こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『西洋菓子店プティ・フール』千早茜

2016-07-31 19:33:55 | 読書感想
東京下町の商店街の中ほどに、創業四十年を超える洋菓子屋『プティ・フール』がある。

亜樹は、そこの店主の孫娘で、やはり菓子職人となるためにフランスに留学し、帰国してからもフランス人のシェフが作る正統派フランス菓子の店で働いていた。

しかし、そろそろ独立して自分の菓子作りをしたくなったのと、恋人の祐介にプロポーズされたのを機に、辞めることにした。
ただ、亜樹の気持ちのふんぎりがつかず、結婚の準備は進んでいない。

話は中学時代の友人に移り、フランス菓子店時代の後輩、『プティ・フール』の常連、後輩の彼女と、主人公が移り変わり、皆が何らかの問題を抱えつつ生活しているのが分かる。
そして、順風満帆に見えた亜樹にも問題が隠れていた。

今まで、菓子店を扱った物語を色々と読んできましたが、千早さんは初っ端から背徳的ムードを漂わせて、私をドキリとさせて下さいました。
え?まさか、これもそういう話?と勘違いしそうになりました。

あと、ラストの亜樹のおばあさんの配慮といいますか、発案は良かったですね。
あれのおかげで、ハッピーエンドになったのですから。
亜樹の心も、柔らかくなるといいのですが。
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『中野のお父さん』北村薫

2016-07-30 19:32:59 | 読書感想
田川美希は、文宝出版編集部に勤めている。
このたび、文宝推理新人賞の最終選考に残った国高貴幸氏に電話連絡をしたところ、応募したのは一昨年のことだという。
編集部で何らかの手違いがあったのかと思いきや、 美希が父に相談してみると、意外な真相が判明した。

百貨事典タイプと美希が名付けた父親は、その後も様々な謎を解き明かしていきます。
中でも私が気に入ったのは、マラソンをアリバイにした「冬の走者」
本の汚れが殺人事件を生んだ「茶の痕跡」
はずれの宝くじを狙った強盗「数の魔術」です。

もちろん、8つの連作短編のどれもが甲乙つけ難い面白さではありました。
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『ピロウボーイとうずくまる女のいる風景』森晶麿

2016-07-26 19:27:34 | 読書感想
絢野クチルは十八歳。
十七歳のときに父親が自殺し、母親とともに東京に出てきたが、その自堕落な生活に愛想をつかし、親元を離れようとしていたところをキムラに拾われ、ピロウボーイを始めることとなった。

その後、金銭や<世話を焼く>ことと引き換えに、さまざまな女性と関係を持ったり、添い寝やただ話し相手になったりしてきた。
そんな中、クチルが通う大学の同級生・知紅が、彼のアパートに転がり込んできた。
何の関係も持たない、同居するだけの奇妙な生活が始まる。

何とも、地に足のつかない感覚で読み進めていき、驚きの結末ではなく、経過が待っていました。
ミステリの色の薄いミステリなんでしょうか?
ただ、常にハラハラドキドキの、隠微さの付きまとう物語ではありました。
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『北欧女子オーサのニッポン再発見ローカル旅』オーサ・イェークストロム

2016-07-25 19:35:18 | アニメ・コミック・ゲーム
スウェーデンから来日した漫画家のオーサさんが、日本の文化をもっと知りたいと日本のあちこちを旅して描いた4コマ漫画をまとめたものが、この本です。

南東北では、イワナを皮ごと食べられたのに満足していたら、同行した日本人のケイ君は頭から食べていたり、
福岡の大川では、酔うと相撲をとる男性に出会ったり(いや、それ例外だと思う)、
沖縄では、墓の前で家族と一緒にご飯を食べる「シーミー」の写真を見て驚いたり、
広島では、お好み焼き店を巡ったものの、取材のため少ししか食べられなかったり、
京都では、紹介で芸妓さんと食事ができたり、 日本人でもなかなか体験できないことまで経験されていて、
うらやましく思ったりもしました。

他にも細々とした面白いエピソードが描かれていますので、ぜひ、お読みください。
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『非Aの世界[新版]』A・E・ヴァン・ヴォークト

2016-07-24 19:26:59 | 読書感想
《機械》によるゲーム、成績優秀者には政府の要職が、優勝者には金星行きの資格が与えられるという。

ギルバート・ゴッセンも、これに参加するべく《機械》市にやってきたのだが、同じグループの会合で、ゴッセンには間違った記憶が植え付けられていることが判明した。

ゴッセンが、自分は何者なのかを探索していくうちに、背後でうごめく陰謀が現れてくる。

記憶喪失ならともかく、明確な記憶があるのにそれが否定されるのは、なおさら怖いですよね。
その上、危ない橋を渡る上で優位な立場に置かれながら、その理由が分からないというのも不気味です。

この作品は、1940年代に書かれただけあって、あらゆる文明の利器に真空管が使われているところが、逆にレトロで魅力的に映ります。
慣れない方は、それをコンピュータなどに脳内変換して読むと入りやすいのではないでしょうか?

あと、少なくとも『非Aの傀儡』までは出ているようですが、『非AIII』は出る予定があるのでしょうか?
ある程度、ちゃんとした結末が欲しいので、気になっています。
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