小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

竹下節子さんのトークを聞きに

2023年11月10日 | 日記
何年ぶりだろうか、竹下さんにお会いできたのは。ほんとにコロナ禍は長く、大きな災いをもたらしたと思う。今年の3月か4月頃にも来日して講演会をなさったはずだが、入院中の身だったので行けなかったのは無念。今回は2回、講演というより軽いトークの会が開催された。来春に出版される本の内容にそった話になるらしい。初回のトークの日は、訪問診療の日で行けず、2回目の日仏会館の方に出席した。 竹下さんの集いは、これ . . . 本文を読む

多摩永山のブックカフェを訪ねて

2023年11月06日 | 日記
今年のはじめ、神楽坂にデザイン事務所をもつ友人を訪ねた。きけば年内に多摩市に移り住み、仕事を減らしながらブックカフェをつくるとのこと。高齢化にそなえて、彼なりの考えや目算があるのだろう。そういえば、お互いに齢を喰って慌てふためくことのないよう、歳相応の心構えをもちたいものだ、と話し合ったこともあったかな。 どちらかといえば東京の下町生まれの小生、新宿より西側のJR中央線沿線や小田急、京王線の私鉄 . . . 本文を読む

希望のない国、イスラエル

2023年11月04日 | エッセイ・コラム
がんを患って、自分の生死の目途がついたとき、ブログには政治、社会的なテーマは避けようと決めた。なぜなら、昨今、書くことの根拠、エビデンスのことごとくが希薄で、信用のならないものに思えてきた。情報ソースはすべからくメディア経由であり、ITのSNSなどだが、それらはもはや信のおけない媒体であると、自分のなかではほぼ断定している。 そうなのだ、自分にはそれらを客観的に取捨選択する確信、判断基準を持ち得 . . . 本文を読む

只見線・奥只見湖・清津峡、人気スポットへ

2023年10月20日 | 日記
新潟県十日町に近い津南温泉から、只見線の大白川駅へ。 いま内外から熱い視線をあびるJR只見線は、福島県会津若松駅と新潟県魚沼市の小出駅を結ぶローカル秘境列車。沿線沿いの幾つかの駅が山間の秘境にあり、四季折々に自然の超絶景が見られ、列車とのコラボレーション写真は旅情をかきたてる。大規模な水害で不通になった区間もあるせいか、単線を走る小さな列車と人を寄せつかせない秘境との構図は、なんとも儚く、そして . . . 本文を読む

信濃から越後の海、ブナ林へ

2023年10月19日 | 日記
信越本線に乗って柿崎から柏崎へ。バスに乗り換えて寺泊に行く。 柏崎駅前は、原発の最寄り駅なのであろう、ローカル駅とは思えない景観をみせる。駅前のタクシー乗り場には5,6台のクルマが待機していた。 そのうち特急列車がとまったのだろう、まとまった人々が次々にタクシーに乗り込んで行った。半数はスーツ姿であったが、何か技術者を思わせる実直で頭が切れそうな男たち。たぶん柏崎刈羽原発の関係者かしらん。 . . . 本文を読む

青天の白馬三山を眺む

2023年10月18日 | 日記
  10月は生誕月であるが、罹病してほぼ一年。早ければ3カ月、平均余命・・年の命だと御託宣を受けた。ま、なんとか丸一年を身過ぎ世過ぎ、無事に生きていることを歓びたい。 何よりも、読者ほか誰彼問わずに、愚生を案じてくれた方々に感謝の念をあらわしたい。ありがとうございます。 また、この日を祈念して、2ヶ月前から計画、準備してくれた妻には、万感の思いをこめて感謝と労いの言葉をとどけます。 . . . 本文を読む

形のない時間の手触り

2023年10月09日 | 本と雑誌
  ■『ポール・ヴァ―ゼンの植物標本』から 堀江敏幸の「記憶の葉緑素」を読む 30年ほど前のこと。フランスのリヨン、長距離バスの待ち合わせで2、3時間、待つことに・・。作家の堀江敏幸は、旧聖堂のある広場で古道具屋「オロバンシュ」(※注)にふらっと立ち寄る。書籍コーナーもあったが、理系の雑書が多く、数学、サイエンス系の専門書で占められていた。そのなかに紛れていたルソーの『ある散歩者 . . . 本文を読む

連鎖する偶然、惹かれあう出会い

2023年10月03日 | エッセイ・コラム
スマホのOSはグーグルなので、撮った写真が「フォト」というアプリでクラウド上にストックされる。15GBまでは無料で、まだ10GBも空きがある。だから焦る必要はないのだけれど、古い写真を整理しようと思い立った。過去のストックをさかのぼって整理していたら熊谷守一絵画展(近代美術館※➡注)の写真群があった。そのなかになんと柳原義達の彫刻があった。過日、このブログにも載せた『孤独なる彫刻』という著書のトビ . . . 本文を読む

