若王子古墳群があり巨大古墳が聳えていたといいます。昭和の初めに全て崩されてしまいました。鎧兜や刀剣などが出土したらしいですが、土取り人夫が手で折ったりして片付けてしまったそうです。
さきたま古墳群でも稲荷山古墳の方墳部分が崩されました。不思議なのは愛宕山古墳で崩そうとすると、近所の人夫の家が火事になったといいます。崩す相談するだけでも火事が出るので手がつかんなかったと聴いたことがあります。因みに、その崩した人夫をしていたのは、私の叔父です。奇妙な話しですね。何かに古墳が守られているのでしょうか?そういえば、丸墓山を調査に来た学者が古墳から転がり落ちて医者通いになったと書いてました。
私が一番良い気を感じるのは稲荷山古墳の上です。仙人の研究から気功も少しやってたので、気も感じられます。丸墓山はだめですね。
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