神田駅を出て東京駅へ向かう。
『立ち飲みラリー山手線編』は立ち飲み激戦区の神田をスペイン小皿料理のバルでやり過ごし、次なる駅に向かったのだった。
かつて、神田駅は『立ち飲みラリー銀座線編』で通り過ぎており、なんとなく神田の立ち飲み屋を制覇していると思っていたが、実際は『かどころ』と『焼き鳥伊勢』にはまだ足を運んでいない。
だが、何故かオレは先を急いでいた。このところの2日間で4軒もの店を、この神田で回ってしまったこともあろう。少し神田から離れたいという気持ちがオレにはあったのかもしれない。
そんなわけで東京駅へと向かうのだが、どのルートを行こうか、非常に悩んだ。つまり、山手線の外側か内側かという問題である。
かつて、神田で働いていた時分、よく大手町まで歩いたことがあったが、立ち飲み屋を見たことは一度もなかった。それに対して、山手線の外側を行くルートはゴミゴミしてまだ立ち飲み屋を発見する確率が高いように思えた。
もっとも、散歩コースとして面白いのは断然江戸城側の山手線内側だし、そもそも江戸で最初に立ち飲み屋を始めた豊島屋は神田鎌倉河岸にあったといわれ、そのルートを通らずして、山手線編はあり得ない、とも思ったが、神田駅を降りてオレはおもむろに南口を出て、南下していくルートをとったのである。
神田駅南口近辺はまだ雑然とした飲食店が軒を連ねるが、やがて店も減り、それに連れて人通りも減ってくると街自体も急激にその姿を変えたのだ。
オフィス街なのである。
だが、大手町のそれとは比べものにならないほど、閑散としている。期待を寄せて山手線内側を選んだ思惑は脆くも崩れ去ったのだ。
オレは少し歩く足を速めて、東京駅へと歩いたのである。
日本橋川は昨晩の雨で褐色の濁った水がその流れを早くしていた。もうここまで来ると、八重洲の飲み屋街を目指すばかりである。
かつて丸の内の新東京ビルディングにテナントされた『赤垣屋』に入って落胆したことがある。なんばの名店も丸の内に来ると、かくも上品になってしまうものなのかと。
立ち飲み屋を探すなら断然八重洲側である。
そう思いながら、八重洲の盛り場に足を踏み入れた瞬間、いともたやすく、立ち飲み屋を発見した。『立ち飲み処呑うてんき』である。
ドアは立ち飲み屋らしからぬ木製の扉。まるで民家のようであり、まるで田舎のスナックだ。
多少の入りづらさはあるが、これはさしたる問題ではない。お客はひっきりなしに訪れ、店に吸い込まれていくからだ。
その扉の脇には『北町奉行所前』と書かれた木の板が立てかけられている。そう、この辺りは江戸幕府時代に奉行所が置かれていた場所。そして、北町といえば、遠山の金さんが活躍した奉行所として有名である。
中に入ってみる。中は案外広く、15坪ほどはあるだろうか。そこに長テーブルが6~7均等に配置されている。厨房はその部屋の隣にあって立ち飲みスペースと完全に分離されている。
オレは長テーブルにはつかず、入口手前にある壁際のカウンターに陣取った。時刻は6時を過ぎたばかりだったが、店はほぼ満員である。
客は皆、スーツを着ており、まずサラリーマンと見て間違いない。
中には2人組の女性客もいるが大半は男性客だ。
まずは生ビールからもらった。
中ジョッキが僅か400円。東京駅から徒歩数分のこの場所でこの値段のスーパードライが飲めるとはまさに驚きだ。
ビールのつまみには呑うてんき名物とメニューに称されている『ハムカツ』をいただいた。4枚もついていながら僅か300円の『ハムカツ』があつあつでうまい!
