小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

アゲハ蝶のこと

2017年01月24日 | 日記

 

 

先日、みすず書房の読者担当者からメールをいただいた。出版の広告案内の類ではなく、個人あてのメールは嬉しく、ちょっと誇らしい。実を申せば、質問したことの回答をご親切にも頂戴した次第、正直なところ誇るべしとはいえない。

忙しいなかを律儀に応えていただいた。その丁寧な対応は、老身に沁みるほどに実感し有難い。出版社によっては、誤植なぞを報告してもなんらレスポンスしない会社もあると聞く。それに較べれば、みすず書房さんの顧客を大切にする姿勢は、この世智辛い時代にはめずらしく奇特といえようか。

何を私が質問したかというと、アゲハ蝶についてである。

月に一回ほど、みすず書房さんから「ニュースレター」と称するメルマガを送ってもらっている。近刊・新刊書の紹介やイベントその他の案内などが主な内容。最後の編集諸子によるエッセイ「菊坂便り」は、書き手がその都度変わり、テーマも様々なので、それも読み手の興趣をそそる。個人的な日常風エッセイもあれば、今日的な出版事情、歴史・文化の話題など、硬軟とり混ざって面白く飽きさせない。

その時、目にとまった「菊坂便り」は、アゲハ蝶の飼育についてであった。

どうやらご自宅で多種の蝶を飼育し、成長過程を見守り、羽化そして飛翔するまでを馥郁として愉しむ様子が書かれている。室温をたもち、餌やりにも気をつかう。その辺のマニアックな感じが実にいい。温暖化のせいか、アサギマダラという美しい蝶が、昨今台湾あたりから渡来しているとのこと。そのアサギマダラを、その方は飼育しているようだ。

▲アサギマダラ 実際に見た確信はない。

亜熱帯の昆虫を育てるには、細心の配慮が必要だろう。その苦心を語る筆致はさりげないが、わが少年時代の昆虫を育てたときの好奇心旺盛の頃が甦った。幼少の頃、昆虫観察は多くの人が経験しただろうし、少なくともその面白さは知っているはず。

そうなのだ、子ども心にも生命のメカニズムの神秘を自分の目で見て感動する。そんな歓びを想いかえしたのだった。

その方は、アサギマダラだけでなく、沖縄のシークワーサーやクスノキなどを室内に植え、アオスジアゲハやクロアゲハなども飼育されているらしい。南国生まれらしい色鮮やかなアサギマダラ、その卵から成虫へと育てること。幼少の頃、誰もが経験した昆虫観察は、生命のメカニズムの不思議を自分で見て体験する歓びだった。

私としては、アゲハ蝶の羽化を見るためには、どんなことをすれば良いかということ。もちろん、ネットで調べればわかることであるが、その質問にかこつけて、エッセイを読んだ感動をつたえ、直截にアゲハチョウの飼育ノウハウの教えを乞うためであった。(※追記)

 ▲わが家の山椒の木に毎年のように卵を産むナミアゲハ(?)の幼虫。3,4匹見つかるが、いつの間にかいなくなる。鳥に食べられてしまう。

 

 かつてわが家のベランダにあった檸檬の木に、蝶の幼虫が何匹も蠢いていたことがあった。そのレモンの木は枯れてしまったが、3年ほど前から、庭にある山椒の木に同じ幼虫を見かけるようになった。虫を毛嫌いする家人も、どういう訳か興味をしめした。ときおりT字状のオレンジの舌をだしつつ、山椒の葉を食べている様子が可愛い。このまま成長してくれたらと願ってきたが、素人の浅はかな了見である。たっぷり太った芋虫になったところで、鳥に食べられてしまう。ということで、この辺の事情を書き、アゲハチョウの成長を最後まで見届けるまでの「いろは」を質問したのだった。

四の五を書くより、その方の丁寧なるご返事の一部を紹介したい。(了解をとってはいないが、誰もが参考にしてもおかしくない、耳よりの知識だと思うので悪しからず)

 

飼育ケースは基本1つですが、成長過程の異なるものを収容する場合は予備のケースで飼育します。

ナミアゲハやクロアゲハなどの食樹はミカン科なので、わが家で植えているものではシークワーサーのほかサンショウや

ヒレザンショウ(イワザンショウ)がこれに該当します。サンショウの葉ではモンシロチョウは育ちませんので、ごらんになったのはおそらくナミアゲハではないでしょうか。

アオスジアゲハの食樹はクスノキなので、クスノキをプランターで育てています。

> やはり、飼育ケースで室内で飼うのがベストなんでしょうか?

天敵が多いので飼育ケースが必要になります。

室外においてもいいのですが、小さな天敵(寄生バエ、寄生バチ、クモなど)が入り込まないような工夫が必要です。また室内のほうが観察しやすいと思います。


今年の夏、わが家の山椒の木に、ナミアゲハが卵を産み、幼虫が育ったら、これはもう室内飼育しかない。この場合、山椒に代わる餌を何にするか、どう調達するか。なんかワクワクしてきた。
東京はいま、寒波が来ている。それでも、梅は咲きはじめているし、サボテンに花芽も出はじめている。
 
 
花も虫もこれから息づいてくる。そんな生命の愛おしさを知ることが大切。国家とか政治のメカニズムよりも、生命のメカニズムが原点ではないかと・・。
そんな感慨を書いてみた。みすず書房さんに感謝する次第である。
 


     

(※追記)幼虫から羽化する間の「蛹(さなぎ)」の状態が肝心であろう。蛹になることで、外界を防御し越冬するのだから・・・。いかに何事もなく「蛹」になってもらうことを目指す、それが飼育の第一歩かもしれない。そういえば、何かのドキュメントか、ものの本で、昆虫は「蛹」の状態のときに、ホルモンみたいな化学物質を分泌するらしい。で、液体が固体になるような激しい変異で、まったく別の生物に生まれ変わると知ったのだが・・。また、未来の食糧不足を補うのは昆虫だという説もあるらしく、彼らの神秘性なるものに畏みたいものです。

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