鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

218 風白き谷戸

2021-11-04 13:05:00 | 日記

「風白し」は秋の季語となっていて、我が谷戸も今週は吹く風白き好天が続いている。

暦ではもうすぐ立冬でも、鎌倉はあと23週間は秋だ。


ーーー風白く薄も白く我が髪も 時の狭間の谷戸もいま秋ーーー


我家のすぐ隣の永福寺跡では薄の葉が末枯れ色となって陽に透けている。

何度か紹介した100年前のライカのレンズは、こんな光を捉えるのが得意だ。

「ライカを提げた隣町への散歩は世界の果への旅と同じだ」田中長徳。

世界を発見する事は足下身辺でも十分可能であろう。


ーーー上に雲下に水湧く山かげの 幽居に老いし詩人の獣語ーーー

「湧水」は夏の季語だが年中湧いているし短歌だから御目溢し願おう。


裏の崖を這う葛葉も色付き、源氏山の真葛ヶ原辺りはさぞ風情があるだろう。

鎌倉の山々は雑木の自然林で、昔の大和絵に見る風景そのものだ。

京都のような鮮やかな紅葉は少ないものの、しっとりした秋寂びの情趣は十分に味わえる。

「春来れば京の山みな絵のごとし光悦の山宗達の山」吉井勇。

この有名な歌の鎌倉版秋の編でも作りたい。


しばらく前に山路で拾ってきた山栗を茹でておいた。


小振りで甘味の薄い山栗は何処にも売っていないので、現代では貴重品でさえある。

こんな栗や団栗は鎌倉の山々には豊富にあるので、杉だらけの植林の山と違い栗鼠や小動物達の楽園となっている。


おまけで今日帰ってから出来た俳句も。

ーーー草の絮昇るや暮れる陽の筋をーーー


©️甲士三郎