小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

夏の明るい寂寞かな

2023年08月15日 | エッセイ・コラム
枇杷の実は熟して百合の花は既に散り、昼も蚊の鳴く植込みの蔭には、七度も色を変えるという盛りの長い紫陽花の花さえ早や萎れてしまった。梅雨が過ぎて盆芝居の興行も千秋楽に近づくと誰も彼も避暑に行く。郷里へ帰る。そして、炎暑の明るい寂寞が都会を占領する。 永井荷風の随筆集(岩波文庫)にある『夏の町』の冒頭の書き出しである。荷風がほぼ5年間の洋行(アメリカ、フランス)から帰って2年後に書いた随筆だ(発表は . . . 本文を読む