鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

73 神話的な春

2019-01-24 14:37:52 | 日記

鎌倉宮の河津桜が咲き出し荏柄天神の紅梅も膨らみ、春の近さを感じるようになってきた。
老病苦に痩せ細ったこの身には一際寒さがこたえるので、春の暖かさは天の恩寵そのものだ。
20世紀の物質主義文明は神話的な春を否定してしまい、古今東西至る国にも春を祝う風習があったのに、多分現代の都会人の殆どがその真の喜びを感じ取ってはいないだろう。
いや、人それぞれ多少は感じるのだろうが、マンションの年中20数度の温度管理下で自然の動植物から縁遠い暮しでは、どうしても待春の実感は薄れる。
厳しい暑さ寒さに耐えてこそ研ぎ澄まされる精神があるのだ。(鎌倉の暑さ寒さはたいして厳しくは無いが)

ボッチチェリのプリマビューラは中世カトリック教会支配下の陰鬱な千年に終止符を打つかのように、ローマの美神達の春を描いて正にルネッサンスの春を導いた記念碑だ。
宗教学者達は道徳を教えたと言う一点で多神教より一神教が優れていると断じるが、現代の社会秩序は宗教ではなく法によってもたらされる上に、一神教同士の対立は多くの戦争を生んで来たので、その論には賛成しかねる。
確かにギリシャ ローマの神々も八百万の神も道徳面では劣悪な所があるが、それでも私には多神教の自然神の方が恵みや恩寵を感じ易い。
一神教の神は遥か高みに在り、多神教の神々は身近に在る。

(ボッチチェリー プリマビューラ)
日本の八百万の神では佐保姫が春の女神で、一部誤解があるようだが木花咲耶姫は桜の女神だ。(富士の神は石長姫)
旧平城宮の東に佐保の地名が残っているので、その辺に摘草遊びに出向いたのかもしれない。
現代のゲームやアニメにさえも飽きてしまった私のような人間でも、自然の中の芽吹や動物達の誕生は年々歳々新たな感動と詩情をもたらしてくれる。
皆も身近な散歩道に春を探し当てれば、神話の再発見も出来るだろう。
---神話ごと封印されし御陵の 木々の冬芽に滲み出る赤---

©️甲士三郎

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