隠者は長年ギリシャローマの聖遺物を探し求めて来たが、ようやく先日ネットオークションで女神像の頭部残欠を落札した。
出品者がガンダーラと言っていたので価格が上がらず、幸運にもこの隠者如きの手許金で入手出来たのだ。
このテラコッタの小像は、私が調べた限りではローマ時代のオリエント方面(イラク辺り)の属州の作で地母神か豊穣神だと思う。
ヘレニズムの形態感を残した品の良い造形で、古代のそこそこの良家の小祭壇に置かれていたタイプだ。
さっそくワインを御供えし古代世界の夢幻に浸りながら、美しきローマの女神と晩餐会だ。
BGMはローマ神殿の巫女が奏でる竪琴のような、リリー・ラスキンのハープ曲集がぴったりだろう。
次は古の錬金術師が身に付けた妖精の指輪だ。
いわゆるローマングラスの指輪で、古代のガラスが長い年月をかけて地中で銀化した物だ。
写真ではわかりにくいが、光線の角度によって虹色の奥に4枚翅の妖精の影が揺らめいて見える。
台座を見ると後世の17〜18世紀頃に指輪に仕立てられたようだ。
ルネッサンス期の錬金術師達がこの手の古代装身具を好んで収集したと聞く。
隠者にとっても宝石より遥かに価値が高い。
最後はもう何度目かでお馴染みのハーミットレリーフ。
古びた小屋に散らかった書物や巻物、壁に掛かったよれよれのコートと帽子、窓辺で歌う小鳥。
これこそ正に隠者の御手本とする生活だ。
このように古代遺物は夢幻界に入る鍵となり、また己れの精神領域を古今東西に広げてくれる。
今はネットのおかげで自室に居ながら楽に入手出来るようになったので、興味のある方は是非お試しあれ。
©️甲士三郎