末盛千枝子さんのこと再び

2023年09月24日 | エッセイ・コラム
病院を退院した翌々日だったか、千葉県市原の「湖畔美術館」に行った。➡『末盛千枝子と舟越家の人々』 その末盛千枝子さんが、先週月曜日・朝刊の半面記事「あの人に迫る」で近況が特集されていた。10年間続けた「3.11絵本プロジェクトいわて」はいちおう区切りをつけたものの、すべての人に絵本を読んで欲しいという思いは、いまだに尽きることのないご様子だった。 御年82歳ながらお元気そうでうらやましい。大震 . . . 本文を読む

夢二式美人に「可愛い」の源泉をみる

2023年09月20日 | エッセイ・コラム
以下の文章はいわば能書きにあたるので、タイトルにある「夢二式美人に『可愛い』の源泉をみる」の結論をはやく読まれたい方はどうぞジャンプされたし 「侘び、寂び」と同じように、世界にむけて現代の日本人の精神性あるいは心性を表わす言葉とは何か?  議論はあろうが、いちばんの候補といえるのは「可愛い」だ、と思ったのはいつの頃だったか。竹内整一が考察した「やさしさ」に関する一連の著作を読んだときか。それと . . . 本文を読む

竹久夢二が求めた美とは何か

2023年09月16日 | エッセイ・コラム
前回記事の続き 竹下夢二(1884~1934年)は、画家としてだけではない、様々な才能に秀でたマルチタレントだった。ウィキをちょいと引用する。 ・・数多くの美人画を残しており、その抒情的な作品は「夢二式美人」と呼ばれた。大正ロマンを代表する画家で、「大正の浮世絵師」などと呼ばれたこともある。文筆の分野でも、詩、歌謡、童話など創作しており、中でも、詩『宵待草』には曲が付けられて大衆歌として受け、 . . . 本文を読む

本郷弥生あたりの散策

2023年09月13日 | まち歩き
週に1回訪問してくれる看護師さんは、歩くだけでも筋力がつきますから、といって爽やかに笑う。分かってますよとは言わない。ご心配無用、歩きは好きですからなんて、以前だったら自信たっぷりに返事していたかな。今はもう目で笑いながら、そうですね明日にでも行こうかな、と自然に言える爺さんになった。 今回は行き先を本郷方面に向けて、なるべく杖を使わずに歩こうと思い立った。そのかわり本郷へは登り坂なのでタクシー . . . 本文を読む

迷惑かけてもいいんだ

2023年09月09日 | エッセイ・コラム
  抗がん剤の影響かとおもうが、手と足の筋力がみるみる失くなった。何かに掴まっていないと安定した姿勢が保てない。杖を使えば、辛(かろ)うじて歩ける。だから入院中には、X線検査やコンビニの買い物に行くときなど、介助してもらって車椅子を利用するように提案された。実際に利用して実感したのは、その便利さ、快適さはもちろん、介助していただく方への感謝である。そして、他人の憐み、同情の視線なぞはあ . . . 本文を読む

三味線の音

2023年09月03日 | エッセイ・コラム
ふたたび永井荷風の話から。いまは亡きアヴァンギャルド詩人・俳人加藤 郁乎の『俳人荷風』を読んでいて、江戸文化の素養を磨いた青年荷風について、こんな件があった。 長唄や琴を能くした母親ゆずりとはいえ堅気の家庭に育った荷風が三味線の独稽古をはじめたのは遅く、中学校を卒業した明治三十年十九歳のころ、中学二、三年のころ琴古流の二代荒木古童門下の可童に弟子入りして尺八を学んだ。尺八の技術を完成するためには . . . 本文を読む

夏の明るい寂寞かな

2023年08月15日 | エッセイ・コラム
枇杷の実は熟して百合の花は既に散り、昼も蚊の鳴く植込みの蔭には、七度も色を変えるという盛りの長い紫陽花の花さえ早や萎れてしまった。梅雨が過ぎて盆芝居の興行も千秋楽に近づくと誰も彼も避暑に行く。郷里へ帰る。そして、炎暑の明るい寂寞が都会を占領する。 永井荷風の随筆集(岩波文庫)にある『夏の町』の冒頭の書き出しである。荷風がほぼ5年間の洋行(アメリカ、フランス)から帰って2年後に書いた随筆だ(発表は . . . 本文を読む