こっぱもちの部屋

主に、読書感想のブログです。他に、日常生活で楽しかったことを書くと思います。

『博多さっぱそうらん記』三崎亜記

2022-01-31 20:11:10 | 読書感想
 
博多の中堅企業「博央商事」で働く福町かなめは、東京のSデザイン事務所から来たデザイナーさんを博多駅まで迎えに行ってくれと社長に「お願いポーズ」で頼まれた。
何でも、そのデザイナーさんに新しい公園のデザインを頼むので、コンセプトを決めるための調査で来るらしい。

言われたように博多駅に行ってみると、現れたのは中学高校時代の同級生、綱木博。
彼がそのデザイナーで、なぜか異常に博多を毛嫌いするようになっていた。

三崎さんが福岡出身という事もあってか、全編べたべたの(ごめんなさい)博多弁という物語。
しかも、博のトラウマが博多弁。

確かに「よかよ」は、肯定でも否定でも使えるので、ニュアンスを受け取る能力が必要とされる面倒な言葉ですからねえ。
また、読んでいて気づいたのですが「やおない」とか「やおいかん」を、最近使っていない!
単純に大変な事が無いだけかもしれませんが、この言葉は福岡県全体でも使うものなのに、福岡県民としてまずいと思いました(笑)
あと、かなりの部分で博多の風物を目一杯紹介していますので、興味のある方はいいのですがそうでもない方は付いて行けるのかな?と心配になったりもしています。

物語の骨子としては、福岡市を博多市にできなかったことへの博多っ子の怨念が起こす怪を失くすために、どう昇華するのかという事なのです。
そういうのを読むと、北九州市民にも小倉市を県庁所在地にできなかった怨念が・・・と、思いかけたのですが、そこまでは無いかな?とはいえ、小倉北区室町に昔の県庁があったと思いますので、それに間違いが無ければ書いて頂きたいものです。
できれば、バリバリの小倉弁で(笑)
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『ひとり旅日和 運開き!』秋川滝美

2022-01-27 19:53:46 | 読書感想
 
元々人見知りだった梶倉日和も、社長のすすめで始めたひとり旅のおかげでいくらか人慣れし、「人見知り女王」から一年かけて「人見知り姫」にたどり着いた模様。

熱々の餃子が食べたいがために宇都宮まで出かけるなんて楽々?
そのノリが運を呼んだのか、和歌山のアドベンチャーワールドでパンダの赤ちゃんが観られるという抽選にまで当たってしまった。

多分、状況が状況なだけに当選しやすかったというのもあるのでしょうが、それでも赤ちゃんの状態を観られるのは1年くらいですから運が良かったのでしょう。
中盤の旅行先は、叔母さんの元にいくための方便も兼ねていましたが、それでも引き寄せられるものがあったのでしょうね。

ここからは、別の戦争に関するシリアスな話題もありますので、苦手な方はお読みにならない方がいいと思います。

という事で、個人的な事ですが、ラストの沖縄での日和を怖がらせた出来事から私が思い出したのは、過去、ある本についての感想の事でした。
核戦争後の世界での物語でしたが、その感想にハッピーエンドと書いたのです。
翻訳SF小説ですが、著者が核爆弾の怖さは放射能だけと思っている様子の結末だったのです。
本当は、代表的なもので「はだしのゲン」にあるように(他の原爆体験の本も読みましたが)そんな生易しい世界ですむはずのない生き地獄です。
だから、自分自身の死に方を火傷一つ無く選べる結末に「ハッピーエンド」と皮肉を込めた感想を書きました。
それくらい作者と、作者を始め日本以外の人類にその事実を教えない世界に対して憤っていたのです。

ただ、紹介文をお読みになる方々には関係ない話ですよね?
そんな訳で、今さらですがあの時のお詫びを申し上げないといけないなと考えました。
申し訳ありませんでした。
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「マイクロフィッシュ」草上仁 S-Fマガジン1990年6月号

2022-01-25 20:01:52 | 草上仁
 
宙軍対敵情報部のロベルト・チャン大佐は、6年前に中立宙域の惑星ノーティニアで消息を絶った協力者が持っていたはずの情報を取り戻すために、水補給船“イパネマ”へ任務の協力を依頼した。

今回、扱うのが機密情報という事もあり、通常の人数のクルーではなく主人公と船長、そしてチャン大佐自身のみが乗船していた。
大佐によると、協力者だった水産学者は惨殺死体となって発見され、宿舎もバラバラ、しかし肝心のマイクロフィルムは見つからなかったという。
敵が持って行ったにしては、宿舎に火まで放って証拠隠滅をはかろうとしたところで、疑わしいともいうのだ。
あと、情報のありかとして考えられるのは、協力者が放流した稚魚の認識票らしい。

彼らとしては大真面目に情報のありかを探しているのでしょうが、映像として想像すると、宙軍艦船が漁船の真似事をしているんです。
かなり滑稽ではあります。
ただ、結末に至っては、協力者の深慮に唸らされる面もありました。

さらに挿絵は、いつものごとく吾妻ひでおさんなのですが、扉絵の魚の表情や作りが全部違うのですよ。おお!と感動しました。
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「岸壁の母」和田毅(草上仁 別名義)S-Fマガジン1989年12月号掲載

2022-01-24 19:45:07 | 草上仁
戦争が終わって半年以上経つのに、マリア・スメタナの息子ジャックは戦地から戻ってこない。
事務士官として応召したくらい体の弱い子だから、実戦部隊が務まるわけはないので大丈夫と思うものの、心配はつのるばかりだった。

うーん、第二次世界大戦後も現場に情報が届かずに様々な不幸があった事は知っていますが、ここでは変な嘘までついたがために、より不幸にさせてしまう可能性もあるという酷い見本ですね。
まあ、どんな理由であろうと、戦争は悲惨なものですよね?

掲載紙は昨日と同じなので、あえて載せてません。
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「星売り」草上仁(初出 S-Fマガジン1989年12月号)

2022-01-23 20:14:53 | 草上仁
 
 
ケンの一族の先祖は1,700年以上前の政府から居住用運行不動産、つまり居住用惑星を販売する永代ライセンスを取得し、ある経緯から独占することとなった。
また、1,200年ほど前に政府からの販売仲介を請け負ったことから大金持ちにもなる。
もちろん、惑星を買うなんて酔狂な者は3、4世紀に一回くらいしか出現しないのだが、一族の莫大な資産を維持するにはそれで十分だった。

ところが今回、桁外れの財産を持ちつつも9歳であるところの少年が、惑星の購入を希望してきた。
さらにケンたちも、ある理由から早く惑星を売らなくてはならない状況になった。
この9歳のわがままな少年に、売りつけることができるのか?

今となってはヴィデフォンのようなものは、ネット通信で誰にでも可能になってしまいましたが、1989年には遠い未来の出来事に感じられたものです。
だからといって、さすがに21世紀の今でも、居住用惑星を売買できませんけどね。

ケンの一族もこれまでかと思いましたが、さらに桁外れなことをやりだすとは思いませんでした。
上手く行くかどうかはともかくとして、この商売根性はすごいと思います。

この作品は、このタイトルのハードカバーの単行本に収録されてもいます。
古本でしか手に入らないのが、問題です。
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