鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

105 秋意の鳥獣達

2019-09-05 15:03:14 | 日記
---鳥けもの庭に遊ばせ引籠もり 秋気を睨む画家の病眼---


9月に入って陽射しはやや薄らいで、隠者の荒庭に来る小動物達もだいぶ過ごし易そうに見える。
一方で私は眼の手術後なので碌な運動が出来ず、今度は宿痾の血糖値が少し高くなってしまった。
まあ散歩くらいなら支障は無いので、庭や近所を盛んにふらついている。

茫々と茂った庭を良く見ると、其処彼処にひぐらしの空蝉が草葉に縋り付いていて、病で手入れ出来なかった一夏の荒涼を想わせる
---空蝉を貫く朝の光かな---(旧作)
句から源氏物語空蝉の段を観想してもらえれば、後朝の光に現実界と夢幻界を往還出来るだろう。


---かなかなやみそひともじの濡れてをり---(旧作)
三十一文字(みそひともじ)は和歌の事。
ひぐらしの声はどことなく哀しげで夏の旺盛な生命力の衰えを感じるのは、古今を通じて日本人の心に染み込んだ自然観だ。

お隣の永福寺跡の池辺には赤蜻蛉が群れ翔び、水面も秋気を濃く映している。

(水浴びの鶺鴒 石の色に紛れている)
我家の周囲を一回りしただけで、活き活きと遊ぶ鳥獣達に清澄な秋気を感じられて楽しい。
この地にある諸々の良い所だけ残して不要な物を観想法で消し去れれば、かなり隠者の理想の楽園に近い。
こんな暮しなら例え病に臥せるとも、秋が静かに深まっていくように己が精神も深めて行けるだろう。

---より濃きは水に映りし方の秋---

©️甲士三郎

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