こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『鈍色幻視行』恩田陸

2023-08-23 19:54:41 | 読書感想
 
作家の蕗谷梢は、再婚相手でありやはり彼自身も再婚になる弁護士の雅春と、中国への豪華客船クルーズへと出発した。

この船旅は新婚旅行みたいなものであったが、呪われた小説『夜果つるところ』の噂の理由である2回の頓挫した映画化の関係者(彼の親戚なども含む)へのインタビュー企画を、彼が梢に提案したようなものでもあった。

『夜果つるところ』は主人公が自分のアイデンティティーを探す物語らしいのですが、今回の関係者のほとんどがこの話のファンなだけあって、どこか満たされないものを抱えているように見える人々が多いようですね。

クリエイターと言える人もいれば、そう思われたいのに力のない人、普通の人でもそこに憧れる人など、様々な葛藤とあがきと挫折、その他もろもろを色んな割合で持ち合わせているようです。

読者としてもどこか思い当たる節があり、読みながらその負の面の特にドロドロとした面に無理矢理向き合わされているようで、胸苦しく感じました。
私自身、本の半分を過ぎる辺りまで自分の嫌な面を濃縮して突きつけられているようで、辛かったです。

そこを超えれば一気に全てが昇華される大団円まで一気に読み進める事が出来ました。
さらに、現実でも抱えている日頃の鬱屈が晴れるように思えたのは、いくらかは救いになりました。

他の読者の皆さんはどう思っておいでなのか、できればこの達成感と爽快感を気持ちが風化しないうちに同好の士と語り合ってみたいと珍しく思わせて下さった作品でもありました。
でも自分の醜さもさらけ出してしまわないかと悩ましく感じてもいます。
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