名古屋は立ち飲み不毛の地だとばかり思っていた。
名駅周辺に決定的な仕事をする立ち飲み屋をついぞ見かけたことがなかったからである(最近、「立呑み魚椿」にはまっているけれど)。
しかしながら、今池に宿をとり、ちょっと探索すると、なんともいい感じの立ち飲み屋を発見した。
こじんまりとしたお店である。
店内に入ってみると、狭さが際立つ。
カウンターだけの立ち飲み屋さん。すでの5、6人の客が思い思いに酒を飲んでいる。
恐らく10人も入れば、いっぱいになるだろうという、そんなお店。
切り盛りするのはなんと女性だった。
だが、厨房の小さなスペースを見ていたら、思わず納得した。
狭いなりに機能的な道具の配置を行っているからである。
「生ビール」。
そして、「ポテトサラダ」。
そんな注文にわたしより若干年が上のように見える女性はてきぱきとわたしの注文にこたえてくれる。
ビールはスーパードライ。値段は350円。(でも、現在は300円で売っているらしい)
ポテサラはなんと100円だ。
しかも、そのボリュームもすごい。多分、200gはあると思う。さすが、手作り、これこそ立ち飲み屋の醍醐味である。
そして、そのお味も、さすがにうまい。
じゃがいもたっぷり、まさに手作り。最高だ。
だが、なんとなく落ち着けないのは何故だろう。
アウェイ感?一見の気おくれ?強烈な常連さんのせい?
自分にもよく分からない。
いや、多分今しがた起きた心引き裂かれるような出来事のせいだろうな。
「今日の煮物」と書かれたメニューを頼む。
250円。
今日のというのは、日替わりで煮物が出てくるんだろう。これもすごいこと。
焼き鳥の立ち飲み屋が多い中、このような一品料理で勝負する立ち飲み屋は貴重だ。
そして、出てきた「今日の煮物」はちょっと甘い「肉じゃが」。
いいじゃない。これ。
かなりいいじゃない。
しかも、ちょっと甘いというのが、実に名古屋らしい。
なんとなく、なんとなくだけど、店を出たくなった。
お店が悪いんじゃない。
自分の気持ちの問題だ。
会計してもらうと450円。
内税というのも恐れ入る。
店を出て気が付いた。
450円の会計はずいぶんと安すぎないか?
もしかすると「今日の煮物」の値段が含まれていないかも。
そう、ちょうど250円分。
最近、同店は250円立ち飲みとして売り込み中。
次回に訪問した暁には、必ず250円をお返しいたします。
ごきげんよう。さようなら。
まったく、早いもんだね。
来週、タイミングがあったら、一杯やりましょう。