そのアツアツのハムカツをかじりながら、ビールをあおり、正面中央にあるテレビに目を向けた。
夏の高校野球4日目の第四試合がまだ続いている。さすがにこの時間になると甲子園球場には灯がともり、選手のヘルメットはカクテル光線に反射している。
一人客もグループ客もテレビの熱戦に釘付けだ。
店の雰囲気を盛り上げているのは、威勢のよい声で給仕するおじさん。頭にバンダナを巻いた濁声のおじさんが店内に活気を与えている。
店のシステムはキャッシュオンデリバリー。テーブルにお金を置いておくと、店員さんが飲食物と引き替えにお金をとっていく。
店内での飲食は2時間半が目安のようだ。厳密にそうした線引きがあるのか分からないが、店内にはそう貼り紙がされている。
オレは、酎ハイ(300円)と冷や奴(200円)を頼んだ。隣で一人酒をする50代と思われる男性は茄子の漬け物をつついている。実に居心地のいい立ち飲み屋だ。メニューが豊富で、そのいずれも驚くほどに安い。そのうえ、味も悪くないときていれば、お客がひっきりなしに訪れるのも頷ける。
後日、同店を怪鳥と共に再訪したが、やはり2度目の来店も初来店と変わらぬ気持ちのいいものであった。だが、ホッピーは残念ながら2冷ではあったが…。
締めに「焼きそば」を食べた。僅か400円。ボリュームあり!こうした食事も充実しているのが何より嬉しいものである。
『立ち飲みラリー山手線編』は立ち飲み激戦区の神田をスペイン小皿料理のバルでやり過ごし、次なる駅に向かったのだった。
かつて、神田駅は『立ち飲みラリー銀座線編』で通り過ぎており、なんとなく神田の立ち飲み屋を制覇していると思っていたが、実際は『かどころ』と『焼き鳥伊勢』にはまだ足を運んでいない。
だが、何故かオレは先を急いでいた。このところの2日間で4軒もの店を、この神田で回ってしまったこともあろう。少し神田から離れたいという気持ちがオレにはあったのかもしれない。
そんなわけで東京駅へと向かうのだが、どのルートを行こうか、非常に悩んだ。つまり、山手線の外側か内側かという問題である。
かつて、神田で働いていた時分、よく大手町まで歩いたことがあったが、立ち飲み屋を見たことは一度もなかった。それに対して、山手線の外側を行くルートはゴミゴミしてまだ立ち飲み屋を発見する確率が高いように思えた。
もっとも、散歩コースとして面白いのは断然江戸城側の山手線内側だし、そもそも江戸で最初に立ち飲み屋を始めた豊島屋は神田鎌倉河岸にあったといわれ、そのルートを通らずして、山手線編はあり得ない、とも思ったが、神田駅を降りてオレはおもむろに南口を出て、南下していくルートをとったのである。
神田駅南口近辺はまだ雑然とした飲食店が軒を連ねるが、やがて店も減り、それに連れて人通りも減ってくると街自体も急激にその姿を変えたのだ。
オフィス街なのである。
だが、大手町のそれとは比べものにならないほど、閑散としている。期待を寄せて山手線内側を選んだ思惑は脆くも崩れ去ったのだ。
オレは少し歩く足を速めて、東京駅へと歩いたのである。
日本橋川は昨晩の雨で褐色の濁った水がその流れを早くしていた。もうここまで来ると、八重洲の飲み屋街を目指すばかりである。
かつて丸の内の新東京ビルディングにテナントされた『赤垣屋』に入って落胆したことがある。なんばの名店も丸の内に来ると、かくも上品になってしまうものなのかと。
立ち飲み屋を探すなら断然八重洲側である。
そう思いながら、八重洲の盛り場に足を踏み入れた瞬間、いともたやすく、立ち飲み屋を発見した。『立ち飲み処呑うてんき』である。
ドアは立ち飲み屋らしからぬ木製の扉。まるで民家のようであり、まるで田舎のスナックだ。
多少の入りづらさはあるが、これはさしたる問題ではない。お客はひっきりなしに訪れ、店に吸い込まれていくからだ。
その扉の脇には『北町奉行所前』と書かれた木の板が立てかけられている。そう、この辺りは江戸幕府時代に奉行所が置かれていた場所。そして、北町といえば、遠山の金さんが活躍した奉行所として有名である。
中に入ってみる。中は案外広く、15坪ほどはあるだろうか。そこに長テーブルが6~7均等に配置されている。厨房はその部屋の隣にあって立ち飲みスペースと完全に分離されている。
オレは長テーブルにはつかず、入口手前にある壁際のカウンターに陣取った。時刻は6時を過ぎたばかりだったが、店はほぼ満員である。
客は皆、スーツを着ており、まずサラリーマンと見て間違いない。
中には2人組の女性客もいるが大半は男性客だ。
まずは生ビールからもらった。
中ジョッキが僅か400円。東京駅から徒歩数分のこの場所でこの値段のスーパードライが飲めるとはまさに驚きだ。
ビールのつまみには呑うてんき名物とメニューに称されている『ハムカツ』をいただいた。4枚もついていながら僅か300円の『ハムカツ』があつあつでうまい!
