クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

“牛重”の地には牛が重なっているのか?

2014年08月06日 | 地名の部屋
牛重(うしがさね)という地名は奇妙だと思う。
その字をそのまま捉えると、
牛が重なっている絵を想像する。

のどかな光景だ。
一番下の牛は苦しそうでもなく、
何匹も縦に重なってのんびり鳴いている。
想像するのはそんな絵だ。

牛重は旧騎西町にある(現加須市)。
騎西城址から東へ行ったところの地域で、
実際に足を運んでも、牛を見ることはできない。
牛を飼っている家があるかもしれないが、
重なって鳴いていることはないだろう。

一体なぜ「牛重」という地名が付いたのだろうか。
昔は牛が仲良く重なっていたのだろうか。

韮塚一三郎氏の地名誌を紐解くと、
「ウシガサネ」の“サネ”が、
“サナ”を転じたものであるとするならば、
製鉄にちなむ地名ではないかと記している。
その傍証として、『武蔵国郡村誌』の「地味水田は赤色」の記述を引いている。
実際のところは、「不明」というのが現状だろう。

ちなみに、牛重は「中宿」という宿場があったとされ、
板碑も多く現存していることから、古くから人の住む場所だった。
騎西城の大久保時代には、足軽町が形成されていたようだ。
その地域の住人の中に、「製鉄」と関係の深い者がいたのだろうか。
牛重が製鉄にちなむ地名だとすれば、
城と何らかの関係性が疑われるかもしれない。

ちなみに、同氏は“ウチジゲ”が転じたものともう一つの説も載せている。
“ジゲ”には、自分たちの集落や地方を指す意味があるという。

いずれにせよ、詳細は不明であり、
別の言い方をすれば、もっとほかの解釈も可能ということだ。
あなたは「牛重」をどう解釈するだろうか。
ぼくは「牛重」と表記した人のセンスの素晴らしさにまず喝采を送りたい。


埼玉県加須市
コメント
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