週1回の斉藤美奈子さんの『本音のコラム』(東京新聞・朝刊)は愉しみになった。単なる辛口な現代批評でなく、見過ごせない問題の端緒、あるいは見えない根っこのところを、明快に抉りだしてくれる。時には彼女なりの鋭い感性で、私の知らない世間の動きを示し、社会の片隅にいる老人の眼を見開かさせてくれる。
まず、いわゆるフェニミズムの視点から、男社会のほころび・駄目なところをあぶり出す。ビシッと遠慮なく、男の痛いところを斬られる感覚になる。ただし、女性ならではの偏見、嫌みに陥らない、ギリギリのところで論を張っている。その独特の媚びをうらない、やわらかな強靭さが特長だ。
今回は、京都の橘高校の吹奏楽部という殆どが女子高校生のマーチング・ブラスバンドを紹介してくれたことが嬉しい。彼女たちの驚異的なパフォーマンスをYouTubeで見て、まさしく男子顔負けのフィジカルの凄さに舌を巻いた。
多少経験あるのだが、サックスやクラリネットを吹くにはかなりの肺活量と、リードを響かせる唇の筋肉が強くなければならない。橘学園の彼女らは楽器を演奏することに加えて、ダンスやら隊列のパフォーマンスも同時に行なう。それも大人数のバンド編成だから、演奏とフィジカルの動きをピタッとシンクロさせるのは至難の技だ。それを30分(※追記)ほども持続させるなんて、弛まぬ練習の繰りかえしが必要となる。
バンド自体、これだけの大人数を維持しているのは、優れた指導者・先輩たち、伝統など恵まれた環境があることがわかる。世界中に橘高校のファンはいるらしいが、いちど彼らの演奏を観たら、さもありなんと思う。
そうそう、彼女のコラムのお題は、「女子に無理?」だった。東京医大の女子受験生の問題をうけて、巷では「女性外科医」が論争の的になっているとのこと。
長時間を要する外科手術は女性には無理だ。と、女医排斥論が囁かれているというのだ。斉藤美奈子さんは、「あまりに古典的。男女に向き不向きがあるんだってさ。大正時代の議論みたい」と嘆いている。
男女の身体的な差は縮まり、総合的な能力、適正を考えれば、いまや女性に軍配を挙げざるを得ないのではないか。彼女はその実例として、橘高校の吹奏楽部それもJK中心のハイパフォーマンスを紹介したのだ。
映像を観て、なるほどと合点がいった。これだけの力強い演奏を、マーチング・ダンスと組みあわせて長時間続ける。これはもう、並大抵の努力と根性では達成できないだろう。
まさか男子学生は「俺には無理だ」と、怖気づいたんじゃないのか・・。
昔はブラスバンド部といえば、5対2ぐらいで男子中心の部活動であった。女子はフルートやクラリネットを担当し、サックスやチューバを吹くのはほとんどいなかった。JK主体のブラスバンドを扱った映画があったみたいだが、何やってんだDKは?
一度に違うことを同時にこなすのは女性脳が男性よりも優れているという。集中力が求められる外科医だから、体力のある男性が適任というのでは、いささかその論拠は乏しいのではないか。