そのアツアツのハムカツをかじりながら、ビールをあおり、正面中央にあるテレビに目を向けた。
夏の高校野球4日目の第四試合がまだ続いている。さすがにこの時間になると甲子園球場には灯がともり、選手のヘルメットはカクテル光線に反射している。
一人客もグループ客もテレビの熱戦に釘付けだ。
店の雰囲気を盛り上げているのは、威勢のよい声で給仕するおじさん。頭にバンダナを巻いた濁声のおじさんが店内に活気を与えている。
店のシステムはキャッシュオンデリバリー。テーブルにお金を置いておくと、店員さんが飲食物と引き替えにお金をとっていく。
店内での飲食は2時間半が目安のようだ。厳密にそうした線引きがあるのか分からないが、店内にはそう貼り紙がされている。
オレは、酎ハイ(300円)と冷や奴(200円)を頼んだ。隣で一人酒をする50代と思われる男性は茄子の漬け物をつついている。実に居心地のいい立ち飲み屋だ。メニューが豊富で、そのいずれも驚くほどに安い。そのうえ、味も悪くないときていれば、お客がひっきりなしに訪れるのも頷ける。
後日、同店を怪鳥と共に再訪したが、やはり2度目の来店も初来店と変わらぬ気持ちのいいものであった。だが、ホッピーは残念ながら2冷ではあったが…。
締めに「焼きそば」を食べた。僅か400円。ボリュームあり!こうした食事も充実しているのが何より嬉しいものである。
>ここまで来ましたね。
いやいや、怪鳥と行ったのは9月の上旬。ここで書いているのまだ8月の上旬なんですよ。
まだまだ、リアルに追いつくのは先のようです。
>最近歳のせいか、足腰が弱くなってきて立ち呑みがきつくなってきたねえ(笑)。
頼むゼ!怪鳥!
昨夜も立って飲んで来ましたゼ!
しかし、そうもしなければ、立ち飲み屋制覇の野望は果たせないですよね。
>次回帰国した際の予定地はひとまず、飯田橋・九段下、四谷、都電沿線・・という感じですかね。もしくは、もうちょい広めに設定してフィールドワークか。
いいですねぇ。
四谷、九段はわたしも行ってみたいです。立ち飲み屋はいっぱいあるのでしょうか。
是非、若旦那さんと都電を巡りたいです。しかし、1日十軒は完全にへべれけです。グロッキー(死語)ですよ。
1~2軒で勘弁してください。
「なごみ」を回るのもいいですね。
そして、その後「荒とよ」に流れる。
「荒とよ」はいいですよ~。
08年の「居酒屋アワード」の最有力候補です。
立ち飲みラリーの京浜東北線編「上中里」駅で頓挫した際に読者の方から教えて頂いたのが「荒とよ」です。立ち飲みではありませんでしたが、素晴らしい角打ちでした。
通いたい店なのですが、まだ1度しか行けていません。
こないだ帰国した際は、毎日がそうでした。時差ボケの治す暇がないほど、予定が詰まっておりました。
次回帰国した際の予定地はひとまず、飯田橋・九段下、四谷、都電沿線・・という感じですかね。もしくは、もうちょい広めに設定してフィールドワークか。
私の立ち飲みは非常にせっかちで(行儀が悪く)、一日で二ケタの軒数を訪問する場合がございます。そちらにお連れするわけには参りませんので、熊猫刑事様とは都電を回ってみたいものです。
そうそう、以前申し上げた王子の角打ちは「荒とよ」のことでした。過去の日記を読まずに申し上げてしまい、申し訳ありませんでした。しかしもう一軒、都電で角打ちを見つけてあるのでご安心くださいませ(笑)
是非、帰国されたときには一献行きたいですね~。
しかし、こうしている間も町の角打ちはどんどんなくなっているかもしれません。
急がねば!
そう思うこの頃です。
次に帰国した際は、なんとか行ければいいなぁと思っていますが、いかんせん新規開拓予定地が多すぎて難しいかもしれません。