こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『ロミオとジュリエットと三人の魔女』門井慶喜

2022-02-22 19:39:24 | 読書感想
 
最近は、どちらかというと時代小説中心に書いておられ、そういうのも好きだけど・・・と少々離れていましたが、少し異色のタイトルに惹かれて、この本は手に取りました。

戯曲?っぽく見せておいて、ウィリアム・シェイクスピアの伝記らしきものかな?と思いかけましたが、タイトルがかけ離れていましたね。

シェイクスピアを主人公にした、ファンタジー時代小説とでも言えばいいのでしょうか?
これでもか!と主人公の戯曲の登場人物を、実在のように登場させて本人と絡ませ、引っ掻き回し、つまずかせ、面白くしていきます。
妖精パックまで現れるのだから、しっちゃかめっちゃか?
でも、物語の根底は揺るがないところはさすがです。
どちらかと言えば、史実の方がスパイス代わりかも?

歴史上の人物とファンタジーとでやりたい放題に遊んでいるようで、とても楽しめました。
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『コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎』笛吹太郎

2022-02-21 17:08:07 | 読書感想
 
カフェ〈アンブル〉で毎月行われている《コージーボーイズの集い》
荻窪に出版関係者らが集まり、お茶とケーキを囲んでゆるゆるとミステリについての話をするという催し。
ルールは二つ。
作品の悪くちは大いにやるべし、ただし人の悪くちはいってはならない。
もっとも後者の誓いはしばしば破られる。

主人公は、ぼくこと編集者の夏川ツカサ。
毎回、コージーミステリをメインにした話をしているうちに、毎回、仲間やその場に居合わせたカフェの客、ゲストらが体験した謎についても解き明かしていく。
と言っても、真相を解き明かすのは店長の茶畑さんなのだが。

タイトルに違わず、この物語で解く謎で殺人はありません。
それだけにみんなで、ああでもないこうでもないと議論するところがとても楽しく、それだけに茶畑さんが提出する真相ですっきりと納得できます。

で、この《コージーボーイズの集い》のルールに則って、私も作品の悪くちをやらせていただきます。184ページなのですが、季節限定のスイーツであるガトーショコラ。
横に生クリームと苺がひとつぶ添えてあるのがうれしいと書かれています。
しかし、その4行あと、このページのラストで、福来さんは苺ショートをたいらげた、とあるのです。

この苺がケーキの上に乗っているのなら苺ショートと言っても、まだ、いいかもしれません。
福来さんが、別に苺ショートを頼んだと言い逃れできると思われる向きもあるでしょう。
でも、この文の流れだと、全員がガトーショコラを食べていると、読者は受け取ると考えられるのです。
明らかにミスと思えます。

ただ、これは東京創元社のミステリです。
校閲さんもいらっしゃると思います。
笛吹さんが読者に、本編にかかわりのない小さなミスを見つけて少し優越感に浸ってもらおうという、意図的な間違いとも考えてしまうのです。
真相はどうなのでしょうか?
新たな謎が生まれてしまいました。(大げさ(^^;))
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『本好きの下剋上 第四部 貴族院の自称図書委員Ⅸ』香月美夜

2022-02-17 20:48:21 | 読書感想
 
前回の『本好きの下剋上 第五部』2(かな?)の感想から過去にさかのぼって第四部の9ですね。

今回、対立する貴族たちによって神殿の聖典が盗まれた上に、目くらましに置いた偽の聖典に触ると死ぬというほどの毒を塗るという、悪意に満ちた罠まで仕掛けてきます。
結構、血なまぐさい光景もあり、だからこそ犯人の身内と言えども悪事に直接かかわりのない者、特に子供たちに対するローゼマインの慈悲の心が引き立つのでしょう。

だからといって、王命によるフェルディナンドのアーレンスバッハへの婿入りが止められるわけでなく、慌ただしくも準備を並行して進めていくこととなります。

さらに今回、一番切なくも感動的だった光景が二つありまして、一つはフェルディナンドとの別れに際して、ローゼマインが全属性の魔法陣を描いてフェルディナンドへの祝福を贈るところ。
もう一つは、ローゼマインことマインの実の弟、カミルがずいぶん成長していて、マインの本とおもちゃのせいか本好きに育ったようで、つながりが切れていないと思えて嬉しかったです。

書き下ろし短編では「思い出と別れ」で、日頃語られる事の無い灰色神官たちのフェルディナンドとローゼマインに対する気持ちが、温かくも優しいので、とても嬉しく感じられました。
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『最後のユニット』草上仁(「SFマガジン1990年7月号」収録)

2022-02-13 20:53:51 | 草上仁
 
放射能に汚染されてから何千年も経つ地球上で、人類はみな電子化され、たまに順番が回ってきた時に地上を歩けるユニットに乗り移り、街で様々な役柄になりきり楽しむ事ができるという暮らしが続いていた。

しかし今回、久しぶりに主人公がユニットに乗り繰り出した街には誰一人存在せず、閑散としていた。
以前の街には、ユニットばかりとはいえ多くの人々が賑わいを楽しみに来ていたはずなのに。
ただ、歩き続けているうちに商店の角で見つけたユニットは・・・。

核戦争後の地球でしょうか?
どんなにデジタル技術が進んでも、人類の滅びゆく過程の空虚さをひしひしと感じる厳しい物語でした。
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『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(上・下)アンディ・ウィアー

2022-02-13 20:15:11 | 読書感想
 
 

グレースが目覚めると、そこは白い部屋の中。
コンピュータに足し算などの質問をされ、気づくと口には酸素マスクがはまっており、管につながれ身体中電極だらけ。
自分自身が何者かも分からなかった。

少しずつ記憶と体力を取り戻し動けるようになると、ここが宇宙船の中で、彼を含め3人の科学者が、人類の滅びを阻止するためにタウ・セチ星系に向かう事になったのだと気づく。
ただ、彼以外の2人は昏睡に耐えられず亡くなっていた。

実は出発の原因は太陽のエネルギーの減少で、近いうちに氷河期が来て人類の半数以上が亡くなるという予測がされたのだ。
エネルギーの減少の原因は太陽に取りついた未知の微生物で、近傍の恒星のほとんどが同じように光量が減っていた。
地球人は唯一、光量つまりエネルギーが減っていないタウ星に、科学者を解決の糸口の発見に向かわせたのだ。

そんなグレースも仲間が亡くなり宇宙空間にひとりぼっち、かと思いきや、他星系から同じ現象の解決策をさがしに来た他星人とのファーストコンタクトまで体験する事となり、色々ともめながらも友人となり、協力して解決策を見つけ出すのだった。

ここまでは思いつく内容ではあります。
ただ、まさかあそこまでピンチに次ぐピンチがあり、そのあげくにああいう結末になろうとは、思いもしませんでした。
実にグレースらしいと言いますか、英雄にはなれないけど本当にいい人なんですよねえ。

そして、どうやら『火星の人(オデッセイ)』に続いて映画化されるようですよ。
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